米大統領選は、共和党ドナルド・トランプ候補が民主党カマラ・ハリス候補に勝利した。開票が始まった11月6日(日本時間)のうちに結果が決まる圧勝だった。元大統領の返り咲きは132年ぶりという。
私には、この大統領選はトランプ候補の勝利というよりは、民主党バイデン政権とハリス候補の「自滅」だとの思いが強い。ハリス候補の演説や言動には中身がなく、共和党やトランプ候補への批判ばかりで、米国をどうしていきたいかのスタンスが最後まで見えなかった。
何よりも、ウクライナ、ガザの2つの戦争を終わらせる気がないどころか、無抵抗の市民を一方的に虐殺し続けるイスラエル・ネタニヤフ政権にべったりで、パレスチナ・アラブ系有権者・党員から厳しい批判を受けていたにもかかわらず、イスラエル支持の姿勢を変えなかったことは犯罪と言っていい。普段からマルクス主義者を自認している私ですら、「私が大統領に返り咲いたら、ウクライナ戦争を1週間で終わらせる」と言っているだけ、トランプ候補のほうがマシだと思うほど、ハリス候補の2つの戦争への無自覚ぶりは酷すぎたからだ。
途中までバイデン大統領が再選するつもりで予備選が終わった後、高齢批判を受けてバイデン氏が選挙戦から撤退するという経緯もあった。予備選を経ないまま大統領選に臨むことになったハリス候補を、民主党員たちが本気で応援したいと思っていたかも、最後までわからないままだった。
そんな中、米民主党内でも最左派党員集団、DSA(米国民主主義的社会主義者)に所属するバーニー・サンダース上院議員が、大統領選敗北を受けて出した声明を入手した。知人が機械翻訳(Deeple)にかけたものに若干の補整を加えたものだ。事態の本質をよく表した声明なので、全文をご紹介する。(関連記事:「労働者階級を見捨てた民主党」 サンダース氏が批判、党内に波紋(2024.11.8「毎日新聞」)
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2024年大統領選挙の結果に関するサンダースの声明
労働者階級の人びとを見捨てた民主党が労働者階級から見捨てられたことに気づくのは、さほど驚くべきことではない。最初は白人労働者階級が離れ、今やラテン系や黒人の労働者が続く。民主党指導部が現状維持に努める一方で、アメリカ国民は怒り、変化を求めている。そして彼らは正しい。
今日、超富裕層が驚くほど裕福である一方、アメリカ人の60%は給料日前に生活費が尽きる暮らしを送り、所得と富の不平等はかつてなく拡大している。信じられないことだが、平均的なアメリカ人労働者のインフレを考慮した実質週給は、実のところ50年前よりも今の方が低い。
今日、テクノロジーと労働者の生産性が爆発的に向上しているにもかかわらず、多くの若者の生活水準は両親よりも悪くなっている。そして彼らの多くは、AI(人工知能)とロボット工学によって悪い状況がさらに悪化するのではないかと心配する。
今日、他の国々よりもはるかに多くの資金を一人当たり支出しているにもかかわらず、わが国は今もすべての人に医療を人権として保障していない唯一の富裕国であり、処方薬の価格は群を抜いて世界最高だ。主要国の中でわが国だけが有給の家族休暇や病気休暇さえ保証できずにいる。
今日、大多数のアメリカ人の強い反対にもかかわらず、わが国は極右ネタニヤフ政権によるパレスチナの人びとに対する全面戦争に何十億ドルもの資金を提供し続け、何千人もの子どもたちの大規模な栄養失調や飢餓という恐るべき人道的災害を引き起こしている。
民主党を牛耳る大金持ちや高給取りのコンサルタントたちは、この悲惨な選挙戦から何か真の教訓を学ぶだろうか? 彼らは何千万人ものアメリカ人が経験している苦痛と政治的疎外感を理解するだろうか? 彼らは、莫大な経済力と政治力を持ちますます強力になるオリガルヒ(寡頭政治)にわれわれがどう対抗できるかについて何かアイデアを持っているだろうか? おそらくノーだろう。
今後数週間から数か月の間に、草の根民主主義と経済的正義に関心を持つわれわれは、きわめて真剣な政治的議論をする必要がある。引き続き注目を。