はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

からくり人形時計

2008-04-15 15:15:43 | アカショウビンのつぶやき









 その昔、進学で上京した息子が、横浜見物に連れて行ってくれたことがあった。超方向音痴の私は、<まだ、彼はおのぼりさんの筈だけど…>と心配しながら彼の後について行った。
 <横浜そごう>でウインドショッピングの最中、息子が「お母さん急いで1階まで降りて」「どうしたの」「いいから、急いで」と。何が起きたのか分からないけれど、ふうふう言いながらエスカレーターを駈け降りると、黒山の人だかり、その人々が同じように見上げているのは、大きな<からくり時計>だった。「もうすぐ、人形が出てくるよ」と言う息子。

 私は幾つになっても人形大好き、作るのも大好きという幼稚な母親。この私に可愛い<からくり人形時計>を見せたいとの、息子の優しさにぐっと来てしまった私だった。今なら携帯でパチリだが、「どこかにカメラがある筈なんだけど…」と、バッグをごそごそやってると「人形が引っ込んじゃうよ…」と注意されてしまった。
 人形たちが、とっても可愛かった(*^o^*)。

 この思い出の時計も、今日午後8時、全国の10店舗で、からくり機能を停止させたと言う。一日11回、時刻の3分前になると文字盤が反転して世界の民族衣装をまとった人形が現れ、「イッツ・ア・スモールワールド」のテーマ曲に合わせユーモラスに動き、子供たちに人気があり、待ち合わせ場所としても親しまれていたという。

 理由は老朽化だそうだが、私も間もなく後期高齢者、同じように老朽化が進み、大好きだった人形作りも出来なくなってしまった。手元に残っているのは古びた<赤毛のアン>の人形一体だけ。

 そうそう、そごうのからくり時計を見た後で彼が連れて行ってくれたのは、<横浜人形の館>だったなあ…と、20年前のあの日を懐かしく思いだした。
 
 写真は、その昔、あちこちへ貰われて行った可愛い子どもたち。現存するのは赤毛のアンだけ…。

大学教授

2008-04-15 08:00:04 | はがき随筆
 33年前を突然思い出した。大学最後の試験も終わり、アルバイトに専念していたある日「卒業保留者に名前が出ている」と級友が知らせてくれた。
 学生課に行くと「ぎりぎりの単位の学生は教授のところへ行きなさい」と。単位は多目に取っていたので不承不承、教授宅を訪ねた。「おれの単位を落としたろう」。和服姿で玄関に現れた先生はそう言った。経済的なこともあり、留年は困ることを話し、卒業はできた。
 後年、叙勲を知り祝電を打ったら、丁寧な礼状が届き恐縮した。往年の名優、中村伸郎に風ぼうの似た先生であった。
   鹿児島市 本山るみ子(55) 2008/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載