下克上ーー戦国時代において、主君を殺害してその地位を乗っ取る
一般的にこう解釈されていると思う。私も本書を読むまではそう思っていた。
だが、主君を殺害する例はほとんどなく、その多くは
主君の追放、傀儡化、別の当主を擁立してのすげ替え、などであった。
その背景は、(本書より引用)
戦国時代といえども身分制社会であり、かつ主従性を基本にしていたから、本来的にこれらの行為は簡単に社会で容認されるものではなかったが、戦乱の恒常化がその行為を生み出し、かつ一定程度に許容していった。
本書は、下克上の要因、その成り立ちの種類ごとを8章にわけて構成している。
以下、章ごとのタイトルは、
第一章 長尾景春の反乱と挫折
第二章 伊勢宗瑞の伊豆乱入
第三章 朝倉孝景と尼子経久の困難
第四章 長尾為影・景虎(上杉謙信)の幸運
第五章 斎藤利正(道三)の苛烈
第六章 陶晴賢の無念
第七章 三好長慶の挑戦
第八章 織田信長から秀吉・家康へ
最後の八章の織田信長から秀吉・家康へは、戦国時代の終焉とともに下克上もその意義を失った理由を説明している。
下克上の成り立ちをケースバイケースで読んだ後の最後の章で、下克上の終焉の理由とそれ以降、権力の順位はどのようにして決まったのか、という内容を著者は述べている。
すでに読んでいる第一章から第七章までのケースを時折持ち出しながら説明しているところは、なかなかニクイ演出である。
ここの内容は、下克上を総括している本書の肝の部分であり、ダイナミックな歴史の流れを感じてワクワクした。
下克上を中心に書いている書物はあまり見たことがないので、執筆していただいた黒田基樹氏に感謝いたします。