立花隆の数多い作品中、万民に愛された・・・・かどうか知らないが、愛されてしかるべき作品だ。
11の青春がとりあげられている。
飛騨高山の山中で家具を手造りする集団「オーク・ヴィレッジ」の漆塗り職人、稲本裕、32歳(当時。以下同じ)。
アメリカまで名が売れている手づくりナイフ職人、古川四郎、33歳。
大道芸猿まわしの復活に賭ける猿まわし調教師、村崎太郎、22歳。
中卒後丁稚奉公し、やがて20店以上を転々とした流れ職人、今は有数の精肉職人として鳴らす森安常義、33歳。
野生を野生のままに愛する動物カメラマン、宮崎学、34歳。
事故で自転車競技の選手を断念し、走る側から造る側に転じてフレーム・ビルダーとなった長沢義明、36歳。
自分は自然の中で生きるしかないと見定めた鷹匠、松原英俊、33歳。
19歳のときに言葉もわからないフランスへ旅だって修行したソムリエ、田崎真也、25歳。
はじめの3年間は皿洗いと鍋洗いばかり、料理は芸術だと発見するまで10年間、いまや名レストラン「ランボワジ」のシェフ、斎須政雄、34歳。
オーストリア、イギリスで働きながあら自分独自の織り方を求め続けた染織家、冨田潤、34歳。
日本初のフリーのレコーディング・ミキサー、吉野金次、36歳。
いずれも、当時世の中の多数が願っていた安定した職業からほど遠い職に就いた。職種はさまざまで、共通するのは専門性の高い職人である点と、全員が落ちこぼれであることだ。はやい人は中学生のときに落ちこぼれた。
ありきたりのコースに乗りたくなかったから落ちこぼれたのだ、と立花は観察する。
ありきたりのコースは、自分がその仕事についたらどうなるかの予測をたてやすい。本書の11人は、容易に予測できる未来を拒否したから、落ちこぼれたのだ。多数の者が選びがちなコースから落ちこぼれて、独り未知の大海に乗りだし、ひとたび自分を賭けるべきものを見出してから後は、一直線に新しい人生を切り開いてきた。深い森のなかでひとたび方向を定めたら、断固直進するデカルト的意志をもって。
立花隆は、必要以上の時間をかけて、すなわち最低でも4、5時間、長いときには泊まりがけで語り合った。彼らの「求めんとする意志」に共感したからだろう。
かつてはありきたりだったコースが、ちっともありきたりではなくなった21世紀の日本。
本書は、四半世紀以上前のルポタージュだが、独立独歩の青春が今こそ煌めく。
□立花隆、清家冨夫・写真『青春漂流』(スコラ、1975。後に講談社文庫、1988)
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11の青春がとりあげられている。
飛騨高山の山中で家具を手造りする集団「オーク・ヴィレッジ」の漆塗り職人、稲本裕、32歳(当時。以下同じ)。
アメリカまで名が売れている手づくりナイフ職人、古川四郎、33歳。
大道芸猿まわしの復活に賭ける猿まわし調教師、村崎太郎、22歳。
中卒後丁稚奉公し、やがて20店以上を転々とした流れ職人、今は有数の精肉職人として鳴らす森安常義、33歳。
野生を野生のままに愛する動物カメラマン、宮崎学、34歳。
事故で自転車競技の選手を断念し、走る側から造る側に転じてフレーム・ビルダーとなった長沢義明、36歳。
自分は自然の中で生きるしかないと見定めた鷹匠、松原英俊、33歳。
19歳のときに言葉もわからないフランスへ旅だって修行したソムリエ、田崎真也、25歳。
はじめの3年間は皿洗いと鍋洗いばかり、料理は芸術だと発見するまで10年間、いまや名レストラン「ランボワジ」のシェフ、斎須政雄、34歳。
オーストリア、イギリスで働きながあら自分独自の織り方を求め続けた染織家、冨田潤、34歳。
日本初のフリーのレコーディング・ミキサー、吉野金次、36歳。
いずれも、当時世の中の多数が願っていた安定した職業からほど遠い職に就いた。職種はさまざまで、共通するのは専門性の高い職人である点と、全員が落ちこぼれであることだ。はやい人は中学生のときに落ちこぼれた。
ありきたりのコースに乗りたくなかったから落ちこぼれたのだ、と立花は観察する。
ありきたりのコースは、自分がその仕事についたらどうなるかの予測をたてやすい。本書の11人は、容易に予測できる未来を拒否したから、落ちこぼれたのだ。多数の者が選びがちなコースから落ちこぼれて、独り未知の大海に乗りだし、ひとたび自分を賭けるべきものを見出してから後は、一直線に新しい人生を切り開いてきた。深い森のなかでひとたび方向を定めたら、断固直進するデカルト的意志をもって。
立花隆は、必要以上の時間をかけて、すなわち最低でも4、5時間、長いときには泊まりがけで語り合った。彼らの「求めんとする意志」に共感したからだろう。
かつてはありきたりだったコースが、ちっともありきたりではなくなった21世紀の日本。
本書は、四半世紀以上前のルポタージュだが、独立独歩の青春が今こそ煌めく。
□立花隆、清家冨夫・写真『青春漂流』(スコラ、1975。後に講談社文庫、1988)
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