鉄道省 片道乗車券の通用期間記載方法の変化の時期

前回および前々回エントリーで、鉄道省の片道乗車券の様式が、昭和5年から7年の間に変更されていたのではないかと申しあげましたが、やはりそうではないかという券が手元にございましたので御紹介致しましょう。


   


まずは昭和4年9月に渋(澁)谷駅で発行された、目黒駅および代々木駅ゆきの片道乗車券です。桃色てつだうしやう地紋のB型両矢印式大人・小児用券です。
この券も前々回エントリーの券のように通用期間の表記が「通用2日」となっています。


   


2枚目は昭和5年10月に品川駅で発行された、田町駅および五反田駅ゆきの片道乗車券です。桃色てつだうしやう地紋のB型両矢印式大人・小児用券です。
この券は前回エントリーの券のように通用期間の表記が「通用発(發)行日共2日」となっています。


前々回エントリーの「通用2日」と表記された券が昭和5年2月に発行され、今回御紹介の「通用2日」と表記された券が昭和4年9月に発行されています。
一方、前回エントリーの「通用発行日共2日」と表記された券が昭和7年3月に発行され、今回御紹介の「通用発行日共2日」と表記された券が昭和5年10月に発行されています。

ということは、これもあくまでも推測ですが、昭和5年2月から昭和5年10月までの間に、通用期間の表記方法に変更があったものと考えることができます。


※ その後の調査の結果、同様式の変更は昭和5年1月に制定され、同年4月より施行されたということが確認できましたので追記させていただきます。

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鉄道省 東京駅発行 万世橋・御茶ノ水間ゆき片道乗車券 ~その2

前回エントリーで鉄道省時代の東京駅で発行された、万世橋・御茶ノ水間ゆきの片道乗車券を御紹介いたしましたが、手元にそれより2年ほど後に発行された同区間の券がございましたので御紹介いたしましょう。


   


昭和7年3月に鉄道省時代の東京駅で発行された、万世橋・御茶ノ水間ゆきの片道乗車券です。
前回エントリーのものと同様、桃色てつだうしやう地紋のB型矢印式大人・小児用券です。今回の券は「〇N」の符号がありますので、前回エントリーの券とは違う窓口で発売されたものと推測されます。


   (前回エントリー券)


前回エントリーの券を再度アップしてみますと、様式としてはほぼ同一ですが、発駅右の矢印が若干細くなったことと、「通用2日」と記載されていたところが「通用発(發)行日共2日」と表記が変わり、それに伴ってスペースの関係上、「下車前途無効(效)」が特活のように細めの文字に変更されています。


当時のことは判りませんが、これら2枚の券が発券された間に、鉄道省の近距離乗車券の様式に変化があったものと思われます。

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鉄道省 東京駅発行 万世橋・御茶ノ水間ゆき片道乗車券 ~その1

昭和5年2月に鉄道省時代の東京駅で発行された、万(萬)世橋・御茶ノ水間ゆきの片道乗車券です。


   


桃色てつだうしやう地紋のB型矢印式大人・小児用券です。

発行駅である「東京」の横にあります「〇B」の符号は、窓口番号と思われます。


着駅である万世橋駅は、戦時中の昭和18年より休止されたままになっている中央本線神田駅~御茶ノ水駅間にあった駅で、戦後、駅舎の一部が交通博物館として使用され、博物館閉鎖後は解体されたのち、平成25年にはJR神田万世橋ビルが建設され、現在では跡地は旧万世橋駅遺構を整備した「mAAch ecute(マーチエキュート) 神田万世橋」という商業施設になっています。


券に使用されている活字には旧字体が使用され、万世橋の「萬」、下車前途無効の「效」、5銭の「錢」などの字が確認できます。

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鐵道省 中野駅発行原宿経由惠比壽ゆき 片道乗車券

大正13年2月に中野駅で発行された、原宿経由の惠比壽(恵比寿)ゆき片道乗車券です。


   


桃色GJRてつだうしやう地紋のA型一般式券で、3等13銭という運賃ですが、そのうち1銭は通行税となっています。現在とは違い、途中下車が1回認められ、有効日数も2日間となっています。

入鋏がかなり変なところに入れられていますが、鋏痕は鐵道省から国鉄・JRへと同じ形のものが引き継がれていることが分かります。


恐らく、電車はのんびりと単行で運転され、運転本数も少なく新宿駅での乗換にも相当の待ち時間が必要で、今とは比べ物にならないくらいの時間が掛かったのではないかと推測されます。

また、経由駅である原宿駅では東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて駅舎の建て替え論議が起こっていますが、この券が発行された4か月後の6月に開業当初よりも渋谷駅寄りの現在地に移動し、現存する象徴的なイギリス風木造駅舎が竣工しています。

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運輸通信省 蒲田駅発行地図式券

数回に亘って鉄道省時代の地図式券について御紹介して参りましたが、今回はその最終回となります。


   


昭和19年4月に蒲田駅で発行された、35銭区間ゆきの片道乗車券です。白色無地紋のB型大人専用券です。


昭和18年11月に鐵道省は運輸通信省に変わり、さらに昭和20年5月には運輸省に変わりました。この混乱期、昭和18年12月から近距離乗車券の有効期間が「発売日共2日間」から「通用當(当)日限」に変更され、昭和19年4月には鉄道運賃に「戦時特別運賃」が加算されるようになり、今まで「(裏面注意)」となっていた左上の部分が「特別運賃共」に変わり、より一層戦局が不利になっている状況が窺われるようになります。


   


裏面です。「発売日共2日間」の部分が「通用當(当)日限」に変更され、発行箇所名の表記も新橋駅発行の券同様に省略されています。

しかし皮肉なことに、この様式は戦後も永らく続き、基本的な部分はJR化後の硬券末期の東京印刷場調製の地図式券にまで引き継がれています。

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鐵道省 新橋駅発行地図式券

昭和18年11月に新橋駅で発行された、地図式の片道乗車券です。


   


白色無地紋のB型大人専用券です。

様式としては前回御紹介いたしました神田駅発行のものと同一ですが、昭和18年頃になると戦局が一層悪化し、徴兵による人手不足対策として印刷工程を減らすため、地図式券については版が複雑なために偽造が困難なことから地紋の印刷を省略した券が登場しています。


   


裏面です。基本的には神田駅のものと似ていますが、印刷工程の省略のため、発行箇所名の表記が廃止されています。

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鐵道省 神田駅発行地図式券

前回と前々回に亘り、鉄道省時代の地図式券を御紹介いたしておりますが、本日もその続編となります。


   


昭和17年1月に神田駅で発行された地図式券です。桃色GJRてつだうしゃう地紋の大人用地図式券となっています。


地図式券は昭和10年にB型券として登場し、翌11年にはA型券となって図を記載する版面に余裕のある様式に変更されましたが、太平洋戦争の戦局が暗転してきた時代になり、昭和16年頃ら戦時体制のために券紙をB型に戻し、用紙不足や戦時節約に対応した様式に変更されています。

券種は5銭・10銭・15銭の3つの運賃帯で、昭和17年の運賃改正時からは10銭・15銭・20銭・25銭・30銭の5運賃帯に拡大されています。
左上にはA型券時代同様に「(裏面注意)」と記載され、注意事項は裏面に記載されています。


   


裏面です。基本的にはA型券時代とは記載事項に変わりはありません。なぜか表面は「神田」ですが、裏面の活字は「示(しめすへん)」の旧字体の記載となっています。


この後、さらに戦局は厳しくなり、71年前の昭和20年8月14日に大日本帝国はポツダム宣言の受諾を連合国側に宣言し、翌15日、天皇陛下の玉音放送と呼ばれる終戦の詔書の朗読放送によって敗戦が日本国民に公表され、終戦の日を迎えることになります。

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鐵道省 澁谷駅発行地図式券

前回エントリーで新宿駅発行の元祖地図式券とも言える試行期の券を御紹介いたしましたので、その後に様式変更となった券を御紹介致しましょう。


   


昭和13年4月に澁谷(渋谷)駅で発行された地図式の片道乗車券です。桃色GJRてつだうしゃう地紋のA型大人専用券です。

この様式は昭和11年11月に制定された様式で、券売機用のものとは違い、A型券として登場しています。この様式は山手線内や総武線浅草橋~亀戸間の駅に、5銭および10銭の区間用として設備されていたようです。

注意事項は裏面に記載されており、左上には「(裏面注意)」と記載されています。


   


裏面です。

この様式より地図式券の裏面には発駅が記載されるようになり、「表面太線区間内の一驛(駅)ゆき」という表記がなされるようになっています。

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鐵道省 新宿駅発行 地図式券売機券

昭和11年6月に鉄道省時代の新宿駅で発行された、地図式の片道乗車券です。


  


紙が焼けてしまって見づらいですが、桃色GJRてつだうしゃう地紋のB型地図式大人専用券です。
地図に記載された着駅相当の駅のかなりの駅名が記載されており、国鉄末期のものとは趣が異なります。


新宿駅では昭和10年6月から自動券売機(当時は自働券売機)で発売する乗車券の発売範囲を広げるため、電車特定区間5銭および10銭区間用の乗車券について地図式の「特殊乗車券」として設備し、6台設備されていた硬券式の自動券売機で発売しています。


  


裏面です。

一番上の「(る)」は循環番号と推測され、2行目の「〇自6」は6番自働券売機で発行されたことを表しているものと思われます。

この券は鉄道省時代に考案された「元祖」地図式乗車券と言われるもので、地図式乗車券はB型で試作されたことになるわけですが、あまりにも窮屈であったためでしょうか、後にA型券に改められています。

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鉄道省 新宿駅発行 西武鉄道江古田ゆき1/2連絡乗車券

久しぶりに鉄道省(運輸省)ネタになります。

和22年9月に新宿駅で発行された、池袋連絡の西武鉄道江古田ゆき片道乗車券です。


   

桃色てつだうしやう地紋のB型一般式1/2券となっています。

一瞬見たところでは往復乗車券のように見えますが、よく見ますと左の片と右の片が同じ「新宿から江古田ゆき」となっており、B型の券紙半分のスペースに片道乗車券を印刷し、1枚で2枚分発券できるようになっています。図示いたしませんが、券番は当然左右同じであるため、小児断片の脇にある「い」と「ろ」でそれぞれの券を区別しています。


枚だけ発券する場合にはこれを真ん中で切断して発売していましたので、あまりの小ささで失くしてしまいそうです。

これは、戦中・戦後の物資が不足していた時代に考え出された券紙を節約した様式で、戦後の混乱期でもあり、このように未使用のまま完全な形で残存している例はあまり多くはないと思われます。

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