語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~

2017年07月15日 | 批評・思想
★森まゆみ『暗い時代の人々』(亜紀書房、2017)/1,836円
 
 <直言居士がいない時代である。立場よりも、正道を貫く人間の姿がない。組織の空気を読むばかりを美徳とする風潮が、いかに世を息苦しくしているか。
 大正末期から昭和の戦争に至る頃は「暗い時代」と呼ばれる。だが当時は闇の中にも精神の自由を掲げ、きら星のように光る「いい男」と「いい女」がいた。
 そんな9人を選び、生涯の歩みと人脈をたどるのが本書である。節を曲げず、おのれに正直に生きた群像の評伝がすがすがしい。>

 軍靴の音高まる折の国会で、万民の胸をうつ粛軍・反軍演説をぶった斎藤隆夫。国会を除名されても守り抜いた「立憲主義」の信念。<有権者の務めは選挙だけではない。一人ひとりが立憲意識に目覚め、政治家を適切に監視せねばならない--斎藤の提言は、現代への痛切な戒めに聞こえる。>
 女性の自由を社会主義に見た運動家山川菊栄。
 治安維持法に抗した政治家山本宣治。
 権力を嫌う画家竹久夢二。
 <親族友人の助けあいや奔放な異性関係にも及ぶしなやかな筆が、ユーモアや辛口批評も交えつつ生身の人間像を伝える。>
 <苦境を生き抜く同志が織りなす人間模様の濃さ。>

 憲政の神様とあおがれた尾崎行雄は、斎藤隆夫に和歌を贈った。
 「正しきを践(ふ)んで怖(おそ)れず、君独り 時に諛(おも)ねる人多き世に」
 <自分の「正しき」を決めるのが権力や上司のご意向ならば、今の世こそ暗い。>

□立野純二(朝日新聞本社論説主幹代理)「精神の自由掲げた9人の輝き」(朝日新聞デジタル 2017年7月9日)を一部引用
精神の自由掲げた9人の輝き
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【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~

2017年07月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)熱中症の救急搬送は、梅雨明けの7月上旬から上昇、7月中旬~8月上旬にピークを迎える。【日本救急医学会】
 発症時刻は12~15時が最も多い。熱中症=高齢者のイメージが強いが、発症数をみると、実際は運動中や仕事中の10代~壮年男性の比率が高い。「男性」は熱中症のリスク要因の一つなのだ。
 仕事中の発症では、臨時の期間工やバイトなど短期雇用もリスク。慣れない環境に心身が対応できないせいか。この時期は臨時雇いが多いので雇用主は注意したほうがよい。

 (2)逆に、日常生活のなかで起こる「非労作性熱中症」は高齢女性が多い。体力がないうえに、水分や塩分を身体の外に出す作用がある降圧薬を飲んでいるなど、複数のリスクが重なり、重症化しやすい。自分で病院へ行くことは期待できないので、周囲が注意するしかない。

 (3)熱中症の重症度は1~3度に分類される。
 軽症の1度の症状は、「めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返り」など。身体をとにかく冷やし、口から水分とナトリウムを補給させる。
 2度は、「頭痛、吐く、倦怠感、集中力の低下」などがみられる「熱疲労」の状態。この場合は即、病院へつれていくこと。
 3度はさらに進み、足がもつれる、暴れだす、呼びかけに目を開けるが応えない、痛み刺激(ペン先で指をつつく、など)にしか反応しない、など意識障害が生じる。問答無用で救急車を呼ぼう。

 (4)熱中症の治療は、冷却と水分・塩分補給だが、米国で「ダントロレン注射剤」という点滴薬が承認待ちの状況だ(2017年6月現在)。
 もともと薬剤性の悪性発熱の特効薬で、筋弛緩剤の一種。2015年、平均気温40度という酷暑のメッカ巡礼月(9月)を選び、サウジアラビアの救急病院で臨床試験を行った。標準治療よりも、速やかに重症度が改善することが認められた。
 救急現場ではおなじみの薬なので、いずれは日本も追随するかもしれない。ただ、治療薬が登場しようと、予防と早期対応が大切なことに変わりはない。太い血管やリンパ管が通っている手首、首筋、脇の下を冷やし、水分補給を忘れないこと。

□井出ゆきえ(医学ライター)「梅雨明け~お盆は熱中症の季節/運動・仕事中の男性、高齢者は要注意 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.357~」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月15日号)
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