語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】体に良い起き方 ~脳貧血の対策~

2017年11月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 朝、跳び起きた瞬間に腰や背中を痛めてしまったという話がある。寝ている間の筋肉は、実はこわばりやすい。筋肉は動かしていると柔軟性が保たれるが、寝ている間は昼間のように体を動かさないからだ。
 また、血流も起きているときほど活発ではなく、心拍数も低い。急に起き上がると頭まで血流が十分に届かず、脳貧血(起立性低血圧)も起こりやすい。脳貧血やめまいを起こしやすい人だけでなく、健康な人にとっても、目が覚めてすぐに跳ね起きるという習慣は、体に良くないのだ。
 これから冬に向かう。朝晩の気温がますます下がり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる季節でもある。目が覚めたら、ゴロゴロと寝返りを打ったり、手足の曲げ伸ばしや手指を開閉して全身の血行をよくし、筋肉をほぐしながら起きるようにしよう。
 民間療法の西式健康法の中にある「血管運動」は、あおむけになって手足を上げ、ぶるぶると細かく動かすというものだ。血行を良くするということで愛好者が多い。寝起きにできる安全性の高い運動だ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「体に良い起き方 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月26日)を引用
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【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~

2017年11月24日 | 批評・思想
★川上弘美『森へ行きましょう』(日本経済新聞出版社 1,836円)

 <(前略)この本は川上弘美の長編小説である。「一九六六年 留津 〇歳」から始まり、「一九六六年 ルツ 〇歳」と続く。そして同じ時に生まれた同じ音の名前をもつ二人の人生が語られていく。留津とルツが出会うことはない。二つの物語が同時進行していくのだが、一方の物語の登場人物がもう一方の物語に出てきたりする。読者は、語り出されるエピソードや人間観察に、ときにニヤリとし、ときにドキリとしながら二つの物語を並行して読み進んでいく。
 だが、この物語の前半ですでに感づかなければいけない。なんだろう、この微弱な緊張感は。
 時間は二人が五十歳になる二○一七年まで整然と刻まれていく。しかし、いわば物語の空間が歪(ゆが)むのである。お互いの登場人物が交差すると、留津の物語とルツの物語が作用しあって、かすかに陽炎(かげろう)のように物語の輪郭が揺れる。さらに読み進むと、留津/ルツと同じ音の人物が増える。「琉都」「るつ」「流津」「瑠通」「る津」。さらに、同姓同名の人物が、別人なのだが、まったく別人とも言えない仕方で現れてきたりもする。
 人生には無数の分岐点がある。小さな分岐点なら、ほら、いまも。そこで人生が変わる。別の道を行っていたならば、どうなっていただろう。その分岐した物語が、ここに描き出されているのである。流れていく時間に沿って、物語の空間が歪み、分岐し、増殖する。次第に読者はその中で眩暈(めまい)に襲われるだろう。(後略)>

□野矢茂樹(東京大学教授・哲学)「(書評)『森へ行きましょう』 川上弘美〈著〉 歪み増殖していく物語に迷う」(朝日新聞 2017年11月19日)
(書評)『森へ行きましょう』 川上弘美〈著〉 歪み増殖していく物語に迷う
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 【参考】
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』