(1)「産経新聞」に元気がない。
安倍晋三・首相べったりの報道では「読売新聞」にお株を奪われている。
「安倍談話」では、「日本は」「進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました」と明記されてしまった。
「村山談話」の「わが国は」「国策を誤り、戦争への道を歩んで」の部分と酷似している。安倍首相が「村山談話」の否定に失敗したのは明らかだ。
「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」の部分を、「産経」は「謝罪外交に終止符」としているが、自己中心的だ。加害者側が言い出すことではない。「産経」が口癖の道徳教育の内容とは、この程度か。
(2)それでも、「産経」発行の「正論」11月号では、伊藤隆・東大名誉教授が「安倍談話」は「基本的に東京裁判史観だ」と決めつけている。「安倍シンパ」を自称する伊藤名誉教授だが、けじめはそれなりに示している。
歴史修正主義でライバルの「WiLL」10月号では、渡部昇一が「百点満点だ!」とし、「名実ともに戦後を飾る大宰相となった」と、底なしのゴマすりぶりだ。「正論」のほうが、まだしもまともに見えてくる。
(3)「産経」は、8月6日付けの特集紙面「戦後70年・昭和20年夏」では、図版「ポツダム宣言以降の主な本土空襲と死者数」を掲載した。主な空襲地点を示し、死者総数は22万9,877人(被曝者を含む)とある。
学校での教材に好適だ。生徒たちは
「降伏がもっと早ければ、この犠牲は防げた。なぜ遅れたの?」
と問いかけてくるだろう。すでに中学校歴史教科書には、「日本政府は、最後まで天皇制の存続の確認に努めていました」(日本文教出版、現行版)とある。
(4)「産経」の歴史修正主義路線は、ふらついている。「産経」以外の歴史修正主義者たちにも、もはや未来が見込めない。「安倍談話」でつまづき、育鵬社版教科書の採択も目標に届いていない。
最近では、植村隆・元「朝日新聞」記者から、「週刊金曜日」誌などで強烈に反撃されている。しかも、同記者の記事より17年も前に、「従軍慰安婦」問題の存在を指摘した佐藤早苗『誰も書かなかった韓国』(サンケイ新聞社出版局、1974)を「産経」から出版していたことも明らかにされた。
(5)「産経」が名を挙げたのは、1982年の教科書検定で、「侵略」から「進出」への書き換え事例はなかったとの訂正記事をいち早く掲載するパフォーマンスでだ。
「朝日」バッシングは誤りであることが、いま明白になりつつある。前例に従えば、逆に「慰安婦」報道の一番乗りは「産経」だったと誇示する好機だ。
(6)この際、「産経」は「正論」・歴史修正主義路線を捨てるべきだ。
名人事件は裁判抜きの「違法殺害」、と他紙より早く1994年7月に指摘したのも「産経」だ。
安倍政権や歴史修正主義は、「峠を越した」ように見える。これらに見切りをつけるのが生き残りの道だ。
「産経」よ、目を覚ますなら、「今だ!」。
□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「歴史修正主義路線で揺れる『産経新聞』 目を覚ますのは「今」」(「週刊金曜日」2015年12月11日号)
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安倍晋三・首相べったりの報道では「読売新聞」にお株を奪われている。
「安倍談話」では、「日本は」「進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました」と明記されてしまった。
「村山談話」の「わが国は」「国策を誤り、戦争への道を歩んで」の部分と酷似している。安倍首相が「村山談話」の否定に失敗したのは明らかだ。
「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」の部分を、「産経」は「謝罪外交に終止符」としているが、自己中心的だ。加害者側が言い出すことではない。「産経」が口癖の道徳教育の内容とは、この程度か。
(2)それでも、「産経」発行の「正論」11月号では、伊藤隆・東大名誉教授が「安倍談話」は「基本的に東京裁判史観だ」と決めつけている。「安倍シンパ」を自称する伊藤名誉教授だが、けじめはそれなりに示している。
歴史修正主義でライバルの「WiLL」10月号では、渡部昇一が「百点満点だ!」とし、「名実ともに戦後を飾る大宰相となった」と、底なしのゴマすりぶりだ。「正論」のほうが、まだしもまともに見えてくる。
(3)「産経」は、8月6日付けの特集紙面「戦後70年・昭和20年夏」では、図版「ポツダム宣言以降の主な本土空襲と死者数」を掲載した。主な空襲地点を示し、死者総数は22万9,877人(被曝者を含む)とある。
学校での教材に好適だ。生徒たちは
「降伏がもっと早ければ、この犠牲は防げた。なぜ遅れたの?」
と問いかけてくるだろう。すでに中学校歴史教科書には、「日本政府は、最後まで天皇制の存続の確認に努めていました」(日本文教出版、現行版)とある。
(4)「産経」の歴史修正主義路線は、ふらついている。「産経」以外の歴史修正主義者たちにも、もはや未来が見込めない。「安倍談話」でつまづき、育鵬社版教科書の採択も目標に届いていない。
最近では、植村隆・元「朝日新聞」記者から、「週刊金曜日」誌などで強烈に反撃されている。しかも、同記者の記事より17年も前に、「従軍慰安婦」問題の存在を指摘した佐藤早苗『誰も書かなかった韓国』(サンケイ新聞社出版局、1974)を「産経」から出版していたことも明らかにされた。
(5)「産経」が名を挙げたのは、1982年の教科書検定で、「侵略」から「進出」への書き換え事例はなかったとの訂正記事をいち早く掲載するパフォーマンスでだ。
「朝日」バッシングは誤りであることが、いま明白になりつつある。前例に従えば、逆に「慰安婦」報道の一番乗りは「産経」だったと誇示する好機だ。
(6)この際、「産経」は「正論」・歴史修正主義路線を捨てるべきだ。
名人事件は裁判抜きの「違法殺害」、と他紙より早く1994年7月に指摘したのも「産経」だ。
安倍政権や歴史修正主義は、「峠を越した」ように見える。これらに見切りをつけるのが生き残りの道だ。
「産経」よ、目を覚ますなら、「今だ!」。
□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「歴史修正主義路線で揺れる『産経新聞』 目を覚ますのは「今」」(「週刊金曜日」2015年12月11日号)
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