城山に登った。木もれ日のさす散歩道には小鳥のさえずり、木々のそよぎをじゃましない程度に人の気配が漂っていた。
母が逝って十数年。ああもこうもしてやれば良かったのに、してやれなかったと身をよじりたくなったとき、城山に登りたくなった。高2の春休みに母と登ったことを思い出したのである。 母は朝夕、桜島を見て育ったので、火の山にも向かいたかった。あの日、見聞きしたことははるか忘却のかなた。母の面影、やさしさだけが鮮やかによみがえる。「母さん、ごめんね」とわびた。
鹿屋市 伊地知咲子(72) 2009/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載
母が逝って十数年。ああもこうもしてやれば良かったのに、してやれなかったと身をよじりたくなったとき、城山に登りたくなった。高2の春休みに母と登ったことを思い出したのである。 母は朝夕、桜島を見て育ったので、火の山にも向かいたかった。あの日、見聞きしたことははるか忘却のかなた。母の面影、やさしさだけが鮮やかによみがえる。「母さん、ごめんね」とわびた。
鹿屋市 伊地知咲子(72) 2009/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載