語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~

2017年07月04日 | 批評・思想
 ①ジェイク・ナップ、外『SPRINT 最速仕事術 あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』(ダイヤモンド社、1,600円)
 ②リンダ・キャプラン・セイラー、外『GRIT(ぐりっと) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』(日経BP社 1,500円)
 ③平野啓一郎『本の読み方 スローリーディングの実践』(PHP新書、720円)

 (1)天狼院書店も東京、福岡、京都と店が増え、先日は合宿して「天狼院ワークルールズ」策定について議論した。そのとき三浦崇典・天狼院書店店主の念頭にあったのは①だ。
 グーグル・ベンチャーズのデザイナーによって開発された手法だけに、特にウェブ制作に有効だが、その枠を超えて商品やサービスの開発に使える。権限者1人を含む7人以下の専門家チームが、月~金の5日間の合宿に入り、課題の洗い直しからユーザーテストまでスプリント(全力疾走)で成果を出す。アイデア出しからテストのやり方まで、その手法や小さなテスト結果にも大きな示唆が含まれていることなどを具体的に解説する。この手法を身体化できれば、強い風土ができる。

 (2)②は、働く人に勇気を与えてくれる。GRITとは、度胸・復元力・自発性・執念の四つの言葉の頭文字をとった言葉で、「伝説的な」「偉大な」と評価される成功者たちも、実は平凡な才能の人たちであり、彼らを成功に導いたのはまさにGRITであった、ということを豊富で楽しいエピソードで証明する。
 エリート校である米陸軍士官学校で脱落する候補生が増える傾向についての分析から導き出された概念だけに、説得力は抜群だ。
 地道にコツコツとやり抜く力は、「職人を達人にし、天才に見えさせる。つまり天才は職人の進化形でしかない」。

 (3)情報過多のスピード時代だからこそ、「たくさんの本を読みたい。だから多読を」というのはよく分かる。
 しかし、あえてスロー・リーディングを進める③の主張に耳を傾けてみたい。
 「三島由紀夫の再来」と表された作家が、やみくもに読むよりも一冊を丹念に読んだほうが有益だと説き、そのための読みのポイントを明かす。「こういう所に著者の思いや力量が表出する」という作家らしい着眼や解説は、読書を変える。
 速読全盛時代に、刊行以来10年で16刷であること自体が喜ばしい。

□三浦崇典(天狼院書店店主)「より速く成果を出すメソッド ゆっくり丹念な読書の効用」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月8日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする