はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

悲劇

2009-03-25 11:57:39 | はがき随筆
 終戦の前年に464人の死者を出した第六垂水丸(122㌧)転覆沈没事故の真相は、余り知られていない。定員340人の倍以上の712人(軍関係者を含む)が乗船していたことと、248人の生存者が多くを語ろうとしなかったからである。
 2月の波静かな垂水桟橋の沖100㍍での悲劇。この朝、乗船予定だった少年は寝坊をして遭難を免れ、代わりに乗った母親は不帰の人となった。
 少年は77歳となり、遺族会の講演会で「生存者にも遺族にもさまざまなドラマがあります。今こそ語り明かして、後世に伝えて下さい」と訴えた。
   鹿屋市 上村泉(68) 2009/3/25 毎日新聞鹿児島版掲載