この季節の、一番好きな季語です。
「桜しべ降る」
桜が散り落ち、葉桜になり、赤い桜の萼が、落ちていく様子を言います。
ソメイヨシノの、人々の目を奪う美しさ。
それとは、裏腹に、この桜しべは、なんとなく切なさを伴っています。
道が、赤く染まっていると、人々は、汚いものを見るように、通り過ぎていきます。
私はソメイヨシノは三度、美しいと思います。
一度目は、妖艶なくらい美しい、満開の桜。
二度目は、桜吹雪で舞い落ちて、川辺にたゆとう、花筏(はないかだ)。
そして、三度目が、この赤い桜しべ。
三度も、楽しませてくれる桜は、ソメイヨシノだけです。
だから奈良・吉野からやってきた、このソメイヨシノに、人々の心は奪われるのでしょう。