はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ネックレス

2009-03-18 15:07:53 | はがき随筆
 3月半ばの西鹿児島駅。たまたま急行「霧島」の真向かいの席に乗り合わせた女の子だった。その母親から、一人旅なので話相手になってと懇願された。
 これから就職のため姫路へ行くと言う。混雑した車内の道中、当時大学生の私は寡黙な彼女に何かと話しかけ世話をした。
 深夜2時デッキで別れる際、女の子は突然ネックレスを外すと私に差し出した。そしてがらんとしたホームに降り立ち、姿の消えるまで手を振り続けた。
 私たちは名も聞かず、また聞かれもせずに別れた。あれから40年余、あの子はその後、どんな人生を送ったのだろう。
伊佐市 山室恒人(62) 2009/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載





危ない!

2009-03-18 15:02:05 | かごんま便り
 先日、鹿児島市内を自転車で移動していた時のことだ。目の前の角から中年男性の乗った自転車がいきなり猛スピードで曲がってきた。とっさに急ブレーキをかけたが間に合わず、先方のハンドルがブレーキを握ったままの両手指を直撃した。

 私より年配とおぼしき男性は、割と大きな自転車(ちなみに当方は軽量の折り畳み式)だったおかげ?で無事だったらしく「あ、失礼」とだけ言い残して立ち去った。呼び止めて文句を言いたかったが、情けないことに激痛で声が出なかった。

 別の日、近くの郵便局に出向いた折り、自転車を降りて歩き出した私の目の前に、片手運転で傘を差した中年女性の自転車が飛び込んできた。ぶつかると思ったが文字通り「寸止め」となり辛うじて衝突は避けられた。

 用を済ませて再び走り出すと、信号待ちで偶然にも先ほどの女性に出くわした。「片手運転は危ないでしょう」と話しかけたが、悪いのはそっちだとでも言いたげな表情である。あきれて二の句が継げなかった。

 昨年6月施行の改正道交法で、原則「車道通行」の自転車が、歩道を走っていい例が明文化された。道路標識で指示された場所▽身体障害者と子供、高齢者▽状況から見てやむを得ない場合──などである。この「やむを得ない場合」が実に悩しいことは1日付社会面「はい! 報道部」でも取り上げた。

 交通量の多い車道を走るのは実際、危険だ。そのため歩道を走りがちだが、そこには別の危険がつきまとう。冒頭で紹介した経験談も、いずれも歩道上での出来事だ。

 県警によると、08年に県内で起きた自転車の交通事故は、自転車対車1015件(死者7人、負傷者999人)、自転車対列車1件(死者1人)、自転車対歩行者24件(負傷者7人)、自転車単独163件(同161人)。最後の二つは、実際はもっと多いはずだ。

   鹿児島支局長 平山千里 20093/16 毎日新聞掲載