はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

別れ

2009-03-04 14:11:32 | はがき随筆
 妻が亡くなって2週間。
 一人になる私を案じてか、娘はずっと家にいて、残された仕事を整理して大阪に帰ることになった。妻の実家に寄って、無人のローカルの駅まで送っていった。
 無人の駅は乗客もなくひっそりとしている。冬寒の曇った昼すぎのホームに待つと、また別れの悲しみがわく。黄水仙の咲くホームから、窓に手を振る娘を見送って車に乗る。
 人生すべて会者定離。人は皆、悲しみを乗り越えて生きねばならない。負けずにたくましく生きたい。そう思って冬空の町に静かにアクセルを踏む。
   志布志市 小村豊一郎(83) 2009/3/4 毎日新聞鹿児島版掲載