語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~

2017年07月24日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<長谷川櫂選>
 ①はるかなるものの一つに蝉の穴 (北杜市)北村和利
 ③滴りの下に光の溢(あふ)れけり (山口市)田福信介
 ④敗戦の一句八十一の夏 (川崎市)池田功
 ⑦人魂(ひとだま)のやうに鵜篝(うかがり)現れし (岩倉市)村瀬みさを
 【評】一席。あまりの暑さにぼうっとしてしまう夏の真昼。そんな感じのする一句。(中略)三席。滴る水の観察。落下して砕けるところに飛びちる光の粒子たちよ。

<大串章選>
 ①壁を這ふ蜘蛛に音なき迅(はや)さあり (八代市)山下さと子
 ④かの夏や野外映画のなつかしく (越谷市)新井高四郎
 ⑤下町に残る昭和の夕焼かな (新居浜市)三浦八重子
 ⑩香港のにほひ濃くなる熱帯夜 (熊本市)寺崎久美子
 【評】第一句。「音なき迅さ」が蝿捕蜘蛛の動きを見事に言い表している。(後略)

<稲畑汀子選>
 ①忘るるは呆(ぼ)けるに非(あら)ず只(ただ)涼し (高崎市)山本春樹
 ⑥ばらばらにされし獲物や蟻の列 (米子市)中村襄介
 ⑧七夕や夢は必らず叶ふとも (神戸市)森岡喜恵子
 【評】一句目。ふっと人の名前を忘れた作者。でも呆けたのではなく、涼しさに只心を許したのだと承知する。(後略)

<金子兜太選>
 ②ヒアリ来る地球はますます炎(も)えてくる (横須賀市)友松茂
 ③老人に心眼のあり牛蛙 (熊谷市)内野修
 ⑩文明を嫌ひて団扇手放さず (今治市)横田青天子
 【評】 芝岡さん、広島にて偶然に被爆死した丸山定夫を思う。嗚呼無念。友松さん、ヒアリ来る、炎えてくる、の恐怖を含むリズム良し。内野さん、牛蛙の存在感に、悟りを得た老人をみる。十句目、横田氏、生き様の皮肉。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年7月24日)
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 【参考】
【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~
【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~
【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~
【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~
【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~
【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~
【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~
【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~
【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~
【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~


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【後藤謙次】反自民の受け皿になれないし、小池知事との連携も困難 ~民進党~

2017年07月24日 | 社会
 (1)盤石を誇った「安倍1強」が内閣支持率の急落に遭遇し、民進党に絶好のチャンスが到来した。
 ところが、現実は「自民党に代わる受け皿」どころか、党の存亡に関わる内紛が進行中だ。しかも「出口が見えない」(党幹部)深刻な事態だ。
 分水嶺となったのは東京都議選だ。選挙前に公認候補の離党者が続出し、当選者はたったの5人。都議会議員の総定数が127だから、その惨敗ぶりは目を覆うばかり。
 「大阪府議会は維新に席巻されて1議席しかない。東西を代表する二つの都市でこれだけの勢力ではとても全国政党とはいえない」(民進党幹部)
 しかも、東京は代表の蓮舫のお膝元だ。執行部批判が出るのは当然だ。

 (2)ただ、敗因をめぐって蓮舫の「二重国籍問題」を再び党内から表面化させたことが民進党の限界を浮かび上がらせる。
 7月18日夕、民進党本部(東京・永田町)で、蓮舫党代表は「二重国籍問題」に関する疑問に答えるため記者会見を開き、戸籍の公表に踏み切った。確かに代表就任直後の蓮舫は説明が二転三転した。ために、「国籍問題が民進党の喉に刺さった小骨のようなものになった」(党幹部)のは事実だが、公党の代表による戸籍公表が日本社会全体に与える影響をどこまで考慮したのだろうか。
 「異例の戸籍公表が人権侵害や差別を助長することにならないか、とても懸念する」(蓮舫執行部の一人)
 蓮舫の代表続投への意欲は見てとれるにしても、戸籍公表によって民進党の危機が回避できるわけではない。むしろ致命傷になる可能性を指摘する声が党内から出ている。

 (3)民進党は、都議選敗北の総括のため、10日から18日まで地域ごとに所属議員と意見交換する「ブロック会議」を開催してきた。選挙責任者の野田佳彦・幹事長/元首相が問題提起した。
 「内閣支持率が下落しても、なぜわれわれが受け皿になれないのか」
 しかし、ブロック会議を経て結束を固めるという狙いは大きく外れた。求心力より遠心力の強さを再認識させるような意見が続出したからだ。全ての会議に出席していた関係者が明かした出席議員の発言が、民進党の窮状を物語る。
 「解党的出直し」
 「執行部総退陣」
 「小池新党への合流」
 ・・・・

 (4)既に都議選前に、将来のエースの一人とみられていた長島昭久(東京比例)が離党。選挙後も藤末健三・政調会長代理(参院比例)が離党届を提出している。さらに菅直人・元代表/元首相が自らのブログで発信した。
 「1992年の参院選では細川護煕さん率いる日本新党が比例で4人の当選者を出し、翌年細川連立政権が誕生した。次期衆院選と参院選で明確に原発ゼロを公約する全国規模で活動できる政党を確立し、原発推進派と対峙したい」
 新党結成への呼び掛けと言ってもいい。菅は「脱原発党=緑の党」と新党名にまで言及した。菅は新党結成の前に民進党が「2030年までに原発事故ゼロを実現する」と明確に公約に掲げることを求めているが、1996年に鳩山由紀夫・元首相と共に、旧民主党を結党した菅が新党結成を提唱した意味は小さくない。
 菅がここまで踏み込んだ背景には、潜在的に民進党に見切りをつけ始めた議員が相当数存在することをうかがわせる。

 (5)中でも都議選で小池百合子・東京都知事が実質的に率いる「都民ファーストの会」に対する期待感の高まりは無視できない。その大前提には都民ファーストの会の国政進出、さらには小池自身が再び国政復帰を目指すかどうかということがあるが、民進党幹部はこんな見立てを明らかにした。
 「小池さんは間違いなく都知事を全うするのではなく首相になることに重きを置いている。都政は先に行けば行くほど難しくなる」
 都民ファーストの会で都議になった55人から何が飛び出すかも分からない。どんなに遅くとも来年12月までには必ず衆院選が実施されるという日程的な目標が立てやすいことも小池の国政復帰説を裏付ける根拠になっている。
 小池は菅がブログで指摘した1992年の参院選で日本新党から立候補して当選した経験を持つ。翌年の衆院選では細川と二人三脚で日本新党の躍進を実現し、非自民の細川連立政権の誕生にも立ち会った。
 一方の自民党は92年の参院選後に、当時党内最大の実力者だった副総裁、金丸信をめぐる巨額献金事件が発覚、これを契機に野党転落に向かった。この成功体験があるからだろう。当時を知る民進党の古参秘書は小池との連携に強い意欲を示す。
 「今の安倍政権は国民からそっぽを向かれている。93年の状況と重なる。小池さんと話をつければ政権奪還は不可能ではない」

 (6)むろん民進党内には、共産党をはじめ他の野党との連携による活路を見いだそうとする勢力も根強く存在する。しかし、4野党共闘路線は最大の支持団体である連合との関係をぎくしゃくさせる。連合会長の神津里季生は「共同通信」インタビューでこう語っている。
 「次期衆院選でも政策抜きにずるずると共産党と一緒に進めるなどあり得ない。一回きちんと仕切り直さなければ駄目だ」
 「安倍1強」の揺らぎと、民進党の迷走の結果、膨大な無党派層が生まれた。この漂流する無党派層をつかんだ者が次の勝者になる。その一翼を民進党が担うにはあまりにハードルが高い。
 「民進党よ、どこへ行く」(北澤俊美・元防衛相)

□後藤謙次「反自民の受け皿になれない民進 小池知事との連携にもハードル ~永田町ライブ!No.349」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月29日号)
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 【参考】
【後藤謙次】内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」
【後藤謙次】経世会(額賀派)・宏池会(岸田派)・石田茂 ~都議選大惨敗後の動き~
【後藤謙次】安倍首相の改憲案の前倒し発言 ~「年内解散」に向けた思惑~
【後藤謙次】支持率急落で首相が「反省の弁」 ~それでも止まらぬ内部文書流出~
【後藤謙次】憲法改正発議までの長い道のりが賭のリスクに ~天皇退位・総裁選・衆院選~ 
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~
【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~
【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~
【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~
【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花
【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

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【欧州】マルタと日本、知られざる交遊 ~対Uボートの護衛に就いた日本海軍~

2017年07月23日 | 歴史
 長靴のようなイタリア半島の南西に、蹴飛ばされた岩のように見えるシチリア島がある。その南に小石のように浮かんでいるのが、マルタ島である。淡路島の半分ほどの大きさで、人口わずか40万人だが、れっきとした独立国家である。ヨーロッパを代表する保養地であり、米ソ首脳が冷戦終結について話し合ったマルタ会談の舞台でもある。
 本年5月にシチリア島で行われたタオルミーナ・サミットの帰途、安倍首相は日本の現職首相として初めてマルタを訪問し、ムスカット首相と会談を行った。メディアではあまり報道されなかったが、ユニークな外交成果を挙げた訪問だったように思う。
 まず、マルタは本年前半のEU理事会の議長国である。EU理事会では、全加盟国が持ち回りで、任期半年の議長国を務めることになっている。議長国は対等な加盟国間の取りまとめ役であり、特別な権限を持っているわけではないが、議事の進行やアジェンダの選定など、その影響力は決して小さくない。安倍首相は、ムスカット首相との共同記者会見で、欧州統合と自由貿易を推進することの重要性で一致したと述べた。日欧EPA(経済連携協定)交渉が大詰めを迎える中で、その大枠合意を早期に実現する方針を議長国と確認したことの意味は大きい。
 両首脳は、「法の支配を重視する海洋国家」として、緊密に連携することでも一致した。今後日本が、法と対話に基づいて東アジアの安全保障問題の解決を進めるには、基本的価値を共有し、国際的発信力を持つヨーロッパ諸国からの理解や支持が不可欠である。サミット後に発表された首脳宣言に続いて、改めて日本の立場への理解がEU首脳から得られたのは、大変有意義であった。
 しかし、注目すべきはこれだけではない。私は第一次世界大戦を研究しておりマルタ訪問はその観点においても重要な意味合いがあったと考えている。
 安倍首相は、マルタに滞在中、旧日本海軍戦没者墓地を訪問して慰霊を行った。日本は、1914年に同盟国イギリスからの要請に基づいて第一次世界大戦に参戦し、1917年に巡洋艦1隻、駆逐艦12隻から成る艦隊を地中海に派遣した。同艦隊は、当時イギリス領だったマルタ島を根拠地として、連合軍(イギリス、フランスなど)の兵員・物資輸送を同盟国軍(ドイツ、オーストリアなど)のUボートによる攻撃から守るため、護衛を担当した。日本海軍はこの作戦で、総計788隻、約75万人の護送を行うという活躍を見せたが、駆逐艦「榊(さかき)」がオーストリア海軍からの攻撃を受けて大破するなど、78名の戦没者を出した。本年は海軍派遣からちょうど百年に当たっており、慰霊はこの節目の年に行われたことになる。安倍首相は共同記者会見で、当時の先人の活躍に思いをはせつつ、国際貢献を行う決意を新たにしたと述べている。
 近年「歴史認識問題」が激化し、日本近代史が国際的話題に上る際には、第二次世界大戦関係の「謝罪」「反省」にばかり注目が集まる傾向がある。しかし、第一次世界大戦期の日本は、日英同盟に基づいて行動し戦勝国となり、戦後に国際連盟の常任理事国にもなっている。今回の安倍首相のマルタ訪問は、その歴史に光を当てることによって、日本近代史の多面性を示し、「歴史認識問題」をいわば相対化する意味があったと言えるのではないだろうか。
 地中海の要衝であるマルタには、これまで多くの日本人が訪れている。第一次世界大戦後には、皇太子時代の昭和天皇が外遊途中に訪問している。昨年は、海上自衛隊の練習艦隊が寄港したが、私は同艦隊に随行する機会を得て、日本人墓地での慰霊行事に参加し、昭和天皇ゆかりの史跡を巡ることができた。かつて日本海軍が拠点としたヴァレッタ港は、NHKドラマ「坂の上の雲」のロケ地としても使用されたという。
 公用語の一つが英語であることもあり、マルタには近年毎年1万数千人もの日本人が訪れているが、こうした歴史や史跡が十分に知られていないのは残念である。イギリスのEU離脱で、日本の対EU外交の弱体化を懸念する声が挙がっている昨今、この機会にマルタとの関係を強化し、EUにおける日本のゲートウェイ拡大を図ってはどうかと思う。

□奈良岡聰智(京都大学大学院教授)「マルタと日本、知られざる交遊」(文藝春秋 2017年8月号)
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【心理】果たして人間の眼はそんなにたしかか?

2017年07月22日 | 心理
 例のエリザベス朝の冒険航海者、廷臣、タバコの将来者、そして伊達男としても豊富な逸話を残しているサ・ウォルター・ローリに、「世界史」の遺著があることは、承知の読者もあろう。ところが、この「世界史」、第一巻があって、あとがない。そのあとがないわけについて、有名な伝承がある。もともとこの著は、彼が断頭台に消える最後の獄、ロンドン塔の中で書かれたものだが、第二巻を執筆中のある日、彼はすぐ窓の下で取っ組み合いの大喧嘩が起こるのを見た。終始観察していて、記憶には自信があった。
 ところが、翌日、立ち会っていたばかりか、多少は関係者でもあったある男と話してみると、ことごとく事実が食いちがっているのである。目の前に観た事件さえこの始末では、とても遠い昔の真実などわかるはずがないと絶望して、一切原稿を火中にしてしまったというのだ。
 人間の眼のたしかさなど、当てになるものではないという根拠に、よく引かれる逸話だが、もっと近い話にこんな実験がある。かつてある国の心理学大会で、突然見知らぬ男が一人、血相かえて駆けこんできた。と、すぐそのあとからまた一人、これもピストルを手にして追って来たかと思うと、たちまち二人は大格闘になった。ピストルの乱射、組んずほぐれつの揚句、二人はまた会場の外に消えてしまった。この間20秒。
 もちろん会衆は呆気にとられて棒立ちだったが、なんとこれが主催者の企(たくら)んだ狂言だったのである。そこで、さっそく来会者一同に、いまの事件の観察記録が求められた。ところが、驚いたことに、解答者全部で40人、重要点についての誤り、20%以下ですんだのはわずかに1人、20-40%が14人、40-50%が12人、残り13人にいたっては、実にそれ以上だったという。もっとひどいことには、事実の捏造までやったのがあり、これまた1割以上の捏造が34人に達しており、1割以下はわずかに6人にすぎなかったとある。要するに、やっと信頼できるのはわずかに6人、つまり8分の7近くは、まったくの嘘か、半分近いデタラメだったということになる。【引用者注】

 【引用者注】この実験に関する出典は、Walter Lippmann:Public Opinion, (Harcourt, 1922)の挿話で、岩波のPR誌「図書」に本稿を掲載後、読者からの指摘で戦前に杉村楚人冠がその著「新聞の話」で紹介していることが分かった。「楚人冠全集」(日本評論社、1937)第8巻所収。【『読書こぼればなし』補注p.219】
 筆者の淮陰生は中野好夫であるという説が有力である。
 なお、“Public Opinion”の邦訳に、ウォルター・リップマン(掛川 トミ子・訳)『世論』(上下)(岩波文庫、1987)がある。

□淮陰生『読書こぼればなし 一月一話』(岩波書店、1978)の「果たして人間の眼はそんなにたしかか?」を一部引用
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【佐藤優】面白い数学啓発書、日本人の思考の鋳型、攻める農業への転換

2017年07月21日 | ●佐藤優
 ①芳沢光雄『かしこい人は算数で考える』(日経プレミアシリーズ 850円)
 ②池田善昭、福岡伸一『福岡伸一、西田哲学を読む ~生命をめぐる思索の旅~』(明石書店 1,800円)
 ③佐藤優、奥野長衛『JAに何ができるのか』(新潮社 1,200円)

 (1)①は次のように指摘する。
 <「yはxの関数」という1つの変数による関数の学びは中学そして高校でいろいろ扱うものの、「zはxとyの関数」という2つの変数による関数は扱われません。要するに1変数の関数は学ぶものの、多変数の関数の学びは大学で主に理系の数学を履修しなければ学びません。このような関数の学び方が、なんでも1つの原因を探してしまう意識に影響しているのではないか、ということです。
 実際、現代の統計学ともいえる多変量解析にある主成分分析というものを学ぶと分かりますが、物事の大体の傾向は3つの関数でつかめるのです>
 芳沢氏による数学(算数)の啓発書は、いずれも面白い。

 (2)②で展開されている学際的対談が面白い。
 <池田 福岡さんの動的平衡論と西田の生命論とが重なっていることはもちろん予想していましたが、福岡さんからいまのように読み解いていただけたことで、両者がこんなにも見事なまでに響き合っているということがより一層強く確認でき、感動しました。本当に素晴らしい!
 そういう点で言えば、世界的に見ても早い時期に、生命のことを「多と一との矛盾的自己同一」などとして説いた西田の洞察力にもあらためて驚かされます。福岡さんの動的平衡論の鍵とも言える「エントロピー」という概念も、当時はほとんど知られていなかったのではないでしょうか。
福岡 ただね、「エントロピー」についても書かれてありましたよ(笑)>〉
 日本人が真面目に物事を突き詰めて考えると、西田哲学を中心とする京都学派の考え方に収斂されるようだ。福岡氏の思考の鋳型も西田哲学だ。

 (3)③において、日本最大の農業団体の最高責任者、奥野長衛・JA全中会長(刊行時点)は、対談で力を込めて次のように述べた。
 <われわれJAグループも、TPPに反対して、5年半、頑張ってきたわけですから。しかし、2015年10月に大筋合意がなって、その副産物として、農業も、グローバリゼーションの潮流の中、しっかりとした対策を練っていかなければならないという段階に入ったとき、それなりにしっかりと議論ができたという気がします。政府・与党と農業団体の間で、共通の認識が生まれたというのは大きい。「守れ、守れ」だけでは日本の農業の明日は見えてきません>
 攻める農業への転換は焦眉の課題だ。奥野氏の戦略ならば、小泉進次郎氏を味方に付けて、JAの利益を最大限、擁護することができる。

□佐藤優「日本人の思考の鋳型 ~知を磨く読書 第207回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月22日号)
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 【参考】


【佐藤優】保守論客が見た明治憲法、軍事産業にシフトしていく電機メーカー、安全と安心を強化する過程に入り込む犯罪者
【佐藤優】就活におけるネット社会の落とし穴、裁判官の資質、象徴天皇制と生前退位問題
【佐藤優】痛みを無視しない、前大戦で「前線」と「銃後」の区別がなくなった、情報を扱う仕事の最大の武器
【佐藤優】海上権力を維持するために必要な要素 ~イギリスの興亡の歴史を通して~
【佐藤優】女性の貧困を追跡したノンフィクション、師弟関係こそ教育の神髄、イランは国際基準から逸脱した国
【佐藤優】2000年の時を経て今なお変わらないインテリジェンスの「真髄」 ~孫子~
【佐藤優】財政から読みとく日本社会、ラジオの魅力、高校レベルの基礎の大切さ
【佐藤優】嫌韓本と一線を画す韓国ルポ、セカンドパートナーの実態、日本人の死生観
【佐藤優】人間にとって「影」とは何か ~シャミッソー『影をなくした男』~
【佐藤優】文部省の歴史と現状、経済実務家のロシア情勢分析、中国の対日観
【佐藤優】学習効果が上がる「入門書」、応用地政学で見る日本、権力による輿論のコントロールを脱構築
【佐藤優】大川周明『復興亜細亜の諸問題』 ~イスラーム世界のルール~
【佐藤優】女性と話すのが怖くなる本、ネット情報から真実をつかみ取る技法、ソ連とロシアに共通する民族問題
【佐藤優】ヨーロッパ宗教改革の本質、相手にわかるように説明するトレーニング、ロシア・エリートの欧米観
【佐藤優】なぜ神父は独身で牧師は結婚できるのか? 500周年の「革命」を知る ~マルティン・ルター『キリスト者の自由』~
【佐藤優】政界汚職を描いた古典 ~石川達三『金環蝕』~
【佐藤優】生きた経済の教科書、バチカンというインテリジェンス機関、正しかった「型」の教育
【佐藤優】誰かを袋だたきにしたい欲望、正統派の書評家・武田鉄矢、追い込まれつつある正社員
【佐藤優】発達障害とどう向き合うか、アドルノ哲学の知的刺激、インターネットと「情報犯罪」
【佐藤優】後醍醐天皇の力の源 「異形の輩」とは--日本の暗部を突く思考
【佐藤優】実用的な会話術、ユーラシア地域の通史、宇宙ロケットを生んだ珍妙な思想
【佐藤優】キブ・アンド・テイクが成功の秘訣、キリスト教文化圏の悪と悪魔、理系・文系の区別を捨てよ
【佐藤優】企業インテリジェンス小説 ~梶山季之『黒の試走車』~
【佐藤優】中東複合危機、金正恩の行動を読み解く鍵、「型破り」は「型」を踏まえて
【佐藤優】後世に名を残す村上春樹新作、気象災害対策の基本書、神学の処世術的応用
【佐藤優】地学の魅力、自分の頭で徹底的に考える、高等教育と短期の利潤追求
【佐藤優】日本人の特徴的な行動 ~日本礼賛ではない『ジャパン・アズ・ナンバーワン』~
【佐藤優】知を扱う基本的技法、ソ連人はあまり読まなかった『資本論』、自由に耐えるたくましさ
【佐藤優】後知恵上手が出世する? ~ビジネスに役立つ「哲学の巨人」読解法~
【佐藤優】トランプ政権の安保政策、「生きた言葉」という虚妄、キリスト教の開祖パウロ
【佐藤優】「暴君」のような上司のホンネとは? ~メロスのビジネス心理学~
【佐藤優】物まね芸人とスパイの共通点、新版太平記の完成、対戦型AIの原理
【佐藤優】トランプ側近が考える「恐怖のシナリオ」 ~日本も敵になる?~
【佐藤優】弱まる日本社会の知力、実践的ディベート術、受けるより与えるほうが幸い
【佐藤優】トランプの「会話力」を知る ~ワシントンポスト取材班『トランプ』~
【佐藤優】「不可能の可能性」に挑む、言語の果たす役割の大きさ、NYタイムズ紙コラムニストの人生論
【佐藤優】人生は実家の収入ですべて決まる? ~「下流」を脱する方法~
【佐藤優】ソ連崩壊後の労働者福祉軽視、現代も強い力を持つ観念論、孤独死予備軍と宗教
【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議
【佐藤優】『失敗の本質』/日本型組織の長所と短所
【佐藤優】世界を知る「最重要書物」 ~クラウゼヴィッツ『戦争論』~
【佐藤優】現代ロシアに関する教科書、ネコ問題はヒト問題、トランプ氏の顧問が見る中国
【佐藤優】日本には「物語の復権」が必要である ~反知性主義批判~
【佐藤優】サイコパス、新訳で甦る千年前の魂、長寿化に伴うライフスタイルの変化
【佐藤優】イラクの地政学、誠実なヒューマニスト、全ての人が受益者となる社会の構築
【佐藤優】外交に決定的に重要なタイミング、他人の気持ちになって考える力、科学と職人芸が融合した食品
【佐藤優】『ゼロからわかるキリスト教』の著者インタビュー ~「神」を論じる不可能に挑む~
【佐藤優】組織の非情さが骨身に沁みる ~新田次郎『八甲田山死の彷徨』~
【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州
【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
 
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【旅】ツェルマット、マッターホルン(2) ~花の道~

2017年07月20日 | □旅
 【注】「【旅】ツェルマット、マッターホルン」から続く。写真は親族が撮影。

 6月22日(木)
 同宿のK氏の案内で、三番目の展望台(“ブラウベルト”)へ。2,601m。その上にロートホルンがあるが、今の時期、まだ開いていない。
 K氏の案内で、エーデルワイスの自生地(今ではなかなかお目にかかれない)へ。時期的に少し早いのか、数は多くはない。
 
 
 
 

 K氏と別れ、「花の道(Blumen Weg)」を下る。
 

 「花の道」で見かける花の一つ。路傍の看板によれば、「Schnee-Enzian」。「雪竜胆」というほどの意味。
 
 

 「花の道」は標高2,800mから2,300m弱まで、徒歩2時間半。道中、常にマッターホルンが見え、壮大な眺望。
 
 
 
 

  
 
 
 

 
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 【参考】
【旅】ツェルマット、マッターホルン


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【旅】ツェルマット、マッターホルン

2017年07月20日 | □旅
 ツェルマットは、スイス国ヴァレー州の基礎自治体。スイス最高峰のマッターホルン(標高4,478m)の麓に広がるマッタータル溪谷の最上流部(標高1,620m)に位置する。イタリアとの国境テオドール峠(3,292m)まで約10kmの距離である。以下、写真は親族が撮影。

 2017年6月20日(火)
 午前中、ベルンからツェルマットへ移動。投宿してすぐ、ゴルナーグラート登山鉄道を使って、“ゴルナーグラート”(Gornergrat)へ。マッターホルンを望む展望台としては最も名高い。最高点の標高は3,130m。
 

 リスカム(Lyskamm)。スイスとイタリア国境のペンニネアルプス山脈(ワリス・アルプス)にある山。5kmにも及ぶ屋根から成り、目立つ頂上は二つ。写真で最も高いところが西リスカム、その奧のもう一つの峰が東リスカム。
  

 モンテ・ローザ(Monte Rosa)。写真右手が最高点のデュフール峰(イタリア側、4,634m)。
 
 
 6月21日(水)
 午前中、前日の展望台(ゴルナー・グラート)とは反対側の展望台からマッターホルンを望む。“グレッシャー・パラダイス”(Matterhorn “Glacier Paradise”)。がそれで、標高3,883m、欧州一高い展望台。3つのロープウェイを繋いで到達。気温5度。寒い。万年雪と氷河の世界。眼下のテオドール氷河では365日スキーができる。
 
 
 
 
 

 同日、ツェルマットの街に下りて昼食。
 食事をした店にエーデルワイスが飾られていた。自生のエーデルワイスはなかなか目にできないらしい。
 
 

 6月22日(木)
 払暁のマッターホルン。この日の日の出は5時39分。日が昇るにつれ、山は次第に赤みを帯びてくる。
 
 

 「【旅】ツェルマット、マッターホルン(2) ~花の道~」へ続く。
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【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる

2017年07月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)炭水化物(主食)をしっかり食べたほうが、目の前の損得に影響されないようだ。独リューベック大学の報告から。
 研究は、経済心理学でよく利用される「最後通牒ゲーム」を使って行われた。このゲームは2人(提案者と承認者)で行う。〈例〉1万円を2人で分け合う状況を想定。提案者は1回に限り、シェアする金額を提案できる。
   ①承認者が提案を了承 → 各自その金額を受領。
   ②承認者が提案を拒否 → 1万円は没収され、2人とも何も得られない。
 経済学的には、提案者は最大の利益、つまり9,999円を懐に入れるべきで、承認者は0円より1円のほうがまし、らしい。
 しかし、人間そうは判断しないだろう。
 実際、提案者はより五分五分に近い金額を提示する傾向があり、承認者はあまりに不公平な金額を「社会的制裁」の意味で拒否するケースが多い。

 (2)実験。
  (a)対象者:87人の大学生。昼食前に承認者としてオンライン版のゲームに参加してもらった。提案は「10ユーロのうち2ユーロを提供する」という不公平なもの。ゲーム終了後、学生たちの朝食内容を聞き取り調査。その結果、高炭水化物の朝食を食べてきた学生の半数以上が、不公平な提案を拒否した。他方、低炭水化物食では約25%にとどまった。
  (b)対象者:24人の成人男子。
   ①ある日は炭水化物80%タンパク質20%の朝食を食べてもらい、ゲームを行った。
   ②別の日には炭水化物50%、タンパク質25%の朝食を食べてもらい、ゲームを行った。
   その結果、①の高炭水化物食の後は、有意に不公平な提案を断ることが明らかになった。

 (3)研究者は、「高炭水化物食の後は、脳の報酬系に関与するドーパミンの産生に必要なチロシン濃度が低下する」と指摘している。
 報酬系は、「報酬が手に入る」という予想後、コンマ数秒で活性化するため、目の前の誘惑に逆らいがたい傾向がある。そのため、衝動的に不公平な提案を受け入れてしまう、と推定される。
 この結果のみで食事についてあれこれ言うことはできないが、少なくとも大切な会議がある日は、主食をしっかり食べたほうがよいらしい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「主食は誘惑への防波堤?/高炭水化物食で公平な判断 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.358~」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月22日号)
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 【参考】
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【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
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【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
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【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【佐藤優】米ロ首脳会談でみえたトランプ氏の外交手腕

2017年07月19日 | ●佐藤優
 (1)7月7日夜(日本時間8日未明)、独国ハンブルグでトランプ米大統領とプーチン露大統領が初めて会談した。
 <会談時間は当初予定の30分を大幅に超えて2時間15分に及んだ。シリアやウクライナを巡る協力を進めることで合意。トランプ氏は、ロシアによる昨年の米大統領選への介入問題を問いただした。
 初顔合わせは、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の機会を利用して実現した。>【注1】

 (2)首脳会談には、大きく分けて二つの種類がある。
  (a)相互訪問による会談。実質的な交渉はこの機会を利用して行われる。
  (b)国際会議などマルチの場を用いて行われる首脳会談。この場合、「やあやあご機嫌いかが」というような顔つなぎが主な目的で、実質的な交渉は行われないことが多い。
 今回も当初の予定時間は30分だったので、米露の外交当局はこの会談で本格的な交渉を行うことを想定していなかったはずだ。実際の会談が予定より1時間45分も長引いたのは、トランプ大統領とプーチン大統領の相性が良いからだ。
 <会談後のティラーソン米国務長官の説明によると、トランプ氏は会談の冒頭、昨年の大統領選に関し、プーチン氏の指示でサイバー攻撃などを行って介入したとされる問題について米国民の懸念を伝えた。プーチン氏は「証拠を示して欲しい」などと反論し、関与を否定した。
 一方で両首脳は、サイバー攻撃による犯罪やテロ、社会インフラへの被害や選挙への介入などを防ぐため、両国で作業部会を設けることで合意した。
 トランプ氏自らこの問題を取り上げることで、トランプ政権とロシアとの不透明な関係が指摘される「ロシア疑惑」への米国内の批判をかわすとともに、作業部会を作ることで、関心を疑惑から今後の対応へと変えたい狙いがあるとみられる。>【注2】

 (3)トランプ大統領がプーチン大統領に対して、昨年の大統領選におけるロシアのサイバー攻撃疑惑について詰問したのは、あくまで米国内向けのポーズだ。だから、プーチン大統領が「証拠を示してほしい」と述べたのに対して、「ほら、これが動かざる証拠だ」と資料を渡すようなことはせずに、お互いの主張を言いっ放しにすることで、問題の軟着陸を図っている。2人とも交渉術の教科書に載るような見事なやりとりをした。

 (4)さらに重要なのは、シリア問題で米露がかなり歩み寄ったことだ。
 <会談では多くの時間がシリア問題に費やされた。両首脳はヨルダンとともに、シリア南西部に住民の安全を確保し、難民が帰還できる「安全地帯」を設けることで合意。ティラーソン氏は「この合意は、米国とロシアがシリアで協力できることを初めて示したものだ」と成果を強調した。>【注3】
 シリアではロシア軍とシリア政府軍、さらに米軍の支援を受けたクルド民兵の攻勢により「イスラム国」が実行支配する地域が急速に減少している。
 そのため、「イスラム国」の活動家は、エジプト、中央アジア、フィリピンなどに流出を始めている。
 シリア問題で米露が協調することは、「イスラム国」によるテロの拡散を防ぐ上で、死活的に重要だ。シリア南西部に「安全地帯」を設置することに合意した背景には、米国がアサド政権を打倒するようなことはしない、というコミットメントがある。トランプ大統領は、目立たないよう注意しつつも、ロシアに対して譲歩している。

 (5)さらに北朝鮮の核開発と弾道ミサイル発射実験についても、米露の協力関係が構築されたようだ。
 <核とミサイルの開発を進め、米国への挑発行為を続ける北朝鮮の問題についても話し合った。追加制裁を主張する米国に対し、ロシアは中国とともに慎重姿勢を示している。ティラーソン氏は会談後「ロシアは少し違った見方をしている。ロシアは北朝鮮と経済活動を行っている」と述べた。ロシアのラブロフ外相も米側との認識が隔たっていることを認め、国連などの場で引き続き協議をしていく方針を示した。>【注4】
 北朝鮮が7月4日に発射した弾道ミサイルについて、米国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)という評価をしているのに対し、ロシアは中距離弾道ミサイルにすぎないと評価している。

 (6)ICBMについては、大気圏への再突入時に必要な高熱や衝撃から核弾頭を保護する技術が死活的に重要になる。この技術を獲得するには、まだまだ時間が必要で、そもそも今回の弾道ミサイルの最高速度はマッハ20に及んでいないので、ICBMが完成したとはいえない(韓国国防省)との見方が現実的だ。
 米国や日本は、北朝鮮の「ICBM技術を獲得した」という宣伝に煽られて冷静な判断ができていないように見受けられる。
 この点について、今回の米露首脳会談で両国間の認識のギャップは埋まらなかったようだが、互いの認識と評価の違いを整理したことは、外交的に大きな意味がある。

 (7)ウクライナ問題でも歩み寄った。
 <米国防総省のデービス報道部長は5日の会見で「これまでに見たことのない新型ミサイルだ」と述べ、2段式のICBMとの判断を示した。米CNNによると、新たな挑発に対応するため、米軍が朝鮮半島への一時的な増派を検討しているという。
 デービス氏によると、今回のミサイルはICBMの要件とされる5500キロ以上の射程を持っていた。ミサイルの先端に弾頭を着けていたことを確認したという。北朝鮮の北西部・亀城市の航空機工場から移動式発射台を使って発射されたが、これまではこの場所からのミサイル発射はなかったという。
 デービス氏は、ICBM実験は、日本近海を航行する船舶や航空機に危険を及ぼすと批判した。一方、ICBMが大気圏への再突入時に必要な高熱や衝撃から核弾頭を保護する技術について「北朝鮮が獲得したかどうかはわからず、脅威は限定的だ」と指摘。その上で、米軍が5月末に初めてとなるICBM迎撃実験に成功しており、「米国は自国を防衛することができる」と強調した。>【注5】
 ウクライナに対しても、米国はドネツク州、ルガンスク州へのロシアが影響力を行使している現状を追認した上で、ロシアと協議するための特別代表を設けることにしたので、ここでもトランプ大統領がプーチン大統領に譲歩している。
 キスリャク駐米ロシア大使は、トランプ氏に近いセッションズ司法長官やフリン・前大統領補佐官が政権発足前に接触していたことが問題視されており、ロシアゲートの渦中の人物なので、双方が新大使を選ぶということで、問題の軟着陸を図っている。
 トランプ大統領は、大胆な妥協ができる外交手腕が極めて高いことが明らかになった。

 【注1】記事「米ロ首脳、2時間超す初会談 サイバー攻撃巡り応酬も」(朝日新聞デジタル 2017年7月8日)
 【注2】前掲記事
 【注3】前掲記事
 【注4】前掲記事
 【注5】記事「北朝鮮ICBM、米「2段式の新型」 朝鮮半島へ増派も」(朝日新聞デジタル 2017年7月6日)

□佐藤優「米ロ首脳会談でみえたトランプ氏の外交手腕 ~飛耳長目 第133回~」(「週刊金曜日」2017年7月14日号)
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 【参考】
【佐藤優】【加計学園疑惑】官邸最高レベル指示を「闇文書」にした理由
【佐藤優】「入口論」から完全に訣別した首相と外務省 ~北方領土~
【佐藤優】「イスラム国」の延命 ~米軍のシリア攻撃が可能にした~
【佐藤優】又吉進外務省参与は沖縄史の汚点になる
【佐藤優】トランプ大統領とロシアなら取引は可能だ ~ロシア~
【佐藤優】金正恩はなぜ金正男を殺したのか? ~その「内在論理」~
【佐藤優】盤石な北朝鮮の権力基盤を弱める ~金正男暗殺~
【佐藤優】沖縄報道の植民地主義的な認識 ~朝日新聞~
【佐藤優】マティス国防長官来日/尖閣は安保適用の範囲/北方領土との整合性は
【佐藤優】露外交官の追放問題に見るトランプ氏の能力
【佐藤優】北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印
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【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
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【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~

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【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
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【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
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【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
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【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
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『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
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【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
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【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

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【後藤謙次】内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」

2017年07月18日 | 社会
 (1)7月9日午前(日本時間同日夕方)、安倍晋三・首相は、訪問先(スウェーデン国ストックホルム市)にて、記者団に内閣改造を明言した。もともと、自民党内に8月3日改造説が流れていたが、首相自身が直接口にするのは極めて異例のこと。
 背景に、「安倍1強」の証しでもあった高い内閣支持率が急落したことに対する強い危機感があった。記者団とのやりとりでも、「内閣支持率が大きく下落した」との指摘を受けるなど支持率急落が焦点になった。
 安倍政権にベッタリの「読売新聞」ですら、翌10日付朝刊の1面トップ記事で大きく伝えた。「内閣支持続落36% 13ポイント減 不支持最高52%」
 「朝日新聞」も同じく「安倍内閣支持 最低33%」と報じた。
 東京都議会議員選挙(7月2日)における自民党大惨敗の結果、既に“地殻変動”の予兆が見えていたが、「ここまで下落するとは」(自民党幹部)。

 (2)しかも、都議選後も安倍側近の稲田朋美・防衛相が失点を重ねた。九州北部を襲った豪雨災害のさなかに「政務」を理由に防衛省外に出ていたのだ。温厚な中谷元・前防衛相が手厳しく批判した。「信じられない。(予定を)キャンセルすべきだった」
 これまでも稲田は失言や問題発言を繰り返していた。安倍がかばい続け、職にとどまってきたが、そのことが「身内を重視し過ぎる」との安倍批判を加速させた。異例の改造予告はその批判回避の一環とみてよい。
 稲田の外にも、改正組織犯罪処罰法の成立過程で変てこな答弁で不信を買った金田勝年・法相ら“問題閣僚”を一掃しなければならない立場にある、安倍は。

 (3)政権の屋台骨を支える菅義偉・官房長官も、「ここは一度状況を落ち着かせる必要がある」と周辺に語る。
 しかし、実際に改造で安倍を取り巻く空気が変わり、局面転換ができるかどうかについては不透明感が漂う。劣勢挽回の切り札が見つからないからだ。安倍がストックホルムで記者団に示した改造方針からも、手詰まり感が浮かび上がる。
 「結果を出していくには安定感は極めて重要です。そうした意味では骨格はコロコロと変えるべきではないと考えています」
 この発言のキーワードは「安定感」と「骨格を変えない」の二つだ。これを具体的な人事構想に適用すると、麻生太郎・副総理兼財務相、菅、党側では高村正彦・副総裁、二階俊博・幹事長はいずれも留任させる、ということだ。
 つまり、徹底した「専守防衛人事」(党幹部)。「攻め」を捨て、守りに徹して、これ以上の失点をいかに防ぐか、その一点に尽きる。

 (4)裏返せば、安倍は今回の改造によって誕生する新内閣での衆院解散・総選挙は見送る意向を固めた、とみていい。衆院議員の任期切れ(2018年12月)をにらみながら、あらためて内閣改造と党役員人事を行うという「2段階方式」で次期選挙に臨むことになる。このため取り沙汰される小泉進次郎の入閣の可能性もほぼ消えた。
 だが、こうした目玉人事なき布陣では一新感が出ない、というジレンマに陥る。代わり映えのしない顔触れが並べば、支持率低下をさらに加速させる可能性が出てくる。

 (5)いくら解散は遠のいたとはいえ、選挙の準備を怠るわけにはいかない。
 そこで重要なのは、選挙対策委員長を誰にするかだ。とりわけ次回の衆院選挙は青森、岩手、奈良、三重、熊本、鹿児島の6県で定数が1減になる。その候補者調整が難航するのは必至。安倍の意向を酌みながら二階と協議できる人材となると、相当ハードルは高い。

 (6)守りを固めながら次の戦の準備を進める。さらに内閣支持率の急落を止める。そんな神業的なことができるのだろうか。
 第2次安倍内閣は2012年12月の発足以来、過去3回、支持率の低下を経験している。特定秘密保護法制定(13年)、集団的自衛権行使の一部容認(14年)、安保関連法制定(15年)。いずれもさほど時間を置かずに支持率を回復させた。このため政府高官もこう語る。「安保法制のときに38%まで落ちたがその後回復している。今回もいずれ戻ってくる」
 しかし、今回は明らかに様相を異にする。過去3回はいずれも政策判断に対する反対の意思表示だったが、今回は政策とは関係のない安倍自身の政治姿勢に向けられた“イエローカード”だ。大阪の学校法人森友学園をめぐる国有地払い下げ問題に端を発した「安倍不信」は、その後の岡山の学校法人加計学園の獣医学部新設問題に連なり、火種がなくなるどころか火の手は収まる気配がない。
 むしろ、とんでもない暴言が「週刊新潮」によって暴露された衆院議員の豊田真由子ら「安倍チルドレン」の不祥事、失態が後を絶たない。そしてとどめを刺したのが都議選での最初で最後の街頭演説で安倍が放った一言だ。
 「こんな人たちに負けるわけにはいかない」

 (7)安倍は欧州歴訪から帰国した翌日の12日、被災地の福岡、大分両県を視察した。
 しかし、歴訪中に組まれた加計学園問題をめぐる衆参両院の閉会中審査が逆に「安倍隠し」を印象付ける結果を招いた。
 マスコミ各社の世論調査ではおおむね「支持率35%ライン」にある。20%台に落ち込むと復元力を失った船と同じで、元に戻ることは難しくなるというのが冷厳な経験則だ。
 「守りの安倍」に活路は見えてこない。

□後藤謙次「内閣改造は「専守防衛」でも活路が見えない「守りの安倍」 ~永田町ライブ!No.348」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月22日号)
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 【参考】
【後藤謙次】経世会(額賀派)・宏池会(岸田派)・石田茂 ~都議選大惨敗後の動き~
【後藤謙次】安倍首相の改憲案の前倒し発言 ~「年内解散」に向けた思惑~
【後藤謙次】支持率急落で首相が「反省の弁」 ~それでも止まらぬ内部文書流出~
【後藤謙次】憲法改正発議までの長い道のりが賭のリスクに ~天皇退位・総裁選・衆院選~ 
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~
【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~
【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~
【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~
【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花
【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた


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書評:『スパイス戦争 -大航海時代の冒険者たち-』

2017年07月17日 | 小説・戯曲
 歴史的事実は小説よりも奇・・・・いや、興味深い。
 歴史的事実は、別の歴史的事実とどこかで交差し、いまの私たちの生活環境を築いている。
 くわえて、本書はありふれた冒険小説以上に血沸き肉踊る事件が描かれている。

 時は17世紀。
 ヨーロッパは、まだ正確な世界地図を持っていなかった。
 海路、北極を経由して東洋の香料諸島に到達できるはずだと信じる探検家もいた時代である。
 喜望峰をまわるルートが開発されていたが、損害が大きかった。
 イギリス東インド会社は、1601年以来10年間余に三つの船団、延べ12隻と1,200人を送り出したが、三隻のうち一隻は沈没ないし行方不明になり、800人が死んだ。悪天候、暑熱、悪疫、壊血病、異文化の民による襲撃、事故によって。東洋航路は、まさしく冒険そのものであった。

 これに加えて、国家間の争いがあった。
 オランダ東インド会社は、膨大な資本力にものをいわせて大型の船舶を多数派遣して、陸海軍力によって先行のポルトガルを駆逐し、通商上の要地を要塞化した。資本力に劣るイギリス東インド会社が派遣する小型船舶は、いたるところでオランダから圧迫を受けた。

 当時も今もおなじだが、組織において、本部との情報が途絶している末端の動き方は、その出先機関のトップの器量次第である。
 たとえば、三次遠征隊で小さな船の長をつとめたデイヴィッド・ミドルトンは、きわめて効率的に行動した。東インド諸島までごく短期間で往復し、人命の損失も最小限にとどめている。

 個性的な船長たちのうちで、本書はナサニエル・コートホープに多くの紙数を割く(原題は『ナサニエルのナツメグ』である)。
 彼は、覇権を誇るオランダに対して、モルッカ諸島の南部、バンダ諸島のうちナツメグ豊富なルン島にこもって抵抗を続けた。水も食糧も乏しい中、島民と小数の部下とをよく信服させ、戦略的な才能も発揮した。暗殺されなかったら、抵抗はさらに続いたにちがいない・・・・と著者はいう。

 いささか美談めいたこのくだりに、著者のナショナリズムを感じとる読者もいるだろう。
 海外に雄飛した日本人もしばしば登場するのだが、ジャンクに乗った無表情な海賊、オランダ側の傭兵、長刀による斬首・・・・といずれも物騒な一面しか描かれていない。
 このあたりにも、著者の英国一辺倒な姿勢を見てとることができる。
 本書には書かれていないが、英蘭両国の力関係は18世紀後半にはいると完全に逆転する。

□ジャイルズ・ミルトン(松浦伶訳)『スパイス戦争 -大航海時代の冒険者たち-』(朝日新聞社、2000)
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【加賀乙彦】『永遠の都』をめぐる対話

2017年07月16日 | 小説・戯曲
 
 精神科医、作家、日本藝術院会員、日本ペンクラブ顧問の加賀乙彦と著書150冊の作家、岳真也が『永遠の都』の読みどころを拾い出し、背景を語り、読みを深める。
 〈例1〉加賀の受洗は57歳のときだが、『永遠の都』を書き始めて1年ぐらい経ってから。受洗によって書きやすくなった。
 〈例2〉『永遠の都』は『雲の都』を経て最近作『殉教者』によって完成する。
 〈例3〉『資本論』を一生懸命読んだ。資本主義社会では恐慌、パニックは必ず起こる、と加賀も考える。

●加賀乙彦の受賞歴
 1968年『フランドルの冬』/芸術選奨文部大臣新人賞
 1973年『帰らざる夏』/第9回谷崎潤一郎賞
 1979年『宣告』/日本文学大賞
 1986年『湿原』/第13回大佛次郎賞
 1998年『永遠の都』/第48回芸術選奨文部大臣賞
 1999年『高山右近』/日本芸術院賞
 2000年 日本芸術院会員
 2011年 文化功労者
 2012年『雲の都』/第66回毎日出版文化賞企画特別賞
 2016年 第5回歴史時代作家クラブ賞・特別功労賞

□加賀乙彦×岳真也『永遠の都は何処に?』(牧野出版、2017)
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【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~

2017年07月16日 | 批評・思想
★加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2009/のちに新潮文庫、2016)
 
 東京大学文学部教授の加藤陽子氏は反保守の歴史学者だと思っていたが、本書を読むと、歴史を資料やディテールに沿って都合よく組み直したり、自分の結論に引き寄せたりしていないことが分かる。
 高校生を相手に、「どうして悲惨な戦争が惹き起こされたのか」「原因と責任者は」というシンプルな質問を軸に読み解く。
 しかし、明治憲法の下で近代日本の戦争の大半が実施されたが、統帥権は天皇陛下にあった。それをどのような組織、制度、人物が誘導し、干犯し、戦争に至ったのかについて、もう少し解説をと思わないでもない。
 とはいえ、著者は、戦争では勝ち組にも“相当の責任”があることを指摘する。2010年の小林秀雄賞を受賞した本書は、再読の価値が十分にある。

□庄司太郎(元アラビア石油取締役、オイルアナリスト)「日本近現代史を学び直す」(週刊金曜日 2017年7月15日号)を引用
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【南雲つぐみ】夏に起こりやすい頭痛

2017年07月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 病的な原因のない慢性頭痛には「緊張性頭痛」か「片頭痛」「群発頭痛」などがあるが、これらが混ざって起こることもある。多いのは緊張性頭痛と片頭痛だ。前者は、頭を締めつけられるような痛みが続くが、後者はズキズキと脈打つような痛みが特徴だ。頭の中の血管が拡張し、拍動に合わせて周囲の神経に刺激が伝わって起こるとされる。
 見分け方として、入浴して血行が良くなると痛みが和らぐのは緊張性頭痛。逆に、痛みが増すのは片頭痛と考えられる。入浴すると血管が拡張して血行が良くなるので、周辺の神経を刺激してしまうのだ。
 片頭痛になったら、凍った保冷剤などをハンケチに包んで、痛む箇所に当てる方法がある。コンビニで凍ったペットボトルが販売されているので、外出先での片頭痛に対応することができる。
 夏の片頭痛は、気温の上昇や体内の水分不足とともに、日差しの強さが刺激になることも多いようだ。大切なのは長時間太陽光を浴び続けないこと。頭痛の症状が出たら光や音などが少ない、日の当たらない場所で、静かに休むといいだろう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「夏に起こりやすい頭痛 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年7月13日)を引用
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【南雲つぐみ】痔になりやすい仕事

2017年07月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 「外痔核(=肛門の外にできるいぼ痔)が急激に悪化して来院した患者が職場の配置換えで立ち仕事になったというのです」と話すのは、肛門科クリニック医院長のA先生。春は異動の季節だが、急激な環境の変化はこのような健康トラブルを起こすこともあるのだ。
 いぼ痔には大腸の中にでき、次第に肛門の外に出てくる内痔核と、肛門の外に突然できる外痔核がある。どちらもトイレで息み過ぎる習慣や、立ちっ放しや座りっ放しのライフスタイルなどが原因になる。つまり、デスクワークで一日中座っている人も、販売でずっと立っている人も、痔には要注意。忙しくても1時間おきぐりあに屈伸などをして全身の血行を促すといいそうだ。
 痔は肛門周りの静脈のうっ血によって起こる。そこで、風呂では湯船にゆっくりとつかり、体の芯まで温めて血行を促すことが大切だ。脱肛して戻りにくくなった内痔核も、温めると戻しやすくなるという。また、内痔核には「ジオン注射」という治療法があり、手術なしでほぼ完治できるようになったそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「痔になりやすい仕事 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年4月20日)を引用
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