(1)最新の「高血圧治療ガイドライン」では、日本人の降圧目標値は、
「140/90mmHg未満」
で、その前の
「130/80mmHg未満」
から緩和された。この「緩和傾向」は、ここ数年の世界的トレンドだったのだが。
(2)先日、米国立心臓肺血液研究所から、大規模臨床試験「Systolic Blood Presure Intervention Trial(SPRINT)」の解析結果が報告された。試験名を邦訳すると、「収縮期血圧(上の血圧)介入試験」といったところ。
試験は、
①50歳以上
②上の血圧が130mmHg以上
③心血管疾患の既往
④慢性腎臓病がある
などのハイリスク例、もしくは
⑤75歳以上の高血圧患者
を対象に行われた。
高圧目標を上の血圧に絞り、
(a)「120mmHg未満」の厳格な降圧治療群
(b)「140mmHg未満」の緩い降圧治療群
に分け、その影響を追跡している。(a)は、平均3種類の降圧剤を処方されている。
対象者は、9,250人。③が1,877人、④合併が2,648人、⑤が2,636人だった。
本来、同試験は2018年末まで続くはずだったが、この秋で打ち切られた。命に関わる優劣が明らかになったからだ。
(3)(2)の(a)群は、(b)群と比べ、心筋梗塞や脳卒中の発症頻度とその関連死が30%低下。全死亡率も25%少なかった。血圧低下によるめまいなどは増えたが、文句なく(a)群に軍配が上がった。
ガイドラインでは、SPRINTの対象に近い「糖尿病や蛋白尿を伴う慢性腎臓病」の降圧目標値は130mmHg未満。
日本高血圧学会は、医療現場の混乱を防ぐためか、同試験の結果が報告された数日後、ホームページ上に「慎重な判断が求められる」とコメントを掲載。次のガイドライン改定で「厳格な降圧治療」への揺り戻しがあるかどうかは、今のところ不明だ。
(4)ともあれ、われわれ一般市民は、
「高血圧は体に悪く、下手をすると死を招く」
と肝に銘じよう。生活週刊の改善が先決で、数値に振り回されるのは、その後でいい。
□井出ゆきえ(医学ライター)「適性な「降圧目標値」は? 120未満で関連疾患が約3割低下 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.279~」(週刊ダイヤモンド」2015年12月12日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~」
「【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~」
「【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~」
「【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・」
「【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~」
「【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~」
「【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~」
「【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~」
「【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~」
「【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?」
「【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~」
「【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~」
「【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~」
「【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~」
「140/90mmHg未満」
で、その前の
「130/80mmHg未満」
から緩和された。この「緩和傾向」は、ここ数年の世界的トレンドだったのだが。
(2)先日、米国立心臓肺血液研究所から、大規模臨床試験「Systolic Blood Presure Intervention Trial(SPRINT)」の解析結果が報告された。試験名を邦訳すると、「収縮期血圧(上の血圧)介入試験」といったところ。
試験は、
①50歳以上
②上の血圧が130mmHg以上
③心血管疾患の既往
④慢性腎臓病がある
などのハイリスク例、もしくは
⑤75歳以上の高血圧患者
を対象に行われた。
高圧目標を上の血圧に絞り、
(a)「120mmHg未満」の厳格な降圧治療群
(b)「140mmHg未満」の緩い降圧治療群
に分け、その影響を追跡している。(a)は、平均3種類の降圧剤を処方されている。
対象者は、9,250人。③が1,877人、④合併が2,648人、⑤が2,636人だった。
本来、同試験は2018年末まで続くはずだったが、この秋で打ち切られた。命に関わる優劣が明らかになったからだ。
(3)(2)の(a)群は、(b)群と比べ、心筋梗塞や脳卒中の発症頻度とその関連死が30%低下。全死亡率も25%少なかった。血圧低下によるめまいなどは増えたが、文句なく(a)群に軍配が上がった。
ガイドラインでは、SPRINTの対象に近い「糖尿病や蛋白尿を伴う慢性腎臓病」の降圧目標値は130mmHg未満。
日本高血圧学会は、医療現場の混乱を防ぐためか、同試験の結果が報告された数日後、ホームページ上に「慎重な判断が求められる」とコメントを掲載。次のガイドライン改定で「厳格な降圧治療」への揺り戻しがあるかどうかは、今のところ不明だ。
(4)ともあれ、われわれ一般市民は、
「高血圧は体に悪く、下手をすると死を招く」
と肝に銘じよう。生活週刊の改善が先決で、数値に振り回されるのは、その後でいい。
□井出ゆきえ(医学ライター)「適性な「降圧目標値」は? 120未満で関連疾患が約3割低下 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.279~」(週刊ダイヤモンド」2015年12月12日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~」
「【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~」
「【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~」
「【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・」
「【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~」
「【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~」
「【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~」
「【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~」
「【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~」
「【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?」
「【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~」
「【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~」
「【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~」
「【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~」