(1)「恋におちたシェイクスピア」「パルプ・フィクション」などで知られる米映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏をめぐるセクハラ(sexual harassment)疑惑が表面化したことで、ハリウッドが蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。
米NBCテレビの人気バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」も10月14日、皮肉たっぷりに同氏のセクハラ疑惑を取り上げた。コメディアンのケイト・マッキノンさんは老女優に扮して「ハリウッドでのセクハラは古くて新しい問題」と痛烈に批判した。
ハリウッドで暴行を受けているのは有名女優だけではない。被害女性はどこにでもいる。パンドラの箱(Pandora's box)は開いた。そしてパンドラは怒っている。
その後、まさにパンドラの箱が開いた状況になった。
(2)米ニューヨーク・タイムズ紙が、独自の調査報道でワインスタイン氏の性的暴行(sexual assault)などを最初に明らかにしたのが10月5日。すると、グウィネス・パルトロウさんやアンジェリーナ・ジョリーさんら著名女優が、次々と被害に遭ったと名乗り出たのだ。
被害者の女優が今まで黙っていた背景に何があるのか。いわゆる「キャスティングカウチ(casting couch)」だ。プロデューサーら実力者が女優に対して役と引き換えに性的関係を迫る行為のことだ。性的関係を受け入れなければハリウッドでは成功できない--。このように女優側は考えるわけだ。
ワインスタイン氏以外のスキャンダルも次々と明らかになっている。その結果、米アマゾンの映画・ドラマ子会社、アマゾン・スタジオのトップを務めるロイ・プライス氏は休職に追い込まれ、「ラッシュアワー」などを手掛けた売れっ子監督のブレット・ラトナー氏は米映画大手ワーナー・ブラザースとの契約を切らなければならなくなった。
(3)ソーシャルメディアを舞台に「Me Too(私も)」運動が広がっており、これからも被害者側からの告発が続きそうだ。
ハッシュタグ「#MeToo」を使って「私も被害者」と名乗り出ているのは女優にとどまらない。男優もいるし、アーティストもいる。そのうちの一人はミュージシャンのレディー・ガガさんだ。
ハリウッドでセクハラを助長する性差別主義(sexism)が根強いのはなぜなのか。
地元紙の米ロサンゼルス・タイムズは「ハリウッドの隅々まで男性支配が徹底しているため」と指摘する。根拠にしたのが南カリフォルニア大学(USC)の調査だ。それによると、2016年に公開されたヒット作のうち監督の95%、脚本家の87%、プロデューサーの79%が男性だったという。
だからこそ、ハリウッドは映画界の巨匠ロマン・ポランスキー氏にかねて同情的だったのだろう。性的虐待事件を起こして国外逃亡していた同氏が8年前にスイスで身柄を拘束されると、釈放を求める動きがハリウッドで広がったのである。その中心人物がワインスタイン氏だった。
だが、パンドラの箱は開いた。ハリウッドでも男性支配の構図がいよいよ崩れ始めるかもしれない。
□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Pandora's box in Hollywood(ハリウッドのパンドラの箱) /ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~Key Wordで世界を読む No.166~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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【参考】
「【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~」
「【中国】日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由 ~日系コンビニ初の南京出店~」
「【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由」
「【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~」
「【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~」
「【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~」
「【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~」
「【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~」
「【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~ 」
「【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~」
「【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~」
「【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由」
「【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~」
「【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民」
「【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~」
「【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~」
「【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~」
「【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~」
「【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~」
「【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~」
「【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~」
「【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~」
「【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~」
「【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~」
「【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~」
「【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~」
米NBCテレビの人気バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」も10月14日、皮肉たっぷりに同氏のセクハラ疑惑を取り上げた。コメディアンのケイト・マッキノンさんは老女優に扮して「ハリウッドでのセクハラは古くて新しい問題」と痛烈に批判した。
ハリウッドで暴行を受けているのは有名女優だけではない。被害女性はどこにでもいる。パンドラの箱(Pandora's box)は開いた。そしてパンドラは怒っている。
その後、まさにパンドラの箱が開いた状況になった。
(2)米ニューヨーク・タイムズ紙が、独自の調査報道でワインスタイン氏の性的暴行(sexual assault)などを最初に明らかにしたのが10月5日。すると、グウィネス・パルトロウさんやアンジェリーナ・ジョリーさんら著名女優が、次々と被害に遭ったと名乗り出たのだ。
被害者の女優が今まで黙っていた背景に何があるのか。いわゆる「キャスティングカウチ(casting couch)」だ。プロデューサーら実力者が女優に対して役と引き換えに性的関係を迫る行為のことだ。性的関係を受け入れなければハリウッドでは成功できない--。このように女優側は考えるわけだ。
ワインスタイン氏以外のスキャンダルも次々と明らかになっている。その結果、米アマゾンの映画・ドラマ子会社、アマゾン・スタジオのトップを務めるロイ・プライス氏は休職に追い込まれ、「ラッシュアワー」などを手掛けた売れっ子監督のブレット・ラトナー氏は米映画大手ワーナー・ブラザースとの契約を切らなければならなくなった。
(3)ソーシャルメディアを舞台に「Me Too(私も)」運動が広がっており、これからも被害者側からの告発が続きそうだ。
ハッシュタグ「#MeToo」を使って「私も被害者」と名乗り出ているのは女優にとどまらない。男優もいるし、アーティストもいる。そのうちの一人はミュージシャンのレディー・ガガさんだ。
ハリウッドでセクハラを助長する性差別主義(sexism)が根強いのはなぜなのか。
地元紙の米ロサンゼルス・タイムズは「ハリウッドの隅々まで男性支配が徹底しているため」と指摘する。根拠にしたのが南カリフォルニア大学(USC)の調査だ。それによると、2016年に公開されたヒット作のうち監督の95%、脚本家の87%、プロデューサーの79%が男性だったという。
だからこそ、ハリウッドは映画界の巨匠ロマン・ポランスキー氏にかねて同情的だったのだろう。性的虐待事件を起こして国外逃亡していた同氏が8年前にスイスで身柄を拘束されると、釈放を求める動きがハリウッドで広がったのである。その中心人物がワインスタイン氏だった。
だが、パンドラの箱は開いた。ハリウッドでも男性支配の構図がいよいよ崩れ始めるかもしれない。
□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Pandora's box in Hollywood(ハリウッドのパンドラの箱) /ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~Key Wordで世界を読む No.166~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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【参考】
「【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~」
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「【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~」
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「【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由」
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