病気知らずだった88歳の父は病を得てから、私の訪問を心待ちするようになった。
父に応えようと、昼間に会った日も私はパジャマにはんてんをを羽織り毎夜5分、車を走らせた。母と3人、小一時間語らううち父が休む時刻。隣のお茶の間で母が見守る中、ベッドの父に薬を差し出し、足をさする。ほんの数分間でも「気持ちよかった。ありがとう」が終わりの合図。肩が冷えないように布団を押さえ「おやすみなさい」。電気を消して、ふすまを2㌢開けたまま部屋を出る。
入院する前日まで続いた夜のひとときは、半年で終わった。
いちき串木野市 奥吉志代子(59) 2008/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載
父に応えようと、昼間に会った日も私はパジャマにはんてんをを羽織り毎夜5分、車を走らせた。母と3人、小一時間語らううち父が休む時刻。隣のお茶の間で母が見守る中、ベッドの父に薬を差し出し、足をさする。ほんの数分間でも「気持ちよかった。ありがとう」が終わりの合図。肩が冷えないように布団を押さえ「おやすみなさい」。電気を消して、ふすまを2㌢開けたまま部屋を出る。
入院する前日まで続いた夜のひとときは、半年で終わった。
いちき串木野市 奥吉志代子(59) 2008/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載