人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

JR宝塚線事故の負傷者が自殺

2008-10-04 23:35:10 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR宝塚線事故の負傷者が自殺(朝日新聞)

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 乗客106人が死亡し、562人が負傷した05年4月のJR宝塚線(福知山線)の脱線事故で、負傷した兵庫県宝塚市の男性(25)が2日朝、自宅で自殺した。JR西日本によると、事故の負傷者の自殺が確認されたのは初めて。

 関係者によると、男性は事故時、大学4年生。快速電車の4両目に乗って通学中、兵庫県尼崎市で事故に遭い、首をねんざするなどのけがを負った。事故後から精神的な不調も訴えるようになり、通院治療を続けていたという。2日午前5時半ごろ、自宅で首をつっているのを家族が見つけ、119番通報した。

 事故直後に男性の家族から相談を受けたという負傷者の一人によると、「外出もままならない状態だったと聞いていた。誰にも相談できず、孤立している負傷者は多いのではないか」と話す。

 JR西日本広報部は朝日新聞の取材に対し、「心の病で長く通院治療を続けておられ、家族や主治医と連絡を取りながら、治療費の負担やホームヘルパーの派遣など支援を続けていた。最近は体調も回復していたと聞いていただけに、突然のことで残念だ」としている。

 脱線事故を巡っては、事故死した別の男性(当時33)と10年余り同居していた32歳の女性が06年10月、大阪市の自宅マンションから飛び降り自殺している。女性はJR西日本から遺族扱いされないことへの不満や、男性を亡くした悲しみをつづった遺書を残していた。
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JR福知山線、109人目の犠牲者である。108人目は記事中にある32歳女性である。JR西日本はいったいどんなケアをしていたのか。

JR西日本の傲慢で官僚的対応により、事態はむしろどんどん悪化している印象さえ受ける。JR西日本の被害者対応を根本的に改めさせる必要があることは、いうまでもない。

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10月~国土交通省に2つの新組織

2008-10-03 23:22:35 | 鉄道・公共交通/安全問題
10月から国土交通省に2つの新組織が誕生した。運輸安全委員会と観光庁だ。
運輸安全委は交通・鉄道事故調査委員会と海難審判庁が統合して発足、観光庁は外局として設置された。

中央省庁に外局が新設されるのは、2000年の金融庁以来8年ぶりとのことだ。もっとも、金融庁がいわゆる「大臣庁」(長官が国務大臣=閣僚)であるのに対し、観光庁は大臣庁でない一般の外局だから、金融庁ほど政治力のある組織とはならないだろう。鉄道行政に大きく関わる組織なので、以下、大まかに見ていこう。

運輸安全委員会
今後、従来の航空、鉄道に加え、海難審判庁も統合したこの組織が陸海空の事故調査をすべて担当することになる(自衛隊関係は除く)。

航空・鉄道事故調査委員会は、従来から政府の鉄道政策に対する批判的視点が十分でないとの指摘を受けていた。そうした旧事故調の限界をまざまざと見せ付けたのが、鉄道事故では羽越線列車転覆事故や土佐くろしお鉄道事故の報告書であり、また航空機事故では日航123便御巣鷹事故の報告書である。とりわけ御巣鷹事故に関しては、報告書自体にねつ造の疑いが掛けられており、旧運輸省~国土交通省から納得できる説明は一度も行われていない。

今回、そうした声に配慮したのか、政治的独立性が高いとされる独立行政委員会制を採用した。ただ、国土交通省の官僚が、人事を通じて運輸安全委に行き来するというのでは、組織の独立性は守られない。
新たな組織が政治からの独立を成し遂げ、場合によっては政府の運輸行政についての勧告権も持つ米国国家運輸安全委員会のような実効ある組織となるよう見守っていきたい。

観光庁
有効に機能すれば国民のニーズに即した結果が期待できる運輸安全委に対し、そもそもこんな時期にこんな役所を作るのか? と疑問なのが観光庁だ。

観光立国推進基本法の制定を受けての設置ということらしいが、中央政府が音頭を取るような話なのか?という気がしないでもない。観光地の特色は、それこそ各地の実情に応じて様々であり、1000の観光地があれば振興策は1000通りあるのが実態だ。地方自治体やNPO、地場企業等に任せる方がよほどうまくいくと思う。県庁を観光地に変えてしまった東国原・宮崎県知事の手腕がその最たるものだろう。

観光庁設置で喜んでいるのは権限の増える国土交通省官僚と、観光振興策と銘打った予算で公共事業を受注できる一部企業だけ、と言ったら言い過ぎか?

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離島・過疎地に「撤退」不安 郵政民営化から1年

2008-10-02 22:25:06 | その他社会・時事
離島・過疎地に撤退不安 郵政民営化1年(琉球新報)

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 日本郵政公社民営化から1日で1年。県内離島や過疎地の住民は、配達員との関係希薄化や郵便局の役割低下による不便さが増したとの不満を募らせ、不採算による撤退への不安も根強い。多くの離島や過疎地を抱える沖縄に「効率化」のしわ寄せが出始めている。

 竹富島では配達先が不在の場合に郵便物や小包が石垣島の八重山郵便局に戻ってしまうようになった。竹富島の上勢頭保さんは「以前は竹富郵便局に取りに行くか、配達員も顔見知りだったから携帯電話に連絡してくれたりしてすぐ受け取れた。民営化後は不在通知を見たら石垣島に連絡しなければならない。受け取りも遅くなるし困っている」。

 こうした現状をなんとかしようと立ち上がったのがバス会社の竹富島交通。郵政管理事務所との契約で、日に2回郵便物を受取事務所で仕分けし配達している。しかし新田長男社長(48)は「契約料金ではやればやるほど赤字。料金の見直しなどを要望しているが『離島の場合は難しい』と取り合ってもらえない。今の状態ではうちがもたない」と訴える。

 上勢頭さんは「離島の離島では企業も島民も身を寄せ合いながら生きている。都会並みの制度で一律にしてもらっては困る」と憤る。

 宮古島市では、伊良部島への配達で不在の場合は宮古島の郵便事業会社に戻る。配達員は船で渡るため天候の影響で欠航すると配達が遅れる。伊良部地区の下地方幸自治会長は「不在の際に郵便を伊良部郵便局に取りに行ったら、もう宮古島へ渡っている場合がある」と語った。

 国頭村奥区の玉城壮区長は「郵便局内で業務が分かれ、配達員に頼み事をしにくくなった」と話す。郵便貯金以外に現金を扱う機関がなく、奥の郵便局には隣の楚洲や宜名真からも住民が訪れる。採算が取れないと撤退するのではとの不安に駆られる玉城区長。「撤退されると辺土名しか現金を取り扱う機関はない。年金を受け取る高齢者にとって簡単に移動できない距離で負担が大きい」と語った。
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そんなことは2005年の「郵政選挙」の時からわかっていたことなんだが(溜息)。
あの選挙の時は、自民党の公認・推薦がついていればサルでも当選しかねない異常な雰囲気だった。そういうメディア戦略にみんなまんまと踊らされていたのだ。

日本郵政が打ち出した配達記録郵便の廃止に対し、抗議が殺到して廃止が延期されるというニュースもあった。特に、企業など大口需要者からの抗議が多かったという。大幅なコストアップにつながるからだ。

1年経過した今、当ブログは改めて問い直す。郵政民営化がどう間違っても国民のためなどでないことは明らかだが、この上、企業・経済界のためでもないとすれば、いったい誰のための改革だったのか?

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10月~「協会けんぽ」発足

2008-10-01 19:58:02 | その他社会・時事
協会けんぽ、社会保険庁の政管健保部門を切り離し発足(毎日新聞)

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 社会保険庁の政府管掌健康保険(中小企業の会社員ら3600万人が加入)を運営してきた部門が1日、同庁から切り離され、非公務員型の公法人「全国健康保険協会(協会けんぽ)」(小林剛理事長)が発足した。政管健保の保険料率(8.2%を労使折半)は全国一律だったが、来年9月までに都道府県支部ごとに違う保険料率が設定される。

 協会けんぽは、職員2100人。うち300人を民間から採用した。患者の窓口負担などは変わらず、旧保険証は当面使える。

 保険料率を都道府県単位とするのは、医療費抑制を実現した地域は保険料が下がる半面、抑制できない場合は負担を重くせざるを得ないようにするため。厚生労働省の粗い試算では、保険料率は最高の北海道が8.7%にアップするのに対し、最低の長野県は7.6%に下がり、1.1ポイントの格差が生じる。ただ実際には、各都道府県の年齢構成や所得水準の違いを考慮し決める。【佐藤丈一】
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全国健康保険協会「協会けんぽ」のサイトはこちら

これは、社会保険庁の実質的民営化である。
「民営化で公共サービスが向上することはない」というのが当ブログの基本的立場だが、協会けんぽへの評価は当面差し控えるとして、「都道府県別保険料率制度」はどう考えても健康保険制度の崩壊を決定的なものにするだろう。

そもそも、協会けんぽ(旧政管健保)は自前で健康保険組合を組織する経済的余裕のない中小企業のサラリーマンが加入する制度だ(最近は西濃運輸や京樽などの大企業でも健康保険組合が解散しているくらいだから今やそうともいえないかもしれないが)。そこから考えると、都道府県別保険料率制度が本格的に動き出した場合、保険料率が上がる可能性が高いのは

1.大企業が少なく、中小企業が多いところ
2.医療費がかかり、抑制も難しい高齢者が多く住むところ

…である。
もはやこれ以上の説明を要しないだろう。国鉄分割民営化、郵政民営化に続いてまたもや「弱者、地方切り捨て」である。

案の定、都道府県別保険料率制度について、全国保険医団体連合会(保団連)が「都道府県間の保険料の格差が広がり、地域医療が混乱する」などと指摘している。

協会けんぽは医療崩壊を加速させる(医療介護CBニュース)
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 社会保険庁の廃止に伴い、今年10月に設立される全国健康保険協会が運営する「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」について、全国保険医団体連合会(保団連)が「都道府県間の保険料の格差が広がり、地域医療が混乱する」などと指摘している。

 2006年に成立した医療制度改革関連法によって、今年10月に「政府管掌健康保険(政管健保)」が廃止され、全国健康保険協会の「協会けんぽ」に移行する。
 政管健保は、国(社会保険庁)が保険者となって運営してきた。民間企業で働く従業員のうち、主に事業所が健康保険組合を持たない中小企業の従業員や家族約3600万人が加入している。

 「協会けんぽ」には当初、現在の政管健保の保険料が適用されるが、協会設立後1年以内に、各都道府県の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。このため、来年10月から全国一律の保険料ではなくなり、都道府県ごとの保険料になる予定で、保団連では、「都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合、5年間に限って『激変緩和措置』が講じられるが、その後は都道府県間の格差が著しいものになると予測される」としている。

 また、「協会けんぽ」では、都道府県による医療費の差が保険料に反映することについて、「医療費を削減して保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、各都道府県の医療機関に支払う診療報酬の削減。ある県では、診療報酬の単価を現行の一点10円から数円削減するなどの“特例措置”によって、医療費を削減できる仕組みになっている」と指摘。「都道府県別の診療報酬が導入されるなら、同じ医療行為でも都道府県で費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらす」と批判している。

 保団連では、「これまで国が保険者として担ってきた全国一律の健康保険制度が、都道府県単位の健保制度に分割される。国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県に医療費削減を競わせるもので、“医療崩壊”を加速させる」などとして、新制度の見直しを求めている。
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保団連の「医療費抑制政策からの転換を」と題したコメントは全く妥当なものだ。最後に、その内容をご紹介しよう。

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『新制度「協会けんぽ」のもたらすもの』(保団連)

新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行

 2006年に成立した「医療制度改革関連法」によって、2008年10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新たな保険者である全国健康保険協会が運営する健康保険(略称:協会けんぽ)が発足する。一方で、今年度に入り、収支の悪化を理由に健保組合を解散して政管健保に移行するケースが発生している。都道府県単位に分けて財政運営を行う全国健康保険協会の問題点を探った。

全国一本の制度から都道府県単位に分割

 政管健保は約3600万人が加入し、国(社会保険庁)が保険者として運営しているが、今年10月1日以降は、国と切り離した保険者として「全国健康保険協会」が運営する。47都道府県に支部を設置し、支部単位の財政運営を行う。

 保険料徴収や被保険者等についての情報提供については、新設の「ねんきん事業機構」が行う。

 現在、社会保険庁が保有する全国の社会保険病院(53カ所)と厚生年金病院(10カ所)は、医療施設を譲渡・売却するための組織である年金・健康保険福祉施設整理機構(略称:PFO)に移管する方向で準備が進んでいる。

 全国健康保険協会は、厚生労働大臣が任命した運営委員(事業主3人、被保険者3人、学識経験者3人の計9人)による運営委員会が、予算、事業計画、保険料(率)を決定する。事実上、保険者となる都道府県支部では、支部長が委嘱する評議員による評議会が置かれる。

厚労省試算でも 保険料格差は深刻

 全国健康保険協会の保険料は、現在の政管健保の保険料(保険料率8・2%)が適用されるが、協会成立後1年以内に、地域の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。したがって、2009年10月から全国一律の保険料は廃止され、都道府県ごとの保険料となる予定だ。

 都道府県支部は、単年度の収支が均衡するよう保険料を設定して財政運営を行う。保険料率の上下限は、健康保険組合と同様とし、3%~10%の範囲で設定する。

 ただし、支部が決めた保険料について、厚生労働省が「収支の均衡を図る上で不適当」と認めた場合は、「協会けんぽ」に対して、支部の保険料を変更するよう求めることができる。さらに、保険料の変更の求めに応じないときは、厚生労働省の社会保障審議会の議決を経た上で、厚生労働大臣が職権で保険料を変更することも可能である。

 都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合には、5年間に限り、激変緩和措置が講じられることになっているが、激変緩和措置が終了したときには、都道府県間の保険料の格差は著しいものとなることが予測される。事業所と従業員の数が多く、給与水準が高い地域と、そうでない地域の格差がいっそう深刻になるものとみられる。

 厚生労働省が2003年度の政管健保の医療費実績で、都道府県ごとの保険料を機械的に試算したところ、最も低い長野県は保険料率が7・6%(つまり、長野県の医療費が全国で最も低い)で、最も高い北海道の8・7%とは、1・1ポイントの差が生じた。

都道府県別診療報酬が可能に―地域医療に大きな混乱

 厚生労働省は、都道府県ごとの保険料では、年齢構成が高い県は、医療費が高くなり、保険料も高くなることから、都道府県ごとに差異がある年齢構成、所得水準については、都道府県の間で財政調整を行うことにしている。
一方で、都道府県ごとに差異がある医療費については、地域間の差異をストレートに保険料に反映するとしている。保険者を事実上、都道府県ごとに細分化し、医療費を点検・削減するねらいである。

 「平成20年度全国健康保険協会 事業計画及び予算(検討のための素材)」では、「医療費の適正化の推進」を課題に挙げ、「2011年4月からのレセプトの原則オンライン化を見据えた点検体制の検討を進める」としている。「被保険者1人当たり点検効果額(6カ月) ・内容点検:439円以上 ・外傷点検:218円以上」という削減目標を掲げている。

 医療費を削減し、保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、県内の医療機関に支払う診療報酬の削減である。例えば、その県だけは診療報酬単価を1点10円から何円に削減する、半年以上入院している後期高齢者の診療報酬を何割カットするなどの特例措置によって医療費(ひいては保険料)が削減できる仕組みになっている。

 第1期の都道府県「医療費適正化計画」が終了した翌年の2013年度以降に、都道府県を実績評価の上、医療費の高い特定の都道府県だけにこうした特例措置を認めることが可能となる(高齢者の医療の確保に関する法律 第13条・同14条)。都道府県別の診療報酬が導入されるならば、同じ医療行為が都道府県によって費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらすことになる。

医療費抑制政策からの転換を

 2006年7月11日、厚生労働省と社会保険庁が開催した「健保法等一部改正に伴う施行準備に関する説明会」で、社会保険庁の武田俊彦医療保険課長(当時)は、「全国健康保険協会は全国一つの法人だが、可能な限り、独立の保険者の集合体として運営することがこの制度改正の本旨である」(国保実務 第2517号)と、そのねらいを語っている。

 これまで国が保険者として担ってきた全国一本の健康保険制度を、事実上、都道府県単位の健保制度に分割し、国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県単位で医療費削減を行い、競い合わせようとするものである。いまでも崩壊が進む地域医療が、ますます荒廃することになる。

 医療費抑制政策を根本から転換することが求められている。
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