はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

白い顔

2007-09-21 14:25:48 | はがき随筆
 4月吉日。同じ学級のJからハナトラノオの小株を震えるような手でもらい受けて庭の隅に植えた。やがて淡くやさしい紫色の花が咲いた。そのころ私は、すらりとしてお下げ髪のJにあこがれていた。そんな日、無人の廊下で水音に誘われ、蛇口の下のトレーをのぞくと、現像したての写真が水中で揺れ動いている。中の1枚に、木にもたれ遠くを見つめるJの白い顔があった。思わず見入っていると人の気配がして慌ててしまった。あれからもう50年近い。15歳の春、集団就職列車で行ってしまったJ。今でも木にもたれたJの姿がふと思い浮かぶことがある。
   出水市 中島征士(62) 2007/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載

命のリレー

2007-09-21 09:52:08 | はがき随筆

 9月中旬に行われた、がん患者さんを対象にしたイベント「つなげよう! 命のリレー」に参加予定だったが、どうしても都合がつかなくなった。
 がんと闘う子供たちへ届けられる千羽鶴を折るため、事務所内に折り紙と箱を設置したのは7月初め。昼休みに職員が1羽、2羽と折ってくれる。
 私は、せめてたくさんの数を、と始業前や、家に持ち帰って折ったりした。台風で家に閉じこめられた日は文字通り一日中、三角に四角にと流れ作業のように100枚単位で折っていく。
 イベント前日、総数は3032羽となった。この思いが届きますように。
   鹿児島市 本山るみ子(54) 2007/9/20 毎日新聞鹿児島版掲載