(1)2025年には、団塊世代がいっせいに75歳以上になる。5人に1人が後期高齢者になる。その時に必要な介護職員数は、221万人~255万人と試算されている(社会保障国民会議)。
(2)介護職員は年々増えてきたが、低賃金が響いて離職も多く、2010年には早くも減少に転じた。
介護職の離職率は、直近2年間で17.8%から16.1%に低下したが、処遇が改善されたからではない。辞めたくても不況でほかの働き口がなく、「去るも地獄、残るも地獄」だ。【入野豊・東京介護福祉労働組合監事/ケアマネージャー】
介護老人保健施設の介護士職員、人手不足の施設から催促され、産後2ヶ月で夜勤シフトを月6回も組まれたりする。看護師には2交代制であれば月4回を目安に夜勤時間を制限するルールがあるが、介護職員には何ら規制がない。加重労働、急変する高齢者に心身をすり減らすように働いても、月給は額面で20万円にも満たない。
(3)日本介護クラフトユニオン(NCCU)の「処遇改善調査」(2011年)では、組合員の平均賃金を職種別年収で見ると、
(a)訪問介護員・・・・2,601,000円(月給制)
(b)施設系介護職員・・・・2,803,000円(月給制)
(c)【参考】サラリーマン・・・・4,090,000円【国税庁、2011年】
介護労働安定センターによれば、職種別平均月給は、
①訪問介護員・・・・188,975円
②サービス提供責任者・・・・224,791円
③介護職員・・・・195,247円
④看護職員・・・・264,395円
⑤介護支援専門員・・・・254,527円
⑥生活相談員or支援相談員・・・・237,230円
⑦全体・・・・216,086円
管理職も好待遇とはいえない。東京都のある訪問介護事業所長/介護福祉士(34歳)は、所長歴10年だが、基本給226,450円、所長手当が28,000円、計254,450円だ。しかも、管理業務のほか1日5件前後、訪問介護に入るため残業も多い。
ヒラの訪問介護員の労働時間は、利用者の急な入院や死亡で穴が空きやすいから、月によって70~120時間のバラツキが出てしまう。そのしわ寄せは、当然、非常勤職員にいく。報酬もその分、下がる。
医療機関の看護助手は、配膳、備品の消毒、患者の移動、事務職員の欠勤の際はカルテも作成するが、診療報酬の看護補助加算は1人当たり年間200万円くらいなので、正職員採用に結びつかない。
(4)厚生労働省は、人材確保のため、
(a)2009年度に介護報酬を3%引き上げ、月額賃金2万円アップをめざした。
(b)2009年10月~2011年度末に限り、全額国費の「介護職員処遇改善交付金」を制定し、賃金改善計画の策定を行うなどを条件に、一人当たり15,000円を交付した。・・・・しかし、効果は限定的だ。交付金の使途は一時金扱いが多く、ベースアップにはなかなかつながらない。経営者側からは、「交付金も介護報酬も時限的なもので、すぐに梯子をはずされるかと思うと、基本給は上げられない」「過去の介護報酬のマイナス改定の赤字を補填するので精一杯」という声も上がる。
(c)2012年度から、介護報酬に「介護職員処遇改善加算」が新設された。・・・・しかし、事業所がその加算を申請すれば、利用者負担として跳ね返る。自己負担増を避けるため利用を手控えることになれば、もくろみどおりの処遇改善にはつながらない。
(5)制度上の問題もある。2012年の介護報酬改定で、「生活援助」の時間区分が見直され、訪問介護員の働き方を大きく変えつつある。これまで「生活援助」(掃除・洗濯・炊事・買物)の最短区分は60分未満だったが、今改正で45分未満に短縮された。その結果、
(a)利用者
①利用の減少 <例>今まで1日2回の訪問が1回に抑制され、食事も1回に減った。
②バイオチェックが手薄になった。
(b)訪問介護員
①利用の減少に伴い、訪問介護員の収入が減少。
②今までなら、訪問介護員は利用者と会話しながらその状態を観察できたが、その余裕がなくなった。
③ただ黙々と家事するだけで手一杯となり、やりがいが奪われる。
以上、小林美希(ジャーナリスト)「制度開始10年で従事者減 まるで足りない介護職員」(「週刊ダイヤモンド」2012年10月20日号)に拠る。
【参考
「【社会保障】介護職の離職率を減らす試み」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済回復の方向づけ」
「【経済】財政再建と介護(1) ~曲がり角に立つ介護産業と日本の雇用~」
「【経済】財政再建と介護(2) ~将来の労働事情~」
「【経済】財政再建と介護(3) ~新しい介護産業~」
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(2)介護職員は年々増えてきたが、低賃金が響いて離職も多く、2010年には早くも減少に転じた。
介護職の離職率は、直近2年間で17.8%から16.1%に低下したが、処遇が改善されたからではない。辞めたくても不況でほかの働き口がなく、「去るも地獄、残るも地獄」だ。【入野豊・東京介護福祉労働組合監事/ケアマネージャー】
介護老人保健施設の介護士職員、人手不足の施設から催促され、産後2ヶ月で夜勤シフトを月6回も組まれたりする。看護師には2交代制であれば月4回を目安に夜勤時間を制限するルールがあるが、介護職員には何ら規制がない。加重労働、急変する高齢者に心身をすり減らすように働いても、月給は額面で20万円にも満たない。
(3)日本介護クラフトユニオン(NCCU)の「処遇改善調査」(2011年)では、組合員の平均賃金を職種別年収で見ると、
(a)訪問介護員・・・・2,601,000円(月給制)
(b)施設系介護職員・・・・2,803,000円(月給制)
(c)【参考】サラリーマン・・・・4,090,000円【国税庁、2011年】
介護労働安定センターによれば、職種別平均月給は、
①訪問介護員・・・・188,975円
②サービス提供責任者・・・・224,791円
③介護職員・・・・195,247円
④看護職員・・・・264,395円
⑤介護支援専門員・・・・254,527円
⑥生活相談員or支援相談員・・・・237,230円
⑦全体・・・・216,086円
管理職も好待遇とはいえない。東京都のある訪問介護事業所長/介護福祉士(34歳)は、所長歴10年だが、基本給226,450円、所長手当が28,000円、計254,450円だ。しかも、管理業務のほか1日5件前後、訪問介護に入るため残業も多い。
ヒラの訪問介護員の労働時間は、利用者の急な入院や死亡で穴が空きやすいから、月によって70~120時間のバラツキが出てしまう。そのしわ寄せは、当然、非常勤職員にいく。報酬もその分、下がる。
医療機関の看護助手は、配膳、備品の消毒、患者の移動、事務職員の欠勤の際はカルテも作成するが、診療報酬の看護補助加算は1人当たり年間200万円くらいなので、正職員採用に結びつかない。
(4)厚生労働省は、人材確保のため、
(a)2009年度に介護報酬を3%引き上げ、月額賃金2万円アップをめざした。
(b)2009年10月~2011年度末に限り、全額国費の「介護職員処遇改善交付金」を制定し、賃金改善計画の策定を行うなどを条件に、一人当たり15,000円を交付した。・・・・しかし、効果は限定的だ。交付金の使途は一時金扱いが多く、ベースアップにはなかなかつながらない。経営者側からは、「交付金も介護報酬も時限的なもので、すぐに梯子をはずされるかと思うと、基本給は上げられない」「過去の介護報酬のマイナス改定の赤字を補填するので精一杯」という声も上がる。
(c)2012年度から、介護報酬に「介護職員処遇改善加算」が新設された。・・・・しかし、事業所がその加算を申請すれば、利用者負担として跳ね返る。自己負担増を避けるため利用を手控えることになれば、もくろみどおりの処遇改善にはつながらない。
(5)制度上の問題もある。2012年の介護報酬改定で、「生活援助」の時間区分が見直され、訪問介護員の働き方を大きく変えつつある。これまで「生活援助」(掃除・洗濯・炊事・買物)の最短区分は60分未満だったが、今改正で45分未満に短縮された。その結果、
(a)利用者
①利用の減少 <例>今まで1日2回の訪問が1回に抑制され、食事も1回に減った。
②バイオチェックが手薄になった。
(b)訪問介護員
①利用の減少に伴い、訪問介護員の収入が減少。
②今までなら、訪問介護員は利用者と会話しながらその状態を観察できたが、その余裕がなくなった。
③ただ黙々と家事するだけで手一杯となり、やりがいが奪われる。
以上、小林美希(ジャーナリスト)「制度開始10年で従事者減 まるで足りない介護職員」(「週刊ダイヤモンド」2012年10月20日号)に拠る。
【参考
「【社会保障】介護職の離職率を減らす試み」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済回復の方向づけ」
「【経済】財政再建と介護(1) ~曲がり角に立つ介護産業と日本の雇用~」
「【経済】財政再建と介護(2) ~将来の労働事情~」
「【経済】財政再建と介護(3) ~新しい介護産業~」
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