語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【アベノミクス】似而非改革 ~「減反廃止」~

2013年12月16日 | 社会
 (1)農業は、常に成長戦略の柱だった。
 しかし、鉄のトライアングル(農協・農水族議員・農水省)の抵抗によって、改革は頓挫した。結局、日本の農業は衰退の一途をたどってきた。
 アベノミクスの第三の矢は、これまで何の成果もあげていない。
 マーケットでは、失望の波が広がっていた。
 そこへ、減反政策という戦後農政の根幹を廃止する、というニュースが各紙の一面を飾った。インパクトは大きかった。

 (2)ところが、農協も農水族議員も、多少反対することはしたが、妙にあっさりと引き下がった。
 ヘンだ・・・・。
 そして、農水省から、今回の政策変更によって農家の所得は増加する、という試算が発表された。

 (3)当初、「減反廃止」と前向きにとらえていた報道各社は、騙されたんじゃないか、と感じ始めた。
 しかし、今さら「戦後農政の大転換」という報道を取り消すわけにもいかない。
 結果的に補助金が増えそうだ、という点をとらえて、批判的な論調を若干加えてお茶を濁している。
 しかし、そんないい加減な報道ぶりでは、国民はまたしても安部政権の詐術に騙されてしまう。

 (4)減反の本質は何か。
 コメの生産量を減らして、米価を高止まりさせる政策だ。
 減反は、目的ではなく、手段にすぎない。
 政策の目的は、あくまで「米価維持」だ。それは、農家の収入を維持するだけでなく、農協のコメ販売手数料を維持することでもある。
 さらに、農協は、兼業農家の兼業収入に狙いを定めて、銀行・保険業務を行って、その収益の大半を稼いでいる。
 価格維持を廃止すれば、規模の小さな兼業農家は廃業に追い込まれる。
 農協から見れば、死活問題だ。

 (5)安倍総理は、日本の農業の輸出を倍増し、成長産業にしよう、と言っている。そのためには何が必要か。
  (a)価格競争力をつける。=米価を下げる。
  (b)生産を増加させる。
  (c)収益性を向上させる。大規模化も必要だが、米国、カナダ、オーストラリアなどに規模では勝てない。高付加価値化で勝負するしかない。
 以上の観点からすると、「減反廃止」政策はまったく逆の政策になっている。
 一方では、農家が自主的に生産量を決める仕組みにする、という。だのに、主食用米の生産が増えすぎないように飼料用米に対する補助金を大幅に増やす、という。
 それでも生産が増えすぎたら、主食用米を飼料用米に転用する。
 これでは、主食用米の供給は増えず、価格は下がらない。
 おまけに、主食用米から、付加価値が圧倒的に低い飼料用米の生産にシフトさせてしまう。
 要するに、(a)~(c)の3条件のすべてを成立させない仕組みだ。

 (6)飼料用米に補助金を増やせば、農地を手放す兼業農家は経る。大規模化は進まない。
 つまり、今回の「減反廃止」は、これまでの政策の本質をそのまま維持する「似而非改革」だ。
 加えて、株式会社の農業参入全面解禁、の言う業委員会制度の廃止、農協の金融業務の分離や独禁法適用除外廃止・・・・といった改革の本丸はまったく手つかずだ。
 年明けに、また、こまやかしの部分的「改革」で国民を騙すに違いない。

 (7)TPPで、コメの関税を廃止すれば米価は大幅に下がるはずだ。ワーキングプアの若者も美味しいコメをもっとたくさん食べられるだろう。
 それでも競争できる農家や企業が農地を集約化して生産を増やし、美味しいコメを世界に輸出する。それで農協がつぶれても何ら問題ない。
 「米価維持政策の廃止」こそ、今もっとも必要なことだ。
 農業の「衰退戦略」をいつまで続けるのか。 

□古賀茂明「「減反廃止」という似非改革 ~官々愕々第89回~」(「週刊現代」2013年12月14日号)
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【社会保障】国民年金の不公正、不公平 ~主婦の年金、お得な年金~、

2013年12月15日 | 社会
 (1)公的年金制度は、必ずしも公正かつ公平に運営されてきたとは言いがたい。
 最近の例では、「主婦の年金」(3号被保険者制度)がある。サラリーマン(厚生年金加入者)の夫に扶養されている限り、国民年金の保険料を支払わなくてよい。しかし、夫が脱サラした(厚生年金加入者でなくなった)り、夫の扶養家族から外れた場合、妻は第3号から第1号(国民年金)への手続きを行ったうえ、国民年金の保険料を納付しなければならなくなる。
 ところが、この切り替え手続きの必要性を、厚生労働省も旧・社会保険庁も十分に情報提供してこなかった。事務ミスではないが、ほとんど事務ミスに近い。
 その結果、100万人にものぼる「主婦」が、加入期間の不足、未納期間によって無年金になったり、年金額が減額されることが判明した。
 疑似「事務ミス」によって、権利が侵害されたのだ。

 (2)事の重大さに、世論は盛り上がった。国会でも大議論となった。
 紛糾のあげく、救済策として「年金確保支援法」が成立した。これによって、大半の「主婦」が救済されることになった。

 (3)この種の「事務ミス」による権利侵害は、ほかにも例がある。11月26日の「年金記録問題に関する特別委員会」では、わけても深刻な「事務ミス」が報告された。
 国民年金加入者が、任意加入できる「付加年金」において、法令に則った統一的な事務が行われてこなかったため、著しい不公平が発生していたのだ。
 付加年金は、毎月400円を上乗せして納付できる制度だ。保険料の半額が年金受給に反映される「お得な年金」だ。
 <例>国民年金を満額受給できる人が、過去20年間、付加年金の保険料96,000円【注1】を支払っていた場合、65歳から受給する年金の総額は6%ほど増えて、826,500円【注2】となる。
 ただし、付加年金は、国民年金のように後納は認められていない。納付期限内(翌月末まで)に納付しなければ、自動的に脱退させられる。
 かかる窮屈な制度にしたのは、任意加入で、得な年金だから、強制加入の国民年金の本体との差別化を図ったのだ。
 しかし、窓口における事務が統一されていないので、(a)期限内に納付しなかったため付加年金を脱退させられた人がいる一方、(b)咎め立てされることなく付加年金の保険料を納付できていた人もいた。
 こうした違いが発生した原因に、事務マニュアルが作成されていなくて、担当者によってバラバラの取り扱いをしていたからだ。
 (a)は損し、(b)は得をする。
 (b)は22万人に達する。【厚労省の推計】

 【注1】400円×12ヵ月×20年=96,000円
 【注2】国民年金の満額受給額778,500円+付加年金48,000円

 (4)厚労省年金局は、(3)の22万人に対し、今から脱退手続きを取って貰い、支払ってきた付加保険料の還付請求書の提出を求めていく、という。すでに年金を受給している人からは、付加年金の返納を求める方針も検討中だ。
 年金加入者や受給者に負担を強いることで、自分たちの「事務ミス」の帳尻を合わせようとしているのだ。

□岩瀬達哉「窓口によって説明がバラバラ 事務的ミスが生みだす年金不平等という理不尽 ~ジャーナリストの目 第186回~」(「週刊現代」2013年12月14日号)
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【食】TPPで遺伝子組み換え食品が大量に流入する

2013年12月14日 | 社会
 (1)食料・軍事・エネルギーは、国家存立の3本柱だ。
 日本では、その認識が薄いが、一次産業をおろそかにしたら、食料の量的確保はおろか、質的確保も難しくなる。

 (2)2008年、世界食料危機の際、ハイチ、フィリピンなどコメを主食とする国で、お金を出してもコメが買えずに死者が出る事態となった。世界的にはコメの在庫は十分にあったのだが、不安心理で各国がコメを売らなくなったのだ。
 米国の食料政策によって、コメの関税を極端に低くしてしまったため、いつのまにか自国におけるコメ自給率が低下し、輸入に依存する状態が形成されていたからだ。
 コメ生産大国の日本も、こうした事態が起こりかねない。

 (3)米国の食料戦略が最も標的とするのは、日本だ。
 第二次世界大戦後、余剰小麦の援助などを活用し、戦略的に日本の食生活変革が行われた。その結果、米国の小麦、飼料穀物、畜産物なくして日本の食生活が成り立たない事態となった。食料自給率はすでに39%にまで低下した。
 食料の量的確保に係る安全保障の崩壊が、同時に質的な「安全性」保障をも崩す事態を招いている。この事態に、TPPがとどめを刺す。

 (4)TPPについて、もっとも懸念されるのは、食の安全基準が緩和されることだ。
 BSEについては、2013年2月1日、すでに輸入条件を緩和した。
 防腐剤・防カビ剤は、日米2国間協議の重要項目に挙がっている。
 米国のTPPの農業交渉官の一人は、モンサント社(米国の食戦略を握る)の前ロビイストだ。交渉結果は、推して知るべし。
 動植物の衛生・検疫に係る国際基準(SPS協定)では、各国の置かれている自然条件、食生活の違いも勘案し、科学的根拠に基づいて、各国がSPS基準より厳しい独自の条件を採用することも認めている。
 しかるに、TPP交渉官は、「各国が決める権限がある」ことを問題にしている。日本が不透明で科学的根拠に基づかない検疫措置で米国の農産物を締め出していると難癖をつけ、TPPで米国がチェックして変えられるシステムに変更することを目論む。

 (5)わけても懸念されるのは、遺伝子組み換え(GM)表示義務撤廃によるGM食品のさらなる流入だ。
 欧州では、GM作物の安全性がまだ確定しないために、原則として輸入も生産も制限している。
 日本では、GM食品の5%以上の混入について表示義務がある。「遺伝子組み換えでない」という任意表示も認められている。
 しかし、すでにGM食品輸入の世界的大国となった日本では、食用油、醤油、清涼飲料水、菓子類に使用される大豆由来のコーンスターチなど、任意表示ゆえにGM原料由来の食品を気づかずに摂取していることが多い。
 TPPにより、GM表示義務が撤廃されたら、消費者は非GM食品を食べたいと思っても、選ぶことができない。その結果、大豆食品を始め、GM食品がさらに広がっていく。

 (6)食の安全性のほかにも、問題がある。
 GM種子の販売は、穀物メジャーの数社(モンサント社など)のシェアによって多くを占められる。トウモロコシは交配によって作られた新品種の初代(F1種)が多く、大豆は固定種が多い。いずれにせよ、農家はそれまで自家採種してきた種を、毎年モンサント社などの寡占的GM種子会社数社から種を買い続けないと食料が生産できなくなる。
 モンサント社のGM作物の種は「知的財産」として法的に保護されているから、農家がGM大豆の種を育てて自家採種した種を翌年播くと「特許侵害」になる。
 米国でも、違反した農家は提訴され、多額の損害賠償で破産する。農家が生産を続けるには、モンサント社の種を買い続けるしかない。かくて、種の特許を握る企業によって、世界の食料生産のコントロールが強化されていく。
 インドでは、地域一帯の種子を独占した後、種子の値段を引き上げたため、綿花農家に多くの自殺者が出た。
 在来種を保存しようとしても、GM作物などの花粉の飛散で「汚染」されていく。
 世界の食料生産、消費、環境がGM種子で覆い尽くされてしまう事態が懸念される。

 (7)防腐剤・防カビ剤などのポストハーベスト農薬についても、日本の基準が厳しすぎると難癖をつけられ、さらなる緩和を要求されている。
 これらは今、日本では食品添加物に分類されているため、食品パッケージへの表示義務がある。
 米国は、これが輸入食品の販売を不利にする、として、防カビ剤などの分類を「食品添加物」から表示義務のない「残留農薬」に変更することを要求している。
 食品添加物についても、認可されている種類をいまの約800種類から約3,000種類の米国基準に近づけるよう要求している。

 (8)食料については、米国の穀物メジャー、種子・農薬を握るバイオメジャー、食品加工業、肥料・飼育産業、輸出農家などが、例外なき関税撤廃で各国の食料の生産力を削ぎ、食品の安全基準などを緩めさせる規制緩和を徹底し、食の安全を質量両面から崩して「食の戦争」に勝利することをめざしている。
 このままでは、各国の国民の命と健康が米国の企業利益追及の犠牲になりなねない。

□鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「TPPで遺伝子組み換え食品が大量に流入する」(『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』、2013)
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 【参考】
【食】韓国やEUに比べてお粗末な日本 ~GM食品表示~
【食】偽装表示と景品表示法違反 ~問題の本質が隠蔽~
【食】食材偽装の真の原因 ~円安政策の犠牲者~
【食】消費者へお詫びしない体質 ~多発する食品偽装事件~
【食】中国から輸入している肉エキスの危険性
【食】「肥満の元凶」は小麦 ~ベストセラー『小麦は食べるな!』~
【食】偽装の背景 ~消費増税により偽装が拡大~
【原発】放射能と食の現在 ~福島産の魚、茨城産の栗~
【原発】除染道路の4割が効果なし ~福島県田村市~
【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~
【原発】【食】原子力問題と伝子組み換え(GM)問題の共通点 ~ムラ~
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【原発】太平洋に拡散する放射性物質 ~シミュレーション~
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
【原発】【食】魚への影響 ~過去・現在・未来~
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【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品

2013年12月13日 | 社会
 (1)日本は、中国から年間400万トンの食糧を輸入している。

 (2)2013年3月、上海市を流れる河川(黄浦江)に豚の死骸1万体が漂流する騒ぎが起こった。上流の浙江省嘉興市の男性によれば、2月に襲った寒波で次々と豚が死に、市内の養豚家は大打撃を受けた。以前は、子豚に接種するワクチンを地方政府から貰っていたが、最近はその薬が効かなくなり、わずかな環境の変化で豚が死ぬようになった。
 これは、(a)不衛生な飼育環境と、(b)病気を防ぐために抗生物質などを過剰投与したために耐性菌が生まれた、という2つの問題をはらんでいる。
 本来は、地方政府の役人が、豚の死骸の処理費用を養豚家に渡すはずだった。しかるに、役人がそのカネを着服してしまったため、困りはてた養豚家たちは豚の死骸を川へ捨てたのだ。
 役人の腐敗も問題だが、養豚家たちも豚の遺棄による環境汚染を考えていない。腐った病死豚の大腸内で細菌が繁殖し、河川が大腸菌で汚染されるのだ。
 そんな水で農作物を育てた結果は明らかだ。
 豚は中国国内向けのものだが、日本向けの野菜に影響を及ぼしかねない。
 他にも、中国各地で、汚染された水をトマトやトウモロコシなどの農作物にまいている。

 (3)山東省青島市の環境汚染はひどい。
 山東省は、中国最大の農作物生産地。2011年、山東省は年間150億ドルもの農産物を輸出した。10年以上、中国全土でトップの輸出高を誇る。山東省で生産された農産物の4分の1が日本へ入っている。
 青島市沿岸部の工場地帯の、化学薬品工場のそばにある川は、工場排水のせいで真っ黒だ。当然ながら、汚れた川の水は海を汚す。青島の海は、ところどころ白濁している。そんな場所で育った海産物は、食べると品質がすぐわかる。特に貝類は汚染物質を溜めこみやすい性質を持つ。青島アサリは、工業用油の匂いがする。他の魚の品質も悪い。吐き気がし、飲み込んでも腹痛が起こる。

 (4)環境汚染だけでなく、衛生観念の欠如した食品工場も多い。
 山東省栄成市郊外の水産加工場では、従業員は私服で、作業衣も着ていない。素手や汚れた軍手でイカや白身魚を捌く。商品にハエがたかっても、おかまいなし。
 別の工場では、手もろくに消毒せず、外で作業服を着替える。その工場内には、日本の大手食品メーカーの段ボール箱が無造作に積まれている。

 (5)四川省新繁にある漬物の一大産地では、何年もとりかえていない茶色い塩水に浸された人参、放送もせず直にトラックへ積まれ、異臭を放つ青葉の漬物が目撃される。
 工場の営業担当者いわく、「毎年、中国人バイヤーがやってきて、必要な量の漬物を買い取り、日本へ輸出している」。
 こうした工場は、規模が大きくないので、輸出権を持っている別の中国企業を介して日本へ商品を輸出している。
 通常、日本企業は、輸出権を持つ中国の取引先企業へ商談を持ち込む。日本側が要求する量の商品を取引先企業の生産能力だけで賄える場合はさておき、不足することが多い。そこで、中国の企業は、別の中小企業へ商品を買い付けに行く。こうして、中国の下請け企業が、孫請け企業から商品をかき集める過程で、劣悪な食品が入り込んでいくのだ。 

 (6)むろん、輸出の際に中国の検疫官が食品検疫を行うが、ある中国人業者によれば、「賄賂を払って検査を通り抜け、書類を偽造するなんてたやすい」。
 日本側にも当然、検疫所はあるが、膨大な量の食品が輸入されるため、検査されるのは全輸入量の1割程度にすぎない。
 一方、日本国内では、品質管理を取引先企業へ一任する傾向が強い。自社の製品に中国産食品が紛れ込んでも気づかない。
 2013年9月、日本の大手スーパー「イオン」の販売する弁当やおにぎりに、国産米と偽って中国産米が混入されていた事件が発覚した。すでに1,500万食が流通していた。
 三重県の精米会社が、弁当などを製造する「フジパングループ」に偽造した産地証明書を提出し、中国産米を国産米だと産地偽装して納入していたのだ。日ごろから自社製品の安全性をアピールしている大手企業が、何年もの間、納入業者の不正を見抜けなかった。それだけ、イオンやフジパンの検査体制の甘さが露呈した。

 (7)中国産米は、DDTなどの有機塩系やカドミウムなどの重金属類で汚染されている可能性が高い。公害に酔って中国の土壌や水源が汚染されているからだ。特に重金属は、体内で蓄積されるから、食べ続けるのは非常に危険だ。
 やはり中国産食品は危ない。

□徳山大樹(「週刊文春」特別取材班キャップ)「現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品」(『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』、2013)
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 【参考】
【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~
【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~
【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
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【教育】全国学力テストと静岡県知事の勘違い ~環境整備も行政の役目~

2013年12月12日 | 社会
 (1)全国学力テストをめぐって、川勝平太・静岡県知事の言動が物議を醸した。
 知事は、県内の公立小学校の国語A(基礎問題)の成績が都道府県別で最下位だった責任は教師にある、とし、平均正答率下位100校の校長名を公表する、という考えを明らかにした。
 公表を躊躇する県教育委員会との悶着を経て、一転して上位86校の校長名を公表することで自愛は収束した。
 川勝知事には甚だしい勘違いが見られ、思考過程は論理的でも科学的でもない。この勘違いは、ひとり川勝知事だけの話ではない。

 (2)まず戒められるべきは、この件は知事の管轄下にない、ということだ。全国学力テストに公立小中学校が参加する場合の主体は、市町村教育委員会だ。テストの成績を公表するかどうかを議論するか否かを判断するのは、それぞれの市町村だ。本来、県が口出しする筋合いのものではない。
 県教委は、文部科学省から結果の提供を受けるので、県内全域のテスト結果を把握している。ただ、それは県教委が市町村教委に対して助言や連絡を行う役割を担っているからにすぎない。主体は市町村で、県は従たる立場にすぎない。
 その県が、市町村を差し置いて、自ら結果公表に乗り出すなど、もってのほか。県は身のほどを弁えなければならない。

 (3)ただ、県全域のテスト結果に係る情報公開請求が行われた場合、従たる立場であっても、県教委にテスト結果が存在する以上、潜在的には情報公開請求の対象となる。
 請求があれば、県情報公開条例に従って処理することになる。
 不開示の督励に該当するなら開示できない。該当しなければ開示するだけのことだ。
 不開示の対象を特定する規定の書きぶりが曖昧であれば、解釈が分かれる余地がある。鳥取県の場合、やはり曖昧だった規定を改正し、学力テスト結果の公開請求に対する処理ルールを具体的に規定した。
 実は、このたびの公表騒動も、静岡県情報公開条例ではどうなるのか、ということを踏まえて議論すべきだった。
 仮に、静岡県情報公開条例では不開示の対象となっていて、かつ、知事がどうしてもテスト結果を公表すべきだ、と考えるなら、静岡県情報公開条例の見直しから始めるべきだ。開示対象であることが条例で明確にされれば、県教委も文句を言えないし、「非公表にせよ」という文科省の要請にも抗することができる。
 また、仮に、曖昧なままだと、知事と県教委との諍いでは終わらず、県民と県との争いが裁判所に持ち込まれる。転ばぬ先の杖を用意するのも知事の仕事だ。

 (4)川勝知事は、子どもたちの国語の成績が悪いのは読解力が低いからだ、とし、日ごろの読書週間の大切さに触れている。この見解が正しいとしても、子どもたちに読書習慣が身についていないのはひとえに教師が悪いからだ、とする論法には根拠も説得力もない。
 子どもたちの読書習慣に教師の力量が関わることは間違いないが、それだけではない。学校図書館のありようも重要な要因となるはずだ。蔵書の充実、学校図書館司書の配置。
 静岡県内の公立小中学校は、文科省の定める「図書標準」(学校図書館が整備すべき蔵書の標準)を満たしている学校もあれば、満たしていない学校もある。基準を満たしているかどうかは、学校図書館の魅力に関わる。
 また、静岡県では、12学級以上の小学校にはすべて司書教諭を配置しているが、11学級以下の小規模校への司書教諭・学校図書館担当職員の配置率は、36.5%だ。他県のなかには小規模校にも100%配置している県もある。静岡県がこれまで学校図書館に特に力を入れてきた、とは言えない。
 問題は要するに、静岡県内では大規模校には司書教諭が配置されているが、小規模校では必ずしもそうではない、ということだ。
 県の施策に起因して学校図書館の環境に格差が生じているが、果たしてこれが子どもたちの読書習慣に影響してはいないか。
 また、静岡県内の公立小学校における図書館司書などの配置率は76.2%だ。学校図書館司書などが配置されている学校も多いが、配置されていない学校も相当数ある。学校図書館に人がいるかどうかは、子どもたちが本に親しむ習慣を身につけるうえで決して無視できない。市町村間の読書環境の格差は、各市町村の学校図書館に対する姿勢や政策の違いによって生じるものであり、現場の教師にはいかんともしがたい。

 (5)かくして、子どもたちの読書環境には、県の施策や市町村の力の入れ具合によって、学校ごと、市町村ごとに大きな違いが見られる。それが子どもたちの読書習慣に影響を及ぼさないはずはない。そんな事情には目をつぶって、教師の責任だけ追及する川勝知事の言い分は拙劣で著しく合理性を欠いている。

 (6)知事が子どもたちの読書環境を改善するためにやれることがある。例えば溝口全兵衛・島根県知事。
 島根県内のすべての小学校に何らかのかたちで学校図書館司書が配置されている。学校図書館司書の人件費を県が助成する仕組みを作って、市町村の後押しを続けてきた。

□片山善博(慶大教授)「全国学力テストと知事の勘違い ~日本を診る 50~」(「世界」2013年12月号)
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【原発】再稼働を前提とするリニア ~9兆円巨額投資は本当に必要か~

2013年12月11日 | 震災・原発事故
 (1)JR東海は強調する。
 2027年に品川-名古屋間にリニア新幹線が開通すれば、最速40分で結ばれる。

 (2)40分はしかし、乗っている時間にすぎない。
 品川は地下40m、名古屋は地下30mに作られる。当然、乗るまでの、そして降りてからの時間を余分に費やさねばならない。
 品川は20分程度、名古屋は15分程度、それぞれ乗り換えに時間を要する【注】。
 現在でも、品川-名古屋間は最速の「のぞみ」で1時間29分しか要しない。

 【注】推定の根拠・・・・JTB時刻表によれば、東京駅の東海道新幹線ホームから総務・横須賀線(地下26.5m)までの乗り換え標準時分は15分、上野駅新幹線ホーム(地下30m)から山手線など在来線ホームまでの乗り換え標準時分は17分。

 (3)時間の過ごし方が、(a)新幹線と(b)リニア新幹線とでは全く異なる。
 (a)は、ずっと座ったまま景色を楽しめる。
 (b)は、トンネルや防音壁に覆われた闇の中を行く。まるで下水管のなかを行くようなものだ。その上、全体の時間の半分近くはエスカレーターなどの昇降に費やされる。わけても荷物を持った観光客、高齢者には辛い乗り物になるに違いない。
 
 (4)(2)で示すように、最速のリニアですら、所要時間は「のぞみ」とたいして違いはない。だから、途中駅に停まるリニアは、「のぞみ」よりもっと多くの時間を要することになる。
 このため、JR東海は、ノンストップを増やし、各停タイプは1時間に1本しか走らせない、としている。しかし、これでは途中駅のメリットは少ない。せっかく富士山が世界遺産になったのに、甲府に停まる列車は少ない。
 そして、(3)で示すように、新幹線では富士山が見えるが、リニアでは見えない。山梨県民の不満は大きい。

 (5)(2)~(4)は、品川-名古屋間だけを見るからそう言えるのであって、大阪まで開通すればリニアの優位性は明らかになる・・・・という反論があり得る。
 しかし、9兆円を超える巨額な投資をして、JR東海が大阪まで開通させる可能性は決して高くない。
 理由・・・・リニアの消費電力は東海道新幹線の3倍になり、原発の再稼働を前提としない限り、十分な電力を供給するのは困難だからだ。
 葛西敬之・JR東海会長が、震災の直後から原発の再稼働を一貫して訴えてきたのは、まさにこのためだろう。
 だが、福島第一原発の汚染水漏れの拡大が象徴するように、原発に対する不安は国の内外で高まっている。原発再稼働をもくろむ東京電力に対する反感も、依然として根強い。JR東海が期待するようなシナリオは、しだいに現実遊離しつつある。

 (6)それでもJR東海が強気の姿勢を崩さないのは、ドル箱(東海道新幹線)を抱えているからだ。リニアは、東海道新幹線の巨額な営業利益によって建設される。
 品川-名古屋間のリニア料金は、「のぞみ」より700円程度高い15,000円程度になる、とされている。
 しかし、これまた不思議な話だ。
  ・所要時間は新幹線とあまり変わらないのに、足で移動する負担は増える。
  ・景色を眺めながら旅する楽しみがない。
  ・大量の電力を必要とする。
  ・電磁波や南アルプスの地層、活断層横断などの問題がある。
 こうしたリニアに9兆円超の投資をするくらいなら、もっと多数が利用しやすろように新幹線の運賃を値下げした方が、はるかに支持を得られるだろう。
 ネットで格安切符を購入できる諸外国と比べて、日本の鉄道運賃は概して高い。新幹線の料金は、どう見ても高すぎる。

 (7)JR東海が、さまざまなリスクを覚悟してまで、品川-大阪間のリニアを開通させたい理由の底には、高速鉄道で追い上げる中国に対して、日本の優位を保ちたい、というナショナリズムがある。
  ・北京南-上海虹橋間(1,318km)の所要時間は最短で4時間48分。
  ・東京-博多間(1,069.1km)の所要時間は最短で4時間50分。
 新幹線だけではもはや速度の点で中国にかなわない。この状況を再逆転させるための究極の切り札こそリニア、というわけだ。

 (8)(7)は、「平和利用」を題目として掲げながら、実は米国に対抗して核開発による大国化を進めようとした国家戦略の一環として原発が開始されたことと重なる。
 リニアの駅ができることで町起こしにつながる、と考えている自治体(<例>岐阜県中津川市)は、「原子力明るい未来のエネルギー」の看板を掲げていた福島県双葉町に重なる。
 原発事故後も対応を東電任せにしてきた政府は、リニアについても、JR東海にお任せ、黙認の姿勢を通そうとしている。

□原武史(明治学院大学教授)「リニアへの9兆円巨額投資は本当に必要なのか」(『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』、2013)
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【原発】事故の検証・総括なくして再稼働なし ~新潟県知事~

2013年12月10日 | 震災・原発事故
 (1)2013年9月26日、東京電力柏崎刈羽原発の規制基準適合検査申請について、新潟県知事は次の事項を申請書に明記することを条件として承認した。
  (a)新潟県との安全協定に基づく協議後に修正申請を行うこと。
  (b)今回申請のフィルタベント設備は地元避難計画との整合性を持たせ安全協定に基づく了解が得られない限り使用できない設備であること。
  (c)ただし、ベント操作による住民の被ばくが許容できないと明らかになった場合、この承認は無効。
 新潟県知事は決して、再稼働を承認したわけではない。
 柏崎刈羽原発は、停止していても生きている施設だ。安全確保が必要だ。事業者たる東電が安全確保に自信が持てない状況を放置することは、地元にとって望ましくない。よって、第三者(原子力規制委員会)の適合審査を求めることを条件付きで承認した。
 そうした趣旨のものであり、再稼働に向けた措置ではない。

 (2)2007年の新潟中越沖地震では、道路が土砂崩れで通行止めになるなど、交通網が麻痺した。
 柏崎刈羽原発3号機で葛西が起きたが、道路の渋滞で消防の緊急車両でさえ現場にたどり着くのに時間がかかった。
 ゆえに、仮に震災時にベント装置が稼働する原発事故が発生すれば、一般車両も渋滞に捲き込まれて動けなくなる可能性は高い。車中の県民らが被曝するおそれを否定できない。
 人間がつくるものには、必ずリスクが残る。だからこそ、政治や行政は事故発生を前提に、あらかじめ対策を講じなければならない。
 仮に原発事故が起きた場合、米国ならば原発事業者に加えて州政府や軍が対応する仕組みができている。
 スペースシャトルの大事故でも、NASAは組織をあげて問題点を洗い出し、対応した。トップを更迭し、次のステップに進んだ。

 (3)福島原発事故では、スペースシャトル大事故におけると同じような検証・総括は行われていない。
 事故後にできた原子力規制委員会にしても、原発の性能基準だけを審査している。田中俊一・委員長は、記者会見で、住民の避難計画は所掌外との認識を示した。
 だが、それは責任回避だ。設置法第3条は定める。「原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びにわが国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ることを任務とする」
 住民の被曝を避ける対策を抜きに、どう国民の生命や健康を保護するのか?
 どう安全を図るというのか?
 性能基準だけで再稼働の是非を判断できるのか? 
 住民の被曝を避け、安全と健康を守る観点から、国際基準にあった厳格な審査ができるのか?

 (4)かつて太平洋戦争に出動した米国の艦艇は、被弾するリスクを前提に設計、運用されていた。被害を局限化し、復旧するシステムが整備されていた。だから、ミッドウェー海戦でも被弾した艦艇が短時間で被害を復旧できた。
 他方、日本の艦船は一発当たっただけで艦内の爆薬や燃料に引火し、完敗した。
 福島原発事故の対応に、ミッドウェー敗戦が重なる。
 戦前も戦後も、日本は「安全神話」の上に胡座をかき、リスクを真剣に考えてこなかった。

 (5)東電の体質は、福島第一原発事故前も事故後も変わっていない。
 3・11の翌日には、福島原発でメルトダウンを認識できたはずだが、それを東電が明言したのは2ヵ月以上たってからだ(5月15日)。その間、誰が、どんな指示を出していたのか。それさえも東電は明らかにしていない。
 また、なぜか、汚染水問題も参議院選終了直後に発表された。いまだに情報操作が続いているのではないか。
 情報公開なくして、東電の信頼回復はない。

 (6)そもそも、東電には住民の生命や安全を守ろうとする姿勢があるのか。
 住民ではなく、経営を守ろうとしているのではないか。経営を守るため、コストを下げる。その努力に専念しているのではないのか。
 彼らが真実を伝えない結果、どれだけ多くの人が不要な被曝をしたか。その教訓を忘れてはならない。
 これだけの被害を出しながら、経営責任をとった東電幹部はいても、事故の責任をとった幹部は一人もいない。
 いったい誰が判断を誤ったのか。
 あのとき、どうすべきだったのか。
 東電はきちんと総括すべきだ。
 「嘘をつかない。約束を守る。社会的責任を果たす」・・・・せめて最低限の基本を守ってもらいたい。
 過去の教訓に学べない企業に、再稼働する資格があるのか。
 
 (7)知事の最大の職務は、県民の生命、安全、財産を守ることだ。
 知事は、知事の最大の職務について妥協することはできない。
 福島原発事故の検証と総括なくして、再稼働については議論できない。

□泉田裕彦(新潟県知事)「福島原発事故の検証・総括なくして再稼働の議論はありえない」(『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』、2013)
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 【参考】
【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~
【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~
【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~
【原発】新潟県知事の、「原発再稼働」批判

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【秘密保護法】日本版NSCは「究極の有事」に対応できるのか

2013年12月09日 | 社会
 (1)2つの戦争は、その後の世界の風景を一変させてしまった。すなわち、(a)湾岸戦争(1991年1月17日勃発)と(b)イラク戦争(2003年3月20日勃発)だ。最高指揮官は同じブッシュ家の、親子だが、その采配ぶりは対照的だった。二人を支えた国家安全保障担当補佐官の戦略スタイルも大局的だった。NSC・国家安全保障会議を取りまとめて大統領の決断を補佐したのは、
  (a)ブレント・スコウクロフト将軍。ソ連や東欧諸国をも取り込み、国連の武力制裁決議を取り付け、広汎な対イラク網を築きあげ、ポスト冷戦の時代に新たな国際協調主義を誕生させた。 
  (b)コンドリーザ・ライス博士。国連安保理の武力行使容認決議を入手できなかった。有力な西側同盟国は多国籍軍に加わらなかった。「ブッシュの戦争」は国際社会の批判を浴び、超大国の威信に翳りを生じさせた。
 国際情勢を精緻に読み抜き、誤りなき力の行使に大統領を導くこと、それが国家安全保障担当補佐官の最大の責務だ。苛烈で重い。 

 (2)安倍晋三・首相は、第一次安倍内閣の挫折に伴って日本版NSC構想が潰れて以来、その実現に執念を燃やしてきた。
 日本版NSCは、米国版NSCが手本になっている。国家の意思決定システムだ。
 だが、2013年秋の国会で審議されている法案には、究極の責務に係る直接的な記述がない。法案では、新たに国家安全保障会議を設け、4閣僚(総理・官房長官・外相・防衛相)が安全保障に関わる基本方針を審議する、と書いてある。武力攻撃という事態に際しては、少数の閣僚が緊急の審議を行い、「迅速かつ適切な対処が必要と認められる措置について内閣総理大臣に建議することができる」と定めている。
 しかし、緊急事態に少数の閣僚が自ら情報をえり抜き、重大な決断が下せる、と法案が想定しているわけではない。
 総理ほかを補佐するために、内閣官房に新たに国家安全保障局を設け、局長の下に内閣官房副長官補2名を次長として兼務させさらに外交・防衛の専門家を配する。そして、新設の国家安全保障担当補佐官がこれら安全保障チームを統括する。

 (3)究極の有事をシミュレーションし、検証してみよう。
 中国の機動部隊が尖閣沖に姿を見せ、人民解放軍の海兵部隊が魚釣島へ上陸の構えを見せている。・・・・こんな急報がもたらされたら、緊急のNSCが召集される。主要4閣僚が情勢を検討して対処方針を合議する余裕などない。膨大で錯綜する情報(インフォーメイション)を捌いて、危機の本質を示す情報(インテリジェンス)を抽出し、総理に決断を仰がねばならない。総理は、限られた時間の中、国家の命運を決断しなければならない。
 苛烈きわまる状況下で、政治指導者の意思決定を支える舞台となるのが、日本版NSC・国家安全保障会議だ。

 (4)総理を誤りなき決断に導くファクターは2つ。
  (a)決断の拠りどころとなる選りすぐりのインテリジェンスを官邸が全官僚機構からあげさせることができるか。
    いまの日本は、先進8ヵ国のなかで唯一、対外情報機関を持っていない。警察官僚がトップを占める内閣情報調査室、外務省の情報官組織、防衛省の情報本部、警察の警備・公安組織、法務省の公安調査庁が個別に情報や関係資料を総理官邸に持ち込んでいるにすぎない。
    新たに設置される国家安全保障局が、縦割り組織(外務省・防衛省・警察庁など)から情報を適確に提供させ、適確に分析できるか。
    新しい日本版NSCの組織図には、凄まじいばかりの省益戦争が繰り広げられた痕跡が残っている。日本版NSCには、おびただしいスポール・ガバメントが林立している。わけても警察と外務省は、いまなお水面下で果てしない戦争を繰り広げている。
  (b)国家安全保障担当補佐官にひとを得られるか。
    安全保障に係る知識などを必ずしも持っていなくてもいい。究極の有事に遭遇して、怜悧、豪胆に国家の舵を切ることのできる逸材であれば、それでいい。

□手嶋龍一(外交ジャーナリスト・作家)「日本版NSCは「究極の有事」に対応できるのか」(『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』、2013)
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 【参考】
【秘密保護法】日本版NSCは「戦争指導最高会議」 ~元官僚の観点~


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【人物】二転三転した釈明から分かる資質 ~猪瀬直樹~

2013年12月08日 | 社会
 (1)猪瀬直樹・東京都知事は、「イスラム諸国は互いにけんかばかりしている」という暴言を吐き、日本をテロ誘発の危険にさらした【注1】。
 その後、2020年夏季五輪が東京に決定したため、猪瀬の暴言に対する責任追及はウヤムヤになってしまった。
 このたび、猪瀬が公人としての資格を欠くことを示すスキャンダルが発覚した。医療法人「徳州会」から猪瀬が5,000万円を「借り入れ」ていた問題だ。

 (2)猪瀬は、
  ・11月21日(朝日新聞の取材に対して)
    「私はまったく関知しない」「知らないと言ったら知らない」などと全面的に関与を否定した。
  ・11月22日13時過ぎ(都庁前の記者団の取材に対して)
    記者:徳田虎雄氏から5,000万円の資金提供を受けていたという話について、資金提供を受けたのかどうかも含めて事実関係について聞きたい。
    猪瀬:昨年の11月くらいに、石原前知事が突然辞めるということなので、ということで、あいさつ回りにあちこち行きました。そのときに徳田さんの方にも行きました。
    記者:あいさつ回りという趣旨か、資金提供のお願いをしたという趣旨か。
    猪瀬:いろんなところに行きましたので、徳田さんのところでは資金提供を後日、という形になってまいりました。
    記者:知事からお願いしたのか。
    猪瀬:資金提供という形で応援してもらうことになったということです。

 (3)猪瀬は、ここで、5,000万円が選挙応援のためのカネであったことをハッキリ認めている。しかし、直後に前言を翻した。
  ・11月22日15時(記者会見)・・・・「あくまで個人としての借り入れ」「選挙とは関係ない」「全く手を付けずに返した」【注2】
 この瞬間、猪瀬は公人としての資格を失った。

 (4)少なくとも13時の段階までは、猪瀬は、東京都民、日本国民を念頭に置いて釈明していた。
 しかし、15時の会見からは、法律専門家の助言を踏まえ、東京地方検察庁特別捜査部だけを念頭において、いかにすれば刑事責任の追及を免れるか、ということだけを考えて発言している【注3】。
 そもそも、5,000万円の現金を受領していて、それが記憶にない、などということはあり得ない。
 当初、朝日紙の取材に対して、猪瀬は「知らない」と答えた。朝日新聞社会部が裏を取らずにかかる取材を行うことはない、という想像力が働かなかっただけでも、インテリジェンス能力が基準に達していない。

 (5)発言が二転三転する【注4】のも、猪瀬がパニックを起こしているからだ。カネの問題をめぐる自らのスキャンダルについて、危機管理すらできない。
 こうした小心者の猪瀬が、東京都の危機管理ができるはずはない。
 これ以上悪あがきをしても、都民の信頼を失うだけだ。
 即時辞任が傷口の拡大を防ぐ唯一の方策だ。

 【注1】「【社会】猪瀬直樹東京都知事の「イスラム侮辱」問題 ~国益と国民益を毀損~
 【注2】三井環・元大阪高検公安部長によれば、徳州会関係者が「あの借用証は会見前日に書いたもので、猪瀬から『個人の借り入れだと口裏合わせてくれ』『五輪までは知事をやりたいんだ』と何度も電話があり、徳田毅は怯えきっている」と情報提供した。【記事「さらば、猪瀬直樹 徳州会から5000万円の「お・も・て・な・し」」(「週刊現代」2013年12月14日号)】
 【注3】ノンフィクション・ライターらしく「ファクト(事実)とエビデンス(証拠)を重ねる」が猪瀬の口癖だった。今や、その面影はない。
 【注4】本文に記した以外に、猪瀬は、当初、「妻と自分の2人しか借金は知らない」と説明したが、後に「借用書は秘書が管理していた」と説明を一変させている。【前掲「週刊現代」誌】

□佐藤優「二転三転した釈明から分かる都知事の資質 ~佐藤優の人間観察 第48回~」(「週刊現代」2013年12月14日号)
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 【参考】
【買収】猪瀬都知事、「個人の借り入れ」で済む話か ~徳州会から5,000万円~
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【原発】「放射能ガラクタ」を民家の庭に不法投棄 ~除染の闇~

2013年12月07日 | 震災・原発事故
 (1)除染事業には、今年度までに1兆3,000億円もの予算が組まれている。
 政府が、地元業者優先の政策を打ち出したおかげで、福島県内で除染事業を請け負う建設業者は、震災後、「除染特需」となった。
 福島県建設業協会とその傘下の7支部は、計488万円を「国民政治協会」(自民党の政治資金団体)へ献金した(2012年)。

 (2)最終的な除染費用は、5兆円超とも言われる。
 安倍晋三・首相は、11月11日、原発事故対策について「国がしっかり前に出る」と約束した。しかし、巨費をばらまいても事態は好転していない。
 除染作業への信頼は地元で揺らいでいる。
 今年1月4日、朝日新聞は「手抜き除染」をスクープした【注】。除染で取り除いた土や木の枝葉、洗浄で使った水を、作業員が周囲の川などに捨てている事実が報道され、その場面の写真も掲載されて、大問題になった。
 石原伸晃・環境相は「手抜き」発覚当初、登庁すらせず、対応が遅れた。再発防止について、国会で、こう答弁した。「(除染)のガイドラインに則らないようなことをやった場合、指名から外れるとか、(中略)厳正に対処するという形で臨ませていただきたい」
 しかし、環境省は厳正に対処していない。不正は今もはびこっている。

 (3)事件が起きた福島県田村市東部の小さな集落は、フクイチから20kmの距離に位置する。田村市には、避難指示解除準備区域(放射線量20mSv/年以下)に指定されている場所もある。住民は立ち入り可能だが、道行く人は少ない。市内には今、あちこちに黒い大きな「フレコンバッグ」(除染された土や枯葉を詰める袋)が大量に置かれている。くだんの集落のほとんどの人は仮設住宅に避難し、帰ってこない。車で15分ほど行けば帰還困難区域(放射線量50mSv/年)で、安心して住める環境ではない。
 その集落内の一戸建ての民家の庭に、家主に無断で、除染業者が放射能に汚染されたガラクタを埋めた。
 農薬や肥料が入っていた袋、ビニールハウスのビニールや金属製の支柱、針金、ケーブル、瀬戸物やガラスのかけら、木材など雑多なガラクタが、かなりの量、置かれていた。線量計をあてると、他の場所より明らかに高い数値を示した。特に、雨樋の下付近にたくさん積まれた木材の数値が高かった。
 除染作業には一定の作業期間が定められている。基準より短期間で終われば、請負業者の利益が大きくなる。ゴミなら運び出すトラックを調達しなければならないし、費用も時間もかかる。トラックは汚染される。そこで、現場背錦紗が「庭に穴を掘れ。そこに埋める」とパワーショベルのオペレーターに指示したのだ。縦3m、横2m、深さ6mほどの穴を掘り、ガラクタを投げ込み、上から土をかぶせ、作業員が足で踏み固めてきれいな砂で覆った。
 木材などは、時間がたつと腐食して微生物によって分解され、放射性物質は土中の岩石成分に吸着される。埋めた周囲に井戸や地下水脈があると、それらの地イブが流れ出す危険があある。【山田国広・京都精華大学教授】
 ちなみに、除染は、国の予算で、田村市が主体となって実施している。
 事件の現場は、内部告発に基づいて掘り起こした。田村市職員も立会した。県警の警察官もやってきた。「刑事事件を前提に、現状保存して、捜査します」

 【注】
手抜き除染、作業員証言 「詰め切れぬ葉は捨てて」指示
「手抜き除染」横行 回収した土、川に投棄
これで除染か、作業員証言
洗浄水垂れ流し、漂う無力感
画一的な手法、再考する時
手抜き除染、夏から苦情殺到 環境省、対応おざなり」 

□今西憲之(ジャーナリスト)+本誌取材班「「放射能ガラクタ」を民家の庭に不法投棄」(「週刊朝日」2013年12月13日号)
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【原発】活断層を否定しない四国電力 ~伊方原発再稼働~

2013年12月06日 | 震災・原発事故
 (1)原発再稼働第1号は伊方原発だ。・・・・そうマスコミは観測気球を上げる。
 伊方原発はしかし、福島第一原発事故後に初めて再稼働した大飯原発とは、ハッキリ違う一点がある。
 大飯原発では、原発敷地内における活断層の有無が争われた。
 伊方原発は、その前面海域6kmに日本最大級の活断層(中央構造線)が走っていることに争いはない。四国電力さえ認めている。
 しかも、伊方原発沖の活断層は、6,200年前、4,000年前、2,000年前に動いている。ほぼ2,000年周期で活動する断層だ。前回から2,000年を経た今、大震災発生は現実味を帯びている。【岡村眞・高知大学特任教授】

 (2)動く活断層の距離が長ければ長いほど、解放されるエネルギーはより大きくなる。よって、地震の規模も大きくなる。
 3・11の「東北地方太平洋沖地震」の場合、およそ南北400km、幅200kmの断層が平均15~20m、最大で30m近くずれた。【独立行政法人「産業技術総合研究所」】 
 四国電力は、活断層の長さ54kmを基本資源モデルとしている。かつ、不確かさ考慮モデルとして69kmと130kmを想定し、いずれの場合でも伊方原発は地震に耐えられる、と説明している。しかし、原子力規制委員会は、東北地方太平洋沖地震より長い480kmを基本モデルとするよう求めている。見解に大きな違いがある。とにかく、四国電力を始めとする電力会社は、地震の影響をいかに小さく見積もるかに全力をつくし、さまざまなレトリックを駆使している。【長沢啓行・大阪府立大学名誉教授】

 (3)四国電力は、
  (a)かつて「中央構造線は、あくまで地質的な境界線で、活断層ではない」と主張していた。
  (b)1996年に岡村教授らの調査結果が報道されると、「活断層は認識している」とウソついた。
  (c)1997年8月、突然、活断層として計算しても耐震設計に余裕がある、と発表した。 
 四国電力は要するに、敷地内前面海域(中央構造線の一部)が1万年前以降に活動したA級活断層であることを認識していないまま、設計・建設している。
   ①1号機(原子炉設置許可 1972年)
   ②2号機(原子炉設置許可 1977年)
   ③3号機(原子炉設置許可 1986年)

 (4)政府「地震調査研究推進本部」(本部長:文部科学大臣)の「地震調査研究推進本部」の地震調査委員会は、2011年2月18日、中央構造線について、次のように発表した。
  (a)過去の活動時期の遅疑などから、全体が6つの区間に分けられる。
  (b)断層帯全体が同時に活動する可能性は否定できない。同時活動の場合、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生する(推定)。
  (c)本断層の西端はさらに西に延び、別府湾から大分市内に分布する別府-万年山断層帯に連続している可能性がある。

 (5)原子力規制委員会の指導と四国電力の反応は次のようなものだ。
  (a)7月8日、四国電力、3号機の再稼働を申請。
  (b)7月23日(第2回審査会合)、規制委は、「伊方原発の基準値震動として54kmを設定している、複数のもっと長い部分での連動を考慮したものを基本ケースとされたい」。
  (c)8月28日(第14回審査会合)、四国電力は、「基本ケースの長さ特定は困難。解析中だが、今回には間に合わない」。
  (d)10月30日(第39回審査会合)、四国電力は、驚くべき検証結果を提出。「紀伊半島から続く中央構造線と大分県側にある別府-万年山断層帯の計480kmが連動して動く事例と、敷地前面海域の活断層54kmが動く事例を比較した結果、地震動に大きな変化はなかった」
 「破壊伝播速度」(断層面の破壊されていく速さ)を遅く想定すれば、地震波が重なり合わないため、地震動も大きくならない。地震動を小さくする手口の一つだ。【長沢名誉教授】
 規制委もさすがに疑問を提示した。「破壊伝播速度」の産出に使用したのが1976年の知見だったからだ。もっと速い事例が観測されている、という規制委の指摘に、「設計に持ち込むのは難しい」と四国電力は回答した。規制委は重ねて、最新の知見による検討を求め、四国電力は「持ち帰って検討する」と回答した。
  (e)10月31日(記者会見)、四国電力は、「年内再稼働は難しい」。
 再稼働できる、と思うほうがどうかしている。

 (6)規制委は「化学的」にしっかりした審査をしているか?
 活断層の長さについては、短く見積もられないようにしているようだ。ただ、地震規模の計算において、電力会社は北米での地震データを中心に使い、過小評価している。過去20年間の日本の地震データで計算すると、原発の耐震設計を超える事例が出てくる可能性がある。規制委が、そのゴマカシを指摘しないのはおかしい。【長沢名誉教授】
 現代地震学は、結果はよく解析できるようになったが、起きる前は活断層がどの長さで動くかを含めて何も分からない。しかも、四国電力は、地震動評価にあたり条件設定を組み合わすときに「最悪」設定から少なくとも1つ抜いて行っている。そもそも、断層の動く長さが54kmと480kmとでは、地震の規模がまったく違う。【岡村特任教授】
 規制委には、旧・原子力安全・保安院の職員が多い。7月30日(第4回審査会合)では、古作泰雄・原子力規制庁安全審査官が、「すみません、私が説明するのもヘンなんですけど・・・・」と、四国電力に助け船を出す場面があった。馴れ合い体質は、一夕一朝では変わらない。

 (7)伊方原発で苛酷事故が起きた場合、汚染は中国・四国にとどまらず、汚染物質が大阪など関西大都市圏を直撃する可能性がある。
 伊方原発は、
  (a)マグニチュード8.0以上の「巨大な地sん」を起こす可能性がある中央構造線の近くにあり、
  (b)「耐震補強をしたわけではなく、机上の計算の結果」(2012年1月13日付け四国電力回答)でさえ、耐震性が上がり続けている。
 再稼働は、異常としか言いようがない。

□伊田浩之(編集部)「巨大地震が迫る伊方原発と再稼働」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
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 【参考】
【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~
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【原発】震災後、日本からの移住が急増 ~マレーシア~

2013年12月05日 | 震災・原発事故
 (1)2012年10月現在、長期滞在者(永住者を除く3ヵ月以上滞在者)は、18,850人。前年に比べて倍増。【外務省発表】
 同国が発行する長期ビザ(10年間有効、MM2H)の取得者も、年間200人程度で推移してきたが、
   2011年・・・・423人
   2012年・・・・816人
   2013年9月現在・・・・503人
 このうち子育て世代は2割と言われている。
 学生ビザを取得した子どもの保護者として年単位で大罪している家族も、MM2H取得者以上に多い。

 (2)なぜ子育て世代のマレーシア移住が多いのか。
 多民族国家マレーシアでは、多様な文化に触れ、英語、中国語などを習得することが可能だ。インターナショナルスクールの学費は、日本と比べると安い。
 原発事故の影響も大きい。

 (3)新田育子さんは、震災時、福島県伊達郡川俣町で3人の子どもを育てながら働くシングルマザーだった。震災翌日、福島を出て、千葉、和歌山へ避難。しかし、1年後に政府が全国でガレキ処理を行う方針を打ち出したため、「もう日本はダメだ」と海外移住を決意。何カ国かを下見し、医療設備や教育設備が充実していて、ゆったりと時間が流れるペナン島に決めた。2012年9月に移住。

 (4)これまでに、新田さんを頼って8家族がペナン島を訪れ、うち4家族が定住している。
 今もツイッターやメールを介した照会が絶えない。
 本格的に日本からの避難者や保養者を支えていこうと、今年11月から、マレーシアの会社の協力を得て、「あったかサポートライフ・ホスピタリティ」を開設した。
 子どもたちには世界のどこでも生きていける力をつけてほしい。【新田さん】

□たにせ あやこ(ライター)「震災後、日本からの移住が急増 外国語の習得のしやすさも魅力に」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
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【原発】初期被曝量は県発表の倍の数値7mSv ~福島県・飯舘村~

2013年12月04日 | 震災・原発事故
 (1)福島県飯舘村は、福島第一原発事故発生後、放射線量が年間積算線量20mSvに達する恐れがあるとされた。しかし、避難指示区に指定されなかった。
 ところが、このたび、村民が県発表の倍近く初期被曝していた疑いが浮上した。
 原発の安全性を説く御用学者による「安全講演」が、村民に無用の被曝を招いた。
 11月17日、「飯舘村放射能エコロジー研究会」(IISORA)が開催したシンポで明らかになった。
 住民の平均被曝量は、7mSv。【「飯舘村初期被ばく評価プロジェクト」(リーダー:今中哲二・京都大学原子炉実験所助教)の中間報告】
 県が発表していた調査値のほぼ倍だ。
 
 (2)飯舘村では、原発事故直後(2011年3月15日)に放射能を帯びた雪が降ったため、その日の18時20分の放射線量が44.7μSv/時に跳ね上がった。その時点、村民はほとんど村内にいた。
 原発に近い町村の住民h3月12日の避難指示でいち早く避難したが、指示がなくて遅れた飯舘村の住民のほうがむしろ多く被曝した。【今中助教】

 (3)広島大学、原子力資料室などのメンバーが、今夏から避難先の仮設住宅などで聞き取りを続け、10月までに全村民6,132人中3割の1,812人を調査した。
 被曝量の多い屋外にいた時間、被曝量の少ない屋内にいた時間などを考慮のうえ集計したところ、事故直後から同年7月31日までの村民の平均被曝量は7mSvだとわかった。一般人の法令上の被曝限度の7倍にあたる。
 最大の被曝量が確認されたのは、60代の男性で、23.5mSv。
 背dわいべつでは避難が早かった10歳以下の子dもは3.8mSvと比較的低く、村に残った50~60代が8mSvを越えるなど高かった。

 (4)飯舘村は、事故後に自主避難などをしている。3月21日には半数になった。
 国の計画的避難が始まった4月22日から7月末までには、ほとんどが村外避難した。
 しかし、一方で、3月22日頃から村に戻る住民が急増した。
 この頃、山下俊一・福島県放射線リスク管理アドバイザー(事故直後に就任)が村にやってきて、講演をしていた。
 山下は、「100mSv以下は安全」「放射線の影響はくよくよしている人のところに来る」などと「安全神話」を振りまいた。その後、福島県立医大副学長に就き、同大学の鈴木眞一・教授らとともに県民健康管理調査の検討委員として調査を中心的に進めていた。しかし、同調査に対する住民の不信が募り、今年、委員を退任した。
 その県民健康管理調査によれば、事故後から2011年7月11日までの村民3,102人の平均被曝量は3.6mSvだった。
 このたびの広島大学などの調査は、地面のセシウム沈着量から計算した。県はモニタリングポストから、らしい。だが、なぜ差が出るかは検証を要する。【今中助教】
 このたびの調査は外部被曝だけで内部被曝は検討されていない。しかし、数値を低く見積もりたい県の画策が改めて浮き彫りになった。

 (5)昨年から確認され始めた甲状腺癌について、県は「因果関係はない」と主張する。
 しかし、事故直後に現地入りした弘前大学の甲状腺被曝量調査を県が中止させた経緯がある。ヨウ素31は半減期が8日と短いことから、甲状腺癌の発症を予想し、因果関係の証拠を消した疑いがある。
 当時の原子力安全委員会は、たった1,080人の検査から「放射線値は増えていない。8割が0.01以下」と結論した。だが、その検査の日、今中助教は飯舘村にいたのだ。村役場の近くで線量が5~7μSv。役場内でも10分の1。そのバックグラウンドで、どうやって0.01が測定できるのか?

□粟野仁雄(ジャーナリスト)「初期被曝量は平均で7mSvも!? 福島県・飯舘村で県発表の倍の数値に」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
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 【参考】
【原発】政府、線量を低く表示するモニタリングポストを改修工事
【原発】文科省、意図的に低い放射線量を公表か ~福島~
【震災】原発>プルトニウムとストロンチウムの飛散範囲 ~100km圏超~
【震災】原発>アポカリプス、ナウ ~飯舘村に今も暮らす人々~
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【秘密保護法】日本版NSCは「戦争指導最高会議」 ~元官僚の観点~

2013年12月03日 | ●佐藤優
 (1)特定秘密保護法【注1】に世間の関心が集中し、国家安全保障会議(日本版NSC)はあまり議論されていない。しかし、日本版NSCが本丸で、特定秘密保護法は「付属品」だ。

 (2)特定秘密保護法で特に問題なのは、特定秘密を取り扱う者に対する適性評価【注2】。本人だけでなく家族の個人情報も丸裸にする。内心の自由に対する大変な侵害がある。しかも、調査結果自体も特定秘密になる【注3】。
 気にくわない官僚がいれば、秘密を触る部署に異動させて適性評価を受けさせることもできる。適性評価に同意しない場合、出世の道が閉ざされる。
 人事院などの中立的な機関に調査部門を設けるならば話は別だ。
 しかし、警察は外務省や防衛省と権限争議を持っている。そうなると、恣意的に「防衛省のこいつは○。外務省のこいつは気にくわないから×」と権力闘争の道具として使われることが目に見えている。
 官僚は、この法律が自分たちの首を絞めることをわかっていない。

 (3)もっと先、警察が肥大化すると、外務省はなすすべがない。しかも自衛隊にどういう影響を与えるかという想像力が欠如している。警察が自衛隊に手を突っ込んで無茶をすれば、軍神のような人物が出現して主観的な正義感で決起することを誘発しかねない。
 こういう喧嘩は、国の構造をおかしくする。

 (4)情報機関は適性評価を受けていない人間には情報を回さない。政治家は適性評価の対象外なので、機微に触れる情報のほとんどが官僚の中で独占されてしまう。
 国会議員が情報を受け取る身分ではなくなった結果、政治判断ができなくなる。秘密を認めるか否かの以前の問題として、こんな粗雑な法律が国会に上程されていること自体が国家の恥だ。

 (5)外務省在籍時、ソ連課(当時)で最初に教えられたのは、「我々の仕事は全部秘密。文書にはマル秘無期限の判子を押すのが基本」ということだった。 
 「秘」では被密度が低いと思われて読まれないから「極秘」の判子を押す。その上の「極秘限定配布」にするともっと読まれる。電報の色も違う。
 みんな自分のとってきた情報を特定秘密にしたがるだろう【注4】。
 次官も局長もチェックしきれない。入省5年程度のひよっこ官僚たちが特定秘密を大量生産する。

 (6)外務省には正式な文書ではないメモがたくさんある。やばいものは決裁書にしないでメモで回すからだ。しかも情報公開が制度かされることで、今まで極秘無期限で取っていた書類を5年でシュレッダーにかけるようになってきた。情報の保全という点からすると、大問題だ。
 外務省のロシア関係書類は、公のファイルだけでなく、課長席の横にある鍵のかかる白い4段キャビネットにも保管されている。そこには誰がロシア人女性とトラブルを起こしたとか、スパイとの接触があるとか、表では存在していない秘密のメモが入っている。しかも、そのメモはロシア課長だけが見られる。課長は自分の汚点をシュレッダーにかけるから、課長経験者は履歴がきれいになる。そして、自分以外の人間の秘密を全部握る。今でも相当ムチャクチャだ。 

 (7)外交交渉で密約を抹消するのがよくない理由は、相手側は持っているからだ。合意は拘束する・・・・が、国際関係の原則。つまり、記録が残っていないと、向こう側のペースでの交渉しかできない。
 しかも、社会を疑心暗鬼にして弱体化させ、結果として国家も弱体化させるのが、この法律だ。

 (8)(交戦権の行使も集団自衛権の行使も認める「国家安全基本法案」は)政府提案立法では出せない。内閣法制局が通さない【注5】。
 しかし、安部内閣は8月8日に内閣法制局長官を外務省出身の小松一郎にすげ替えた。
 (安倍総理の脳裡には、今年中に日本版NSCと秘密保護法を成立させ、来年は安保法制懇で集団的自衛権を認めさせ、その後の通常国会で「国家安全基本法案提出、その後は96条改憲、9条改憲・・・・という工程表があるらしいが、)ワイマール憲法と矛盾する一般法を幾つも立て、総体としてナチス憲法とみなしたナチスの手口に学んでいるのではないか。
 もっと怖いのは、工程表がなくて、なんとなく空域で動いていく「集合的無意識」でやっているように見えることだ。専守防衛であれば、自衛権の発動は明白だから、NSCは必要ない。日本版NSCでもっとも重要なのは、「4者会合」(外務大臣・防衛大臣・官房長官・総理から成る)だ。
 「4者会合」は戦争指導最高会議だ。日本が戦争するか否かの最高意思決定をする【注6】。NSCができることによって、国家構造がガラリと変わろうとしている。
 もう一つ重要なのは、安部内閣のいわゆる「積極的平和主義」の意味だ。伊藤憲一(元外務官僚)『新・戦争論』(新潮新書)によれば、米国を中心とした形での警察活動に協力することである、とわかる。つまり湾岸戦争のようなものに全面協力することが平和を作る、という意味だ。

 (9)外務省の動きに注意せよ。
 外交官の法律間隔は、法曹資格を持つ人とは違う。外務省は日常的に国際法をいじっているから、条文に反していても、相手国が文句を言ってこない限り義務違反にはならない、と考えている。しかも、採取的には力による解決があり得る、と考える。発想が暴力的なのだ。
 国際法の解釈は外務省国際法局長。国内法の解釈をする内閣法制局長官も、元外務官僚(小松一郎)。

 (10)日本経済の焦眉の問題はTPPだが、主席交渉官は鶴岡公二(外務省)。新設の国家安全保障局の長には谷内正太郎が想定されている。安倍総理の周辺は、全員、外務官僚で固まっている。 

 (11)対米追従の流れとは違う【注7】。谷内は、対米追従派ではない。独自外交で、むしろ愛国的な潮流の人だ。最近感情的な反米論が強まりすぎたために、米国の影に隠れて日本の政治家の責任を結果として免罪している状況がある。
 でも、今回のNSCでは日本が主体的に先制攻撃できるようになことをやろうとしている。

 (12)戦争をする必要があるから、軍機保護法、国防安全法のような特定秘密保護法が必要になる。
 特定保護法は権力としては非常に魅力ある法律だ【注8】。しかし、このようなことは弱い権力がやることだ。日本はだんだん19世紀に帰りつつある。

 【注1】国家安全保障と情報への権利に関する国際原則「ツワネ原則」に違反。
 【注2】公務員のみならず民間の取引先も対象。実施主体は警察。
 【注3】秘密の範囲が極端に広いうえ、いくらでも拡大可。政府想定の特別管理秘密は42万件程度。
 【注4】第三者によるチェック不可。
 【注5】2013年5月14日、参議院予算委員会において、山本庸幸・内閣法制局長官(当時)は、集団自衛権の行使は憲法9条の観点で許されない、と回答した。
 【注6】自民党の日本国憲法改正草案には、戦争を開始する規定がない。宣戦布告もしない。つまり国会の事前承認を必要としない。
 【注7】村山談話、河野官房長官談話の見直し論を含め、米国の考えとズレているところがある。
 【注8】刑法の共謀は非常に限定的。秘密保護法では、独立罪として処罰する。秘密がまだ外に漏れていない段階でも共謀罪で処罰される。

□対談:福島みずほ・佐藤優/まとめ:畠山理仁(フリーライター)「日本版NSCとは「戦争指導最高会議」だ」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)から佐藤優の発言を抜粋、要約。
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【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~

2013年12月02日 | 社会
 (1)ブラック企業で苛酷に働かされ、鬱病になって辞めてしまう場合、その時点で人生からドロップアウトしてしまう人もたくさんいる。そういう人たちの社会復帰も大きな課題だ。
 失ってしまったものを取り戻すのはかなり難しい。
 記録さえ残っていれば、労働災害を適用することで、国から給付を受けられる。しかし、何年前かの話になると、できることがなかなか無い。
 そうなる前に、現状の対策として、まずは記録を取ること。出社してから退勤するまでの時間、どんな業務命令を受けているかの業務日誌だ。なるべくパソコンでログインしている間のスクリーンショットを取るなりして、証拠に残るものを確保するのだ。

 (2就活する者のために言えば、「自分の目で見て決めろ」と言われても、相手も人事のプロだから、学生が本音を見抜けるはずがない。一番大事なのは、企業の客観的データの見方を知ることだ。就活生は、1~2割しか企業データを見てない。
  (a)離職率
  (b)男女比率
  (c)社員数
  (d)募集人数
  (e)労働組合の有無
  (f)契約内容、契約形態・・・・裁量労働があるとか、残業代も給料に含まれる(「含み算」)とか、管理監督者がいる、とか言う会社は怪しい。

 (3日本の企業や働き方は、働かせてもらっているのだから、何でもやるのは当たり前。世界の中では、相当レアな社会だ。
 欧米では、労働者の仕事の内容は、限定されている。職業別に労働協約が設定され、仕事の内容やそれに応じた賃金があらかじめ決まっている。これは、職業別に労働組合と企業団体との交渉で設定される。
 日本の労組は企業別なので、企業の中のルールしか設定できない。
 労働市場で、カネを払ったら「何でも命令できる」というのが、日本の働き方だ。しかし、欧米では、たとえカネを払っても「ここまでしか命令できない」。日本は、カネの力がもっとも強力な社会だ。

 (4会社と従業員のよい関係は、「高福祉」「中賃金」「低命令」だ。
 日本では、普通に働くことがほとんど許されていない。みながみな滅私奉公ではないが、猛烈に働くのが当たり前、とされている。「全員エリート」社会だ。
 一方、企業は国に税金をあまり払わないから、福祉が充実しない。だからこそ、ますます猛烈に働いて家族を養わなければならない。
 その結果、労働生産性が下がったり、過労死が蔓延する。
 明らかに不合理だ。
 そこそこの働き方で過労死しない(鬱病にならない)働き方、持続可能な働き方、かつ、福祉とセットで何とか暮らせる。このような労働のモデルを作るべきだ。
 <例1>一定の所得以下の人は医療、住宅、教育を無料 or 低額にする。すると、給料が多くなくても、何とかなる。過労死、鬱病を防げる上に、地域活動にも参加できる。子どもも育てられる。社会全体のコストが引き下げられていく。
 <例2>「低命令」は、労働時間、配置転換、職務についての「命令権限」に限界をつくる、ということだ。無限の命令のせいで体を壊したり、家族が崩壊している。それを防ぐ。「お前は社会人として甘い!」と言われてサービス残業、休日出勤をさせられている人がいる。以後との中身について制約がないので、「甘い」と言われると、どこまでも仕事をさせられてしまうのが、日本の社会だ。自分の仕事のラインを明確にすることが必要だ。

□インタビュイー:今野晴貴(POSSE代表)/インタビュアー:平井康嗣(本誌編集長)「ブラック企業対策はなぜ国家的問題なのか」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
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 【参考】
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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