パリ在住の日本人・飛幡祐規(たかはたゆうき)さんによるレイバーネットの名物連載「パリの窓から」で、フランス総選挙が取り上げられています。左翼「新人民戦線」が第1勢力に躍り出るという予想だにしなかった結果について、現地の目でレポート。
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飛幡祐規 パリの窓から:フランスの総選挙:予測を覆した「新人民戦線」の勝利(レイバーネット日本)
7月7日の夜、フランス各地で歓声が上がった。総選挙の決選投票の結果、すべてのメディアと世論調査の予測を覆し、左派連合の新人民戦線NFPが1位(議席数)を獲得したのだ。マクロン与党連合が2位、第1回投票で得票率1位になった国民連合RN(と保守共和党一部の共闘)は3位にとどまり、極右による政権掌握は免れた。「極右を通すな」と奮起した左派の市民の呼びかけと行動が実を結び、フランス民主主義の一大危機はしばらくのあいだ遠ざかったのだ。50年生きたフランスで最も嬉しくほっとした瞬間だった。
577議席のうち新人民戦線は182、マクロン与党は163、極右は143、その他に保守共和党、少数派候補がいるので、最終的な力関係はまだ定かでない。前回2022年の国会でもマクロン与党は過半数をとれなかったが、今回はさらに大幅に後退し、三つの陣営のうち左派と極右が議席を伸ばした。この状況でどのような政府を組織できるのか、現時点ではわからない。
極右を阻んだ市民
投票率は67%で近年では記録的に高い。第五共和政下(1958年以来)の最初の30年間、フランスの国民議会選挙の投票率は7〜8割に及ぶほどフランス人は政治的国民と言われてきたのだが、1980年代の末から棄権が増え続け、マクロン大統領が当選した2017年以降はなんと過半数が棄権するようになっていた。棄権の増加は、ネオリベラル経済政策が進行した時期と重なる現象である点に注目したい。左翼が保守とほとんど変わらないネオリベ政策を行うと、「右も左も変わらない、暮らしは悪くなった」「政治(家)に期待しても無駄」という政治不信と諦めが、庶民階層(労働者や低所得従業員、失業者の層)に広がるのだろう。ところが、今回の電撃総選挙の第1回投票で2割近くも投票率が増えたのには、何か変えたい(マクロン政治への拒否、制裁)という国民の意思が表されている。マクロン与党の大幅な後退は、6月9日の欧州議会選挙でも示されていた(投票率は51,5%だが近年では高い)。
501議席がたたかわれた決選投票も高い投票率だった。左派の市民は「極右を通すな」と呼びかけ、集会を催し、これまで政治活動をしたことがなかった人たち(とりわけ若い層)が大勢、ビラ配りや戸別訪問など選挙キャンペーンに参加した(前回のコラム参照)。また、マクロン与党陣営でも、極右を脅威だと考える人たちは投票所に出向いた。前回述べたように、極右に対抗するために、国民連合が1位になった選挙区で、次点ではなく3位になった新人民戦線の候補は(決選投票を闘う権利はあるが)候補を取り下げた(全部で132人)。マクロン陣営では「極右と極左の双方を拒む」という立場から退くのを拒んだ候補もいたため、取り下げたのは82人だった。三候補者による選挙区が89に減り、二候補一騎打ちが409選挙区に増えた状況で、この戦術のおかげで極右の議席の大幅な増加が抑えられた。同時に、マクロン陣営も左派の取り下げのおかげで、多くの議席を確保できたのである(それがなければ50議席以下だったと推算されている)。
選挙後の世論調査によると、新人民戦線の支持者は極右を阻むために、支持しないマクロン陣営の候補に72%が投票した(極右には3%)。それに対し、マクロン陣営支持者は候補者が「服従しないフランスLFI」以外のNFP候補の場合は54%(極右に15%)、LFIの候補には43%(極右に19%)が投票し、極右を阻もうという意識がより低いことがわかる。保守の共和党支持者ではさらに低く、LFI以外のNFP候補に29%(極右に34%)、LFIの候補者には26%(極右に38%)だった。つまり、左派の市民は極右を堰きとめる役割をかなり忠実に果たしたが、マクロン陣営では15〜19%が極右を選び、その割合は保守では3分の1を超え、左派より極右を選ぶ人が優勢だった。
それにもかかわらず、マクロン陣営やメディアは早速、新人民戦線は過半数を取ったわけではないから政府を任せるわけにはいかないというシナリオを展開している。NFPの右派(社会党内など)の人を引き抜き、共和党からも少し引き抜いて、マクロン陣営中心の「大連立」政府をつくるアイデアだ。ドイツなど他のヨーロッパの国では、互いに相容れない政党も含む複数の党で連立政府をつくることがあるが、フランスの第五共和政でその例はない。欧米の主要メディアは、フランスの政治状況は今後不安定さが続くだろうと推測している。一方、新人民戦線は選挙で1位になったから政権に就くのが当然だと主張。短期、中期、長期に分けて支出とその融資方法も考えた政策プログラムがあるから、すぐに政府をつくれると指摘する。選挙の翌日の7月8日、アタル首相は辞任を提出したが、マクロンは次の政府が成立するまで現政府を続行することに決めた。
極右の浸透を招いたメディア
この歴史的な選挙に居合わせて、極右勢力の増長に主要メディア(とりわけ極右の億万長者ボロレが所有する24時間テレビ、ラジオ、新聞・雑誌)と世論調査がいかに寄与したかを痛感した。ジャン=マリー・ルペン(マリーヌの父)が1972年に創始した「国民戦線FN」(2018年から「国民連合RN」に変名)が唱える排外主義と差別思想(すべての悪は移民・外国人のせい)は、1980年代半ばからしだいに社会に浸透していった。マリーヌ・ルペンが大統領選に出馬した2012年以降は、彼女が父親ほど極端な言い方をしなくなったからと、多くのメディアはこの極右政党(ナチスとヴィシー政権協力者を創立メンバーに含み、国務院も「極右」と認定している)をしだいに普通の政党のように扱うようになった。
なかでも、ボロレが所有する24時間テレビCNews, C8などでは反移民・反イスラムの差別的発言を頻発するジャーナリストのゼムール(後に政党を作って2022年の大統領選に出馬)をはじめ、多くのコメンテーターが反移民の差別的言説を四六時中述べるようになった。とりわけ2015年のイスラム過激派による連続テロ以降は、移民が多い地区でイスラム原理主義の影響が増大しているという「やらせ」ルポなども作られ、国内のイスラム教徒を原理主義者やテロリストと混同して疑い、移民系フランス人を敵視する論調が主要メディアにも広がった。オランド社会党政権とマクロン政権はこの風潮に呑まれたかのように、たとえば移民系の若者たちが頻繁に受ける警察の不当な暴力に対して公平に対処せず、マクロンは差別的な治安法と移民法まで可決させた。
国民連合を支持する人に話を聞くと、「テレビで見た、聞いた」と言う。そしてRNの政策内容は知らず(難民・移民への援助金をやめ、追い出すこと以外は)、時には候補者が誰かも知らないが、彼らに投票すれば「変わる」と言う。RNが国会で最低賃金の引き上げに反対票を投じたと指摘しても、「外国人や働かない人を援助しなければ暮らしはよくなる」と思っている。経済学者のステファノ・パロンバリーニによれば、フランスでもここ40年来、ネオリベラル思想が支配的になったため、労働者層の人にも社会の進歩(公平なより良い社会)を信じず、「企業(会社)」は階級闘争の場ではなく競争力が重要だと思う人が増えた。彼らに向けて極右は庶民層を分断し、「フランス人のあなたを安全に守ってあげる、移民・難民、イスラム教徒への援助をやめればあなたの税金を減らせる」と語りかけるのだとパロンバリーニ言う。そして、この間違った論理を受け入れる人には差別意識があると指摘する。フランス社会に構造的なレイシズムは昔からあったが、かつては人前で差別発言をすることは憚れた。近年の現象は、ボロレ所有のテレビなどで平気で言う人が増えたので、開き直るようになったことだと。
極右は欧州議会選挙以来、ブルジョワ陣営にも支持者を獲得した。マクロンの政治のやり方がひどくて人気を失い、弱体化したのを感じたブルジョワ陣営にとって、ネオリベラル政策との決別を掲げる左派(新人民戦線とくに服従しないフランス)は増税をもたらすから危険なため、ネオリベ政策にもEUにも反対しなくなった極右に投票する人が出てきたのだ。
国民連合(共闘した共和党含む)は今回の選挙で55議席も増やしたが、577人の候補者のうちレイシズム、LGBT差別発言、暴力、陰謀説などの問題がある人が100人以上もいることが、極右取材専門のジャーナリストたちと市民の協力によって判明した(多くは落選)。これまでも差別発言をしたRNの議員がいたが、メディアはそれを特に重大な問題としては報道しなかった。その一方、服従しないフランスのメランションや議員、候補についての事実無根の中傷やデマ(反ユダヤ主義、テロリズム誘発、プーチン支持など)を多くの政治家やジャーナリストが検証せずに語り、訂正もされない。これまで2件、メランションに対する暗殺計画が未遂に終わり、極右の首謀者2人は9年と18年の有罪になったが、それも大きなニュースにはならなかった。現在もLFIの議員複数が極右から脅迫を受け続けている。極右の暴力や差別主義を大目にみる一方で、「ネオリベラル政策との決別」を掲げる左派勢力を不当に悪く言い続ける状況は、民主主義にとってとても危ういものに感じられる。
新国会は7月9日に開催されたが、マクロンは新人民戦線の勝利をいまだ認めず、この陣営から首相を選ぶことを拒否している。市民が発揮しためざましい民主主義のほとばしりが踏みにじられずに、新人民戦線政府が誕生することを願う。
・コラム第91回 欧州議会選挙での極右の勝利とフランスの「新人民戦線」
・コラム第92回 フランスの総選挙前夜:極右による権力掌握の危機に対抗する「新人民戦線」の希望
・コラム第93回 フランスの総選挙決選投票前夜:極右、新人民戦線、マクロン陣営
服従しないフランスの政策プログラムの日本語訳『共同の未来 <民衆連合>のためのプログラム』がもうすぐ出版されます。
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飛幡祐規 パリの窓から:フランスの総選挙:予測を覆した「新人民戦線」の勝利(レイバーネット日本)
7月7日の夜、フランス各地で歓声が上がった。総選挙の決選投票の結果、すべてのメディアと世論調査の予測を覆し、左派連合の新人民戦線NFPが1位(議席数)を獲得したのだ。マクロン与党連合が2位、第1回投票で得票率1位になった国民連合RN(と保守共和党一部の共闘)は3位にとどまり、極右による政権掌握は免れた。「極右を通すな」と奮起した左派の市民の呼びかけと行動が実を結び、フランス民主主義の一大危機はしばらくのあいだ遠ざかったのだ。50年生きたフランスで最も嬉しくほっとした瞬間だった。
577議席のうち新人民戦線は182、マクロン与党は163、極右は143、その他に保守共和党、少数派候補がいるので、最終的な力関係はまだ定かでない。前回2022年の国会でもマクロン与党は過半数をとれなかったが、今回はさらに大幅に後退し、三つの陣営のうち左派と極右が議席を伸ばした。この状況でどのような政府を組織できるのか、現時点ではわからない。
極右を阻んだ市民
投票率は67%で近年では記録的に高い。第五共和政下(1958年以来)の最初の30年間、フランスの国民議会選挙の投票率は7〜8割に及ぶほどフランス人は政治的国民と言われてきたのだが、1980年代の末から棄権が増え続け、マクロン大統領が当選した2017年以降はなんと過半数が棄権するようになっていた。棄権の増加は、ネオリベラル経済政策が進行した時期と重なる現象である点に注目したい。左翼が保守とほとんど変わらないネオリベ政策を行うと、「右も左も変わらない、暮らしは悪くなった」「政治(家)に期待しても無駄」という政治不信と諦めが、庶民階層(労働者や低所得従業員、失業者の層)に広がるのだろう。ところが、今回の電撃総選挙の第1回投票で2割近くも投票率が増えたのには、何か変えたい(マクロン政治への拒否、制裁)という国民の意思が表されている。マクロン与党の大幅な後退は、6月9日の欧州議会選挙でも示されていた(投票率は51,5%だが近年では高い)。
501議席がたたかわれた決選投票も高い投票率だった。左派の市民は「極右を通すな」と呼びかけ、集会を催し、これまで政治活動をしたことがなかった人たち(とりわけ若い層)が大勢、ビラ配りや戸別訪問など選挙キャンペーンに参加した(前回のコラム参照)。また、マクロン与党陣営でも、極右を脅威だと考える人たちは投票所に出向いた。前回述べたように、極右に対抗するために、国民連合が1位になった選挙区で、次点ではなく3位になった新人民戦線の候補は(決選投票を闘う権利はあるが)候補を取り下げた(全部で132人)。マクロン陣営では「極右と極左の双方を拒む」という立場から退くのを拒んだ候補もいたため、取り下げたのは82人だった。三候補者による選挙区が89に減り、二候補一騎打ちが409選挙区に増えた状況で、この戦術のおかげで極右の議席の大幅な増加が抑えられた。同時に、マクロン陣営も左派の取り下げのおかげで、多くの議席を確保できたのである(それがなければ50議席以下だったと推算されている)。
選挙後の世論調査によると、新人民戦線の支持者は極右を阻むために、支持しないマクロン陣営の候補に72%が投票した(極右には3%)。それに対し、マクロン陣営支持者は候補者が「服従しないフランスLFI」以外のNFP候補の場合は54%(極右に15%)、LFIの候補には43%(極右に19%)が投票し、極右を阻もうという意識がより低いことがわかる。保守の共和党支持者ではさらに低く、LFI以外のNFP候補に29%(極右に34%)、LFIの候補者には26%(極右に38%)だった。つまり、左派の市民は極右を堰きとめる役割をかなり忠実に果たしたが、マクロン陣営では15〜19%が極右を選び、その割合は保守では3分の1を超え、左派より極右を選ぶ人が優勢だった。
それにもかかわらず、マクロン陣営やメディアは早速、新人民戦線は過半数を取ったわけではないから政府を任せるわけにはいかないというシナリオを展開している。NFPの右派(社会党内など)の人を引き抜き、共和党からも少し引き抜いて、マクロン陣営中心の「大連立」政府をつくるアイデアだ。ドイツなど他のヨーロッパの国では、互いに相容れない政党も含む複数の党で連立政府をつくることがあるが、フランスの第五共和政でその例はない。欧米の主要メディアは、フランスの政治状況は今後不安定さが続くだろうと推測している。一方、新人民戦線は選挙で1位になったから政権に就くのが当然だと主張。短期、中期、長期に分けて支出とその融資方法も考えた政策プログラムがあるから、すぐに政府をつくれると指摘する。選挙の翌日の7月8日、アタル首相は辞任を提出したが、マクロンは次の政府が成立するまで現政府を続行することに決めた。
極右の浸透を招いたメディア
この歴史的な選挙に居合わせて、極右勢力の増長に主要メディア(とりわけ極右の億万長者ボロレが所有する24時間テレビ、ラジオ、新聞・雑誌)と世論調査がいかに寄与したかを痛感した。ジャン=マリー・ルペン(マリーヌの父)が1972年に創始した「国民戦線FN」(2018年から「国民連合RN」に変名)が唱える排外主義と差別思想(すべての悪は移民・外国人のせい)は、1980年代半ばからしだいに社会に浸透していった。マリーヌ・ルペンが大統領選に出馬した2012年以降は、彼女が父親ほど極端な言い方をしなくなったからと、多くのメディアはこの極右政党(ナチスとヴィシー政権協力者を創立メンバーに含み、国務院も「極右」と認定している)をしだいに普通の政党のように扱うようになった。
なかでも、ボロレが所有する24時間テレビCNews, C8などでは反移民・反イスラムの差別的発言を頻発するジャーナリストのゼムール(後に政党を作って2022年の大統領選に出馬)をはじめ、多くのコメンテーターが反移民の差別的言説を四六時中述べるようになった。とりわけ2015年のイスラム過激派による連続テロ以降は、移民が多い地区でイスラム原理主義の影響が増大しているという「やらせ」ルポなども作られ、国内のイスラム教徒を原理主義者やテロリストと混同して疑い、移民系フランス人を敵視する論調が主要メディアにも広がった。オランド社会党政権とマクロン政権はこの風潮に呑まれたかのように、たとえば移民系の若者たちが頻繁に受ける警察の不当な暴力に対して公平に対処せず、マクロンは差別的な治安法と移民法まで可決させた。
国民連合を支持する人に話を聞くと、「テレビで見た、聞いた」と言う。そしてRNの政策内容は知らず(難民・移民への援助金をやめ、追い出すこと以外は)、時には候補者が誰かも知らないが、彼らに投票すれば「変わる」と言う。RNが国会で最低賃金の引き上げに反対票を投じたと指摘しても、「外国人や働かない人を援助しなければ暮らしはよくなる」と思っている。経済学者のステファノ・パロンバリーニによれば、フランスでもここ40年来、ネオリベラル思想が支配的になったため、労働者層の人にも社会の進歩(公平なより良い社会)を信じず、「企業(会社)」は階級闘争の場ではなく競争力が重要だと思う人が増えた。彼らに向けて極右は庶民層を分断し、「フランス人のあなたを安全に守ってあげる、移民・難民、イスラム教徒への援助をやめればあなたの税金を減らせる」と語りかけるのだとパロンバリーニ言う。そして、この間違った論理を受け入れる人には差別意識があると指摘する。フランス社会に構造的なレイシズムは昔からあったが、かつては人前で差別発言をすることは憚れた。近年の現象は、ボロレ所有のテレビなどで平気で言う人が増えたので、開き直るようになったことだと。
極右は欧州議会選挙以来、ブルジョワ陣営にも支持者を獲得した。マクロンの政治のやり方がひどくて人気を失い、弱体化したのを感じたブルジョワ陣営にとって、ネオリベラル政策との決別を掲げる左派(新人民戦線とくに服従しないフランス)は増税をもたらすから危険なため、ネオリベ政策にもEUにも反対しなくなった極右に投票する人が出てきたのだ。
国民連合(共闘した共和党含む)は今回の選挙で55議席も増やしたが、577人の候補者のうちレイシズム、LGBT差別発言、暴力、陰謀説などの問題がある人が100人以上もいることが、極右取材専門のジャーナリストたちと市民の協力によって判明した(多くは落選)。これまでも差別発言をしたRNの議員がいたが、メディアはそれを特に重大な問題としては報道しなかった。その一方、服従しないフランスのメランションや議員、候補についての事実無根の中傷やデマ(反ユダヤ主義、テロリズム誘発、プーチン支持など)を多くの政治家やジャーナリストが検証せずに語り、訂正もされない。これまで2件、メランションに対する暗殺計画が未遂に終わり、極右の首謀者2人は9年と18年の有罪になったが、それも大きなニュースにはならなかった。現在もLFIの議員複数が極右から脅迫を受け続けている。極右の暴力や差別主義を大目にみる一方で、「ネオリベラル政策との決別」を掲げる左派勢力を不当に悪く言い続ける状況は、民主主義にとってとても危ういものに感じられる。
新国会は7月9日に開催されたが、マクロンは新人民戦線の勝利をいまだ認めず、この陣営から首相を選ぶことを拒否している。市民が発揮しためざましい民主主義のほとばしりが踏みにじられずに、新人民戦線政府が誕生することを願う。
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・コラム第92回 フランスの総選挙前夜:極右による権力掌握の危機に対抗する「新人民戦線」の希望
・コラム第93回 フランスの総選挙決選投票前夜:極右、新人民戦線、マクロン陣営
服従しないフランスの政策プログラムの日本語訳『共同の未来 <民衆連合>のためのプログラム』がもうすぐ出版されます。