趣味で蒐集した「きっぷ」を見て考えたこと、とか…
JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
古紙蒐集雑記帖
JR東日本 イオカード
平成3年3月から平成17年3月までの14年間、JR東日本で発売されていたイオカードの3,000円券です。
イオカードはきっぷを購入することなしに自動改札機に投入して乗車することのできるプリペイド式の磁気乗車カードで、利用可能駅の範囲内であれば自動改札機にカードを投入することによって自動的に運賃の精算ができるものでした。改札口に直接入場し(In)、直接出場(Out)できることから「iO-card」という名前になりました。
オレンジカードのように自動券売機できっぷを購入したり、自動精算機で精算することもでき、最盛期の首都圏イオカード利用可能駅圏内では、オレンジカードよりも遥かに需要の高いカードとなっていたようです。首都圏の私鉄でも同様のプリペイド式カードとしてパスネットが導入されましたが、JR東日本は次世代のICカードを開発中であることを理由に共通化されることはありませんでした。
その後、2001年11月に磁気式カードに代わるICカードであるSuicaが登場するとイオカードの存在意義はなくなり、2005年3月を以って発売が中止され、翌2月には自動改札機での使用も中止され、現在ではオレンジカードと同じ機能しか持ち合わせない状態に機能を縮小された上で利用可能になっています。
これは初期のカードの裏面です。
イオカードは乗車(入場)都度に120円が差し引かれ、下車(出場)の際に不足額が引かれるようになっており、「乗車月日」「時間」「乗車駅」「前引額」が印字されるようになっていました。
しかし、これでは出場時に改札機のモニターを確認するか、自動券売機に挿入してみなければ120円以下にならなければ残額が分からず、パンチ穴で大体の額を推測するしかありませんでしたため、だんだん残額が少なくなるにつれ、まだ使えるか不安なものでした。(この券は最終乗車の際に残額が110円となったため、「残額*110円」と表示されていました。
しかし、残額がわからないという不便さを解消すべく、平成8年頃より「乗車月日」「乗車駅」「前引き運賃」「降車駅」「残額」という印字方法に切り替えられています。
伊勢鉄道 鈴鹿駅発行万博八草駅ゆき3社連絡券
平成17年9月に伊勢鉄道鈴鹿駅で発行された、愛知環状鉄道万博八草駅ゆきの3社連絡乗車券です。
日本交通印刷調製と思われる緑色伊勢鉄道自社地紋の第1種出札補充券です。
乗車経路は鈴鹿~(伊勢鉄道)~河原田~(JR関西本線)~名古屋~(JR中央西線)~高蔵寺~(愛知環状鉄道)~万博八草となります。
万博八草駅は昭和63年1月に愛知環状鉄道が開通時に開業した駅で、開業時は八草駅でした。平成16年10月には愛知万博(愛・地球博)開幕を控え、万博八草駅と駅名改称されます。しかし、万博閉幕後の平成17年10月には八草駅に再度改称されておりますので、実質1年間のみの駅名であったことになります。
万博期間中はこのような3社連絡での発券が可能でしたが、確か現在は伊勢鉄道から愛知環状鉄道八草駅までの連絡乗車券の発券は出来ないと聞いています。
裏面のご案内文です。この券が印刷されたのは開業時の昭和63年以降と推測されますが、なぜか昭和60年に廃止された香月駅の記載のある文面になっています。これは汎用のものが、この部分について特に考慮されることなく使用されてしまったものと思われます。
また、拡大して見てみますと、「姪浜」駅が「姫浜」となっているミス印刷券となっており、同時期に日本交通印刷で調製された他社の第1種特別補充券にも見られます。
硬券の券番が一旬するとき
前回エントリーで券売機券の券番が「10000」番で一旬することについて触れました。では硬券の場合はどうでしょうか?
昭和60年1月に荻窪駅で購入した、中野接続営団地下鉄東西線140円区間ゆきの硬券連絡乗車券です。桃色国鉄地紋の東京印刷場調製のB型券で、連絡用の金額式券です。
確か早稲田まで行く際に購入したと記憶しておりますが、入手して裏面を見たら「9999」であったために、慌てて実乗用を含めてあと3枚を購入した次第です。
「9999」番券です。東京印刷場の券ですので、券番は4ケタです。小児断片と真中にあります「〇1」の符号は循環番号です。
何気なく購入した際に偶然にこの券が舞い込んできたわけです。これを見てしまったら、実乗用を含めてあと3枚追加購入しました。
「0000」番の券です。券売機券の時と同様に券番は4ケタしかありませんので、本来は「10000」なのですが、表記は「0000」です。このときの循環番号は「〇1」です。
画像では分かりにくいかもしれませんが、端のところが赤く塗られていることが分かります。このようにして、「0000」の券には印が付けられていたようです。
その次に来るのはこの券です。「0001」にカウントがリセットされています。しかし、循環番号は「〇2」となりますので、実際には「10001」ということですね。
硬券の場合、「0000」番の取り扱いは印刷場によるようで、営団地下鉄の硬券を調製しておりました帝都交通印刷では、活字の「1」を手捺しして「10000」としていました。
営団地下鉄市ケ谷駅で発行された「10000」番の券です。「1」の活字が手捺しされていることが分かります。
JR東日本 券売機券の0000番
平成24年10月に戸塚駅の券売機で発行された、210円区間ゆきの乗車券です。
JRE地紋の券売機券で、特段特徴のあるものではありません。
注目すべきは券番で、「0000」となっています。この券の前に発券されたものは「9999」で、次に発券されるものは「0001」となります。この券は「0000」と表記されていますが、実際には「10000」番ということになります。
券売機は「0001」から「0000」までを一旬させ、また「0001」に戻るようになっていますが、券番表示部分が4ケタしかないため、このような表記となります。
どの番号でもそうですが、このような券に巡り会えるのは1/10,000の確率ですので、気付いたときは手元に置いておきたいものです。
JR東日本 清里駅発行 葉ッピーきよさと号指定席券
平成元年8月に清里駅で発行された、葉ッピーきよさと号の指定席券です。
緑色JRE地紋の東京印刷場で調製された、列車名と着駅が記入式のD型券です。
葉ッピーきよさと号の運転に際して設備されたものと思われますが、同列車運転終了後も使用できるように考えていたのか、あるいは、印刷請求時には列車名が決まっていなかったのか不明ですが、発駅が印刷されているにも拘わらず、列車名は記入式となっていました。
JR東日本管内では硬券による指定席券の設備例はあまり多くなかったようですが、バブルまっ盛りの当時、清里は若年層に大変人気のある避暑地のメッカであったことから、季節ごとに様々な臨時快速列車の設定が予想され、マルス端末の設置されていない同駅では、いちいち料補による対応をするわけにもいかずに設備されたものと思われます。
葉ッピーきよさと号はJR発足当時に新宿~清里間(年によっては小海までだったか…)に運転されていた臨時快速「電車」で、北長野運転所の169系4両編成が使用されていました。新宿~小淵沢間は中央本線を走行し、小淵沢ではホームのない中線に40分程度の運転停車をした後、非電化の小海線に入って行く電車列車でした。
小淵沢の運転停車では、どこから持ってきたのか覚えていませんが、ディーゼル発電機を持つスハフ12型客車が電源車とされ、篠ノ井機関区のDD16が連結されていました。連結作業が完了すると169系電車はスハフからの電源に切換えてパンタを下げ、小海線内では169系は「客車」の扱いとなっていました。そのため、操車掛が屋根に上り、甲種回送のように下げたパンを固定します。
翌年からはDD16にインバータを搭載して電源車が廃止され、169系電車も松本運転所の3両編成に変更されましたが、電力容量が不足したため、169系「客車」はクーラーが切られ、窓を開けて走行することとなりました。
葉ッピーきよさと号は大変荒業なことをやってのけた列車で、その後も信州循環列車といった「電車客車」列車が小海線に入線しましたが、今や急行型電車はJR東日本から撤退し、このような名物列車も見られなくなってしまいました。
ちなみに、当時使用されていた169系電車は、しなの鉄道に譲渡されて今でも健在です。
北の鉄道フェア 記念入場券
国鉄民営化時の昭和62年3月26日から4月1日まで札幌そごう(平成12年に経営破綻のために閉店)にて開催された、「わかれと出発(たびだち) 北の鉄道フェア」の記念入場券です。このイベントは、国鉄の民営化を記念して開催されたもので、民営化当日まで開催されました。
A型無地紋の硬券となっており、急行券類のような体裁のデザインです。
題字には「わかれと出発(たびだち) 北の鉄道フェア」とイベントの名前が印刷されており、その横にはなぜか、企画乗車券に見られる「〇企」の表記があります。
アンダーラインの下には「国鉄マーク」から「JR北海道」という表記になっています。国鉄マークは特急列車の先頭部分等で一般的に周知されていてもJRのマークはまだあまり知られていなかったからなのでしょうか、JRマークの記載はありません。
(特急電車に付けられた国鉄マーク)
注目すべきは発行したところの名称で、国鉄北海道総局発行となっていることです。このイベントは国鉄が全面的に協力していたようで、この券自体、札幌印刷場で印刷した可能性も否めません。
イベントが開催された札幌そごうは、昭和50年代初頭に札幌駅南口にあった国鉄バスのバスターミナルと札幌営業所の跡地に、1階がバスターミナルとなっている商業施設としてオープンしましたが、そごうの経営破綻に伴って平成16年に閉店となり、現在は建物はそのまま、札幌エスタという駅ビルになっています。
JR九州 吉松駅発行真幸ゆき乗車券
平成元年8月に、吉松駅で発行された、真幸ゆきの硬券乗車券です。
桃色JRK地紋のB型券で、門司印刷場調製の一般式券です。
平成元年のJR九州管内の近距離硬券乗車券は金額式が主流でありますが、この券は吉松という駅名が「吉」と「松」でおめでたい字の駅名であることから、隣駅にあるやはりおめでたい駅名の真幸駅と鶴丸駅への縁起乗車券として一般式券で発売されていたものです。
実際に使用することはできますが、2010(平成22)年の真幸駅の1日あたりの平均乗降人員が1名というデータから見ても、栗野駅と同額である真幸駅ゆきの常備券を設備する理由は全く存在せず、発売された券の殆どは記念目的に購入されたものと思われます。
市ヶ谷駅 3態 ~都営地下鉄
昭和61年2月に都営地下鉄市ヶ谷駅で発行された、140円区間ゆきの金額式乗車券です。
黄色東京都交通局自局地紋のB型大人専用券です。東京都交通局の硬券の印刷場は1箇所のようですが、どこの印刷場なのか存じ上げません。この券は国鉄から乗換える際の営団地下鉄管理の精算窓口で購入したもので、裏面の発行箇所名の前に営団地下鉄発行を示す「〇エ」の記号が付されています。
ちなみに、国鉄時代に発売された東京都交通局の券には、発行駅名の前に東京西鉄道管理局を示す「〇西」の符号が付けられていました。
3回に亘って市ケ谷駅3社局の硬券乗車券を御紹介して参りましたが、厳密に言うと都営地下鉄だけ駅名が違うことにお気づきでしょうか?
JR東日本および営団地下鉄(現・東京メトロ)は「市ケ谷」駅と「ケ」の字が大きく、都営地下鉄だけが「市ヶ谷」駅と「ヶ」の字が小さいのです。
改めて見ますと、JRと営団地下鉄の「ケ」は大きく、都営地下鉄の「ヶ」は小さいことがお分かりかと思います。
もともと市ケ谷駅は甲武鉄道の時代から存在する国有化された官設鉄道の駅を起源とした駅です。
営団地下鉄が有楽町線を開業させる際、国鉄駅との区別を付けるため、営団の市ケ谷駅は地下鉄市ケ谷駅として開業しましたが、実態としては区別を付けるために定期券やマルス券の表記に「地下鉄市ケ谷」の表記が見られるに過ぎず、券売機券に至っては「〇地 市ケ谷」と表記されているくらいで、「地下鉄」から駅名が印刷されたものを探すことが困難なくらいです。
しかし、都営地下鉄に関しては、「都営市ケ谷」とすることなく、混同を避けようとしたのでしょうか、正式な駅名は「市ヶ谷」として開業しています。しかし結果として、何となくこの方がややっこしい気がします。
市ケ谷駅 3態 ~営団地下鉄
平成2年7月に営団地下鉄(帝都高速度交通営団)市ケ谷駅で発行された、120円区間ゆきの金額式乗車券です。
緑色JPRてつどう地紋のB型大人・小児用券で、山口交通印刷系列の帝都交通印刷で調製されたものです。
前回エントリーの「市ケ谷駅 3態 ~JR東日本」で「国鉄時代は国鉄および営団地下鉄の精算窓口は交通営団管理、都営地下鉄の精算窓口は東京都交通局管理~」と書きましたが、国鉄時代末期より営団地下鉄の精算業務は交通営団から国鉄東京西鉄道管理局へ移管され、JR化後もその体制が引き継がれておりますので、発駅名の上にJR東日本が発売したことを示す「☐東」の発区分符号が記されています。
ちなみに、国鉄時代は東京西鉄道管理局の符号である「〇西」が記されていました。
市ケ谷駅 3態 ~JR東日本
平成2年7月に発行された、JR東日本市ケ谷駅から120円区間ゆき金額式乗車券です。
桃色JRE地紋のB型大人専用券で、東京印刷場で調製されたものです。
市ケ谷駅はJR東日本中央本線(中央・総武線各駅停車)の駅ですが、その他に東京メトロ(東京地下鉄)有楽町線および南北線、東京都交通局(都営地下鉄)新宿線が乗り入れており、全国的にも珍しい3社局相互の乗換改札口があります。現在は精算券売機および窓口端末での対応になっていますが、当時は硬券があたりまえのように発売されていました。
平成2年当時は東京メトロは営団地下鉄(帝都高速度交通営団)であり、南北線はまだ未開通でしたが、3社局の乗換改札口は国鉄時代より存在していました。
国鉄時代は国鉄および営団地下鉄の精算窓口は交通営団管理、都営地下鉄の精算窓口は営団地下鉄相互乗換および都営地下鉄から国鉄への乗換精算窓口は東京都交通局管理、国鉄からの乗換精算窓口は交通営団管理となっていましたが、現在は交通営団が管理していた精算業務がJRへ移管されています。
そのため、御紹介の券はJR直営の券となっており、発行箇所名の前に社線管理を示す「〇社」のマークはなく、窓口番号である「〇A」の表記となっています。
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