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避難者にまで愚問を投げつけ、福島民報はどこに行くのか

2014-02-19 22:49:25 | 原発問題/一般
記者たちの3年 故郷は遠く 避難者苦悩 福島民報 会津若松支社 柳沼郁(やぎぬまかおる)記者(東京新聞)

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 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から二年ほど過ぎたころから、取材の際に控えるようになった質問がある。「町に戻りたいですか?」

 「戻りたいけど、戻れないんだよ。ばかなことを聞くな」。会津若松市の仮設住宅に暮らす大熊町の男性から罵声に近い言葉を浴びせられた。
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この記事を読んで、福島民報のあまりの「情勢判断力のなさ」に驚き、呆れた。そりゃ誰だって戻りたいと言うに決まっている。事故直後ならいざ知らず、2年も経てばどこが戻れ、どこが戻れないかの判断くらいできて当然だ。その上で、住民が戻れそうもない地域に関しては、戻れない住民に何ができるか考え、提言をしていくのも県域紙の役目だろう。

汚染水は漏れ続け、相双地方の深刻な放射能汚染という現実を前に、半世紀にわたって原発を推進してきた自民党でさえ帰還困難区域については移住者に対する補償などの策を打ち出してきている。今や、福島県内に帰還できない地域があるという事実を認められないでいるのは福島民報の他は佐藤雄平知事くらいのものであろう。

福島民報がこうした意識レベルに留まっているのは、「県民たるものは何があっても帰らなければならない」というばかげた先入観から脱却できていないからである。1月6日付けの当ブログ記事で明らかにしたように、福島民報は経営陣が誰も自社の株式を持たず、事実上、県の孫会社としての地位に甘んじている。実質的な「福島県営新聞」状態であることに疑問を抱くこともなく、町内会の回覧板レベルの記事を、ろくに取材もせず書き散らかしているからこのような事態を招くのだ。

ところで、2011年秋頃からいわき市で始まった「エートスプロジェクト」なる取り組みがある。汚染地に留まる住民のための放射能防護活動という、一見「親切」を装いながら汚染地の地域共同体の中に住民を絡め取り、避難を困難にさせていくための取り組みである。ICRP(国際放射線防護委員会)第4委員会委員長ジャック・ロシャール氏を中心とした取り組みで、ロシャール氏はかつて、ベラルーシでのエートスプロジェクトにも関わった。

ロシャール委員が主筆となって執筆、エートスプロジェクトの「手引」として使われているICRP勧告111号「原子力事故又は放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」は、「(人々は)事故の影響を受けた範囲から退去することを特に望まない場合が多い」「その場所でできるだけ通常通り生活を営みたいと考える」(序文)などと、避難しないことがあたかも自発的な住民自身の意思であるかのように描き出している。彼らは放射能汚染地の村落共同体に「対話集会」などと称して入り込み、汚染地でも楽しく生活していく方法を提示、住民が自発的に避難せず、汚染地に残る判断をするよう巧みに仕向けていくのだ。

福島民報は表向きエートスの名前こそ出していないが、2012年11月11日付けの同紙記事では、伊達市で行われたICRP主催の対話集会に早川正也・同紙報道部長みずからが出席したことを報じている。福島民報がいかに取り繕おうとも、同紙における報道部門の最高責任者である報道部長みずから対話集会に参加することは、福島民報としてエートスを支援し加担すると表明したことになる。

批判ついでに、せっかくだから福島民報社の「古傷」をもうひとつ、当ブログがえぐり出してやろう。



この画像は、一般社団法人「日本原子力産業協会」に加盟している会員企業リストの一部抜粋である。同協会サイト内にある会員名簿コーナーから見ることができる。現在、ここに福島民報社の名前はないが、当ブログ管理人が検索した2012年7月30日の時点では福島民報社の名前があった(上の画像)。メディアでありながら、原子力ムラに魂を売り飛ばした福島民報の哀れな姿を見ることができる。「福島県営新聞」として県に経営を握られ、「日本原子力産業協会」に加盟することで原子力ムラにも魂を売り渡した後の福島民報に、メディアとしていったい何が残るのだろうか。

その上、冒頭の東京新聞に寄せた柳沼郁記者の署名記事の結びにはこうある。「『戻りたいけど、戻れないんだよ』。大熊町の男性の言葉を思い出すたびに、地元紙の記者として何ができるのか自問自答を繰り返している」。

事故からまもなく3年にもなろうというのに、まだ「自問自答」の段階とは呆れかえった。福島民報が県民の立場に立ち、隠蔽・ごまかしばかりの県や原子力ムラと闘えるようになるまでに、いったいあと何百年かかるだろうか。

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