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航空管制官、増員へ 安全問題研究会の問題提起実る

2024-06-25 21:03:13 | 鉄道・公共交通/安全問題
羽田空港衝突事故、再発防止策を正式公表 滑走路誤進入に警報音(毎日)

 東京・羽田空港で今年1月に日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故を巡り、国土交通省の対策検討委員会は24日、再発防止策の中間まとめを正式に公表した。滑走路への誤進入を知らせる警報音の導入や、管制官の増員など、ハードとソフトの両面から対策を進め、総合的に事故の防止を図る。

 航空安全の専門家らで作る検討委は中間まとめで、滑走路での衝突事故の多くは管制官やパイロットの思い込みや言い間違いなどに起因する誤進入によって起きていると指摘。ヒューマンエラー(人的ミス)が事故につながらないよう多重の対策を求めた。

 事故では1月2日夜、離陸のためC滑走路に進入した海保機に、着陸してきたJAL機が衝突。JALの乗員乗客は全員脱出したが、海保機では機長を除く5人が死亡した。

 海保機は管制の許可を得ず滑走路へ進んでいたが、管制官は気付かなかったとみられている。現在のシステムでは、管制官の手元のモニター画面に誤進入が表示されるが、検討委は警報音も追加するよう求めた。

 また、滑走路担当の管制官が監視業務に専念できるよう、主要空港には離着陸の調整を担当する管制官を新たに配置。管制官の中途採用を進め、欠員の解消を図る。

 航空機が離着陸する際に、滑走路へ入ろうとする別の機体に警告する「滑走路状態表示灯(RWSL)」についても、拡大する方針。現在は伊丹や羽田など5空港(代替設備を含む)で、滑走路を航空機が横切る場所を中心に整備しているが、今後は全国主要8空港へ広げる。

 一方、羽田の事故では、管制官が離陸順1番目であることを意味する「ナンバーワン」という言葉を伝え、海保機側が離陸許可を得たと勘違いした可能性が指摘されている。国交省は事故後、離陸順を伝えないようにしていたが、パイロット側から要望があるため、伝達の再開を検討する。

 国交省は運輸安全委員会による調査結果が出た後、最終まとめを出す方針。斉藤鉄夫国交相は24日、記者団に対し、岸田文雄首相から管制官増員などの対策を指示されたと明かし、「夏の繁忙期前までにしっかりとした体制を組みたい」と述べた。【原田啓之、安部志帆子】
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航空管制官の増員の可能性が出てきた。安全問題研究会がすでに徹底追及してきたとおり、国交省はこれまで航空機の発着回数が増えているにもかかわらず、一貫して航空管制官を減員してきた。それが事故の直接的原因ではないとしても、背景要因の1つであることは明らかだった。

特に、事故直後に相次いで掲載した記事「羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ」(当ブログ2024.1.5レイバーネット2024.1.8)及び、「【羽田衝突事故 続報】航空機数は右肩上がり、管制官数は右肩下がり 日本の空を危険にさらした国交省の責任を追及せよ」(当ブログ2024.1.8レイバーネット2024.1.9)には強烈な反応があった。

安全問題研究会がレイバーネットに記事を連載してから、一般メディアが遅れてこの問題を報道し始めた。東京上空の過密化を指摘した記事「羽田事故背景に「過密ダイヤ」指摘も 世界3位の発着1分に1・5機」を産経ニュースが配信したのは1月9日。管制官不足問題を伝える記事「羽田で5人死亡の航空機事故、国交労組「人手不足で安全保てない」...遠因の指摘も」を「弁護士JPニュース」が配信したのは1月18日。「「ミスに気づいても指摘する余裕ない」…羽田事故の再発危機!現役管制官が激白「人員不足でもう限界」」を「フライデー」が配信したのは2月29日。いずれも当ブログ・安全問題研究会のほうが圧倒的に早く、初期の報道合戦は内容、スピードともに当研究会の圧勝だった。羽田事故後、管制官問題を世界で最初に報じたのは当ブログ・安全問題研究会だという自負を今でも持っている。

この間、2月6日には、国交省職員で作る労働組合、国土交通労働組合が記者会見し、航空管制官増員を求める声明を発表するなどの動きもあった(参考:当ブログ2月7日記事)。

一方、国交省は、航空局に「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」を設置して対策案を検討してきたが、今回、5回にわたる審議の結果、中間とりまとめが公表された。(概要版本文)。

中間とりまとめでは、航空管制官増員の必要性について、以下の通り述べている(「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会中間取りまとめ」15ページより)。

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3.管制業務の実施体制の強化

 飛行場管制では、現在、航空機の離着陸等に関する管制指示等を管制官が発出することで、高密度な運航を実現しているが、今後、航空需要の増加により離着陸回数が更に増加すれば、ヒューマンエラーによる滑走路誤進入のリスクが増大することも考えられる。

 このため、管制業務の実施体制に関して、以下の対策を講じる必要がある。

(1)管制官の人的体制の強化・拡充

 飛行場管制担当は、外部監視、パイロット等との交信、システム操作・入力に加え、関係管制官との調整業務も行うなど、常にマルチタスクの状態にある。このため、飛行場管制担当の基本業務である外部監視等への更なる注力が可能となるよう、管制業務を詳細に分析し、管制官の業務分担を見直した上で、関係管制官との調整業務を専属で行う「離着陸調整担当」を、主要空港に新設することを検討すべきである。

 また、羽田空港等においては、これまでも発着容量の拡大等に合わせて、管制官の増員等の体制強化が行われてきている。しかし、近年、中途退職、育児休業等の増加により多数の欠員が発生しており、また、現在の管制官の人員では、将来的な航空需要の増大に対応しつつ、滑走路上の安全確保に必要な体制の維持・充実を図ることは困難と考えられる。そのため、管制官の人的体制を計画的に強化・拡充する必要性があることから、航空保安大学校の採用枠拡大や中途採用の促進などを通じて、欠員の解消と増員等に係る対策を可及的速やかに講じるべきである。
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増加する一方の航空機発着回数と業務量に対し、航空管制官の必要数が満たされていないことを、報告書が正式に認めた形だ。安全問題研究会の粘り強い問題提起が実を結んだと言える。この間、多くのご支援をいただいた皆さんに感謝するとともに、現場から声を上げた国土交通労働組合の闘いにも敬意を表する。

安全問題研究会としては、今後とも粘り強くこの問題を訴えるとともに、国交省がこの報告をきちんと実行するよう、引き続きしっかり監視していきたいと考えている。

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