語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【野球】カープのマエケン、大リーグ移籍へ ~くたばれジャイアンツ~

2015年12月05日 | 社会
 2015年12月4日、日刊スポーツなどが伝えた。
 広島カープのファンではないが、好きか嫌いかと訊かれたら、好きなほうだと答える。

 第一に、読売巨人軍みたいに軍隊的で威張った名称ではない。
 第二に、読売巨人軍みたいに野球賭博やら何やら悪いことをしない。
 第三に、読売巨人軍みたいに球団監督の不祥事を隠蔽したりしない。
 第四に、読売巨人軍みたいにグループ本社代表取締役会長・球団取締役が球団コーチ人事に口出しし、球団代表・同編成本部長・ゼネラルマネージャー・オーナー代行と喧嘩して裁判沙汰にしたりはしない。
 第五に、読売巨人軍みたいにカネに委せて他球団の四番打者やエースをぶんどってきたりしない。

□記事「マエケン、夢咲く 大リーグ挑戦「やっとチャンスが来た」」(朝日新聞デジタル 2015年12月5日)
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  前田健太@he Huffington Post
 


【詩歌】リルケ「タナグラ人形」

2015年12月05日 | 詩歌
 偉大な太陽に焼かれでもしたような
 ささやかな素焼きの土人形
 それはまるで ひとりの
 少女(おとめ)の手のしぐさが
 ふいに永遠のものになったかのようだ
 何をつかもうとするのでもなく
 彼女の感情のなかからぬけだして
 何かに向かってさしのべられているのでもない
 下顎に触れようとする手のように
 それはただ自分自身にふれているばかり

 私たちは人形の一つひとつ
 取り上げては 廻してみる
 私たちはほとんど理解することができるのだ
 なぜこれらの人形が消え失せていかないかを--
 けれども私たちはただ
 一層深く 一層すばらしく
 「消え去ったもの」に愛着をもち
 そして微笑しなければならない たぶん
 去年より少しばかり明るい微笑を


 Tanagra

 Ein wenig gebrannter Erde,
 die von großer Sonne gebrannt.
 Als wäre die Gebärde
 einer Mädchenhand
 auf einmal nicht mehr vergangen;
 ohne nach etwas zu langen
 zu keinem Dinge hin,
 aus ihrem Gefühle führend,
 nur an sich selber rührend
 wie eine Hand ans Kinn.

 Wir heben und wir drehen
 eine und eine Figur;
 wir können fast verstehen
 weshalb sie nicht vergehen, -
 tiefer und wunderbarer
 hängen an dem was war
 und lächeln: ein wenig klarer
 vielleicht als vor einem Jahr.

□ライナー・マリア・リルケ(富士川英郎・訳)「タナグラ人形」(『リルケ詩集』(新潮文庫、1963))
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 【参考】
【詩歌】リルケ「豹」
【詩歌】リルケ「秋の日」
【詩歌】リルケ「秋」



【心理】目撃者の証言は常に正しいか?

2015年12月05日 | 心理
【心理】目撃者の証言は常に正しいか?

 自分の目で見たのだから、その証言は常に正しいかというと、そうでもない。
 まず錯視がある。人間の外部における存在とは違って見えるのだ。
 ①ミュラー・リヤー錯視・・・・同じ長さの線分が、一方は相対的に短く、他方は相対的に長く見える。
  

 ②ツェルナー錯視・・・・平行線が歪んで見える。
  

 ③ヘリング錯視・・・・この歪みは、背景の線分パターンによって生じており、背景が遠近感の手がかりとなることで奥行きの感覚を生じている。
  

 ④ポンゾ錯視・・・・イタリアの心理学者マリオ・ポンゾによって報告された錯視。二本の太い線は、同じ長さなのだが、手前の線より奧の線のほうが長く見える。背景にあるものに影響されて錯視が起きる、とポンゾは主張した。
  

 ⑤フィック図形・・・・水平の線分上に同じ長さの垂直の線分を立てると、垂直線のほうがかなり長く見える。
  

 さらに、多義図形がある。同じものを見ても、複数の解釈が生まれるのである。
 ①ウサギかアヒルか?
  

 ②若い女性か老婆か?
  

 ③左足で蹴っているのか、右足で蹴っているのか?
  

 ④何が見えるか?
  

 ちなみに、③は次のいずれでもあり得る。
    

 ④は、色彩を加味すればハッキリしてくる。
 

 ⑤ご存知だまし絵のアンチボルドである。図形ではなく絵画だが、多義的な点で同じだ。
   

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【言葉】一方の得は他方の損である

2015年12月05日 | 批評・思想
 「歳をとる、それは歳月のうちに青春を組織することだ」とポール・エリュアールは言った。
 歳をとる利点の一つは、若いときには未消化だった読書が、いつの間にか消化されていることだ。
 たとえば、モンテーニュ。
 『エセー』第1巻第22章は『エセー』中もっとも短い章で、「一方の得は他方の損である」と題する。
 中学生のころ、岩波文庫から『エセー』が刊行され始めた。『徒然草』の解説からモンテーニュの名を知ったのだろう、と思う。予約購読し、刊行されるつど読んでいった。
 第1巻第22章を読み、これが世間というものか、と衝撃を受けた。
 この衝撃は今日まで続いている。

 ただし、同じ人がいつも得をしたり、逆にいつも損をするわけではない。ある場合には得をし、別の場合には損をする。そういう積み重ねである。そういうことが段々とわかってきて、衝撃の度合いは薄らいでいった。
 それと、「一方の得は他方の損にはならないで、他方の得になる場合もある」ことも知った。「一方の得は他方の得でもある」からこそ、商業が発達してきたのfだ。むろん、常に両者が得をしてきたわけではなくて、常に一方が損をする「収奪」もあったのだが。

 いま、「一方の得は他方の損である」を振り返ってみると、殊に二人、あるいは小人数の集団において成立する洞察であると思う。
 モンテーニュの念頭にあったのは、王や貴族といった支配階級ではなかったか。彼らは狭い集団をなしていた。当時のフランスの貴族たちや、貴族グループの親玉たる王は宗教戦争を血みどろになって戦った。経済的政治的な利害で、新教から旧教へ、あるいはその逆に、コロコロと信念もなく変わった。油断も隙もなかった。
 今日のグローバル企業やブラック企業は、実際に首を刎ね、血を流してはいないが、クビ切りは容赦なくやるし、目に見えない血を流させている点、モンテーニュの時代と大差はないといえるかもしれない。

□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(1)』(岩波文庫、1965)
□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(2)』(岩波文庫、1965)
□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(3)』(岩波文庫、1966)
□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(4)』(岩波文庫、1966)
□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(5)』(岩波文庫、1967)
□モンテーニュ(原二郎・訳)『エセ(6)』(岩波文庫、1967)
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【中東】テロ撲滅の「正しい」処方箋 ~ル・モンド・ディプロマティーク~

2015年12月05日 | 社会
 (1)シリア北部を制圧しトルコ国境へと進撃を続ける「イスラム国」と、米国の支援を受けたクルド人民兵との激戦が欧米諸国のテレビで報じられたのは2014年のことだ。この戦いで“テロリスト”に勝利したクルド人たちは英雄となったが、その多くはPKK(クルド労働者党)の分派PYD(クルド民主統一党)に属す。PKKといえば、米国や欧州議会からテロ組織の一つにリストアップされてきた組織だ。たとえばパリでPKKに好意的な発言をすれば「テロ扇動」とみなされ罰されることもある。
 ことほど左様に、“テロリスト”の定義は容易ではない。わかっているのは、この言葉が常に「他者」に向けられ、決して「自らの戦史」には向けられないということだ。テロリズムはある種のイデオロギーではなく、一種の行動形態として定義することができるだろう。

 (2)今こそ2001年以降続く“テロとの戦い”を、“テロリスト”たちの目的という見地から総括すべきである。メリーランド大学が公開するグローバル・テロリズム・データベースによれば、2007~2010年の間にアル=カイーダとその関連グループが関与した事件は年に約200件以上。2013年にはその3倍となっている。「イスラム国」の出現で、2014年は間違いなく記録が塗り替えられる。
 また、「現在、シリアを目指す外国人戦闘員の数は、過去20年間にアフガニスタン、パキスタン、イラク、イエメン、ソマリアでジハードに加わった外国人戦闘員の数を大きく上回る」(米国家テロ対策センター所長、ニック・ラムスセン)20万人で、うち3,400人はヨーロッパ人だという。
 “対テロ戦争”の結果を総括すれば、リビア国家は混沌状態となり、イラクは宗教対立と内戦にみまわれ、アフガニスタンは政権の足元が揺らぎ、パキスタンではタリバンの影響力が史上最大になっている。

 (3)前CIA専門高官グラハム・フューラーは『イスラームなき世界(A World Without Islam)』(未邦訳)のなかで結論を次のようにまとめている。「たとえイスラームという宗教やムハンマドという預言者が存在しなくとも、今日の西洋と中東の関係はそれほど変わりはなかっただろう」。
 つまり、西洋と中東の関係悪化の理由は、西洋による経済・社会・地政学的冒険であった十字軍、帝国主義、植民地主義、エネルギー資源の支配、果てしない政治的・軍事的介入、西洋が勝手に線引した国境線、西洋によるイスラエル建国、米国による侵略と戦争など、挙げればきりがないが、すべてイスラームという宗教を超えたところに存在する。
 にもかかわらず、中東の人々の反発は、イスラームという宗教や文化の観点から語られてきた。十字軍や、「国際プロレタリア運動」を掲げた共産主義がやってきたのと同じように、歴史上の大きな衝突があるたび西洋の道徳を掲げて自分たちの行動を正当化してきたのである。

 (4)急進的なイスラーム教説教師が広めている憎悪の言説には不安を抱くべきだろう。だが、イスラーム改革は信者の責任の範疇にある。反対に西側には、この数十年来、混乱と憎悪を助長してきた政策を転換する義務がある。“対テロ戦争”の専門家たちの忠告を一切無視することだ。
 米政府が三十年来耳を傾けてきた“専門家”とは、ほかならぬイスラエルのネタニヤフ首相だ。ネタニヤフは、著書『テロリズム--どうすれば西欧は勝てるか(Terrorism: How The West Can Win)』(未邦訳)でテロ撲滅の方法を記している。この本の処方箋は「文明の戦争」を助長し、中東を混乱のるつぼに突き落とした。中東がそこから抜け出すのは容易なことではない。

 *

●解説(土田修・「ル・モンド・ディプロマティーク日本語版の会」代表/「東京新聞」編集委員)

 <『ル・モンド・ディプロマティーク』(2月号)は、シャルリー・エブド社とユダヤ系食品スーパーへのテロ事件を受けて、「イスラーム恐怖症、あるいは下層階級恐怖症」を掲載し、フランス社会の「表現の自由」のダブルスタンダードを浮き彫りにした。
 シャルリー・エブドのようにイスラーム教を罵倒しても許されるのに、ユダヤ人を批判したコメディアンのデュードネは公演禁止の措置を受ける。ユダヤ人はフランスの経済や政治に影響力を持つが、イスラーム教徒の多くはパリ郊外など下層地域の住民だ。こうした社会的差別が「表現の自由」の不公平、さらにはイスラーム恐怖症を助長している。
 保守派の政治家は「不寛容」や「排除」の思想を利用し、政策への不満を外国人嫌いへとすり替える。日本でも在日韓国・朝鮮人へのヘイト・スピーチは「表現の自由」を理由に免罪されるが、安倍政権への批判はトイレの落書きまで捜査の対象になる。戦前の大日本帝国への回帰と靖国参拝を重視する安倍内閣は、不寛容とレイシズムをまき散らしている>

□アラン・グレシュ(川端聡子/土田修・訳)「文明と野蛮の作為的な対立 テロ撲滅の「正しい」処方箋」(「ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版」2015年4月号/改題・改稿「テロリズムを(本当に)終わらせるために」(「週刊金曜日」2015年11月27日号)から抜粋、引用
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 【参考】
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【欧州】難民流入急増で揺れる欧州の世論と基本理念
【中東】軍事的な解決策しか発想できない米国 ~また同じ失敗~
【中東】日本人が目で見た「イスラム国」の実態
【堤未果】「イスラム国」掃討と膨れあがる米の軍事費 ~いつか来た道~
【安保】「人質救出作戦」は「バカ派」の妄想 ~米軍ですら失敗~
【佐藤優】「イスラム国」は今後どうなるか ~イスラム国との「新・戦争論」(2)~
【佐藤優】「イスラム国」は今後どうなるか ~イスラム国との「新・戦争論」(1)~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【中東】安倍政権の「大失態」 ~「イスラム国」日本人人質事件~
【中東】【本】『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』
【中東】に敵をつくった安倍政権 ~二つの愚策~
【中東】なぜ「イスラム国」がはびこったのか
【中東】崩壊の抑止というシンポ ~「イスラム国」どこから来たか~
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~