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核のごみ地層処分問題シンポジウムに参加、原子力ムラを答弁不能に追い込む

2015-10-10 14:22:04 | 原発問題/一般
核のごみ地層処分反対 札幌でシンポ 会場の5人、国を批判(北海道新聞)

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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分地選定に向けて、国と原子力発電環境整備機構(NUMO)は9日、シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分」を札幌市内で開いた。地下300メートルより深くに核のごみを埋める「地層処分」への理解を深める狙いだったが、参加者からは処分の安全性への疑問や原発再稼働を進める国への批判の声が相次いだ。

 前半は地層処分を推進する立場の4人がパネル討論を行った。原子力安全研究協会処分システム安全研究所の杤山修(とちやまおさむ)技術顧問は「火山や活断層などは限られた場所にしかなく、地層処分に適した場所は国内に十分存在する」と強調。NUMOの梅木博之理事は「処分地は慎重な調査を経て選定するので、安全性は確保できる」と説明した。

 後半は会場から道民5人が発言。「原発も『安全性を確かめた』と言いながら失敗した」「これ以上核のごみを増やさないために再稼働をやめてほしい」などと全員が地層処分や原発再稼働に反対の立場で意見を述べた。これに対し、資源エネルギー庁は「地層処分は現時点で最適の方法」「再稼働は必要」と答え、議論は平行線をたどった。

 国とNUMOによる札幌でのシンポは6月に続いての開催。約180人が参加した。
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このシンポジウムに当ブログ管理人も参加、質疑応答でエネ庁・NUMOを厳しく追及した。北海道新聞の記事にある「道民5人」のうちのひとりが当ブログ管理人だ。

このシンポは、経産省・資源エネ庁・NUMOが全国9都市で連続開催しているものだ。今年6月にも全国各地で連続開催したが、この際、市民からの強い批判を受けている。このため国は、10月を「国民対話月間」に定め、地層処分の方針について、市民に「理解を求める」ことを目的としてこのシンポを開催しているが、実際には国が一方的に「説明」するだけのものだ。

原発から出る高レベル放射性廃棄物について、国(経産省・エネ庁・NUMO)は青森県六ヶ所村で実験を行っている「再処理」(使用済み核燃料からウラン・プルトニウムだけを取り出して燃料として再利用)を行った後、残る放射性ごみだけを深さ300mの深地層に埋設して投棄する「地層処分」を方針としており、北海道幌延町にそのための研究施設「深地層研究所」がある。NUMOは地層処分の適地選定のため2000年に設立された特殊法人で、3.11以前から、適地選定のためのボーリング調査に立候補するだけで地元に20億円の交付金が下りることから、「税金の無駄遣い」として強い批判にさらされてきた。

「20億なんてたかが知れてる」斑目春樹・原子力安全委員長(事故当時)の2005年の発言


地層処分のための候補地としては、2007年1月に、全国で唯一、高知県東洋町が立候補したものの、住民などの強い反対運動で同年4月には撤回されており、現在、候補地となっている場所はない。こうした処分地選定の行き詰まりを受けて、福島原発事故前の2010年9月、内閣府原子力委員会が高レベル放射性廃棄物の処分方法や処分地選定のあり方について日本学術会議に諮問している。

日本学術会議は、これに対し、福島原発事故後の2012年9月に「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題する回答を発表。地震国・火山国である日本の現状から、数万年~10万年単位で安定した深地層を見つけることは難しく、埋設後の廃棄物の取り出し~埋め戻しができない地層処分は不適当であるとして、(1)地上に暫定保管施設を建設し、高レベル放射性廃棄物の無害化技術が確立するまでの間、暫定的にその管理を行う「暫定保管」への処分方法見直し(地層処分計画の中止)、(2)高レベル放射性廃棄物が現在以上に増えないようにし、その総量を確定した上で処分方法の議論を始めること(「総量管理」の導入)――を原子力委員会に要求している。原発は、通常運転時であっても運転すれば高レベル放射性廃棄物を生み出し続けることから、(2)は事実上、原発再稼働をやめるよう求めるものであり、福島原発事故後の原発廃炉を求める民意に沿う、思い切った提言として話題を集めた。

福島原発事故直後、民主党政権下で内閣官房参与に任命された田坂広志氏(現・多摩大学大学院教授)はもともと原発推進派であったが、(1)高レベル放射性廃棄物の処分方法が確立せず、処分地の選定も進んでいないこと、(2)六ヶ所村での再処理が事実上行き詰まっていること(当初計画では1997年に再処理が始まることになっていたが、すでに20回延期され、現在は「2016年3月開始予定」。21回目の延期となることは確実な情勢)、(3)全国の原発の使用済み核燃料プールが未処分の核燃料で一杯になりつつあること――を理由に、再稼働が実現したとしても「日本の原発は平均で6年後には停止に追い込まれる」として再稼働に反対している(「安倍新政権に立ちはだかる「核廃棄物」の壁」田坂広志、「日経ビジネス」2013年1月18日付記事)。このように、核のごみ問題は、推進派の学者も破たんを認めざるを得ない状況に追い込まれている。今回のシンポジウムが開催された背景には、こうした国、推進派の焦りがある。

シンポジウムでは、原発推進派3名が登壇、3.11前から変わらない初めに結論ありきの無内容な討議を繰り返したあと、質疑応答に移った。15時終了予定を反対派の力で30分延長に追い込み、会場から挙手した参加者の中から、当ブログ管理人含む5名が指名された。3.11前から「初めに結論ありき」「対話という名の洗脳」「困ったら最後はカネ」で解決してきた原子力ムラとの間で、初めからまともな議論ができるとは期待していない。「技術論、各論には立ち入らず、彼らの原子力行政の推進手法そのものを問う」「原子力ムラに打撃を与え、必ず叩き潰す」という強い決意で質疑応答に臨んだ。

当ブログは、「2012年9月の日本学術会議の提言にある暫定保管について、配付資料では簡単に触れている程度だが、NUMO内部できちんと議論、検討したのか」「当時、学術会議の回答を受け取った近藤駿介内閣府原子力委員長(当時)が現在、NUMO理事長に就任している。初めに地層処分ありきで事業を進めているNUMO理事長に近藤氏が就任しているのを見ると、関係者がこの問題にまじめに取り組む気があるようには全く見えない。なぜこのような人事をしたのか」と追及した。

他の4人の反対派市民との間で、技術論では様々な屁理屈を繰り返し、よどみない答弁を繰り返していたパネリストの顔色が変わった。

近藤理事長の人事に関する質問は、当ブログとして「(このような人事を行うことは)NUMOとして、学術会議の提言を無視するという意思表示と理解してよいか」という意味を含んでのものだった。パネリストのひとり、梅木博之NUMO理事は、この意図を正しく読み取ったらしく、何かゴニョゴニョと繰り返していたが、全く聞き取れない小さな声になった。会場から「声が小さくて聞こえないんだよ!」とヤジが飛ぶと、梅木理事は絞り出すような声で「学術会議の提言については・・・検討は致しました。この提言は、地層処分をやめよという意味ではありませんし、拙速に地層処分ありきで(処分方法の決定を)進めることのないように、という私たちに対する戒めであると理解しております」と回答するのが精一杯。事実上「答弁不能」に追い込んだ。

この人事については、司会の松本真由美氏(東大教養学部客員准教授)も「多田さんに答えられるかどうかわかりませんが・・・お願いします」と、明らかに動揺を隠せなかった。指名を受け、苦虫を噛みつぶしたような表情の多田明弘資源エネルギー庁電力・ガス事業部長が「近藤氏は能力に加え、原子力問題の高い識見も有し、放射性廃棄物の地層処理に道筋をつけるのに最適な人物と考えており、ご批判は当たらないと考えます」という、木で鼻をくくったような「官僚式答弁」で答えた。国会審議での政府答弁によくある官僚原稿棒読み型の回答だった。

短い時間だったが当ブログ管理人の質疑は成功に終わったといえる。日本学術会議からの提言を「地層処分推進派」がかなり気にしていること、この提言が「核のごみ」問題を扱う彼らにとってのアキレス腱になっていることを確認できた。

そればかりでなく、原子力ムラが、国が公式に認めた科学者団体である学術会議の提言さえも無視して、安全性に疑問のある地層処分を強引に推進しようとしている事実を、テレビカメラの入る中で明らかにした。近藤理事長の人事に関しても、多田部長の「官僚答弁」によって、会場参加者に「福島事故後も無反省で傲慢な原子力ムラ」を印象づけ、彼らに打撃を与えることができた。

この模様は、後日、地層処分シンポジウムのホームページで動画配信される。

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