語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】神在月 ~出雲市~

2017年11月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 旧暦10月は神無月。全国の八百万(やおよろず)の神々は旧暦10月11日から17日まで島根県の出雲に集まって、農業や縁結びについて話し合う「神議り(かむばかり、かみはかり)」を行うという。
 神々のいなくなる他の地方では「神無月」だが、出雲では「神在月(かみありづき)」と呼ぶ。今年は、11月28日から12月4日までに当たる。
 出雲の各神社では、この期間に「神迎祭(かみむかえさい)」「神在祭」そして、諸国に戻る神様をお見送りする「神等去出祭(からさでさい)」が行われる。
 期間中、地元の人々は、神々の神議りに妨げがないようにと歌や踊りなどの騒がしいことは行わず、建築工事はもちろん庭も掃かずに静かに過ごす。そこから「御忌祭(おいみさい)」とも呼ばれるそうだ。
 出雲大社は縁結びで知られるが、神在祭に合わせて「縁結び大祭」が行われる。今年は12月2日から4日。参列にはあらかじめ応募が必要で、申込み方法は出雲大社のホームページに1カ月ほど前から掲載されるそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「神在月 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月6日)を引用
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【本】『世界をまどわせた地図』

2017年11月14日 | 批評・思想
★エドワード・ブルック=ヒッチング(井田仁康・日本語版監修、関谷冬華・訳)『世界をまどわせた地図』(日経ナショナルジオグラフィック社 2,916円)
 Edward Brooke-Hitching 古地図の愛好家。ロンドンでアンティーク地図と古本の山に囲まれて暮らす。

 (1)本書に登場するのは、すべてウソの地図である。あるものは意図的に、またあるものは誤解や怠慢によって描かれ、人々をまどわせてきた。地図を信じて探検に出かけたり、人生をかけ新天地に移住しようとした人もいるというから、ずいぶんと人騒がせかつ迷惑な話である。

 (2)だが、本書を気まぐれにめくっていると、どういうわけか、それらがときどき正確な地図よりもチャーミングに見えてくる。
 〈例〉北極にあるとされた巨大な黒い山ルペス・ニグラ。この山は磁石でできており、周囲の海には強大な渦が巻き、海水が地球の中心に吸い込まれているという。この想像力の賜物はメルカトルの地図(1569年)に採用された。
 〈例〉同じ16世紀にオルテリウスによって描かれたアメリカ北東部の地図には、ノルムベガという町の記載がある。これは探検家のデタラメな報告を真に受けて描かれ、後に別の探検家がそこには金、銀、真珠がたっぷりあったと報告したため、イギリスやフランスが植民地にしようと躍起になったが、もちろん見つけることはできなかった。
 〈例〉北米大陸西部にあるとされた巨大湾、ナイル川の源流と考えられていたムーン山脈、オーストラリア中央部の巨大な湖など。どれも実在しないにもかかわらず、それらのデタラメな地図は人をワクワクさせる。

 (3)知らない土地が盛大に残っていた時代。地図がところどころいい加減なのは当たり前のことだった。それは、たぶんこんなふうになっているのでは、といったその程度のものであり、そこには未知の世界を空想する余地が残されていた。
 それが今や、世界の隅々まで机上で見ることができる時代。便利にはなったものの、なんだか息苦しい。
 ここに載っているのはどれも間違った地図ではあるけれど、たまには描かれた当時の気分になって、世界の驚異に心遊ばせるとよい。

□宮田珠己(エッセイスト)「(書評)『世界をまどわせた地図』 エドワード・ブルック=ヒッチング〈著〉」(朝日新聞デジタル 2017年10月16日)
(書評)『世界をまどわせた地図』 エドワード・ブルック=ヒッチング〈著〉
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 【参考】
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~

2017年11月14日 | 社会
 (1)2017年6月にセルビアの新首相に就任したブルナビッチ氏は、同性愛者であることを公表している。
 9月にはLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の祭典「ゲイ・プライド」にも参加した。これは同性婚や反差別などの法的権利を求める社会運動だ。
 しかし、セルビアではいまだ国民のほぼ半数が同性愛は直さなければいけない「病気」だと思っている(セルビアでは2008年まで、同性愛は「病気」だと公式に定義されていた)。10年のゲイ・プライドでは、ホモフォビア(同性愛者嫌悪)との衝突で150人が負傷し、14年まで祭典が中止されていたくらいだ。

 (2)セルビアではヴチッチ大統領が実権を握っている。そのヴチッチ氏が、昨年政治に参加したばかりの同性愛者であるブルナビッチ氏を、41歳の若さで首相に据えたのは、欧州連合(EU)に加入するためのアピールだろう。
 人権問題がEU加盟の足かせとなっているのはトルコだけではないのだ。

 (3)東欧ではいまだに宗教の力が国民の意識に大きな影響を与えている。
 特にポーランドではカトリック教会の影響力が強大で、同性婚に対しては攻撃的な姿勢を持っている。同国のLGBTへの差別に対する法律・規制はないに等しく、LGBTへの暴力や偏見は野放し状態だ。学校でもLGBTに対して否定的な教育を行っている。このため、ポーランド国民は17%しか同性婚を容認していない。
 また、ポーランドとラトビアでのホモフォビアは、国家主義と反EU運動にもつながっている。EUに加盟する前は同国に同性愛者などいなかったと、あたかも同性愛がEUの疫病であるかのような扱いをしているラトビアに至っては、同性婚を容認している国民は12%しかいない。

 (4)他方、西欧で最もリベラルなオランダでは82%、スウェーデンでは70%が同性婚を容認している。
 ドラノエ・元パリ市長、リビングストン・元ロンドン市長、01~14年の長期にわたってベルリン市長を務めたヴォーヴェライト氏など、要職に就いた人たちも自分がLGBTであることをカミングアウトしている。
 西欧・北欧では意外にも右翼がLGBTに対して理解を示し、場合によっては積極的にLGBTの権利をサポートしている。
 これは右翼の政治的な標的である移民の大多数がイスラム教徒だからだ。イスラム教では国によって強弱の差はあるものの、同性愛は憎悪の対象であり、死刑となる国もある。そのイスラム教との対峙をアピールするためもあり、西欧・北欧の右翼はLGBTを擁護する姿勢を崩していない。

 (5)米シンクタンクのピュー研究所によると、LGBTを容認する国は宗教色の弱い、豊かな西欧・北欧が占めている。その反面、宗教色の強い、貧しい東欧ではLGBTに対する偏見は根強い。また、東欧の国々がEUに加盟すると人権保護の意識が高まる、との希望的観測をする向きもあるが、EUにはLGBTの人権保護を強制する力はない。これらの国々がより豊かになり、民主的になるのを待つしかないだろう。
 LGBTの人権保護への捉え方の大きな隔たりは、EUにおける恒久的ともいえる東西の分裂をそのまま表している。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「もう一つの東西分裂 LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
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【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

【南雲つぐみ】干し柿 ~栄養豊富~

2017年11月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 柿は1個でブロッコリー半株程度のビタミンCが取れ、カリウムやベータカロテンなども含まれている。ベータカロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を健康に保つ作用がある。
 そこで古くから柿は胃粘膜を守り、アルコールの代謝を高めて二日酔いを防ぐといわれ、和食では、よく酒席のデザートとして出される。
 柿は中国原産だが、奈良時代には日本に伝わっていたという。平安時代に作られた法令集「延喜式」には、祭礼用の菓子として「干し柿」「生柿」が記されており、干し柿も作られていたことが分かる。果物特有の甘い香りや酸味がないのも特徴で、なますにしたり、和食の素材としても味わえる。
 タンニンが強く、そのままでは渋くて食べられない渋柿も、干すと甘くなり、さらに水分が凝縮されて栄養価も高まるということを、いったい誰が発見したのだろうか。
 宇治田原町(京都)は干し柿発祥の地とされ、禅定寺には飢饉の年に、観音様が少女の姿になって干し柿を村に配り、作り方を教えてくれたという逸話がある。

□南雲つぐみ(医学ライター)「干し柿 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月27日)を引用
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