語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【アジア】タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由

2017年11月17日 | 社会
 (1)このところタイとマレーシアで、外国人労働者に関連する規制が強化されている。
 タイ・・・・2017年6月23日、外国人を不法に就労させた場合、雇用主に40万~80万バーツ(約130万~260万円)の罰金を科す規制を施行した。
 しかし、多数の外国人が急激に出国するなど混乱が見られたことから、政府は施行を18年まで先送りし、7月24日から8月7日まで不法就労者の合法化登録を臨時で受け付けた。
 不法就労者68万9,091人の合法化を審議した結果、1万8,445人が不可となった。
 不法就労者は200万人に達していたとの見方もあり、年末に問題が再燃する可能性がある。

 (2)マレーシア・・・・三つの措置が導入された。
  (a)17年2月から、不法滞在外国人にE-Kadと呼ばれる一時的滞在許可証の発行を開始し、その申し込みを6月末で締め切った。E-Kadの有効期限は18年2月15日で、その間に合法的な労働者として正規の手続きを取るよう政府は求めている。なお、有資格者が60万人と推定されるのに対し、約16万人が申し込むにとどまった。締め切りを受けて、政府は不法就労の取り締まりを強化し、7月上旬までに外国人2,000人以上と44事業主を逮捕した。
  (b)10月2日から、外国人労働者の健康診断の際に、入国時に採取した指紋と照合することとした。身代わり受診をできなくして、健康基準を満たさない不法就労者を取り締まる。
  (c)18年から、外国人労働者の福利厚生について企業に責任を持たせるため、年次雇用税について労働者本人負担から企業負担に移行する。さらに19年には税額を引き上げる予定だという。

 (3)両国が規制強化に動いているのは、外国人労働者の劣悪な待遇が問題となったからだ。米国の人身取引報告書の14年版で、両国は4段階のうち最低ランクに格下げとなり、米国との通商協定を締結できなくなった。
 マレーシアは15年と17年に計2段階、タイも16年に1段階引き上げられ、最低ランクから脱した。
 それでも、両国で奴隷状態にある人の人口に占める比率は比較的高く、さらなる改善が求められる状況だ。

 (4)17年4月に今度は欧州議会が、20年以降欧州に輸入されるパームオイルは、生産過程で環境保護や人権保護の基準に合致したものに限ると決議した。
 マレーシアはパームオイルの主要輸出国であり、欧州向けにも人権侵害状態の改善を示す必要に迫られている。

 (5)外国人労働者に関する規制強化で、両国では労働者不足が顕在化している。このため、
  (a)タイ・・・・これまで肉体労働者と家政婦に限ってきた合法外国人労働者の受け入れを、他の職種にも広げることを検討し始めた。
  (b)マレーシア・・・・これまで業種別に外国人雇用比率が制限されていたが、輸出品の生産ラインについては外国人100%も認めることを検討している。
 それでも、両国の労働集約産業に、一定の打撃が及ぶことは避けられまい。
 また、両国で就労する外国人労働者からの本国への送金も下押し圧力を受ける。このため、カンボジアやミャンマーなど、労働者の主要な送り手国の経済への悪影響も生じる可能性があろう。

□稲垣博史(みずほ総合研究所アジア調査部主任研究員)「タイとマレーシアが外国人労働者の人権対策を進める理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~
【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~
【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~



【南雲つぐみ】首や肩の凝りの原因、脳卒中の前触れ ~眼瞼下垂~

2017年11月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 「年齢とともに目が小さくなってきた。昔はもっとぱっちりしていたのに・・・・」という話を聞くことがある。
 一般的に年を取ると皮膚に弾力性がなくなり、たるみが起きやすくなる。中でも目の上のたるみは、上まぶたのふちにある眼瞼(がんけん)という部分と、まぶたをあげる筋肉(眼瞼挙筋(がんけんきょきん))との間をつないでいる膜がゆるむことで起こる。
 この状態がひどくなるのが「眼瞼下垂(かすい)」。まぶたが上がりにくくなる症状だ。目を開けようとするためにおでこのシワが深くなるというと美容上の問題もあるが、このしぐさが首や肩の凝りの原因になり、イライラも募る。ハードコンタクトレンズを長い期間使っていると、毎日外すときに上まぶたをこするため、症状が起きやすくなるといわれる。
 突然起こった眼瞼下垂は、脳卒中の前触れや重症筋無力症の場合もある。「視界が狭くなった」などの症状のある眼瞼下垂は、健康保険での治療ができる。眼科や形成外科の「まぶたの外来」などで相談ができる。

□南雲つぐみ(医学ライター)「眼瞼下垂 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月6日)を引用
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【野口悠起雄】中国とドイツが変身 ~日本が取り残される~

2017年11月16日 | ●野口悠紀雄
 (1)今世界のビジネスモデルが大転換しようとしている。IoT(モノのインターネット)によって、製造業が従来型のものから未来型のものに向けて進化しようとしている。また、「分散型台帳」という新しい情報記録の仕組みであるブロックチェーン関連のプロジェクトが進められている。こうした分野で特に注目されるのが、中国とドイツだ。

 (2)IoTの導入に関して「平成28年版情報通信白書」が行っている国際比較は次のとおり(第2章第3節3)。
 現時点でのIoTの導入率を見ると、アメリカが突出して高い。ドイツと中国は、日本より高いが、あまり大きな差はない。
 ところが、「2020年に向けた導入意向」を見ると、アメリカ、中国、ドイツがほぼ同レベルで、世界の最先端になる。他方で、日本は、現在よりは高まるものの、やっと現在のアメリカの水準に追い付く程度だ。日本の製造業が、世界の最先端から脱落していく可能性がある。
 IoTの導入率が全てではないが、重要な指標であることは間違いない。

 (3)これまでの中国は、潤沢な労働力と低い賃金によって、大量生産方式の製造業を発展させてきた。しかし、今後は、賃金上昇や労働人口減少などの問題のために、そうはいかなくなる。
 「中国製造2025」計画は、こうした問題に対処するため、「製造強国」に転換する必要があるとした。そのためには、インターネットと製造業との融合が鍵となる。これが、15年に発表された「インターネット+(プラス)」政策の内容だ。

 (4)ドイツの製造業も、伝統的モノ作りから脱却することができないでいた。1980年代、アメリカやイギリスで新自由主義的な経済政策が取られ、自由な市場を基本とする経済活動が広がったが、東ドイツは社会主義経済のままであり、西ドイツでも「社会的市場経済」の考えが支配的だった。
 そして90年代からのIT革命においては、アメリカ、イギリス、アイルランドなどに遅れを取った。日本では、ドイツ経済がヨーロッパ経済を牛耳っているように報道されるが、経済成長率でイギリスやアイルランドの後塵を拝することが多かったのだ。
 ところが、今IoTとの関連で、製造業が変わりつつある。

 (5)ブロックチェーン関連の新しいプロジェクトでも、中国とドイツの躍進ぶりが目立つ。まず中国。
  (a)中国の最大手自動車部品メーカーである万向集団(Wanxiang Group)は、300億ドル規模のスマートシティプロジェクトを提案している。これは、IoTをエネルギーや生活インフラの管理に用いることによって、都市のさまざまな問題を解決し、都市全体を管理しようとする計画だ。このためにブロックチェーン技術を取り入れようとしている。
  (b)中国では、しょうゆ、米、卵などの偽造品が販売されるという「フェイクフード」問題が深刻化している。中国最大のeコマース会社阿里巴巴集団(Alibaba Group)は、これに対抗するため、ブロックチェーンを用いて本物の食品のサプライチェーンを追跡する実験を開始すると発表した。
  (c)中国の金融機関では、いまだに紙やファックスが使われ、書類の決裁も印判を使うことが多いが、これをブロックチェーンで改善しようというプロジェクトが積極的に進められている。
   ①平安保険集団(Ping An Insurance Group)は、ブロックチェーンチームを立ち上げた(同社は、中国保険業界でフィンテック分野をリードしている企業)。
   ②衆安保険(Zhong An)は、AI、ブロックチェーン、クラウド、データドリブンを導入するための「ABCD計画」を発表した(同社は、15年の「フィンテック100」で1位となったオンライン保険スタートアップ企業)。
 中国建設銀行アジアとIBMは、ブロックチェーン技術を活用した銀行での保険販売サービスを香港で提供していくと発表した(同銀行は、中国建設銀行の香港部門)。
   ③これまで保険販売の際に顧客の審査に時間がかかっていたが、ブロックチェーン技術を用いることで、保険証券情報をリアルタイムで共有し、審査時間を大幅に短縮できるという。

 (6)ドイツは、IT革命では遅れがちだった。ところが、この数年、ブロックチェーン関係の先端的スタートアップ企業が目覚ましく誕生している。
 スマートロック(インターネットを通じて開閉する錠)をブロックチェーンで運営するシステムを開発したSlock.itや、IoTに対応した仕組みを開発するITOAなど、注目すべきスタートアップ企業がドイツに誕生している。

 (7)以上で見た中国やドイツの変身は、国がリードしているから生じている現象だろうか?
 確かに、両国ともIoTを国家的なプロジェクトとして採用している。ドイツ政府は、「インダストリー4.0」(第4次産業革命)を産官学の共同プロジェクトとして11年から推進している。ここでは、設計や開発、生産に関連するデータを蓄積し、それを分析することによって、自律的に動作する生産システムを構築することが目的とされている。
 中国では「中国製造2025」を推進している。これは、49年の中華人民共和国建国100周年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標にしたものだ。ブロックチェーンは、16年に発表された十三五(第13次)国家情報化計画で、優先プロジェクトとされた。スマートシティも第12次5カ年計画から重視され始めている。

 (8)これらの影響があることは否定できない。ただ、国家的なプロジェクトだけでなく、企業の側の取り組みも積極的なのである。
 これに関しても、「平成28年版情報通信白書」が国際比較データを示している(第2章第3節1)。それによると、「IoTに係る標準化に自ら取り組んでいる、または今後取り組む予定であるスタンスの企業の割合」が、高い国とそうでない国に二分される。
 積極的なのはアメリカ、中国、ドイツであり、50~60%程度だ。これらは、前に述べた20年に向けた導入意向率が高い国だ。ところが、日本は20%台と低い。

 (9)これまで述べてきたIoTやブロックチェーン以外でも、中国のIT分野には先進企業が現れている。フィンテックでもユニコーン企業が多数誕生しており、その数は、アメリカのそれに近づきつつある(「ユニコーン企業」とは、未公開で評価額が10億ドル以上の企業)。調査会社のSage UKがまとめた結果によると、ユニコーン企業数は、アメリカ144社、中国47社だ。
 中国のブロックチェーン企業について、中国のある調査会社(Wuzhen Institute)の中国ブロックチェーン産業発展白書が興味あるデータを示している。
 それによると、ブロックチェーン関連企業の設立数は、これまでアメリカが世界一だった。しかし、16年には、中国がアメリカを抜いて世界一となった。
 問題は、以上で述べたような未来への取り組みにおいて、日本の製造業が遅れつつあることだ。

□野口悠紀雄「中国とドイツが変身/日本が取り残される ~「超」整理日記No.881~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
【野口悠起雄】危機に直面するのは英国よりEU ~英国のEU離脱~
【野口悠起雄】世界経済の不確実性は長期 ~英国のEU離脱~
【野口悠起雄】日米で経済情勢や政策に著しい違い ~アベノミクスの本質(3)~
【野口悠起雄】期待への働きかけは効果なし ~アベノミクスの本質(2)~
【野口悠起雄】為替と株の投機ゲーム ~アベノミクスの本質(1)~
【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~
【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~
【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~
【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~
【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~
【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~
【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると
【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~
【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~
【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~
【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~
【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~
【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~
【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~
【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~
【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?



【南雲つぐみ】インフルエンザの予防

2017年11月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 早くも10月中旬に、インフルエンザワクチンが不足気味になるだろうという予測が出ていた。
 インフルエンザワクチンは、毎年流行しそうなインフルエンザ株3~4種類を組み合わせて製造するが、今年は使用株が変更になったことで製造開始が遅れたという。
 ワクチンは、発症した場合の重症化を防ぎ、肺炎などの合併症を防ぐ効果が期待されている。
 国立感染症研究所によれば、高齢者では未接種の場合に比べて、死亡の危険を5分の1に、入院の危険を約3分の1から2分の1に減少させることが期待できるという。だから、厚生労働省では65歳以上の高齢者と60歳以上で心臓や糖尿病などの持病のある人などに接種を勧めている。また、これらの人と同居する家族や介護、看病している人、病院や介護施設に勤める人も、感染リスクを減らすことにつながるだろう。
 ワクチンはインフルエンザの発症を完全に予防するものではないとされている。接種した後も流行期には外出後のうがいや手洗い【注】を習慣にすることも必要だ。

 【注】「【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~

□南雲つぐみ(医学ライター)「インフルエンザの予防 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月14日)を引用
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【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~

2017年11月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)秋から冬にかけては感染症に注意が必要な季節。〈例〉インフルエンザ【注】、食中毒。
 発症してから慌てるより予防に力を入れよう。

 (2)感染症の予防策のうち、手軽だが最も強力なのは「手洗い」だ。外出後や食事の前には必ず手を洗いたい。
  (a)流しっ放しの水流とせっけんで手指を洗う。
  (b)手洗いなし。
 (a)は(b)と比較して、細菌どころかウイルスの感染力や遺伝子量を100分の1未満に抑えることができる。
 CDC(米国疾病対策予防センター)のホームページには「細菌と戦え! 手を洗え!(Fight Germs. Wash your Hands!)」と題した特設ページが用意されている。「なぜ、この方法がいいのか」という根拠と、動画解説もあるので参考にするとよい。

 (3)CDCが推奨する手洗い方法は、
  ①流水で手をぬらし、水を止めてせっけんをつける。水の温度は冷たくても温かくてもいい。熱いお湯のほうがより除菌できる、というわけではない。せっけんは普通のタイプで十分だ。「薬用せっけん」を使い続けると、除菌どころか逆に耐性菌を生み出す危険性が増す。米国食品医薬品局は、薬用せっけんの販売を禁止しているくらいだ。
  ②せっけんを泡立て、手のひらから手の甲、指の間、指先から爪の間までまんべんなく塗りつける。爪の間は、泡を盛った手のひらを引っ掻くようにするといい。
  ③手を少なくとも20秒間、こすり合わせる。タイマーを使ってもいいが、CDCお勧めの方法は「ハッピーバースデー」を2回歌い切る間、だそうだ。
  ④流水で手をきれいにすすぐ。
  ⑤清潔なタオルで手を拭く。エアタオルを家庭に備えることは難しいので、ペーパータオルを用意しておくとよ。いいだろう。

 (4)近くに水道やせっけんがない場合は、除菌成分としてアルコール濃度が60%以上のウエットティッシュで「ごしごし」拭くこと。アルコール濃度が60%未満、あるいは他の消毒成分に関しては、十分な除菌効果が認められていない。
 過剰に神経質になる必要はないが、特にお年寄りがいる家庭では、手洗いを家族の習慣にしたい。

 【注】「【南雲つぐみ】インフルエンザの予防

□井出ゆきえ(医学ライター)「手洗い励行の季節です/CDC推奨の方法は?  ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.372~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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 【参考】
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】神在月 ~出雲市~

2017年11月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 旧暦10月は神無月。全国の八百万(やおよろず)の神々は旧暦10月11日から17日まで島根県の出雲に集まって、農業や縁結びについて話し合う「神議り(かむばかり、かみはかり)」を行うという。
 神々のいなくなる他の地方では「神無月」だが、出雲では「神在月(かみありづき)」と呼ぶ。今年は、11月28日から12月4日までに当たる。
 出雲の各神社では、この期間に「神迎祭(かみむかえさい)」「神在祭」そして、諸国に戻る神様をお見送りする「神等去出祭(からさでさい)」が行われる。
 期間中、地元の人々は、神々の神議りに妨げがないようにと歌や踊りなどの騒がしいことは行わず、建築工事はもちろん庭も掃かずに静かに過ごす。そこから「御忌祭(おいみさい)」とも呼ばれるそうだ。
 出雲大社は縁結びで知られるが、神在祭に合わせて「縁結び大祭」が行われる。今年は12月2日から4日。参列にはあらかじめ応募が必要で、申込み方法は出雲大社のホームページに1カ月ほど前から掲載されるそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「神在月 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月6日)を引用
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【本】『世界をまどわせた地図』

2017年11月14日 | 批評・思想
★エドワード・ブルック=ヒッチング(井田仁康・日本語版監修、関谷冬華・訳)『世界をまどわせた地図』(日経ナショナルジオグラフィック社 2,916円)
 Edward Brooke-Hitching 古地図の愛好家。ロンドンでアンティーク地図と古本の山に囲まれて暮らす。

 (1)本書に登場するのは、すべてウソの地図である。あるものは意図的に、またあるものは誤解や怠慢によって描かれ、人々をまどわせてきた。地図を信じて探検に出かけたり、人生をかけ新天地に移住しようとした人もいるというから、ずいぶんと人騒がせかつ迷惑な話である。

 (2)だが、本書を気まぐれにめくっていると、どういうわけか、それらがときどき正確な地図よりもチャーミングに見えてくる。
 〈例〉北極にあるとされた巨大な黒い山ルペス・ニグラ。この山は磁石でできており、周囲の海には強大な渦が巻き、海水が地球の中心に吸い込まれているという。この想像力の賜物はメルカトルの地図(1569年)に採用された。
 〈例〉同じ16世紀にオルテリウスによって描かれたアメリカ北東部の地図には、ノルムベガという町の記載がある。これは探検家のデタラメな報告を真に受けて描かれ、後に別の探検家がそこには金、銀、真珠がたっぷりあったと報告したため、イギリスやフランスが植民地にしようと躍起になったが、もちろん見つけることはできなかった。
 〈例〉北米大陸西部にあるとされた巨大湾、ナイル川の源流と考えられていたムーン山脈、オーストラリア中央部の巨大な湖など。どれも実在しないにもかかわらず、それらのデタラメな地図は人をワクワクさせる。

 (3)知らない土地が盛大に残っていた時代。地図がところどころいい加減なのは当たり前のことだった。それは、たぶんこんなふうになっているのでは、といったその程度のものであり、そこには未知の世界を空想する余地が残されていた。
 それが今や、世界の隅々まで机上で見ることができる時代。便利にはなったものの、なんだか息苦しい。
 ここに載っているのはどれも間違った地図ではあるけれど、たまには描かれた当時の気分になって、世界の驚異に心遊ばせるとよい。

□宮田珠己(エッセイスト)「(書評)『世界をまどわせた地図』 エドワード・ブルック=ヒッチング〈著〉」(朝日新聞デジタル 2017年10月16日)
(書評)『世界をまどわせた地図』 エドワード・ブルック=ヒッチング〈著〉
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 【参考】
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

【欧州】もう一つの東西分裂 ~ LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国~

2017年11月14日 | 社会
 (1)2017年6月にセルビアの新首相に就任したブルナビッチ氏は、同性愛者であることを公表している。
 9月にはLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の祭典「ゲイ・プライド」にも参加した。これは同性婚や反差別などの法的権利を求める社会運動だ。
 しかし、セルビアではいまだ国民のほぼ半数が同性愛は直さなければいけない「病気」だと思っている(セルビアでは2008年まで、同性愛は「病気」だと公式に定義されていた)。10年のゲイ・プライドでは、ホモフォビア(同性愛者嫌悪)との衝突で150人が負傷し、14年まで祭典が中止されていたくらいだ。

 (2)セルビアではヴチッチ大統領が実権を握っている。そのヴチッチ氏が、昨年政治に参加したばかりの同性愛者であるブルナビッチ氏を、41歳の若さで首相に据えたのは、欧州連合(EU)に加入するためのアピールだろう。
 人権問題がEU加盟の足かせとなっているのはトルコだけではないのだ。

 (3)東欧ではいまだに宗教の力が国民の意識に大きな影響を与えている。
 特にポーランドではカトリック教会の影響力が強大で、同性婚に対しては攻撃的な姿勢を持っている。同国のLGBTへの差別に対する法律・規制はないに等しく、LGBTへの暴力や偏見は野放し状態だ。学校でもLGBTに対して否定的な教育を行っている。このため、ポーランド国民は17%しか同性婚を容認していない。
 また、ポーランドとラトビアでのホモフォビアは、国家主義と反EU運動にもつながっている。EUに加盟する前は同国に同性愛者などいなかったと、あたかも同性愛がEUの疫病であるかのような扱いをしているラトビアに至っては、同性婚を容認している国民は12%しかいない。

 (4)他方、西欧で最もリベラルなオランダでは82%、スウェーデンでは70%が同性婚を容認している。
 ドラノエ・元パリ市長、リビングストン・元ロンドン市長、01~14年の長期にわたってベルリン市長を務めたヴォーヴェライト氏など、要職に就いた人たちも自分がLGBTであることをカミングアウトしている。
 西欧・北欧では意外にも右翼がLGBTに対して理解を示し、場合によっては積極的にLGBTの権利をサポートしている。
 これは右翼の政治的な標的である移民の大多数がイスラム教徒だからだ。イスラム教では国によって強弱の差はあるものの、同性愛は憎悪の対象であり、死刑となる国もある。そのイスラム教との対峙をアピールするためもあり、西欧・北欧の右翼はLGBTを擁護する姿勢を崩していない。

 (5)米シンクタンクのピュー研究所によると、LGBTを容認する国は宗教色の弱い、豊かな西欧・北欧が占めている。その反面、宗教色の強い、貧しい東欧ではLGBTに対する偏見は根強い。また、東欧の国々がEUに加盟すると人権保護の意識が高まる、との希望的観測をする向きもあるが、EUにはLGBTの人権保護を強制する力はない。これらの国々がより豊かになり、民主的になるのを待つしかないだろう。
 LGBTの人権保護への捉え方の大きな隔たりは、EUにおける恒久的ともいえる東西の分裂をそのまま表している。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「もう一つの東西分裂 LGBTへの偏見が深く残る東欧諸国」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~
【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
【米国】北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ ~1937年不況の再来?~
【欧州】英国のEU離脱選択で中東欧からの移民が激減 ~人手不足で農業は窮地に~
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

【南雲つぐみ】干し柿 ~栄養豊富~

2017年11月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 柿は1個でブロッコリー半株程度のビタミンCが取れ、カリウムやベータカロテンなども含まれている。ベータカロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を健康に保つ作用がある。
 そこで古くから柿は胃粘膜を守り、アルコールの代謝を高めて二日酔いを防ぐといわれ、和食では、よく酒席のデザートとして出される。
 柿は中国原産だが、奈良時代には日本に伝わっていたという。平安時代に作られた法令集「延喜式」には、祭礼用の菓子として「干し柿」「生柿」が記されており、干し柿も作られていたことが分かる。果物特有の甘い香りや酸味がないのも特徴で、なますにしたり、和食の素材としても味わえる。
 タンニンが強く、そのままでは渋くて食べられない渋柿も、干すと甘くなり、さらに水分が凝縮されて栄養価も高まるということを、いったい誰が発見したのだろうか。
 宇治田原町(京都)は干し柿発祥の地とされ、禅定寺には飢饉の年に、観音様が少女の姿になって干し柿を村に配り、作り方を教えてくれたという逸話がある。

□南雲つぐみ(医学ライター)「干し柿 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月27日)を引用
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【佐藤優】指導者たちの内在的論理を知る

2017年11月13日 | ●佐藤優
 ①木村誠『大学大倒産時代』(朝日新書 760円)
 ②香山リカ『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書 780円)
 ③カレル・チャペック(来栖茜・訳)『サンショウウオ戦争』(海山社 2,600円)

 (1)①は、国公立、私立、都会、地方などさまざまな大学の将来について詳細に論じた良書だ。
 <現在大学教育は、総じてPBL(課題解決型授業)や反転授業(全員予習を前提に発表や討論する)などアクティブ・ラーニングを重視している。これは大教室での講義と違って少人数授業なので、従来よりも多くの教員が必要になる。
 大学院生のTA(ティーチング・アシスタント)がサポートするにしても、彼らはすぐに卒業し、同じ大学に就職できればよいが、それが無理なケースが増えている。その場合、せっかくのスキルやノウハウが蓄積されにくい>
 との木村氏の指摘はその通りだ。専任教員に就職するのに10年以上の待機が常態化しているようでは、大学が優秀な若手研究者を獲得することが難しくなる。

 (2)②からは、いじめや差別の構造を脱構築しようとする著者の熱意が伝わってくる。
 <被害者にとって、「私はいじめや差別を受けている」と気づくのはたいへんにつらいことです。「きっとカン違いだろう」「私がいじめられるわけはない」と自分に言い聞かせようとすることもあるのは当然です。
 実は、加害者も「私は差別している」「いじめをしている」という自覚を持っていないことがよくあります。この人たちもまた、「私は差別主義、排外主義の人間なんだ」とは思いたくないのです>
 との香山氏の指摘が重要だ。差別やいじめの構造の中では、加害者側にいじめや差別を行っているという自覚がないのが通例だ。いじめや差別を解消するためには、状況を客観的かつ実証的に示し、加害者の自覚を促すことが不可欠だ。

 (3)③は、栗栖茜氏によるチェコ語からのこなれた新訳だ。現在のインドネシアで発見されたオオサンショウウオが独自の進化を遂げ、世界戦争を始めるという未来小説だ。原作はナチス・ドイツの台頭を背景に、1936年に上梓された。
 <人間なら形而学上のおそれや人生の悩みから逃れて少しはほっとして慰められたいと思うものだが、サンショウウオはそんなものを求める必要性がまったくないのだ。そのことをわれわれは知っている。サンショウウオは哲学や芸術を必要としないし、死後の世界なんぞなくてもやっていけるのだ。空想やユーモア、神秘とか遊び、あるいは夢なんて知らない。サンショウウオはどこまでも現実主義に徹した生活者なのだ>
 という指摘は、21世紀の現在にも当てはまる。米国のトランプ大統領や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の内在的論理を知るために、この小説がとても役に立つ。

□佐藤優「指導者たちの内在的論理を知る ~知を磨く読書 第223回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
【佐藤優】世界規模のポストモダン現象
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~
【佐藤優】カネとの付き合い方の秘訣、野外で生きる雑種ネコの魅力、前科者に冷たい日本社会
【佐藤優】着目すべき北極海の重要性、日本の政治文化に構造的に組み込まれている「甘え」、文明論と地政学を踏まえた時局評論
【佐藤優】リーダーが知るべき文明観、資本主義後の社会構想、刑務所暮らし経験者の本音
【佐藤優】地図から浮かぶ歴史のリアル、平成不況は金融政策のミス、実証的データに基づく貧困対策
【佐藤優】ケータイによる日本語の乱れ、翻訳の技術、ロシア人の内在的論理
【佐藤優】武蔵中高の教育、ルター宗教改革の根幹、獣医師にもっと競争原理を導入
【佐藤優】社会に活力をもたらす政策、具体的生活の上に立つ民族国家、開発至上主義が破壊する永久凍土の生態系
【佐藤優】日本のフリーメイソン陰謀論、ユニークな働き方改革、自衛隊元陸将によるリーダーシップ論
【佐藤優】ハプスブルク帝国史の「もし」、最新の進化論、神童の軌跡
【佐藤優】知識を本当に身に付けるには、テロ戦争におけるドローンの重要な役割、帰宅恐怖症
【佐藤優】北朝鮮との緊張の高まりに対して必要な姿勢、時間管理と量子力学、時間がかかるのは損
【佐藤優】川喜田二郎『発想法』 ~総合的思考と英国経験論哲学~
【佐藤優】日本の思想状況の貧しさ、頑丈にできている戦闘機、東方正教会に関する概説書
【佐藤優】資本主義の根底にある「勤勉さ」という美徳の淵源 ~『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』~
【佐藤優】手ごわいフェイクニュース、国を動かす政治エリートの意志、欧州内部における紛争
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【佐藤優】面白い数学啓発書、日本人の思考の鋳型、攻める農業への転換
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【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
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【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
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【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
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【佐藤優】何が個性で、何が障害か
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【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
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【中国】新任常務委員お披露目 ~ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤~

2017年11月12日 | 社会
 (1)10月25日、北京・人民大会堂。習近平・総書記が他の6人を引き連れて新たな政治局常務委員をお披露目した。李克強首相は続投、他の5人は政治局委員から昇格した。
 序列3位の栗戦書はパープル、序列5位の王滬寧がブルーのネクタイを着けて登場した。他の5人のそれはレッドを基調としている。
 5年前のお披露目会見では、中央規律委員会書記として“反腐敗闘争”を担当した序列6位の王岐山だけがブルーのネクタイを着けていた。
 彼ら3人の共通点は習との距離の近さ、そして習にとっての重要さである。習第1次政権において、栗と王は内政・外遊を問わず、常に習に付いていた。気兼ねなく習と接し、互いに何でも言い合える関係。「自分たちは特別なのだ」。レッドではないネクタイの色がそう物語っている印象を与えた。

 (2)今後、栗は国家安全、王はイデオロギーという、習が党の正統性を確保するために最重要視する分野を主に担当しつつ、常に習と行動を共にしていくに違いない。この人事から、習第2次政権も引き続き政治・経済・社会の各方面への統制が徹底される状況が続くであろう。
 王に代わって中央規律委員会書記として反腐敗闘争を担当するのは趙楽際。習と同じ陝西省の出身で、第1次政権では中央組織部長として「習に近い人間を中央の要職に引き上げるという意味で習を大いに助けてきた」【党中央幹部】。今期常務委員の中では最年少(60歳)だが、習と歩調を合わせつつ同闘争を“安定的”に実施していくものと目されている。

 (3)5年前の第18回党大会の時点ですでに常務委員入りが囁かれていた汪洋も、無事に常務委員入りを果たした。序列4位ということで、セオリー通りにいけば全国政治協商会議主席に就任する見込みだが、これまで国務院副総理として米中経済戦略対話を担当し、米国側からの信頼も厚い汪が、党の正統性という意味でもますます重みを増している対米関係で、どのような役割を担うのか注目される。
 外交という意味では、楊潔篪(よう・けつち)元外相が国務委員から政治局委員に昇格した。職業外交官が序列25位内に入ったのは故銭其琛(きしん・せん)以来であり、習政権が政治的に対外関係を重視している、換言すれば、外交政策を政治の論理でトップダウン化しようとしている意思の表れだとみることができる。日本の対中外交としては、より習と近いポジションで動けるようになった楊と、対話のチャネルと信頼関係を築くべきであろう。

 (4)経済政策は引き続き李が責任者として執行していくが、発言力は限られるだろう。今回の第19回大会で「習近平新時代における中国の特色ある社会主義思想」が行動指針として党規約に盛り込まれたことで、習が全ての分野で絶対的地位に在ることが制度化された。そんな習の分身である栗と王が経済政策を実質統括し、今回政治局委員に入った、習のマクロ経済ブレーンである劉鶴あたりが発言権を持っていくだろう。
 供給側構造改革を推し進めるという意味でも、習への権力集中の制度化が吉と出るか、凶と出るか。

□加藤嘉一(国際コラムニスト)「新任常務委員お披露目/ネクタイの色が示す習総書記の権力基盤」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月11日号)
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 【参考】
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~

2017年11月11日 | 社会
 (1)10月22日の衆議院議員選挙では、「お願い」が多く、北朝鮮問題を語る候補が極めて少なかった。日本単独では何かをするのは難しいが、最大の外交問題として、その現状や国際的な取り組みについて語るべきではないか。日本の国会議員は、「平和」に慣れ過ぎていないか。

 (2)9月下旬、ワシントンで、米下院議員のテッド・ヨーホー・アジア太平洋小委員会委員長(フロリダ州選出)を記者団が取材した。9月15日、北朝鮮が発射した大陸間弾道ミサイルが北海道上空を通過し、襟裳岬の東約2,200キロメートルの太平洋上に落下した直後だ。米国民が、「今や、北朝鮮は、アジアだけの問題ではない」と自覚し始めた。
 同議員によると、選挙区であるフロリダ州で、7万5,000人の共和党員、民主党員、無党派層に電話調査をした結果、現在最も憂慮すべきこととして、北朝鮮問題が「ナンバーワン」に浮上した。
 「テロリズムなどの国家安全保障問題は、過去も常にナンバーワンだったが、北朝鮮に特定してというのは初めて」(同議員)

 (3)また、米大統領に対して「緊急時の特権」として連邦議会が承認する軍事力行使権使用承認(AUMF)についても、驚くほどあっさりと踏み込んで答えた。
 「AUMFが議会に要求されれば、おそらく可決されるだろう。現段階で、金正恩・北朝鮮最高指導者がやっていること以上に挑発的なことがあるとは思いたくはない。だが、万が一、北朝鮮が今よりもっと挑発的なことをすれば、私たちは何をするべきか、予想し、そして決めなくてはならない。しかし、その前に日本、韓国、同盟国、そして私たちの軍隊を攻撃するという布告があるだろう」
 ヨーホー・下院議員がここまで答えるということは、連邦議会全体での認識とみてもいいだろう。また、上下院議員は、与野党いずれであっても、有権者にこれだけの説明をする用意はあるということだろう。

 (4)さらに、現在の大統領がトランプ氏という従来の政治家ではないことで、「レッドライン(軍事行使に移る限界)」をどこに置くかも、これまでとは異なってくる。
 「過去の政権では、レッドラインは、見えないインクで描かれていた。しかし現在の政権は、何かをなすべきだと判断すれば、行動する政権だ」
 「例えば、シリアで4,000~5,000人の市民が化学兵器で虐殺されたという証拠が挙がった際、化学兵器使用禁止の条約があり、多くの国が署名していた。しかし、どの国も国際連合も何もしなかった。だから、トランプ大統領がミサイル攻撃を実行した」
 北朝鮮が核兵器を保有し、しかも、水爆実験まで行ったとなれば、米政権の出方は、日本を含め全世界が注視するところだ。

 (5)ヨーホー議員は、最終的には国際社会が経済制裁の重要性を理解するべきだと強調しながらも、これだけのことを話した。
 取材は、わずか20分。しかし、北朝鮮問題に対する有権者の懸念への答えを、明確に示した20分だった。

□津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)「トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン/北朝鮮は世界の問題に」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月4日号)
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【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~

2017年11月11日 | 社会
 (1)10月10日、英国の航空・防衛大手BAEシステムズは、来年1月から国内で約2千人の人員整理に着手する方針を発表した。本件は、7月に就任したウッドバーン新CEOが進める構造改革の一環と位置付けられている。

 (2)英国のGDPに占める製造業の比率は10%(2015年時点、以下同じ)で、ユーロ圏の17%や日本の20%と比べて小さい。
 しかし、航空、防衛、製薬といった先端分野では世界トップクラスの企業が存在している。特にBAEシステムズは、米国のロッキード・マーチン、ボーイングに次ぐ世界第3位の軍需企業であり、英国最大の製造業の一つに数えられる。同社の国内従業員数は約3万5千人と、英最大手自動車メーカーのジャガー・ランドローバーとほぼ同規模であるだけに、今回の人員整理計画は大きな波紋を呼んでいる。
 部門別の人員削減数は、航空機部門が1,400人、艦船部門が375人、サイバー/インテリジェンス部門が150人で、航空機部門の比率が高い。その背景にあるのは、戦闘攻撃機ユーロファイター・タイフーン(以下、ユーロファイター)の受注減少だ。ユーロファイターは、英・独・伊・スペインの4カ国が共同開発した機体で、これらの国では2000年代前半から導入が始まったほか、オーストリアや、サウジアラビアなどの中東諸国でも採用されている。
 ただし調達のピークは過ぎており、BAEシステムズの受注残は、現在確定しているものに限ると19年にはゼロになる見通しだ。9月にカタールがユーロファイターの購入を決定したことはプラス材料だが、今のところ導入スケジュールは未定であり、またサウジからの追加発注獲得交渉も遅延している。特に、サウジとカタールは6月に国交を断絶し、関係が大幅に悪化しているため、カタールへのユーロファイター供給が今後のサウジとの交渉に悪影響を及ぼす可能性も懸念されている。

 (3)人員整理計画に対して労働組合は強く反発しており、最大野党である労働党も政府に支援を要求している。しかし、ペリー産業担当大臣は、一企業の経営合理化の取り組みに政府が介入するのは適切でないとして、関与しない方針だ。

 (4)本件に関連して、雇用喪失という短期的な影響だけでなく、英国の戦闘機開発・生産能力の低下という中長期の影響も懸念されている。
 英国は、次世代戦闘機として米国等と共同開発したF35を導入するが、同機の開発主体はロッキード・マーチンであり、BAEシステムズを含む英国企業は部品の約15%と制御システムの一部を供給するにとどまる。
 また、ドイツとフランスが7月に発表した新型戦闘機の共同開発計画も英国にとっては打撃だ。ユーロファイターの共同開発時には方針の違いからフランスが離脱し、英独が開発の主軸となったこととは対照的な動きだ。直接には言及されていないが、英国の欧州連合(EU)離脱決定以降の英・大陸欧州間の隙間風や、マクロン・フランス大統領誕生を契機とした独仏の接近といった、欧州の外交的地殻変動の影響は否定できない。

 (5)航空機部門はBAEシステムズの売上高の半分以上を占めるため、その動向は同社の今後の命運を大きく左右することになるだろう。

□高山真(三菱東京UFJ銀行経済調査室ロンドン駐在)「英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ/英国のEU離脱も影響か」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月11日号)
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【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

【南雲つぐみ】「ながら聞き」は時間の無駄 ~聞こえにおける「図と地」~ 

2017年11月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 忙しいという人の話を「ながら聞き」したくなることがある。効率を考えたつもりなのだが、実は話が頭に入っておらず、「ごめんね、もう一度」と謝ることもある。なぜ、ながら聞きはうまくいかないのだろう。これは、だまし絵や隠し絵などと呼ばれる、一つの絵の中に2種類の図柄が描かれたものを見ているのと同じ感覚なのだそうだ。
 「老女と若い娘」というタイトルの絵を知っているだろうか。2人の女性の横顔が両方描かれているのに、老女の顔が見えているときは若い女性の顔は見えず、若い女性の顔を見ようと意識すると、今度は老女の姿が見えなくなる。
 このように、人間の脳は二つの情報を同時に受けると、どちらかが「図(絵柄)」になり、一方は「地(背景)」になるという。二つとも「絵」として処理できないということは、どちらかが一方にしか意識を集中できないということなのだ。
 同様に人の話を聞くときは、たった2~3分だけと割り切って作業の手を止め、話に専念したほうがむしろ時間を無駄にしないことになる。

□南雲つぐみ(医学ライター)「「ながら聞き」は無理 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月5日)を引用
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【南雲つぐみ】ストレッチをするべき時、筋トレをするべき時

2017年11月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 「腰痛の原因は、腹筋や背筋が弱ってくるからだと聞いて、筋トレを頑張ってきたが、痛みは取れないばかりか悪化してきた」というAさん(55)。整形外科でMRI検査を受けたが、椎間板ヘルニアなどの病気ではなかった。
 そこで医師に相談すると、「筋トレではなく、ストレッチをしてください」と言われたという。
 ストレッチは、筋肉を伸ばして凝りをほぐし、弾力性を取り戻す運動。一方、筋トレは筋肉の抵抗力や持久力を付けるためのものなので、筋肉に負荷をかける動きだ。
 腰痛があるとき、腰回りと太ももの筋肉には強い張りがある。筋トレを行うことでさらに筋肉緊張させていたので、痛みが取れなかったのだ。
 筋トレもストレッチも体のしなやなか動きや体形を維持するのに役立つ。しかし、大切なのは順番で、「痛みの激しいときは筋肉がリラックスできる姿勢で安静にする」「少しずつストレッチで凝りをほぐす」「痛みが取れてきたら、腰痛予防のために筋トレを行う」の3段階で考えるとよいそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「ストレッチと筋トレ ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月30日)を引用
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