(1)日系コンビニエンスストアの中国における2016年末の店舗数は、セブン-イレブンが1,371、ファミリーマートが1,810、ローソンが1,003。いずれも日本の店舗数の1割程度にすぎない。それが、近年急激に増加している。
その中で最近話題なのが、日系として初めて南京に進出したローソンだ。
(2)ローソンが南京に進出したのは2017年8月。オープンするや否や大量の客が押し寄せ、2時間で日配食品は完売、2日目以降も爆発的に売り上げ、1日当たりの売上高(日販)が11.8万元(約200万円)に達する店舗も現れた。これはローソンが中国に進出して以来の最高記録である。
中国の一般的なコンビニの日販は6,000元(約10万円)程度で、比べものにならない水準だ。さらに、2カ月後には別の店舗でなんと20万元(約340万円)の売り上げを突破した。ローソンの日本での全店平均日販55万円の6倍もの数字をたたき出したことになる。
(3)現地では(2)を「ローソンの南京現象」と呼んでいるが、一体何が起こったのか。
南京でのエリアフランチャイジーである南京中央商場集団の副総裁は、大きく三つの要因を挙げる。
(a)南京は人口800万人の大都市だが、コンビニの多くは洗練されておらず、24時間営業の店舗もない、など消費者ニーズを満たしていなかった。そこに目を付け、ローソンは一部で24時間営業の店舗を出店したところ、消費者に受け入れられた。
(b)南京中央商場集団が店舗開拓・運営やマーケティング、物流など現地オペレーションを担当し、ローソンが商品、運営指導、コールドチェーン設備、商品棚等の管理を担当した。この歯車がかみ合った。
(c)コンビニという業態やローソンの認知度を高めるため、SNSや屋外広告、有名人の活用やネットアイドルによる試食など、あらゆるチャネルを通じてプロモーションを行ったことが功を奏した。
(4)その他、営業していく中で見えてきたのが、南京ではスイーツや弁当といった食品に対するニーズが高いことが挙げられる。これらの売上高に占める比率は、上海の40%に対して南京は60~70%と高く、また商品の味とコストパフォーマンスも南京人にぴたりとはまった。南京地場のコンビニではローソンが提供しているような商品を提供できていないことも勝因だ。
今後の南京での展開は、
・来年の出店計画は120~150店舗
・このうちフランチャイズ店は80~100店舗
と計画している。そして3~5年かけて全体で300~500店舗まで増やしていく計画だ。
(5)南京現象といわれるだけあって、現時点でフランチャイズへの加盟希望者はなんと3,000人近くもいるという。
中国ではフランチャイズに加盟しさえすればもうかるという安直な考えの人も少なくない。どれだけ効率よく管理していけるか、という課題はある。
だが、これだけの希望者が殺到している現状を見ると、少なくともローソン側が選べる立場にあることは間違いない。
店舗数では、ローソンはセブン-イレブンとファミリーマートの後塵を拝している。今後、南京現象を全国に広げることができるか。
□呉 明憲(TNCリサーチ&コンサルティング代表取締役)「日系コンビニ初の南京出店/日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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【参考】
「【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由」
「【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~」
「【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~」
「【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~」
「【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~」
「【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~」
「【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~ 」
「【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~」
「【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~」
「【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由」
「【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~」
「【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民」
「【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~」
「【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~」
「【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~」
「【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~」
「【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~」
「【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~」
「【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~」
「【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~」
「【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~」
「【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~」
「【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~」
「【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~」
その中で最近話題なのが、日系として初めて南京に進出したローソンだ。
(2)ローソンが南京に進出したのは2017年8月。オープンするや否や大量の客が押し寄せ、2時間で日配食品は完売、2日目以降も爆発的に売り上げ、1日当たりの売上高(日販)が11.8万元(約200万円)に達する店舗も現れた。これはローソンが中国に進出して以来の最高記録である。
中国の一般的なコンビニの日販は6,000元(約10万円)程度で、比べものにならない水準だ。さらに、2カ月後には別の店舗でなんと20万元(約340万円)の売り上げを突破した。ローソンの日本での全店平均日販55万円の6倍もの数字をたたき出したことになる。
(3)現地では(2)を「ローソンの南京現象」と呼んでいるが、一体何が起こったのか。
南京でのエリアフランチャイジーである南京中央商場集団の副総裁は、大きく三つの要因を挙げる。
(a)南京は人口800万人の大都市だが、コンビニの多くは洗練されておらず、24時間営業の店舗もない、など消費者ニーズを満たしていなかった。そこに目を付け、ローソンは一部で24時間営業の店舗を出店したところ、消費者に受け入れられた。
(b)南京中央商場集団が店舗開拓・運営やマーケティング、物流など現地オペレーションを担当し、ローソンが商品、運営指導、コールドチェーン設備、商品棚等の管理を担当した。この歯車がかみ合った。
(c)コンビニという業態やローソンの認知度を高めるため、SNSや屋外広告、有名人の活用やネットアイドルによる試食など、あらゆるチャネルを通じてプロモーションを行ったことが功を奏した。
(4)その他、営業していく中で見えてきたのが、南京ではスイーツや弁当といった食品に対するニーズが高いことが挙げられる。これらの売上高に占める比率は、上海の40%に対して南京は60~70%と高く、また商品の味とコストパフォーマンスも南京人にぴたりとはまった。南京地場のコンビニではローソンが提供しているような商品を提供できていないことも勝因だ。
今後の南京での展開は、
・来年の出店計画は120~150店舗
・このうちフランチャイズ店は80~100店舗
と計画している。そして3~5年かけて全体で300~500店舗まで増やしていく計画だ。
(5)南京現象といわれるだけあって、現時点でフランチャイズへの加盟希望者はなんと3,000人近くもいるという。
中国ではフランチャイズに加盟しさえすればもうかるという安直な考えの人も少なくない。どれだけ効率よく管理していけるか、という課題はある。
だが、これだけの希望者が殺到している現状を見ると、少なくともローソン側が選べる立場にあることは間違いない。
店舗数では、ローソンはセブン-イレブンとファミリーマートの後塵を拝している。今後、南京現象を全国に広げることができるか。
□呉 明憲(TNCリサーチ&コンサルティング代表取締役)「日系コンビニ初の南京出店/日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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【参考】
「【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由」
「【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~」
「【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~」
「【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~」
「【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~」
「【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~」
「【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~ 」
「【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~」
「【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~」
「【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由」
「【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~」
「【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民」
「【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~」
「【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~」
「【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~」
「【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~」
「【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~」
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「【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~」
「【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~」
「【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~」
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