趣味で蒐集した「きっぷ」を見て考えたこと、とか…
JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
古紙蒐集雑記帖
駒込駅発行 駒込から850円区間ゆき片道乗車券
1985(昭和60)年9月に山手線駒込駅で発行された、同駅から850円区間ゆきの片道乗車券です。
桃色こくてつ地紋のB型地図式大人専用券で、東京印刷場で調製されたものです。
当時の東京都区内の国鉄各駅には1000円札の使用できる券売機の設置が進んでおり、100kmまでの乗車券であれば金額式の券売機券が発券されていた時代ではありましたが、51km以上の区間については、依然として窓口でも発売されている駅が多く存在しました。
御紹介の券は、左上から五日市線武蔵五日市駅・青梅線二俣尾駅・八高線立川廻り東飯能駅・中央本線高尾駅・相模線上溝駅・横浜線八王子廻り淵野辺駅・東海道本線藤沢駅・横須賀線鎌倉駅・横浜線東神奈川廻り町田駅・内房線五井駅・外房線誉田駅・総武本線物井駅・成田線安食駅・常磐線牛久駅・東北本線古河駅・高崎線熊谷駅・八高線川越線廻り高麗川駅の各駅が最遠の着駅になります。
金額式にしても良さそうなものですが、当時の東京印刷場では、51km以上の乗車券については地図式券か相互式券が採用されるのが一般的でした。
駒込駅もその中の一つで、当時の同駅は東京山手線内の駅でありながらみどりの窓口のない駅としても有名で、硬券や補充券による指定券類の発売も行われていました。また、窓口にあったダッチングはかなり古いもので、昭和30年代頃から使用されていたと思われる機器を、年号の10の位の数字環を更新して60年代でも使用できるようにしたものが使用されていました。
裏面です。券番のほか、「表面区間の1駅ゆき 発売当日限り有効 下車前途無効」の文言が印刷されています。
この券を使用したのはつくば科学万博に行くときで、着駅である会場の最寄り駅でありました万博中央駅で無効印を捺したうえで頂いてくることができました。
万博中央駅は、つくば科学万博の開催期間中のために設置された臨時駅で、万博開催3日前の1985年3月14日に開業し、万博閉幕日の同年9月17日までの期間限定で営業し、一旦は跨線橋を残してすべて解体されましたが、現在は同じ場所にひたち野うしく駅が開業しています。
札幌駅発行 桑園ゆき復路専用乗車券
1982(昭和57)年4月に札幌駅の精算所で発行された、桑園ゆきの復路専用乗車券です。
青色こくてつ地紋のB型大人・小児用券で、札幌印刷場で調製されたものになります。
復路専用乗車券は乗車経路から外れた経由外の駅で下車し、再度経由内の駅に戻るときに発行される乗車券で、分岐往復券という改札補充券です。御紹介の券は硬券となっておりますので、硬券式改札補充券ということになります。
この券は、函館本線長万部方向から桑園駅経由札沼線への原券を持っている旅客が、当初の予定では無い、経由外の駅になります札幌駅に足を延ばして下車する際、札幌駅の改札あるいは精算所で原券を見せたうえで運賃経路に含まれていない桑園駅から札幌駅間の運賃を精算することになりますが、札幌駅では、帰りの運賃を含んだ往復分を請求され、こちらの乗車券が発行されました。
これが復路専用乗車券という改札補充券で、往路の桑園駅から札幌駅間の運賃120円(当時)のほかに、復路分の札幌駅から桑園駅間の運賃120円切が同時に精算され、往復合計240円の精算額になります。
この乗車券は帰り用の乗車券になりますので、桑園方面に戻る際、入鋏を受けて乗車します。
同区間の片道乗車券の有効期間は1日間になりますが、往復乗車券のために2日間となりますが、近距離区間のため、下車前途無効になります。
裏面です。券番のほか、「往路分の運賃もいただいています。」と往路分の運賃が同時に精算されている旨が記載されています。
御紹介の券が発行された日は国鉄の運賃改定が行われた日で、営業キロ1~3km帯の運賃が110円から120円に改定されたときになりますので、改定当日には新券が登場したことになり、その0001番の券だったようです。三文判が捺されていますが、恐らく、印刷場から駅に納入された際に枚数を改め、点検者が硬券を束ねていた紙帯に確認済の割り印を捺印したものと思われます。
復路専用乗車券は北海道が発祥の「特殊追徴切符」が「特殊往復券」に変更され、さらに「復路専用乗車券」となって全国に広がったもので、北海道から本州および九州に発行例があり、常備券が設備されるだけの需要があったものと思われますが、わざわざ専用の乗車券を作成し、いちいち帰りの運賃も含まれている旨を説明するよりも、片道分だけを精算し、再度乗車する際には別途片道乗車券を購入すれば良いだけのことなので、国鉄の合理化および民営化と共に発行されている駅は少なくなっていき、現在では北海道の釧路駅や苫小牧駅など、数駅しか発行されている駅はないようです。
JR東日本 東中野駅発行 東京都区内から広丘・松本・島高松間ゆき 片道乗車券
1988(昭和63)年7月に、JR東日本中央本線の東中野駅で発行された、東京都区内から広丘・松本・島高松間ゆきの片道乗車券です。
青色JRE地紋のA型一般式大人・小児用券で、東京印刷場で調製されたものです。
現在では着駅である篠ノ井線の広丘駅~松本駅間は大都市近郊区間内の東京近郊区間に含まれており,東京都区内からの乗車券は有効期間が1日間で、下車前途無効となり、大糸線の北松本駅~島高松駅間ゆきの乗車券については従前通り有効期間が3日間で、途中下車可になります。
裏面です。券番と発行駅名の他、東京都区内各駅では途中下車禁止である旨が記載されています。
播淡聨絡汽船 岩屋港発行 明石接続JR西日本京都ゆき片道連絡乗車券
前回エントリーで播淡聨絡汽船の岩屋港で発行された、明石接続JR西日本640円区間ゆきの片道連絡乗車券を御紹介いたしましたので、今回は同じ播淡聨絡汽船の岩屋港で発行されたものですが、明石接続JR西日本京都ゆきの片道連絡乗車券を御紹介いたしましょう。
灰色播淡汽船自社地紋(?)のA型一般式大人・小児用券になります。
JR西日本線の明石~京都間は営業キロが95.3kmですが、播淡汽船航路の営業キロが10.0kmとなっておりますので、辛うじて101km以上となることから有効期間が2日間ということになっています。
再掲いたしますが、前回御紹介のB型金額式券の場合には発行箇所名の記載がありませんでしたが、今回御紹介の券については「岩屋港発行」と記載されております。
播淡聨絡汽船 岩屋港発行 明石接続JR西日本640円区間ゆき片道連絡乗車券
1992(平成4)年10月に播淡聨絡汽船(播淡汽船)岩屋港で発行された、明石港(駅)接続、JR西日本640円区間ゆきの片道連絡乗車券です。
桃色の播淡汽船自社地紋なのでしょうか、B型金額式の大人・小児用券になっています。
播淡汽船は淡路島の岩屋と明石港を結ぶ連絡船で、通称「播淡汽船(ばんたんきせん)」と呼ばれますが、正式には播淡聨絡汽船といいました。
明石海峡大橋が完成する前の明石海峡には橋はなく、淡路島へ行く手段は船しかありませんでした。
当時淡路島へは、明石・須磨・神戸・西宮・大阪・深日からフェリーや客船が出ており、播淡汽船はその中の一航路であり、年末年始や大型連休、お盆,、海水浴シーズンともなると何時間もの乗船待ちができるほどの需要があったようです。
ところが、2001(平成12)年に明石海峡大橋が完成すると、旅客は橋を渡る便利な路線バスに移行してしまったために激減し、もう一社の平行して運航されていた淡路連絡汽船と合併して明淡高速船に社名変更されます。
しかしながら、その後の2006(平成18)年に航路を淡路ジェノバラインに引継いで明淡高速船の航路は廃止され、会社清算によって消滅してしまっています。
品川駅発行 大宮から一ノ関・盛岡間まで 新幹線自由席特急券
1982(昭和57)年9月に東海道本線の品川駅で発行された、大宮から一ノ関・盛岡間までの新幹線自由席特急券です。
桃色こくてつ地紋のA型大人・小児用券で、東京印刷場で調製されたものです。
東北新幹線はこの券が発売された年の6月23日に大宮駅~盛岡駅間で暫定開業をしていますので、御紹介の券は暫定開業から3ヶ月に満たない時期のものになります。
現在の感覚ですと、品川駅で盛岡までの新幹線の特急券を購入する場合には東京駅もしくは上野駅を乗車駅として選択されるのが殆どかと思われますが、この券は敢えて大宮駅からになっています。
これは、1985(昭和60)年3月14日の東北・上越新幹線上野開業までの間は東北・上越新幹線の東京側の始発駅が大宮駅となっており、大宮始発である不便さを補完する意味合いで、「新幹線リレー号」という連絡列車が運転されていたという歴史に拠ります。
本年7月、東北・上越新幹線開業40年を記念し、185系電車を使用した新幹線リレー号が復活運転されたことは記憶に新しいところです。
JR東日本 仙台駅発行 仙台臨海鉄道 東北博覧会前ゆき 片道連絡乗車券
前回および前々回に仙台臨海鉄道が発行した「'87未来の東北博覧会」の旅客輸送用の乗車券を御紹介いたしました。これらの乗車券は博覧会会場に隣接する臨時駅からの復路用の乗車券になりますので、当然ながら往路用の乗車券も存在することになります。今回は往路用の乗車券を御紹介いたしましょう。
1987(昭和62)年9月にJR東日本東北本線の仙台駅で発行された、仙台臨海鉄道線の東北博覧会前ゆきの片道連絡乗車券です。桃色国鉄過渡期地紋のA型矢印式大人専用券で、東京印刷場で調製されたものです。
同駅では近距離乗車券類については機械化が進んでおり、硬券での発売は行われておりませんでしたが、同区間についてはわずか2ヶ月という期間限定の着駅であったためにマルス端末や券売機に駅名が設定されておらず、硬券での発売となっていました。
同駅の窓口には「東北博覧会までの乗車券は窓口でお求めください」という案内が貼られており、硬券のみでの発売としていたようです。
同時に購入した小児専用券です。博覧会という性格上、家族連れの旅客が多く存在したことから、2ヶ月間という期間限定ではありましたが、大人・小児用の設定はなく、大人専用券と小児専用券がそれぞれ設備され、出札事務の手間が掛からないようにしていたようです。
仙台臨海鉄道 東北博覧会前から陸前山王接続、東日本旅客鉄道線140円区間ゆき 片道連絡乗車券
前回エントリーで仙台臨海鉄道で期間限定で運転されていた旅客列車用の乗車券を御紹介いたしました。そこでも申し上げましたように、同社の旅客列車はJR東日本線から乗り入れる形で運転されておりましたため、殆どの旅客は陸前山王駅で下車することはなく、その先のJR線まで直通で乗車することが多かったようです。
そのため、前回御紹介いたしました社線完結の乗車券よりもJR線への連絡乗車券のほうが遙かに多く発売されていたようです。
こちらも日付がございませんが、1987(昭和62)年9月に、臨海本線東北博覧会前駅で発行された、陸前山王駅接続の東日本旅客鉄道会社線140円区間ゆきの片道連絡乗車券です。
青色仙台臨海鉄道自社地紋のA型金額式半硬券で、大人・小児用券となっています。
陸前山王駅から140円区間と言いますと、当時の運賃帯は営業キロ1~3kmとなっておりましたので、岩切駅・塩釜駅が該当します。実際には仙台駅までの220円区間ゆき(合計480円)が一番需要が多かったようですが、記念用として購入しておりますので、一番最短の券を購入しております。
仙台臨海鉄道 東北博覧会前から陸前山王ゆき片道乗車券
日付の捺印がございませんが、1987(昭和62)年9月に仙台臨海鉄道臨海本線の東北博覧会前駅で発行された、陸前山王ゆきの片道乗車券です。
あまり見慣れない地紋ですが、若草色の仙台臨海鉄道自社地紋と思われる地紋のA型半硬券の矢印式大人・小児用券です。
同社は仙台港湾地区と内陸部を結ぶ貨物専用の鉄道路線として国鉄(現・JR貨物)と宮城県及び進出企業の共同出資によって設立され、東北石油仙台製油所(現・ENEOS)の貨物輸送に対応するため、現在の臨海本線となる東北本線陸前山王駅と仙台港駅を結ぶ4.2㎞と仙台港駅・仙台北港駅間1.2㎞が先行開業し、その後の公共埠頭の建設にあわせて仙台埠頭線の仙台港駅・仙台埠頭駅間1.6㎞が開業しています。
その後、キリンビール仙台工場の仙台港地区進出に伴って仙台西港線の仙台港駅・仙台西港駅間2.5㎞が開業し、現在の路線ができあがっています。
本来は貨物専業の鉄道ではありますが、1987(昭和62)年7月から9月に仙台西港駅付近で開催された「'87未来の東北博覧会」にあわせ、期間中限定で臨時旅客駅である東北博覧会前駅が開業し、陸前山王駅~東北博覧会前駅間で旅客輸送が行われました。
運転された旅客列車はJR東日本からの乗り入れ列車となっており、仙台駅から運転され、途中の陸前山王駅で同社へ乗り入れていました。
御紹介の券はそのときに発売された社線内用の乗車券になります。
同社では他に、1997(平成9)年7月から9月の間、やはり仙台西港駅付近で開催された「国際ゆめ交流博覧会」の旅客輸送のため、旅客列車が運転されたことがありますが、どちらも旅客駅は期間限定の臨時駅となっており、現在は旅客列車の運転はありません。
山形交通 蔵王温泉駅発行 東京都区内ゆき片道連絡乗車券
1956(昭和31)年3月に山形交通自動車線(蔵王・上山方面)蔵王温泉駅で発行された、東京都区内ゆきの片道連絡乗車券です。
灰色TTDてつどう地紋のA型一般式大人・小児用券で、日本交通印刷で調製されたものです。
経由欄には「山形・白河 経由」と記載されており、社線との接続駅であります山形駅で国鉄線に接続し、奥羽本線・東北本線を経由して東京都区内へ至る経路であることがわかります。
蔵王温泉駅は昭和20年代後半に開業した山形交通の自動車駅で、山形駅から営業キロ18.1kmの場所にあります。現在でも山形交通からバス事業が分社化された山交バスの自動車駅として存在しておりますが、蔵王温泉バスターミナルと呼ばれているようです。現在では同社からJR線への連絡運輸はおこなわれておらず、通しの乗車券の発売はありません。
当時のバス路線と現在のバス路線は恐らく全く同じルートを通っていたのではないかと思われますが、現在でも同じルートの路線であれば、山形駅前から「Z90」という系統の路線に相当するものと思われます。
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