Aさん方の年収はおよそ114万円。だが222万円の借金があるのに対して、貯金はわずか5万円弱――。
県財政の状況(05年度決算)を1世帯あたりの数字に置き換えるとあらかたこうなる。現在は借金がスズメの涙ほど減った代わりに、貯金はぐっと減って2万円を切り、状況はさらに悪くなった。
もちろん、これは数字として表れるお金だけの分析で、もろもろの資産は含まれない。道路や橋、河川整備、公的施設などへの公共投資は、建設時点では相応の費用がかかるが、できてしまえば財産になる。それでも、貯金がほとんど底を尽きかけている時に、年収の倍近い借金があるのは気持ちの良いものではない。ぜいたくと無縁な暮らしの中でも、借金は一定額を返済し続けなければならず、がけっぷちの生活を迫られていると言える。
今後も多額の財源不足が避けられない危機的状況の周知を図ろうと、県は4日から職員への説明会を開催、このほど一巡した。財政課の説明では、47都道府県で県の人口は全国24位だが、06年度の当初予算額は17位。そのうちの普通建設事業費は9位、借金返済に充当する公債費は13位、前年度末の借金の残金である地方債残高は14位という。県の規模の割に予算額の諸項目が高めなのが分かる。早い話が「身分不相応」ということだ。
県土が広く山間地や多くの離島を抱え、しかも自然災害の常襲地帯。高齢化率も極めて高い。他県よりコスト高の要因はあるが、県の財布を圧迫している主因は明らかに、威容を誇る県庁舎をはじめ過去に箱物に投じてきた巨費のつけだろう。
先日ある新聞に「佐賀県『3年後破産』」という扇情的な見出しが踊った。かつて佐賀県政を担当したので、少々いぶかしく思い、よく読むと「今の状況を放っておけば」の条件付き。支局の県政記者に話を向けると「同じ条件なら鹿児島県はとっくに破産してます」と一笑に付された。確かに佐賀県の借金は予算規模の約1.5倍弱で、鹿児島県よりかなりましである。
赤字財政に苦しむ全国の自治体の中でも、鹿児島県の状況は目立って悪い。県財政課は、今後さらに縮減が求められるのは人件費の他に普通建設事業費と一般政策経費という。ならば県職員向けにとどまらず、一般県民にももっときちんと説明すべきだと思うが……。
毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
2007/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載
県財政の状況(05年度決算)を1世帯あたりの数字に置き換えるとあらかたこうなる。現在は借金がスズメの涙ほど減った代わりに、貯金はぐっと減って2万円を切り、状況はさらに悪くなった。
もちろん、これは数字として表れるお金だけの分析で、もろもろの資産は含まれない。道路や橋、河川整備、公的施設などへの公共投資は、建設時点では相応の費用がかかるが、できてしまえば財産になる。それでも、貯金がほとんど底を尽きかけている時に、年収の倍近い借金があるのは気持ちの良いものではない。ぜいたくと無縁な暮らしの中でも、借金は一定額を返済し続けなければならず、がけっぷちの生活を迫られていると言える。
今後も多額の財源不足が避けられない危機的状況の周知を図ろうと、県は4日から職員への説明会を開催、このほど一巡した。財政課の説明では、47都道府県で県の人口は全国24位だが、06年度の当初予算額は17位。そのうちの普通建設事業費は9位、借金返済に充当する公債費は13位、前年度末の借金の残金である地方債残高は14位という。県の規模の割に予算額の諸項目が高めなのが分かる。早い話が「身分不相応」ということだ。
県土が広く山間地や多くの離島を抱え、しかも自然災害の常襲地帯。高齢化率も極めて高い。他県よりコスト高の要因はあるが、県の財布を圧迫している主因は明らかに、威容を誇る県庁舎をはじめ過去に箱物に投じてきた巨費のつけだろう。
先日ある新聞に「佐賀県『3年後破産』」という扇情的な見出しが踊った。かつて佐賀県政を担当したので、少々いぶかしく思い、よく読むと「今の状況を放っておけば」の条件付き。支局の県政記者に話を向けると「同じ条件なら鹿児島県はとっくに破産してます」と一笑に付された。確かに佐賀県の借金は予算規模の約1.5倍弱で、鹿児島県よりかなりましである。
赤字財政に苦しむ全国の自治体の中でも、鹿児島県の状況は目立って悪い。県財政課は、今後さらに縮減が求められるのは人件費の他に普通建設事業費と一般政策経費という。ならば県職員向けにとどまらず、一般県民にももっときちんと説明すべきだと思うが……。
毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
2007/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載