20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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茨木のり子『倚りからず』(ちくま書房)

2025年02月16日 | Weblog
            

先日、やっと美容院で、すっきりとカットしていただき、パーマをかけていただきました。
前髪の辺りが、すだれ模様に、白髪が気になります。
「ちゃんと染めないとダメでしょうかしらね?」
「いや、カトーさん。このままほっといて、グレヘヤーになったら、すごく素敵だと思いますよ。そんな白髪の出方ですから」

「それにしても、オタクのマンションは、お元気な方が多いですね」と、マンションから近い美容院なので。
「90歳を過ぎた方が、あの階段をもろともせずに、登ってきて、背筋をすっと伸ばしてカットしていかれるのです」
「ああ、あのかたは、マンションの体操の創始者だそうです。それに水泳もやっていらっしゃるとか。誰にも頼らず、潔い生き方をしていらっしゃる方ですね」

「うちは、この階段で、もう登るの無理、と挫折される方がすごく多いんです」
2階に美容室のある、おしゃれな、店長さんの彼が、何気なく呟きます。
「それに、カトーさんのところのマンションの丸々さん。90歳過ぎてますよね。ご主人の方です。僕だってできないのに、あの階段を飛ぶように走って登ってきますよ。奥さんが、お金を払うのを忘れたからと、届けに来てくださって」

へえ!!
思わず感嘆。
骨折経験者は「慎重に、慎重に」と登ったり、降りたりしています。

「運動と、お元気さって、繋がっていますね」
私は、子どもの頃から、運動が大嫌いでした。
見るからに、「運動音痴」な動き方をすると、夫にいつも言われます。
小学校の時は、マラソンも、跳び箱も、「先生、今日はパスします」って、ずっと逃げていました。それで通った時代だったのです。

「それが今は、月・金はカーブス、水曜は吹き矢。随分、タイプが変わった」と。
タイプが変わったのではなくて、ヨボヨボになるのが嫌なだけ。
だから、せっせと運動をしているだけ。

でも美容院の店長さんに伺って、さらに、確信が持てました。
マンションの方々でも、ちゃんと体操をやったりしている方は、あの、すごく、難題っぽい階段。
おまけに手すりも、今時、つるっとつかまりやすいバーではなく、すごい鋭角。
どこを持ったら、安全かしらといつも、工夫しながら、登ったり、降りたりしている。そんな美容院に、何歳になってもいけるんだ、ってことを。

「やはり体操や、運動をしている方は、お元気ですね」
50代のイケメンの店長さんが笑いました。

芯の通った生き方をしていらっしゃる方は、おいくつになっても生きる姿勢が素晴らしいです。

茨木のり子の詩集で『倚(よ)りかからず』という本があります。
まさにそれです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
・・・・・・・・・・・・・・・

そういうお手本が、マンションにも、カーブスにもたくさんいます。

もはや、むかしの古い観念の「高齢者」という括りの中などでは、語れない、一人で生活していても、しゃんと生きている、人生の達人たちが大勢います。

私など、この年でも、まだ「小娘」状態です(笑)。
ですから、場を和ませる「お笑い係」を自ら引き受けています。
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