はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

水の泡

2007-09-28 07:30:32 | はがき随筆
 我が家の一人息子、遼太郎の行水には手を焼く。残暑厳しい真っ昼間、嫌がって四肢を突っ張り抵抗するのを何とか座らせる。左手で首根っこをつかみ、妻がシャンプーを掛けるのに沿って洗う。洗いにくい所はほとんど手抜き。洗いやすい背中中心。迷惑そうな遼太郎の目に妻が負けて、じょうろのシャワーで泡を流す。ふいてやろうとタオルに手を伸ばした一瞬、手から離れた遼太郎は身を震わせて水を切り、大地を転げ回る。妻と顔を見合わせ苦笑するのが精いっぱい。犬には言葉が通じない。しかし通じるが故に、親子殺し、祖父殺しがあるのは悲しいな。
   志布志市 若宮庸成(67) 2007/9/28 毎日新聞鹿児島版掲載