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児童文学作家 加藤純子のblog
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『手のひらの記憶』(はやの志保著 結書房刊)

2009年05月19日 | Weblog
 このご本は、作家・はやの志保さんがおかあさまに語っていただいた、旧満州ハルピンでの暮らしや、日本に引き揚げてこられてからの生活のいっさいを綴られたものです。
 ここには三代の女たちの生き様が、目をそらさず書かれています。
 夫の死後、ハルピンから死にものぐるいで子どもたちを連れて日本へ帰り、苦労のし通しだったはやのさんのおばあちゃまの姿。
 その娘である、はやのさんのおかあさまの、母親にむけるまなざし。
 祖母の、そして母の原点を知りたいと願う、はやのさんの作家として貪欲な好奇心。その熱い思いがこのご本のすみずみまでを貫いています。
 
 そこには語るのもつらい、生涯悩み続けた苦悩と重さ。それをずっと背負い続けて生きてきた女たちの姿がありました。
 ぐっと胸に迫るシーンです。
 ラスト、おかあさまとおばさまが54年ぶりにハルピンを訪ね、その地に眠る、父と弟を日本に連れて帰ってくるシーンもまた感動的です。
 そしてなにより、読みながら迫ってきたのは、はやの志保さんの「真実」を知りたいという強く激しい思いです。
 その思いのすべてが、この作品の原点であり、原動力となっています。
 ぜひお読みいただき、はやの志保さんの熱い思いを受け止めていただけたらと思います。 
 
 私はこのご本を読みながら、数年前に訪れた、アカシヤのうつくしい中国・大連の町を思い出していました。
 その町の博物館でみた、満鉄時代の日本人の恵まれた暮らしなどを。
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2 コメント

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お礼のことばが見つかりません~(涙) (志保)
2009-05-20 22:02:52
純子先生、本当にありがとうございます。
お忙しいところお読みくださって、こんな温かい書評を書いていただいて。母もきっと喜びます。
くちばしの黄色い私ですが、この本が繋いでくれたご縁に感謝しつつ、心に残る作品を書けるようこれからも頑張ります!
ああ、月並みのことしか書けない私をお許しください


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Unknown (加藤純子)
2009-05-21 07:59:33
志保さん

志保さんの熱い思いがびんびんと伝わってくるご本でした。
ご家族の生きてこられた歴史をこうしてつまびらかにされたということは、この姿勢はさらにお子さんたちにも繋がっていくでしょう。

お茶目で、頭の回転の速い坊やたち(こんないい方をすると、彼らに怒られちゃうかな?)・・・息子さんたちにも、くれぐれもよろしくお伝えください。
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