はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

卒業34年目

2009-03-13 08:15:40 | はがき随筆
 夫の介護をしながらでも、この季節になると、母校・上智大学の入口までのぼってりとしたピンク色の桜並木や、「恋人の小径」と呼ばれる、ホテルニューオータニまで続く黄色いレンギョウの花が夢のように咲くあの土手を歩いてみたいと思う。
 その願いを知っている東京の同級生が、そのころになったら、ビデオで四ツ谷の上智大学や、隣りのイグナチオ教会女子寮のある信濃町かいわいを撮って送るから、と言ってきた。
 楽しみができた私は、夫を介護しながら、友の春の便りを待っている。
 卒業して34年目の春。
   鹿児島市 荻原裕子(56) 2009/3/13 毎日新聞鹿児島版掲載