語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】原子力規制庁、メディアを検閲し、公安警察を要請

2012年10月26日 | 震災・原発事故
 (1)原子力規制庁は、9月25日、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」【注】編集部に対し、同庁が主催する記者会見への参加を拒否することを通告した。「特定の主義主張を持つ機関の機関誌はご遠慮いただきたく」云々。
 通告は口頭でなされた。やりとりの中で、「フリーランスの記者も、掲載されている記事を確認し、特定の主義主張であれば、会見への参加をご遠慮願う」とも(検閲=憲法違反の疑い)。

 (2)9月26日の記者会見で、この件に係る質問が出た。
 フリーランスの主義主張を確認するようなことはない。それまでの実績を見て報道を事業として営んでいるかで判断する。「赤旗」は政党の機関紙なので、報道を事業とする趣旨ではないと判断した。【佐藤暁・原子力規制庁公聴広報課長】

 (3)9月25日には「特定の主義主張が問題」としながら、翌日には「政党機関紙だから」と理由を変更した同庁は、この後にも見解を二転三転させた。
 9月27日、規制庁は同紙編集部に対し、「会場の狭さ」を理由に改めて会見参加を拒否した。しかし、実は26日には席に十分な余裕があった。
 さらに10月1日、規制庁は同紙編集部に対し、昨年開かれていた政府・東京電力統合対策室合同記者会見に参加していたかどうかの「実績」を参加条件にしてきた(同紙は、この会見に何度も参加している)。

 (4)(1)~(3)の無軌道な原子力規制庁の態度について、「朝日」「毎日」「産経」「東京」などの各大手新聞も取り上げ、問題を指摘した。
 10月2日、「しんぶん赤旗」の会見への参加を認める、と同庁はようやく発表した。発表の中で、「我々の透明性が後退したといわれるのは心外だ」と開き直った。

 (5)原子力規制委員会は9月19日に発足した。その事務方である原子力規制庁が最初に規制したのは、原子力行政ではなく、原発を持つ電力会社でもなく、市民に情報を発信するメディアであった。

 【注】同紙は、昨年7月、九州電力の「やらせ」メールをスクープした。今年7月、都内で開かれた「さようなら原発10万人集会」では号外を作成し、解散地点で配布。用意した25,000部がすぐ無くなった。なお、規制庁による「赤旗」締め出し事件について報じた「赤旗」電子版は、アクセスが異例の30,000件近くに達した。【成澤宗男(編集部)「「昔は警戒されていたのに」脱原発市民の支持を得る赤旗」(「週刊金曜日」2012年10月19日号)】

 以上、渡辺真(フリーランス編集者)「主義主張を理由に『赤旗』を排除しようとした規制庁」(「週刊金曜日」2012年10月12日号)に拠る。

   *

 (1)毎週水曜日、原子力規制委員会の会議が開催されている。同庁は、この傍聴者などを監視するため、公安警察を要請していた。
 この事実は、10月10日に判明。
 会場に配置されていたのは、東京都「麻布警察署から来た」と名乗る私服警官。耳にはイヤホン、胸には傍聴者やメディアとは異なる赤いストラップの入館証を下げ、会議室の出口付近に待機し、メディアや傍聴者を確認しては逐一メモし、時折、廊下に出て無線で報告していた。
 傍聴者の数人が気づき、「あなたは誰ですか?」と詰め寄ったところ、「規制庁の要請で来ている。それ以上、話す必要はない」「自信を持って仕事をしている」と回答。一時、押し問答になった。

 (2)田中俊一・原子力規制委員会委員長は、会見で、「全然知らなかった」と要請が事務方の判断だったことを説明。
 庁舎内の秩序維持という観点から、警察署に対して警備を依頼している。公安警察が私服である理由は、「制服だと威圧感を与えるため」だ。【森本英香・原子力規制庁次長】

 (3)傍聴者の監視問題では、今年7月、保安院が大飯原発の断層調査をめぐる専門家会議の傍聴希望者に係る情報を警察に提供した可能性が指摘されている。森山善範・保安院原子力災害対策監が、記者会見で、警察から詳細な説明を差し控えるよう要請を受けたことを明らかにした経緯がある。
 規制庁のモラルが問われる。規制庁のトップが池田克彦・前警視総監であることも関係がある可能性が高い。【青木理・ジャーナリスト】

 以上、白石草(NPO法人OurPlanet-TV(代表理事)「公安警察が傍聴者を監視 ~原子力規制庁が「秩序維持」を理由に要請」(「週刊金曜日」2012年10月19日号)に拠る。

 【参考】
【原発】天下り容認の規制庁人事 ~民自公修正談合~
【原発】無責任体質は変わらない ~原子力規制庁~
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