人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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JR北海道直系の保線子会社、下請けに裏金要求 事実上のリベート制度か/安全問題研究会

2014-01-03 12:47:26 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR北海道子会社、保線費用から裏金か 発注水増し、返納指示(北海道新聞)

裏金でJR北海道にビール券? 子会社、花見など年に数回(北海道新聞)

JR北海道の安全問題を巡って、新年早々、地元、北海道メディアによるスクープ報道が飛び出した。北海道新聞など複数メディアが伝えるところによれば、JR北海道の保線下請け会社が、孫請け会社に支払った保線費の中から現金をキックバックさせ裏金としてプール。その裏金を、保線関係部署での飲食費、花見などに充てていたというのだ。

今回、事態が明るみに出たのはJR北海道直系の下請け保線会社「北海道軌道施設工業」札幌支店管内の複数の営業所。幹部らが、下請け(JR北海道から見れば、孫請け)の保線会社に支払った保線費用の一部を「返納」させ、現場での飲食や花見などの「遊興」に充てていた。

この問題を報道するのは、実は元日の北海道新聞が初めてではない。すでに、地元誌「財界さっぽろ」が年末にこの問題をキャッチし報じている。「財界さっぽろ」によれば、「苫小牧市内のある保線下請け会社」が北海道軌道施設工業の幹部2人とOBに総額で約5000万円を支払わされた挙げ句に、3年前、破産申し立てをして経営破綻に追い込まれたという。この会社は建設会社「優進」で、元社長は同誌の取材にこう告白している。「会社設立以来、JR北海道の子会社の関係者にリベートを払っていました。彼らに会社をつぶされたと思っています。許せません」。

国鉄分割民営化により、JRを規制する法律として成立したJR会社法(正式名称は「旅客鉄道株式会社および日本貨物鉄道株式会社に関する法律」)には、このような罰則規定がある――「会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する」(同法第16条)。JR職員を公務員に準じたものとして、職務に関連した賄賂の収受を禁ずる規定である。職務権限を持つJR社員が、例えば、下請け保線会社の選定に当たって子会社からこのような不正な金銭を収受すれば、公務員に準じて贈収賄罪が適用される。

JR北海道が、キックバックによる事実上の「リベート」をJR本体ではなく、北海道軌道施設工業を通じて行わせていたのは、JR会社法による罰則を逃れるために違いない。JR会社法はJR旅客会社とJR貨物にしか適用されないからだ(JR旅客会社にしても、法成立当時は6社すべてが対象だったが、本州3社は完全民営化による法改正で対象外となったため、現在、この罰則規定が適用となるのも北海道、四国、九州の3島会社のみである)。

JR北海道としては、保線担当会社からのリベートの還流を子会社にとどめることで、うまくJR会社法の罰則適用を逃れたと思っているかもしれない。しかし、当研究会の見るところ、この行為は少なくとも2つの法令に違反する可能性がある。

1つ目は、背任罪(刑法247条)だ。会社員など組織の構成員が、自己の利益を計る目的で任務に背いた場合に適用される。「優進」側から見れば、北海道軌道施設工業から受領した請負代金の返金要求に応じることは、会社に損害を与える背任行為となりうる。実行したのが取締役などの経営陣であれば、会社法960条の「特別背任罪」となる可能性がある。

2つ目は、正当な商慣習を脅かす「不公正な取引方法」を禁じた独占禁止法(私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律)違反である。不公正な取引方法を例示した同法2条9項5号には「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること」として、「ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」とある。独占禁止法のこの条項は「優越的地位の濫用」と呼ばれるもので、流通業界などでは、こうしたリベート(大手量販店によるメーカー等へのリベート要求)が、いわば「公然の秘密」としてまかり通ってきた。

今回「優越的地位」にあるのは発注者であり「顧客」でもある北海道軌道施設工業の側だから、独禁法違反となる場合は、背任罪と異なり、問われるのは北海道軌道施設工業になる。独禁法を所管する公正取引委員会がまともな感覚を持つ組織であれば、重大な関心を抱くだろう。

それにしても、「優進」の元社長は、自分が背任罪に問われる危険性を知りながらなぜ「財界さっぽろ」「北海道新聞」の取材に応じたのだろうか。やはり、巨額のリベートで会社を経営破綻に追いやられた恨みが大きいだろう。いずれ自分たちに捜査機関の手が入るのなら北海道軌道施設工業も道連れにしてやれという、いわば「自爆テロ」かもしれない。

最後に、労働問題との関係で指摘しておかなければならないことがある。今回の事態は保線業務下請けに伴ういわば「闇」であり、保線の外注~下請け化がなければ、この裏金は賃金として労働者に支払われたはずである。労働者の賃金が下請け化で切り下げられ、士気が低下した現場を鼓舞するために行われていたのが「裏金による宴会」ではお門違いもいいところだ。なぜ労働者を正規化し、その労働にきちんと賃金で報いようとしないのか。外注・下請け化、賃金切り下げ、現場の士気の低下、そして「裏金による宴会」というまやかしの注射で現場を鼓舞する会社幹部――JR北海道の安全崩壊は、起こるべくして起きたといえよう。

2014年も安全問題研究会は忙しくなりそうだ。

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