3月半ばの西鹿児島駅。たまたま急行「霧島」の真向かいの席に乗り合わせた女の子だった。その母親から、一人旅なので話相手になってと懇願された。
これから就職のため姫路へ行くと言う。混雑した車内の道中、当時大学生の私は寡黙な彼女に何かと話しかけ世話をした。
深夜2時デッキで別れる際、女の子は突然ネックレスを外すと私に差し出した。そしてがらんとしたホームに降り立ち、姿の消えるまで手を振り続けた。
私たちは名も聞かず、また聞かれもせずに別れた。あれから40年余、あの子はその後、どんな人生を送ったのだろう。
伊佐市 山室恒人(62) 2009/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載
これから就職のため姫路へ行くと言う。混雑した車内の道中、当時大学生の私は寡黙な彼女に何かと話しかけ世話をした。
深夜2時デッキで別れる際、女の子は突然ネックレスを外すと私に差し出した。そしてがらんとしたホームに降り立ち、姿の消えるまで手を振り続けた。
私たちは名も聞かず、また聞かれもせずに別れた。あれから40年余、あの子はその後、どんな人生を送ったのだろう。
伊佐市 山室恒人(62) 2009/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載