羽田空港で1月2日に起きたJAL機と海上保安庁機の衝突事故を受け、国土交通省職員で作る「国土交通労働組合」が2月6日、航空管制官の増員を求める声明を発表しました。
以下、国土交通労働組合ホームページに掲載されている声明全文を転載します。同ホームページには、印刷用PDF版も掲載されています。
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2024年1月2日に発生した航空機同士の衝突事故を受けて (声明)
2024年1月2日に東京国際空港で発生した日本航空516便と海上保安庁機の衝突事故で犠牲になられた海上保安庁職員5名の方々とそのご遺族の方々に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故で負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
今回の事故を受けて、一部の報道各社やSNSにおいて、断片的な情報や憶測による事故原因を推測する記事が多々見受けられます。なかでも、責任の所在につながるような論調は、この事故に直接関わった航空管制官のみならず、全国で日々懸命に奮闘する航空管制官やパイロットなど、多くの航空従事者に心理的負担を強いるものであり、彼らの業務遂行に多大な影響を及ぼしかねないことを強く懸念しています。今回のような痛ましい事故を繰り返さないためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが重要なことから、事実にもとづく情報のみの発信を望みます。
国土交通省は、今回の事故を受けて、1月6日から羽田空港において、航空管制官による監視体制の強化として、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員を配置しました。同様のレーダーが設置されているほかの6空港(成田、中部、関西、大阪、福岡、那覇)においても順次配置するとしています。しかしながら、この人員は新規増員によらず、内部の役割分担の調整により捻出するとされており、国土交通労働組合は、航空管制官の疲労管理の側面から問題視しています。
政府は、2014年に「国家公務員の総人件費に関する基本方針」および「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を定めており、これにより、新規増員が厳しく査定されていることにくわえて、一律機械的な定員削減を各府省に求めた結果、航空管制の現場では、管制取扱機数が急増する一方で、航空管制官の人数は2,000人前後から増加しておらず、その結果、一人当たりの業務負担が著しく増加しています。そのため、国土交通労働組合は、かねてから、「安全体制強化のための飛行監視席」の新規要員を要求してきました。しかし、2018年度からごく一部で新規定員が認められたものの、真の安全を構築するには全く足りていません。そのような要員事情において、今回の一時的措置は、当面の間とはいえ、現場が益々疲弊することは想像に難くなく、早急に航空管制官の大幅な増員の実現を強く求めます。
くわえて、私たち国土交通労働組合は、2001年に発生した日本航空907便事故以降、「個人責任の追及を許さない」との立場で、強くとりくみをすすめてきました。航空事故は、その産業構造の複雑さから、明らかに犯罪性が認められるものを除き、様々な要因が重なった結果、発生に至る性質のものです。事故の再発防止のためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが、悲劇を繰り返さないための必要条件です。しかし、我が国においては、多くの諸外国と違って、事故の当事者個人に業務上過失の疑いがかけられ、司法による捜査を受けており、これはICAO Annex13(国際民間航空条約第13章)に抵触するものです。司法の捜査が介入することで、当事者が黙秘権を行使し、真実が闇に埋もれてしまえば、悲惨な事故が繰り返されかねません。
これらのことから、私たち、国土交通労働組合は、利用者のより高度な安全確保の体制を構築するためにも、共闘組織はもとより、国民のみなさまとともに、個人責任の追及を許さず、事故の真の原因究明と再発防止にむけたとりくみを今後よりいっそう、強化することを表明します。
2024年2月6日
国土交通労働組合 中央執行委員長
山﨑 正人
以下、国土交通労働組合ホームページに掲載されている声明全文を転載します。同ホームページには、印刷用PDF版も掲載されています。
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2024年1月2日に発生した航空機同士の衝突事故を受けて (声明)
2024年1月2日に東京国際空港で発生した日本航空516便と海上保安庁機の衝突事故で犠牲になられた海上保安庁職員5名の方々とそのご遺族の方々に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故で負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
今回の事故を受けて、一部の報道各社やSNSにおいて、断片的な情報や憶測による事故原因を推測する記事が多々見受けられます。なかでも、責任の所在につながるような論調は、この事故に直接関わった航空管制官のみならず、全国で日々懸命に奮闘する航空管制官やパイロットなど、多くの航空従事者に心理的負担を強いるものであり、彼らの業務遂行に多大な影響を及ぼしかねないことを強く懸念しています。今回のような痛ましい事故を繰り返さないためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが重要なことから、事実にもとづく情報のみの発信を望みます。
国土交通省は、今回の事故を受けて、1月6日から羽田空港において、航空管制官による監視体制の強化として、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員を配置しました。同様のレーダーが設置されているほかの6空港(成田、中部、関西、大阪、福岡、那覇)においても順次配置するとしています。しかしながら、この人員は新規増員によらず、内部の役割分担の調整により捻出するとされており、国土交通労働組合は、航空管制官の疲労管理の側面から問題視しています。
政府は、2014年に「国家公務員の総人件費に関する基本方針」および「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を定めており、これにより、新規増員が厳しく査定されていることにくわえて、一律機械的な定員削減を各府省に求めた結果、航空管制の現場では、管制取扱機数が急増する一方で、航空管制官の人数は2,000人前後から増加しておらず、その結果、一人当たりの業務負担が著しく増加しています。そのため、国土交通労働組合は、かねてから、「安全体制強化のための飛行監視席」の新規要員を要求してきました。しかし、2018年度からごく一部で新規定員が認められたものの、真の安全を構築するには全く足りていません。そのような要員事情において、今回の一時的措置は、当面の間とはいえ、現場が益々疲弊することは想像に難くなく、早急に航空管制官の大幅な増員の実現を強く求めます。
くわえて、私たち国土交通労働組合は、2001年に発生した日本航空907便事故以降、「個人責任の追及を許さない」との立場で、強くとりくみをすすめてきました。航空事故は、その産業構造の複雑さから、明らかに犯罪性が認められるものを除き、様々な要因が重なった結果、発生に至る性質のものです。事故の再発防止のためには、すべての真実を明らかにすることで、真の原因究明につなげることが、悲劇を繰り返さないための必要条件です。しかし、我が国においては、多くの諸外国と違って、事故の当事者個人に業務上過失の疑いがかけられ、司法による捜査を受けており、これはICAO Annex13(国際民間航空条約第13章)に抵触するものです。司法の捜査が介入することで、当事者が黙秘権を行使し、真実が闇に埋もれてしまえば、悲惨な事故が繰り返されかねません。
これらのことから、私たち、国土交通労働組合は、利用者のより高度な安全確保の体制を構築するためにも、共闘組織はもとより、国民のみなさまとともに、個人責任の追及を許さず、事故の真の原因究明と再発防止にむけたとりくみを今後よりいっそう、強化することを表明します。
2024年2月6日
国土交通労働組合 中央執行委員長
山﨑 正人