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JRのオレンジカード、ついに販売終了へ

2012-12-05 22:34:31 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
JRの「オレンジカード」、来年3月で販売終了(産経)

国鉄時代に発売が始まったオレンジカードが来年3月いっぱいでついに販売を終えることになった。オレンジカードは、全国のJRの駅の券売機で近距離切符が買えるプリペイドカードであり、リンク先の記事にあるように1985年に販売が始まった。電電公社が民営化されNTTとなった年であり、NTTが公衆電話用プリペイドカード「テレホンカード」を発売し始めたことに触発されたのだろう。

オレンジカード発売当初は1,000円、3,000円、5,000円の3種類があった。高額のカードほど偽物が出回り、JR各社が痛手を被ったため、5,000円、次いで3,000円のカードが廃止になり、1,000円だけが最後まで残った。国鉄から引き継いだ仕組みだから、JR6社のどこが発売したオレンジカードであっても、対応する券売機さえあれば全国のJRの駅で近距離切符が買える。

券売機の種類によっては長距離切符や料金券(自由席特急券、急行券など)の購入にも使える場合があり、15年ほど前までは、オレンジカードで長距離切符や料金券を買える券売機がどの駅にあるか知っておくことは乗り鉄にとって極めて重要だった。オレンジカードに限らず、プリペイドカードは使用するたびに残額欄に小さなパンチ穴が空く。JR各社でも、パンチ穴の位置に車両の写真が来ないよう細心の注意を払ってカードを発行していたが、細切れに使っていくとたくさんの穴が空き不格好なので、鉄道ファンの間では、パンチ穴が1つだけで済むよう1回で全額を使い切る使用方法が流行した。

1,000円のカードであれば、近距離乗車券でも1回で全額を使い切るのは簡単だが、3,000円や5,000円のカードを1回で全額使い切るには、長距離切符や料金券を買える券売機の設置場所を知っておく必要があったのである(高額カードの廃止以降はそんな知識も不要になってしまったが)。私の場合、3,000円や5,000円のカードはJR東日本の緑色の券売機で新幹線の乗車券・特急券を買うときに使うことが多かった。

国鉄時代から鉄道ファンを続けてきた当ブログ管理人は、今でも毎月、時刻表が発売されるとオレンジカードの発売情報を必ずチェックする。最近は、毎月同じ図柄の焼き直しでマンネリ化が著しいせいか買うこともほとんどなくなったが、以前は郵送販売で良くオレンジカードを買っていた。現金書留か定額小為替で代金と返信用封筒を送れば、JR各社からオレンジカードが送られてくる。手続きが煩雑なためか、限定販売なのに売れ残っていることが多かった。

時は流れ、いつしかプリペイドカードの世界は非接触型カード(Suica等)が主流になった。Suicaが登場する直前、自動改札機に直接通せるプリペイドカード「イオカード」が発売されたが、すぐにSuicaの時代が来たためイオカードは不発に終わった。ただ、イオカードの登場は駅で切符を買って列車に乗る時代の終わりの始まりになった。今では券売機すら、駅によっては探すのが困難なほどになった。

ここ数年は、オレンジカードの販売に取り組んでいるのはJR北海道と四国だけ。四国も最近は販売意欲が薄れたと見え、2~3年前からほとんど発売がなくなった。最後まで残った北海道も最近は販売点数が減り、退潮は明らかだった。こうした状況を、国鉄時代以来30年近くも見続けてきた私にとっては寂しいが、ひとつの時代の終わりと言っていいだろう。

もう話題にする機会もなくなると思うので、オレンジカードがらみの興味深い知識を当ブログの読者だけにお知らせしよう。前述の通り、オレンジカードはJR6社どこで買ったものでも全国のJR駅で使える。発行した会社と使用する会社が異なるということも珍しくないが、この場合の運賃・料金精算はどうなるのだろうか?

答えは、運賃収入は使用された会社、より正確に言うと使用された券売機が所属する会社のものになる。例えば、JR北海道発行の1,000円オレンジカードの全額がJR西日本管内の駅の券売機で使用された場合、1,000円の運賃収入はJR西日本のものになる。JR北海道がオレンジカードの代金として預かった1,000円をJR西日本に支払うことになる(ちなみに、国鉄時代に発売されたオレンジカードも今なお全国のJR駅で使えるが、この場合、オレンジカードによる運賃収入を請求すべき「国鉄」はもう存在していないため、オレンジカードが使われた券売機の属する会社が負担することになる)。

それではJR北海道は1円の儲けもないではないか、と思われるかもしれないが、オレンジカードを売り上げた代金を会社の預金に入れておけば金利が付き、発行した会社は自社線内で全くオレンジカードが使われなくても金利分だけは自社に落ちる。オレンジカードが登場した当時はバブル経済で金利が高かったから、JR各社は運賃の「前払い」に当たるオレンジカードを売れば売るほど(自社線内で使われなくても)儲かるという仕組みだった。このため、本業そっちのけでオレンジカード販売ばかりしている駅、「余剰人員」に1日中オレンジカード販売ばかりさせている駅など「暴走」する駅も現れた。真偽のほどは不明だが、国鉄分割民営化に反対したため「見せしめ」として鉄道業務を外された国労組合員が「オレンジカード販売要員」として動員されている、という話も当時よく聞かれた。

ところが、バブル崩壊後は金利がほとんどつかなくなり、JR各社はオレンジカード発売では儲からなくなった。オレンジカードに限らず、プリペイドカードが衰退した原因は低金利にもある。これに対しSuicaが廃れないのは、1枚のカードをチャージしながら使い回す方式であり、JR側にとって発行後はほとんどコストがかからない一方、券売機削減など目に見えるコスト削減効果があるからである。

30年近くにわたって、鉄道ファンの私と共にあった愛すべきオレンジカード。今でも私の書棚には、使用済みオレンジカードが会社別に仕分けされた名刺ホルダーに保存されている。いったい何枚あるのだろうか。一度「棚卸し」してみるのもいいかもしれない。

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