JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
国鉄の補充定期券見本
昭和47年に国鉄東京印刷場が発行した補充券類の見本の御紹介ですが、あと1回お付き合いください。
最後は補充定期券(補定)の様式です。
代々木駅発行分の通学用補充定期券です。桃色こくてつ地紋の軟券で、券紙の厚さは前回エントリーの補連とほぼ同じと思われます。
今までの乗車券とは異なり、旅客の手に渡る部分が左側で、報告片が右側となっています。また、「甲片」や「乙片」という呼び名や、発行鉄道管理局を示す符号はありません。
報告片については補片や補往と記載事項はほぼ同じで、同一発売もできるようになっていますが、発行駅名の下の駅管コードの記載がありません。
一番今までの乗車券と異なるのは、有効期間に応じて報告片を切り離す線が分けられていることで、1か月定期として発行した場合は「1箇月」の右側を、3か月定期として発行した場合は「3箇月」の右側を、6か月定期として発行した場合は「6箇月」の右側をそれぞれ点線に沿ってハサミで切るようになっており、ミシン線はありません。
これは、定期券は長期に亘って旅客の手元にあるという性格から、1か月定期を6か月に有効期間改変するような不正乗車を防止する意味があるものと推測されます。
裏面です。
旅客の手に渡る定期券部分の裏にご案内文が印刷されており、報告片の裏は何も印刷されていない点は他の補充乗車券を同様です。
今回ご紹介の定期券は区間および有効期間を全く自由に設定できる様式ですが、他に、区間が指定されていて有効期間のみ選択できる期間補充式と、有効期間が指定されていていくつかの区間を選択できる区間補充式も存在します。
日本交通公社発行 印発機用定期券
昭和59年4月に日本交通公社(現・JTB)新宿西口支店で発行された、国鉄線用の印発式定期券です。
灰色国鉄地紋のプリカットされたカードのような券紙となっており、個別管理をするために券紙そのものにも券番を付ける必要があったため、右下に4ケタの券番が予め印刷されています。
図示いたしませんが、裏面は白色無地の樹脂となっており、当時国鉄各駅で発行されていた印発機券とはかなり趣の異なったものとなっていました。
さらに、モザイクで伏せてありますが、発行する際に氏名をカタカナ入力するようになっており、現在でも磁気定期券に見られる直筆がそのまま印字されるようなものではありませんでした。
現在JTBではJRの定期券発売の委託契約は解除されていますが、JR化後初期までは日本交通公社だけでなく、近畿日本ツーリスト等の旅行代理店においても定期券を発売することができました。そして、御紹介のような連絡定期券も発券することができました。
しかし、大抵旅行代理店で発券される定期券は常備式券タイプもしくは補充式券タイプの手書きのものが殆どで、他にも存在していたかもしれませんが、御紹介するような印発式の定期券を発行していた店舗は、私の知る限りでは日本交通公社の新宿西口支店と渋谷支店の例しか存じ上げません。
柏駅用 試用定期券
見本券ですが、昭和47年ごろに試験的に導入された、自動改札対応の定期券です。
まだ印発機やマルスで定期券が発行されていなかった時代のもので、パウチがされているのではっきりしませんが、湿式コピーで印刷されたような感じの券です。
当時の国鉄は、関西の私鉄が自動改札の開発を進めて行く中で、一旦は導入を考えて柏駅の他に国立駅・放出駅等片町線の一部の駅で試験的に使用したようですが、これを実施するためには全国の駅の情報を入れる必要があったため、当時の情報技術ではシステム破綻が明確で、本格的な自動改札機の導入には踏み切れなかったようです。
裏面です。
茶色の磁気膜があるだけのもので、現在のもののような注意書きの印刷はありませんでした。
最短距離計算の定期券
昭和59年12月に山手線原宿駅にて発行された、新宿駅までの1個月用常備定期券です。
東京電車環状線相互間内の普通運賃は乗車距離に拘らず、途中下車しなければ最短距離の営業キロで運賃計算がなされますが、定期券の場合は実際の乗車距離での計算となります。
この定期券は原宿から代々木経由新宿ゆきのもので、最短距離を通る、極めて一般的なルートの定期券です。
常備定期券の場合、経由表示があるのが普通ですが、この券にはありません。
通常であれば「代々木経由」と表示すべきでしょうが、「原宿~渋谷~品川~東京~神田~御茶ノ水~四ツ谷~代々木~新宿」という大回りの経路も有効であると解釈されてしまうからでしょうか、敢えてトラブルの元となる経由表示がありません。
その代わり、最短距離であることを示す赤2条斜線だけが印刷されています。
最短距離を示す赤2条の斜線がある定期券はこの他にも例があるようですし、補充定期券で発券された場合でも、赤鉛筆で斜線を2本引いていたようです。
半年ごとにリニューアルされた定期券
私の姉が学生時代に使用した通学定期券を眺めていたとき、「何で?」と思うくらい、半年ごとにリニューアルされているものを見つけましたので御紹介いたします。
購入されたのはすべて、中央線の荻窪駅東口改札前の「みどりの窓口」です。
これは昭和57年10月に発行された、荻窪駅⇔四ツ谷駅間の6箇月用の完全常備通学定期券です。
券番は0030という比較的若い番号ですが、「運賃変更印」が捺されてしまっています。恐らく需要があると見込まれて常備券にしたものの、実際にはあまり枚数が出なかったものと思われます。
昭和58年4月に期限が切れ、次に購入されたのが下の定期券です。
常備券口座があまり売れなかったのを反省(?)してか、荻窪駅⇔四ツ谷駅のものと、荻窪駅⇔代々木駅のものとをまとめて一つにしたのではないかと思われる区間準常備式の6箇月定期券に変更になっています。
代々木駅には大手予備校や各種専門学校が多数あり、また、代々木駅と1駅手前の新宿駅の運賃が同じため、今度は相当な需要が見込まれそうです。
この予想は的中し、おそらく昭和57年10月以降に設備されたと思われますが、券番が0208番まで進んでいます。
しかし、この定期の期限が切れる昭和58年10月には、この区間準常備定期券にも終焉が訪れました。
今度は常備定期券の時代が終わり、主要な駅の定期券は、裏が真っ白の印発機券になってしまったのでした。
とすると、この区間準常備券は半年程度しか設備されていなかったことになります。