朝7時、体調が安定しているのを確かめ、半身浴をする。ペースメーカーの位置にタオルをかけ、シャワーで他の部分を洗い流す。1週間ぶりだ。入浴中に倒れた時のことを考え、お風呂は朝にしている。玄関の鍵は預け、緊急連絡表と電話の子機を扉近くへ置く。
1級の障害に加え、夫の急死のショックで歩行困難や視力の低下に見舞われ、介護が必要になった。遠くの姉妹は毎週安否確認の電話くれ、友人知人は食べ切れぬほど惣菜や野菜を持参し、病院通いの便宜まで図ってくれる。近隣の方も毎日の声かけとリサイクル、ゴミ運びをしてくれる。
少しずつつえを持たないで歩く努力をしているが、「右手だけでは何もできない」と自暴自棄に陥ることもある。なにもかも忘却できれば、どんなに楽になれるだろう。いや、自分の心は自分で強くするしかないと自問自答する。
突然、一通の手紙と香料が届いた。亡夫を知る方だが、私は面識がない。私と同様に子供もなく、ただ1人で涙を流した3年余りの体験と励ましの言葉がつづられていた。「一人だからと落ち込まないで、趣味を続けて、たくましく生き抜いて下さい」と結んであった。夜明けまで幼子のように枕をぬらした。
ありがとう。今日から外へ出て、季節の移り行く様子を見ようと思う。
薩摩川内市 上野昭子(79)2008/4/11 女の気持ち掲載