語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】リルケ「秋」

2015年12月02日 | 詩歌
 木の葉が落ちる 落ちる 遠くからのように
 大空の遠い園生(そのふ)が枯れたように
 木の葉は否定の身ぶりで落ちる

 そして夜々には 重たい地球が
 あらゆる星の群から 寂寥のなかへ落ちる

 われわれはみんな落ちる この手も落ちる
 ほかをごらん 落下はすべてにあるのだ

 けれども ただひとり この落下を
 限りなくやさしく その両手に支えている者がある

 Herbst

 Die Blätter fallen, fallen wie von weit,
 als welkten in den Himmeln ferne Gärten;
 sie fallen mit verneinender Gebärde.

 Und in den Nächten fällt die schwere Erde
 aus allen Sternen in die Einsamkeit.

 Wir alle fallen. Diese Hand da fällt.
 Und sieh dir andre an: es ist in allen.

 Und doch ist Einer, welcher dieses Fallen
 unendlich sanft in seinen Händen hält.

□ライナー・マリア・リルケ(富士川英郎・訳)「秋」(『リルケ詩集』(新潮文庫、1963))
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【美】日本伝統工芸 ~人形~

2015年12月02日 | □旅
  第62回日本伝統工芸展
  岡山県立美術館 2015年11月12日~29日

  井上楊彩 桐塑彩色「目覚めの刻」:日本工芸会会長賞
  

  青江桂子 木芯桐塑布紙貼「あなたを想う」
 

  岩瀬なほみ 木彫貼込「季」:鑑査委員
 

  岡弘美 張抜木目込「風女神」
 

  部谷きよみ 木彫胡粉「ラベンダーの丘」
 

  山下玉枝 陶象嵌彩色「メルカード(市場)」
 
 
  角田智子 木芯桐塑木目込「戀歌」
 
 
  藤田美智子 木芯桐塑胡粉「菊の童子」
 

  近藤たみ 陶彫練込象嵌「ただいま」
 

  青野洋 木芯桐塑紙貼「蚤の市」
 

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【中東】米国の「政権転覆」工作が生んだ難民 ~シリア~

2015年12月02日 | 批評・思想
 (1)欧州は、第二次世界大戦終結以来、最悪の難民流入に伴う機器に直面している。昨年は25万人ほどだったが、今年は60万人以上の難民が欧州に押し寄せた。大半はシリアからの難民だ。
 欧米のテレビや新聞は、人びとが「戦争のために」シリアから逃げ出していると報道しているが、「どのように戦争が始まったのか」という設問を、決して投げかけようとはしない。
 シリアは2011年まで、比較的安定し、レバノンを除きアラブ世界で最もキリスト教が自由に活動できるほどの宗教的多様性が認められている国だった。それが、突然、5年近くにも及ぶ血なまぐさい内乱に陥り、25万人以上が殺され、人口(1,200万人)の半数近くの国民が住処を追われ、その多くが欧州に逃げた。なぜ、こんな状態が生まれたのか。

 (2)2011年3月にシリアで紛争が発生して以降、欧米メディアはアサド側について、欧米諸国に支援された「穏健勢力」の「民主化運動」を「叩きつぶす」「抑圧的な政権」として描いた。一方で、民主化運動を残忍極まる弾圧で血の海に沈めたバーレーンや、それに直接加担し、「民主主義」のかけらもないサウジアラビアといった親米の腐った王族が居座る湾岸諸国については、何も非難しない。
 しかも、いまや存在しないに等しい「民主的」な「穏健勢力」に代わって勃興した「ヌスラ戦線」(「シリアのアルカイダ」)や「イスラム国」(IS)といったテロリストがどう生まれ、いかなる外国勢力によって支援されているかについては完全無視だ。
 
 (3)報道という名の情報操作では、シリアのニュースに、ある一つの用語だけは絶対に登場しない。それは、
   「政権転覆」(regime change)
という用語だ。だが、この用語こそ、米国や英仏、「イスラム国」の広大な後方支援基地を提供しているトルコといったNATOの同盟国、そしてイスラエルや湾岸諸国から成る「反アサド」側とそれらの国々の報道機関のウソを暴く。
 つまり、内戦を悪化させ、難民を生んだのは、国連憲章で禁じられた「政権転覆」(外部から他国の主権を侵害する工作)にほかならない。

 (4)次のような事実がある。
  (a)ウェズリー・クラーク・元NATO最高司令官は、2007年、インターネット等で配信されているニュース番組「デモクラシー・ナウ!」に出演した際に次のように証言した。「2001年10月に国防総省が、親米政権を据えるため、アフガニスタンに続いてシリアやイラク、リビア等の、指導者を抹殺する国々のリストを作成していた」
  (b)米国のセイモア・ハーシュ・元「ニューヨーク・タイムズ」記者(スクープ記事で著名)は。「ニューヨーカー」誌の2007年3月5日号で米国諜報機関の情報をもとに、「米国はブッシュ政権時代からシリアや中東の『政治地図塗り替え』の目的で、アルカイダ等のテロリストを使い、宗派対立を煽る」計画を曝露した。
  (c)マイケル・フリン・元「国防情報局(DIA)」長官が、今年7月に放映されたカタールの衛星放送「アル・ジャジーラ」のニュース番組に出演した際、オバマ大統領が2012年に、後に「イスラム国」に発展するようなイスラム過激派が大多数を占めている事実を承知の上で、こうしたテロリスト主体の反アサド勢力を支援する「意図的な決定」を下した、と証言した。

 (5)(4)のように、シリアで起きている事態は、これまで米諜報機関が仕組んできたイラン(1953年)、グアテマラ(1954年)、チリ(1973年)等に見られる「政権転覆」工作の延長にある。
 昨年、米国は、ウクライナで極右ネオナチを支援し、民主的に選出された大統領を暴力で対用させたのは記憶に新しい。

 (6)いまや、テロリストと組んだ米国によるシリアの「政権転覆」のために、手を最も血で汚して協力している英仏両国が、欧州では最もシリア難民に消極的な諸国に加わっているのは、何たる皮肉か。
 もはや、結論は単純明快だ。
 シリア内戦激化とそれに伴う欧州の空前の難民危機が、米国とその同盟国による「政権転覆」の企てによってもたらされている以上、問題解決のためには彼らがその企みを即刻中止するしかない。

□フィニアン・カニングハム(成澤宗男・訳)「難民の根源は米国の「政権転覆」工作だ ~オバマによってシリアにもたらされる混乱と流血~」(「週刊金曜日」2015年10月30日号)
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【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~

2015年12月02日 | ●佐藤優
 (1)「はじめに」で、手嶋龍一は次のようにいう。
 <優れたインテリジェンス・オフィサーは、官僚機構が占有している極秘情報なるものを必ずしも必要必ずしも必要としない。自分なりのビッグ・データを日々耕し、インテリジェンス感覚を研ぎ澄ましておけば、新聞のちょっとしたベタ記事から近未来に生起する変事を察知できる>

 (2)「第1章 アジア安保としての東京オリンピック」の冒頭で、佐藤勝はインテリジェンスを定義する。
 <インテリジェンスとは、膨大な一般情報を意味するインフォーメーションから、きらりと光る宝石のような情報を選り抜いて、精緻な分析を加えた情報のエッセンスをいいます。それは、一国の政治エリートが誤りなき決断をくだす拠り所になるものです>
 それゆえ、と佐藤は続け、極めて政治的な営為なのだが、いまの日本では当事者である政治エリートが主観的に意識していないところで大きな構造が動いてしまっている。ここが情報の分析を難しくさせているところだ。日本の当事者たちは、自分の周辺のミクロ的かつ短期的なことしか考えないで懸命に動いている。ところが、国際政治の現場では、マクロ的かつ構造的な変化が生じている、云々。
 以下、二人で「2020年東京オリンピック」を読み解く。したがって、この章は「2020年東京オリンピック」を素材とするインテリジェンス演習とも言える。

□手嶋龍一/佐藤勝『知の武装 ~救国のインテリジェンス~』(新潮新書、2013)
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