はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

城山に登る

2009-03-10 12:13:23 | はがき随筆
 城山に登った。木もれ日のさす散歩道には小鳥のさえずり、木々のそよぎをじゃましない程度に人の気配が漂っていた。
 母が逝って十数年。ああもこうもしてやれば良かったのに、してやれなかったと身をよじりたくなったとき、城山に登りたくなった。高2の春休みに母と登ったことを思い出したのである。 母は朝夕、桜島を見て育ったので、火の山にも向かいたかった。あの日、見聞きしたことははるか忘却のかなた。母の面影、やさしさだけが鮮やかによみがえる。「母さん、ごめんね」とわびた。
   鹿屋市 伊地知咲子(72) 2009/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載






敬老愛人

2009-03-10 12:10:14 | はがき随筆
  「敬老愛人」。面白い言葉だと一瞬、思いを巡らす。薩摩の偉人西郷隆盛の遺訓「敬天愛人」にあやかり、「老人を敬う」という町内の特別養護老人ホームを運営される施設長の心根である。正月の職員会議で、全職員による新年の決意や心情の発表の後、施設長が先の言葉を投げ掛けられたと聞く。
 かねて当施設では「美しい笑顔・優しい言葉・福祉の心」「上手な勤務より、愛嬢のある勤務」
 「明るく・仲よく・労り合いましょう」の心得を守り、入所者の処遇をすすめているが、新年にあたり、施設長は先の言葉で更に引き締められた由。
   薩摩川内市 下市良幸(79) 2009/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載




暖冬の吉野公園

2009-03-10 11:43:15 | はがき随筆
 2月8日、雲一つない冬晴れの暖かな日曜日。皆で吉野公園に行こうということになった。
 正午ごろ着いた。山中に広大な面積を有する公園は、緑がいっぱいで空気がうまい。あちこちに家族の輪ができお弁当タイム。みんな笑顔、笑顔である。
噴煙を上げる桜島の雄姿が目前に迫ってくる。売店の横にあるカワヅザクラは満開で、十数羽のメジロが花のみつを吸っている。妻は携帯でシャッターチャンスを狙うが、じっとしてくれないメジロにいらだっている。
 久しぶりの自然との触れ合いにリフレッシュすることができた。春になったらまた行こう。
   鹿児島市 川端清一郎(61) 2009/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載