はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ツクシ取り

2006-03-05 15:29:42 | はがき随筆
 今年の冬は長かった。
 ツクシの顔見たさに、散歩のコースを変えること3回。
 ここに来て急に春めいて来た。
 雨が二日間降り続いた朝、期待して出かける。出てる、出てる!
 長いのは20㌢ぐらいにも。いつもの場所に出ていなくてがっかりしたり、気づかなかった場所に見つけて喜んだり。発見が楽しい。
 軍手がびっしょりぬれてかなりの収穫、去年より4日早いツクシ取りとなった。
   四温の朝目覚めし土筆の揃い踏み 
         如月の空に再会の宴  
   国分市中央 口町円子(66) 3月5日掲載

恐るべし

2006-03-04 11:15:20 | はがき随筆
 1歳半になる可愛い坊やのパパはアメリカ人、ママは日本人。私たちの英会話の先生であるパパは、坊やが言葉を覚え始めたとうれしそうに話される。「坊やはパパが『シッツ』と言うと座るが『座って』と言っても座らない。ママが『座って』と言うと座るが『シッツ』と言っても座らない」
 もちろん英語でのこの話は、幾度か聞き返して、ようやく理解できた。英語が分かったことに浮かれてしまい、1歳半にして英語を話すパパと日本語を話すママを認識し、それに対応する坊やに恐れ入ったのは、その後のことだった。
   出水市明神町 清水昌子(53) 3月4日掲載

   (お断り 写真はご本人ではありません。マイクロソフトクリップアートより)

おひなさま

2006-03-03 18:47:38 | アカショウビンのつぶやき
3月3日
 明日は娘の誕生日。女の子の誕生を待ちこがれていた夫は、桃の節句に女の子が生まれると信じていたが、一日遅れて4日に生まれた、名前はもちろん弥生。
 余裕のない暮らしを案じた姑が、男びな女びなとぼんぼりを初節句に贈ってくれた。それから毎年一段ずつ買い足してようやく7段揃ったのが娘7歳の春。
 一度に揃える事はできなかったが、毎年新しいお雛様が増えていくのが子供たちにも新鮮だったらしく、大騒ぎして新しい雛人形を迎えたものだった。
 子供たちが巣立ってからは、飾るのも片付けるのもおっくうになり、来年こそは!と思いつつしまったままで20年余り。
 そこで去年から小さな陶器のお雛様を飾ることにした。大きな試練をようやく乗り越えた娘に幸多かれ! と祈りつつ柔和なお顔のお雛様を眺めている。
   (アカショウビン)
 

春告鳥

2006-03-03 09:18:30 | はがき随筆
 しばらく冬ごもりの続いた1月末。日差しを見つけて歩行練習に出かけた。近くの人影のないゲートボール場。自然の恵みにうるおいながら、左手の杖に集中して歩いていると、ホーガジャガジャ、ホーガジャガジャと二声。はっきりとウグイスの未熟な声が聞こえた。「もうすぐ暖かくなるよ。ちょっと待っててな」と知らせてくれながら姿は見えず、列車の轟音に消されてしまった。「春告鳥」とは、とても良い響き。それにしても今年の寒さ、雨はどうしたものか。ピラカンサス、万両の赤い実も今年はそのまんま。山里に鳥も人もはしゃぐ日が待ち遠しい。
   阿久根市大川 川畑マスミ(74) 3月3日掲載

20個片付け

2006-03-02 10:38:35 | はがき随筆
 夕食を終えるとホッとして体の動きが停止する。片づけがおっくうになり、新聞の切り抜きや園芸の本や図書館で借りた本などに夢中になり、時のたつのも忘れてしまう。気がつくと食卓の上はそのままだ。幼い頃から何かに夢中になると机に顔を伏せたまま夜の明ける事もしばしばあった。亡母は心配して「急ぐ事を20個してから好きな事をすれば安心して眠れるのに」と笑って注意してくれていた。近ごろは半分眠りながらの後片づけと皿洗いに後悔する事が多くなった。夫のまいた福豆を食べながら20個片づけを実行しようと決心した。70年遅いけど。
   薩摩川内市高江町 上野昭子(77) 3月2日掲載

娘に感謝

2006-03-01 11:12:13 | はがき随筆
 小脳出血の後遺症と膝痛のリハビリに励む母と、その介護や頼りない家事を担う父の援助のため週2回も訪れる娘。昼食前、食品などを車から降ろし適当に配置すると、時に流しを片付け、鍋類や食器の配置換え、大小の容器の整理の後、衣類を整えるなど母と話しながら動く。偏らない栄養素など加味した食事に入る。娘が特に気を配る談笑とリラックスに努め、食後の適度のリハビリも忘れない。食事の片づけや掃除も軽快に済ませ、安全と健康への配慮をして帰る。後の見事さにいつも感謝の気持ちでいっぱいだ。
   薩摩川内市樋脇町 下市良幸(76) 3月1日掲載