語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】E・ケストナー「マッチ売りの少年」 ~人生処方詩集~

2015年12月16日 | 詩歌
 マッチ マッチを買ってください
 三箱で 二十ペニヒ

 みんな 買うかわりに笑う
 さもなきゃ 怒って
 ぶつくさ言いながら どんどん 行ってしまう
 きみたちが 知っていたら・・・・

 マッチ マッチを買ってください
 三箱で 二十ペニヒ

 パパは十マルク 補助金をもらってる
 そして ママは やせこけた頬を
 ぼくたちは 一部屋借りている 共同炊事場つきの
 でも 炊事場は まるっきり つかわない

 きのう パパは ビールを飲んだ
 ママは いっしょに飲みたくなかった
 パパは歌った 「われらの生活は自由」
 そして そのあとで 窓をぶっこわした

 マッチ マッチを買ってください
 三箱で 二十ペニヒ

 ぼくのボール函は からにならない
 おまけに 作文を まだ 書かなきゃなあ
 こんなに くたびれてさえいなきゃなあ
 マッチを買ってください 笑わないで

 黒と茶の 靴ひもなら
 もちろん もっともうかるんだけれど
 でも それだと はじめに 三マルクいる
 どこから そのお金を もってくるんだい

 マッチ 黒と茶のマッチ
 三組で 二十・・・・ 

□エーリヒ・ケストナー(小松太郎・訳)「マッチ売りの少年」(『人生処方詩集』、岩波文庫、2014)
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 【参考】
【詩歌】E・ケストナー「ぼくは母と旅行をしている」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「簿記係が母親へ」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「即物的な物語詩」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「ホテルでの男性合唱」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「絶望第一号」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「顔を交換する夢」 ~人生処方詩集~
【詩歌】戦争を礼賛する牧師 ~E・ケストナーによる諷刺~

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【ブラック企業】大賞2015 ~セブンイレブンの何が問題なのか~

2015年12月16日 | 社会
 (1)(株)セブン-イレブン・ジャパンの受賞理由は、
   「全国のセブン加盟店の見切り販売を妨害した」
ことなど。

 (2)その反応・・・・
  (a)受賞と同時に親会社のセブン&アイ・ホールディングスの株価が200円以上も暴落し、ヤフー株式掲示板には「セブン&アイは投資先にふさわしくない」などの書き込みが殺到。衝撃の大きさを示した。
  (b)当事者であるセブン加盟店主(オーナー)たちは、「やっと貰ったか」。
  (c)一般の人は、「えっ、なぜセブンが!」。
  (d)メディアの反応はわかりやすかった。
   ①「スポーツ報知」・・・・発表直後の16時20分ごろ、ヤフーニュースに配信。トップニュースとなった。しかし、20分後に削除され、関係者を唖然とさせた。
   ②過去に「ワタミフードサービス」や「ヤマダ電機」のブラック企業大賞を報じたスポーツ紙や夕刊紙も、広告大スポンサーで新聞や雑誌の販売店でもある「天下のセブン」だけに完全沈黙。
   ③「日本経済新聞」2015年11月27日付け・・・・働きやすい優良企業というブラックとの真逆の「ホワイト企業」のお墨付きを与える記事が掲載された。「ブラック大賞を見越した“解毒剤”か」とネットユーザーは失笑した。

 (3)厚生労働省もブラックの疑いのある企業に立ち入り調査したり、学生のブラックバイトの実態を公表するなど、いまや世を挙げてブラック退治の方向にある。
 ブラック企業大賞実行委員会は、今回の受賞理由を
   「セブン-イレブン・ジャパンは、利益至上主義に走り、加盟店の見切り販売(弁当・おにぎりなど消費期限前の値下げ販売)を妨害して利益を搾取している。この結果、加盟店に十分な利益配分がなく、ブラックバイトを生み出す原因になっている」
と説明。フランチャイズ(セブン側とオーナーとは別組織で一つの利益を分け合う関係)の仕組みを使った、今までにない、大規模、かつ、悪質なケースと判断した。
 岡山県労働委員会が、2014年に「加盟店主は労働組合法上の労働者で、その労組のコンビニ加盟店ユニオンとの団体交渉に応じよ」と命じたが、セブン側は不服として中央労働委員会に再審査を申し立てた。この団交に応じなかった不当労働行為も受賞理由だった。

 (4)実行委員会関係者によると、セブンイレブンは4年前から大賞候補の下馬評にあがっていた。だが、フランチャイズという外部から検証できない特殊なビジネスであることから、評価が分かれていた。
 2009年、公正取引委員会が「見切り妨害は独占禁止法違反の優越的地位の乱用だ」と断定し、社会の風向きが変わった。これを受けて全国のオーナーたちがセブン本部を集団提訴し、最高裁判所から有罪判決が出た。今回はこれが後押しになった。
 関係者によれば、公正性から裁判所の判決とか行政命令とか、公的機関のお墨付きが出ないと取り上げにくい。岡山労働委の裁定が出たときも候補にのぼったが、団交拒否なんてほかにも実例があると見送られた。今年、見切り販売妨害に係る最高裁判決が出たことで、加盟店の利益を搾取していることが理解され、大賞選考の最終段階ですんなり決まった。

 (5)セブンイレブンのブラック性は、見切り販売妨害だけではない。
 最悪のものが、「ドミネント」だ。近隣への集中出店だ。商圏内にライバル店を出すやり方だ。セブン側は、「近くには出店しない」「出店のときは相談する」などと言いながら、抜き打ち出店をするのだ。騙し討ちだ。これも利益至上主義の計略だ。
 ドミネントにより追い込まれた自殺、過労死、自己破産、離婚などが後を絶たない。

 (6)見切り販売の妨害、不当労働行為は現在も平然と行われている。
 <例1>福岡市内で32年間セブン店を経営してきた赤川昌春・元オーナー(脱サラ)などは、ドミナントで売り上げが激減し、最後の手段として見切り販売に踏み切ったら、2014年3月いっぱいで契約解除になった(強制閉店・失職)。そのとき、「自己都合による閉店」という念書まで書かされた。むろん、これは裁判対策だ。
 <例2>池原匠美・「コンビニ加盟店ユニオン」執行委員長が、いま審議中の中央労働委員会でセブンイレブン商法を否定したという理由で契約更新の拒絶を言い渡された。これこそ憲法で保障された団結権の侵害であり、労働組合への弾圧である不当労働行為の最たるものだ。
 さすがに、池原委員長の契約問題はユニオン側弁護団の猛反対によってセブン側弁護士が中労委の席で謝罪・撤回した(まだ予断を許さない)。
 これが普通の加盟店なら、<例1>と同様、曖昧な理由でポイ捨てだろう。これがセブンイレブンのブラック企業たるゆえんだ。

 (7)このたびのブラック企業大賞で苦しい立場になるのが、年中無休24時間を切り回すオーナーだ。
 バイト従業員が来なくなるからだ。「ワタミ」がそうだった。ふつう、ブラック企業に勤めようとは思わない。
 24時間店というだけでも、ブラックの条件を十分満たしている。なぜなら、全国のセブン店は、鈴木敏文・会長の大号令下、「新店1,700店」という狂気じみたドミナントの犠牲になり、売上激減とバイト不足の二重苦で瀬死状態だからだ。

 (8)セブンイレブンのこの5年間のドミナントは凄まじい。新店の開業状況は、
   2011年 1,201店
   2012年 1,354店
   2013年 1,579店
   2014年 1,602店
   2015年 1,700店(予想)
 10年前まで年最高630店のペースだったが、今やその2.5倍だ。それでも鈴木会長は「コンビニは飽和状態ではない」と言い張っている。
 2016年には、全国のコンビニ数は6万店を超し、“共食い地獄”に陥るだろう。
 かくて鈴木会長は、かかる「ブラックモンスター企業」を作り、加盟店主たちの生き血を吸い続けるのだ。 

□渡辺仁「セブンイレブンの何が問題なのか ブラック企業大賞2015受賞記念」(「週刊金曜日」2015年12月11日号)
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 【参考】
【ブラック企業】大賞2015ノミネート ~セブン-イレブンなど6社~
【ブラック企業】の没落 ~改善策なき「ワタミ」の絶対絶命~
【ブラック企業】ブラックバイト対策を ~恵方巻きにセブンが販売ノルマ~
【ブラック企業】大賞2014 ~(株)ヤマダ電機が2冠を獲得~
【ブラック企業】大賞2014 ~候補決定~
【ブラック企業】を残業代ゼロが促進 ~竹中平蔵パソナ会長向け成長戦略~
【ブラック企業】対策プロジェクトが成功した要因 ~社会運動と言説~
【ブラック企業】連帯の極小サイクル ~社会の底でせめぎ合う情念~
【ブラック企業】の定義は社会運動がつくりあげた ~言説~
【【ブラック企業】が社会問題として認知されるまで ~社会運動~
【ブラック企業】赤字49億円! 「瀬死」のワタミから人もカネも消えた
【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~

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【食】赤色がよいか、褐色がよいか? ~ベーコン~

2015年12月16日 | 医療・保健・福祉・介護
  ①プリマハム「ベーコン 新鮮使い切り」(5枚×3パック)
  ②信州ハム「無塩せきベーコン」

 (1)ベーコンは、豚ばら肉を整形→塩漬け→燻煙した加工食品だ。国際癌研究所(IARC)が先日、発癌性リスクについて「注意勧告」を発表した加工肉の人気食品だ。
 ①は、11年連続年間売上No.1を誇る。食品添加物・・・・リン酸塩(Na)、カゼインNa(乳由来)、調味料(アミノ酸)、酸化防止剤(ビタミンC)、くん液、発色剤(亜硝酸Na)、カルミン酸色素。
 ②は、発色剤も保存料も使用していない。食品添加物・・・・卵殻カルシウム、香辛料抽出物。
 原材料を見ればどちらが安全かは一目瞭然だが、市場での売り上げは、むろん①。その要因は、見た目と値段だろう。
 色は、①が食欲を促す赤みを帯びた色をしているのに対し、②はやや褐色気味(肉本来の色)。
 値段は、①は②の3分の1と安い。
 見た目がよくて廉価・・・・これはメーカーの出血大サービスではなくて、実は食品添加物のせいだ。

 (2)食品添加物には、大別して
  (a)既存添加物・・・・長年使用されてきた天然添加物。
  (b)指定添加物・・・・長年使用されてきた実績はないが、国の基準で安全性が認められた添加物。
があり、ベーコンに使用されているのは(b)だ。
   ①リン酸塩(Na)・・・・食感向上。
   ②カゼインNa・・・・肉の組織の結着性を高める。
   ③調味料(アミノ酸)・・・・味つけ。
   ④酸化防止剤(ビタミンC)・・・・酸化による変質を防ぐ。
   ⑤発色剤(亜硝酸Na)・・・・鮮やかな色を保つ。
 以上の中で一番危険度が高いのは、⑤の亜硝酸Naだ。微生物の増殖を抑え、食中毒予防に有効とされるているが、急性毒性が強い添加物で、食肉などに含まれるアミンと結合して発癌性物質のニトロソアミンに変化することが指摘されている。その致死量は、0.18~0.25gと劇薬レベルだ。
 ①リン酸塩(Na)は、それ自体の毒性は低いといわれているが、問題はリンの過剰摂取がカルシウム不足を引き起こす点だ。飽食の時代といわれる現代において、リンの過剰摂取によるカルシウム不足の子どもや若い人が何と多いことか。
 ②カゼインNaは、脂肪などから得られる蛋白質にアルカリを加えて水溶性にしたもので、アレルギー体質の人には問題ありとの報告がある。
 ③調味料(アミノ酸)は、一括表示名が認められている添加物のスター的存在の添加物だ。高温加熱すると発癌性物質が発生することが指摘されている。
 ④酸化防止剤(ビタミンC)は、栄養的価値がないだけでなく、自身の酸化の過程で活性酵素の一種である過酸化水素が発生すると報告されている。

 (3)(2)の食品添加物は、ベーコンにとって必要不可欠なものは何ひとつない。
 特に深刻な健康被害が指摘されている亜硝酸Naほど不必要なものはない。
 本来、食品は命をつなぐもの。見た目の色合いのために、こんな健康害を冒してまでベーコンに鮮やかな色合いを求めるなんて、本末転倒ではないか。

□沢木みずほ「赤いベーコンが好きですか? 褐色のベーコンが好きですか?」(「週刊金曜日」2015年12月4日号)
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