2011/04/17up全ページ目次 |
中学国語指導案・中学作文指導ポイント4 「視写の効果」と「視写見本」 |
「聴写」は置いておいて、「視写の効果」と「視写見本」について書きます。
(1)視写の効果
発達障害知識スライドショー1-33
はご覧になったでしょうか。
これを見ると、荒れた中学校でも少し気持ちが楽になります。
ここで紹介している本の著者、横山浩之氏は「視写」について書いています。
『特別支援教育の指導・ML相談小事典』(p182)
「私の診断は・・・LDと考えていただいてかまわない。
[事例1]の子どもは、1日15分、1年生の国語の教科書の視写をさせた。
その後、わかち書きの練習をさせた。
視写は患児が得意な視覚ー運動分野の出力を訓練できる。
3か月で『てにをは』を習得できた。
現在は、視写と日記書きを課題としている。
日記書きでは、長く書けたらほめるだけだ。
練習して習得することを覚えた彼は、
書くことが苦にならなくなりつつある。」
『軽度発達障害の臨床』(p35、36)
「小学校2年生・7歳・男児。
この子どもには、1日15分、1年生の国語の教科書の視写をさせることを考えた。
1年生の国語の教科書では、文節ごとに区切ってわかち書きがしてある。
だから、文節を意識することができるようになる。」
「ところが、当初は、書き写すことさえ大変であった。
そこで、教科書をコピーして、トレーシングペーパーをおいて、
なぞる練習(なぞり書き)からしていただいた。
そして、自分がなぞったものを音読してもらった。」
「およそ1か月して、なぞることに慣れたので、
当初の指示のように、視写をしていただいた。
視写したものを音読するのは、以前と同じである。
子どもは、以前できなかったことが、うまくできるようになったので、
満足げである。」
「10分間に80~100字ほどの視写が可能になったので、
わかち書きの練習をさせた。
わかち書きしていない文章をみせて、
読みながら、わかち書きさせる。」
「以上の作業指示を毎日守った結果、
3か月強かかって、「てにをは」の使い方を習得できた。」
推測するに、二つの事例は同じものと考えられます。
要するに「視写」をするだけで「てにをは」が習得できる。
つまり、
「日本語の文章を、相手に伝わるように書けるようになる」
言い換えれば、
「視写を続けると、作文が書けるようになる」
ということです。
ここでの事例はLDの7歳の男児ですが、
学習の効果は、中学生で作文が苦手な生徒にも同じように現れます。
「書き写す」のは簡単すぎるとか、小さな子のすることだとか、
答えを見るのと一緒だからやってはいけないことだと思う生徒もいます。
だから、
「見て写すのも立派な勉強です」
とクラス全体に聞こえる声で言ってあげると、
見本作文を視写する生徒も恥をかかないし、
周りの生徒も視写する生徒を軽んじることがなくなります。
(2)視写用見本・クリックで拡大
[視写1・2]9行ずつ行うもの
[視写3・4]9行ずつ行うもの
[視写5]19行
[視写6]19行
[視写7]19行
[視写8]19行
(3)視写だけで卒業文集を書いた生徒例
とても小規模校な中学校で教えたことがあります。
三年間全員僕の国語授業を受けました。
一人の男子が非常に作文が苦手でした。
中学1年の最初の作文はまったく何が書いてあるかわからない文を、三行か四行書いて提出しました。
しかし、感覚がとても面白くて楽しく読んだ覚えがあります。
その男子はその後、作文の時間、三年間一度も自分で書いたことがありません。
「見本作文」を配り、書き方と評価方法を説明します。
全員が書き始めます。
その男子は動きません。
そばに行って「写していいんだよ。ちゃんと努力点つけるよ」というと写します。
そのうち自分で「写していい?」と言うようになりました。
次第に何も言わずに見本作文を視写するようになりました。
読書もほとんどしたことがないはずです。
まあ、国語が苦手な生徒というのは誰でもそういうものです。
中学三年の、二学期後半、卒業文集を書くことになります。
(作らない学校もあるでしょうが、僕は作らなかったことはありません)
国語教師なら知っていますが、これが大変です。
800字前後の文章を学年全員に書かせるのです。
全員分を添削して、ある程度形にしなければなりません。
小規模校はまだよいのですが、8クラスあれば、そのうち4クラスは受け持ちます。
150人分の卒業作文を「てにをは」「句読点」「段落」まで添削するわけです。
卒業文集は、家族、友人、近所の人達などの目に触れます。
「書けなければ、成績が下がるだけ」
というわけにはいきません。
「三年間の国語教師の作文指導」の結果が出ます。
普通、卒業作文は五回、十回と提出して直していきます。
かなりできる生徒も一発ということはありません。
ところが、上記の男子生徒は一回目の提出でほぼ作文が成り立っていました。
何が書いてあるか明確なのです。
「段落の改行」「漢字」「言葉づかい」はある程度直したはずです。
しかし、彼はクラスの中でも最も早く下書きを完成しました。
驚いたのでよく覚えています。
先ほど、卒業文集を引っ張り出し、その作文をタイプしながら、
「こんなことって、本当にあるのかな?」
とひとり言を言いました。
僕はその学年で三年間、作文を宿題にしたことは一度もありません。
「作文を宿題にしてはならない」
これは、ものの本には度々書いてあります。
今述べているのとは別の、次の学年の生徒に、予告せず突然書かせたのが、
S中学校統合作文
です。
僕の添削は一文字も入っていません。
突然、「書いて欲しい」と言いその時間内で書いて提出させたそのままの作文です。
TOSSのサークルで実力者に見せたとき、
「高校生でも、一発でこれだけはなかなか書けない」
と言われました。
僕もそう思います。
その学年も「作文を宿題にしたことは三年間一度も」ありません。
さて、そんなわけですから上記の卒業文集も教室で書かせました。
代わりに誰かが下書きを渡したのでしょうか?
彼がそんな面倒な準備をするでしょうか?
たとえ手伝ってもらったとしてこんな具体的描写ができるでしょうか?
彼は国語は苦手でしたが、書いてもらうようなズルは嫌いだったはずです。
そんなことを考えてしまうほど、上手な作文だと僕は思います。
「視写の力」です。
卒業文章は、世間に公開されているので、ここで引用しても問題ではないと考えます。
個人が特定される言葉は伏字とします。
それ以外「てにをは」にいたるまですべて男子生徒の文章です。
「三年間」
一年の時Btと**の時間にケンカをした。理由は、筋トレをサボッタから。今思えば下らないと思います。だけど、その時は、なんでおれだけなんだと思って、一歩もひかなかった。結局自分が、「おまえの授業なんかもう出ねー」といって体育館を出たその後がイライラした。保健室にいってねてたけどやっぱりスッキリしない。ケンカは、おたがいの気持がぶつかり合う物だからわるいことではないと思っていた。だけどそれは自分だけの考えで相手の気持ちを考えたら、やっぱりケンカはよくない物だし二人の関係をわるくするし、まわりの人にも迷惑をかけるからダメだと思った。次の体育の時に、謝ろうと思った。けど言えなかった。いつかいおうと思ったけど、いまだに、いっていない。
二年になってC先生とケンカをした。理由は、先生がもっていたホウキが脚にあたって「いて」といったら、先生が「今あたってないだろう」と言われた。「あたった」、と言うと言い合いになった。もういいと思い、戻ろうとしたら、止められてまた言い合いになった。結局話はまとまらなくて自分があやまった。あの時あやまってなかったらまたもめ合いがあったかもしれない。自分は、わるくないと思っても、謝ることは大切だと思った。
三年は、やっぱり**(注:部活)。
二年の冬休みに元旦いがい毎日れんしゅうした。朝の9時から夜の7~8時まで毎日。春に、全国大会があるからだ。休憩中みんなが「やってらんねー、かえりてー」と言う。けど練習が始まるとみんなしんけんになる。そのかいあって全国大会で優勝した。もしあの時練習で妥協していたら優勝できなかったかもしれない。ケンカしたり、下らない話をしたり、スタッフのグチをいったり、とにかく、最高で最強のチームだった。進学をしても**をがんばろうと思った。
次回はたぶん「作文と聴写」について書くと思います。
まあ、わかりませんが(笑)
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