はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

木の芽香るころに

2008-04-24 07:14:29 | 女の気持ち/男の気持ち
 タケノコをいただいた。「木の芽あえ」にと思い、庭に出てみる。新芽の香りが辺り一面に漂っている。手のひらいっぱいに摘んでかいでみると、小学生のころの思い出がよみがえる。
 そのころ母は離れで床にふせっていた。娘を気づかい、祖母はいつも献立を工夫していた。
 母の元へ食事を運ぶのは私の役目。春には木の芽をちりばめた五目寿司を届けた。母は少し口にしただけで「おばあちゃんには内緒よ」と、そっと新聞紙に包んでいた。
 その後、母は入院し、7年間の闘病生活の後、亡くなった。残してくれたセピア色の手帳には、2人の子供への思いがぎっしり。幼子を残していく母親の切ない思いが伝わり、読み返すたびに胸が熱くなった。その最後のページに「母の五目寿司が食べたい」と書いてあった。
 私が生きてきた歳月はすでに、母の倍近い。そして今年も春が巡ってきた。
 山椒の若芽が吹く季節になると、母と過ごした日々が思い出される。手の中に広がる青く、かぐわしい香りがツンと心に染みる。
   鹿児島県姶良町 中村頼子(63)
   2008/4/24 毎日新聞鹿児島版 の気持ち掲載

県政大丈夫なの

2008-04-24 06:58:04 | はがき随筆
 県の広報誌「県政かわら版」が届いた。見ると今年度の当初予算概要と取り組む主な施策。〝かわら版〟の軽いイメージが一変した。7年連続マイナス予算、県債残高は総予算の倍。財源不足額の数字が並んでいる。
 県財政については本紙でも詳しく報道された。乏しい大規模新規事業、企業誘致に用意した工業用地の空き地。身の丈を考えない箱もの建設、人口島費用負担などが重たくのしかかる。04年の財政非常事態宣言。いまだ出口は見えていない。
 将来ビジョン「日本一のくらし先進県」への道を歩んでいけるのであろうか。
   鹿児島市 鵜家育男(62) 2008/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載