はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

嬉し涙にくれる

2006-03-13 23:00:04 | はがき随筆
 「おいどんたちゃ忘れられた。風音もかわいそうじゃ」と言う息子。いやいや忘れたのじゃない。放送原稿で妻と娘のことしか出来なかった。次は風音のこともバッチリ投稿するから、気にするなと思っていた矢先、息子夫婦と初孫が「ラジオ放送」の記念にと愛らしいラン2鉢をプレゼント。嫁の気配りの良さに感謝。「よか嫁じょもろうたね。行生は幸せだね」と妻に話しかける。妻はラジオ放送で涙ぐむ。息子夫婦のプレゼントに涙ぐむ。きょう1日、嬉し涙に暮れる妻の福福顔。「お父さん、ありがとう」「おめでとう」の繰り言に尽きる
   高尾野町唐笠木 岩田昭治(66) 3月13日掲載 特集版-5

抱きしめる

2006-03-13 22:50:14 | はがき随筆
 母ちゃん、ほら、春。
 8歳の娘が指さした所に水仙の花が咲いている。
 白く光って咲いている。甘く優しい香り。
 娘と春を確認する幸せ。
 母ちゃん、だっこ。
 おや、おや、9歳になるっていばってた人はだれ?
 いいでしょう。
 8歳のあなたを、春と一緒に抱きしめておきましょう。
 水仙の香りと一緒に9歳になる前のあなたを。しっかりと抱きしめておきましょう。
   鹿児島市真砂本町 萩原裕子(53) 3月13日掲載 特集版-4

雪国のみなさんへ

2006-03-13 22:44:53 | はがき随筆
 例年にない大雪に見舞われ、雪かき、雪下ろしと大変ご苦労されているようですね。雪崩、大量の積雪による家屋の倒壊などにより甚大な被害を受けられた方々や、亡くなった方々を思うと心が痛みます。鹿児島市も88年振りに12月の積雪量の記録を更新しました。でも、あなた方に比べれば大した事ではありません。同じ日本に住みながらこうも違うとは驚きです。雪がやみ、春めいてきたら鹿児島に来ませんか。南国鹿児島で心身の疲れをとりましょうよ。私の家は狭いですが、2人ぐらいなら泊まれます。どうぞ遠慮なく。待ってます。
   鹿児島市鴨池 川端清一郎(58) 3月13日掲載 特集版-3

シクラメン

2006-03-13 22:37:35 | はがき随筆
 3年前のピンク、4年前のワインレッドが幸いたくさんの蕾をつけ、今年も2鉢それぞれ4、5本ずつ花になった。 
 開花への過程は年々遅くなるが、色、形とも求めた時同様のもの。まるで蝶が花にとまった形に咲く花は新春や早春の窓辺に可愛らしい風情を醸す。
 球根に水がかからないよう鉢の窓から水や肥料を注ぐ術にもすっかり慣れた。
 心を注ぐと呼応するかのように勢いを盛り返してくるあたり、まるで子供のようだ。
 今年はこれから楽しめそうな気配だ。
   鹿児島市唐湊 東郷久子(71)3月13日掲載 特集版-2

人間社会

2006-03-13 22:30:12 | はがき随筆
 冬の風物詩。梅の枝や椿の花に群れるメジロが今年も里におりて来ない。何年も何十年も繰り返された自然の営みが一つずつ消えていく。人間が便利さを追求するあまり、何かが壊れているような不安を感じるのは私だけだろうか。小さいころ見かけたアカショウビン、カワセミ、コジュケイ、ヤマドリなど、ほとんど見かけない。めったに姿を見せなかったタヌキやイタチが夜はウロウロ。小動物たちが何かを訴えているような気がする。後戻り出来ない文明の進化。どっぷりつかっている私でも何かができないか。ふと思う。
   指宿市十二町 有村好一(57) 3月13日掲載 特集版-1

元気に育て

2006-03-12 16:27:18 | はがき随筆
 去年の秋に母と2人で春咲の球根を買い求め、花壇に植えた。水栽培用のヒヤシンスは、根っこの観察も兼ねてペットボトルで容器を作り育てることにした。白い根っこが少しずつ出始めて喜んでいたら、どうも様子がおかしい。根っこに元気がない。急いで花壇のチューリップの横に植え、土にかえした。元気になって芽が出るだろうか。そんな心配をよそに2月、寒風の中、緑色の小さなふっくらとした芽を出している。ああ、よかった。土の中で命を吹き返したヒヤシンス。チューリップやフリージアと共に綺麗な花を咲かせてくれる日が楽しみだ。
   高尾野町柴引 山岡淳子(47) 3月12日掲載

針供養

2006-03-11 13:02:52 | はがき随筆
 今日2月8日は針供養の日。毎日を「○○の日」と紹介する中で、今日を針供養の日と紹介するのを聞かない。それほど現代では針仕事と縁遠くなったということだろうか。
 わが家の針が、もし独創性豊かな性質であるならば、物足りなく感じるはずだ。登場回数は多いものの、破れた箇所の繕いが専門だからだ。特に膝部分が多く「つい最近往復したのに、何度目?」と愚痴っているかもしれない。
 針を一刺し一刺し繕いながら「けがをしませんように」と願いを込める。酷使に耐え、その細い体で頑張ってほしい。
   薩摩川内市高江町 横山由美子(45) 3月11日掲載

春遠からじ

2006-03-10 13:20:42 | はがき随筆

 「立春」に雛人形を飾る。嫁いだ娘の初節句から、毎年欠かさず続けているわが家のささやかな年中行事の一つで、今年は33回を数える。
 色褪せた衣装、あちこちに傷みは見られるけれど、年輪をしのばせる素朴で、穏やかなお顔立ちには趣があり麗しい。庭先の白梅の小枝と菜の花を手折って、無造作に添えるだけで春の息吹と、ひとときの女性ならではの誇らしい気分に浸れる。
 今年は2人目の孫娘の初節句。健やかな成長を願って飾られるであろう。雛人形に思いを馳せる日々…。
   鹿屋市札元 神田橋弘子(66) 3月11日掲載

孫の成人祝い

2006-03-09 08:55:36 | はがき随筆
 孫娘の成人内祝いに長男夫婦と車で孫のうわさをしながら三男宅に。玄関に付くと孫が晴れ着姿でほほ笑み出迎えてくれた。3人兄妹の末っ子だがよく成長したと感動する。2階の祝席は近親者でにぎわった。孫は小学校1年から「新体操クラブ」に入り、中高でも活躍していた。負けず嫌いな孫は全日本個人競技大会に中2で出場して5位の記録。高1の練習中に足の小指を骨折。けがを乗り越えて国体やインターハイにも出場した。進学を断念して目下、アリバイとに専念。3月からは本人の希望通りの職に合格して県外に行く。長い人生焦らずに笑顔で。
   姶良町平松 谷山 潔(79) 3月9日掲載

ばあばは忙しい

2006-03-08 06:31:08 | はがき随筆
 「ぼくのズボン乾くかなあ」と、心配そうな4歳の孫。「お日様が乾かしてくれるから大丈夫よ」。干し物をしながらの会話である。トイレでの失敗は、ズボンのチャックが下りなかったと残念そう。ズボンを脱ぎながら言うには、ママには内証でねと、指を口もとに立てて笑う。食欲旺盛の昼食後の事。トイレから呼ぶ声。「ばあば忙しい?」。うれしい心遣いである。ようやく乾いた暖かいズボンをはいて満足そうだ。帰宅したママの耳もとで少しはにかみながら内証の報告をしている。親子は顔を見合わせ笑いながら、抱きしめられている孫は安堵の笑顔だった。
   鹿児島市城山 竹之内美知子(71) 3月8日掲載

春は別れの季節

2006-03-07 13:44:36 | アカショウビンのつぶやき
3月7日
 さようならKさん。3年間、楽しく歌った合唱団の仲間との別れ。会の要となってお世話していただきありがとう、一番難しいメゾソプラノで頑張ってくださったKさん。新しい地で素晴らしい出会いがありますように、良き仲間と共に歌い続けてくださいね。
 「何かあったら呼んでください、帰ってきますから」と嬉しい言葉。
 そうそうここがあなたの帰る場所なのよ。ささやかなお別れ会は涙と笑いで閉じました。
(アカショウビン)

歌劇「若狭」

2006-03-07 09:30:56 | はがき随筆
 「思わず涙がこぼれた」。口々に言い交わしながら、老いも若きも興奮さめやらぬ表情で会場を後にした。先ごろ種子島で歌劇「若狭」が上演された。島では初の歌劇とあって観客動員が心配されたが、入場券は即売り切れ、会場は立ち見の観客であふれ、熱気ムンムンだった。若狭が恋人をあきらめ、ポルトガル人のもとに嫁ぐことを決意、その絶叫シーンには、福富・若狭の迫力満点の歌声に酔い、客席のあちこちからすすり泣きの声が漏れた。公演が終わった後も事務局には感謝の便りが後を絶たないと言う。感動の嵐がしばらくは島内を駆け巡りそうだ。
   西之表市西之表 武田静瞭(69)  3月7日掲載 (画像をクリックすると大きくなります)

コメントって どうやるの

2006-03-06 19:11:07 | アカショウビンのつぶやき
3月6日
最近「コメントしたいんだけど…」という質問を頂きます。
パソコンに詳しい方には大きなお世話なんですが、ちょっとごめんなさいね。
私がこのブログに込める思いは、パソコンに慣れない方もご一緒に、この楽しさに触れてほしいと言うことなのです。そこでコメントの方法を

エッセイの下の方に
コメント(0) Trackback(0)とありますが、この コメントの( )の中でクリックします。
すると左上にコメントウインドが開きます。そこに
名前 タイトル URL コメント と並んでいます。
名前は無くても構いませんが、出来たら実名でなく楽しいペンネームをお使いくださるようお勧めします。
タイトルは、書いて下さるとうれしいですが、なくても大丈夫です。
URL はパスしてください。
コメントを書き終えたら、投稿ボタンをクリックしてOKです。
最後はコメント・ウインドの右上の×印をクリックしてウインドを閉じてください。
これで終わりです。可愛い絵文字もあります、じゃんじゃん使って楽しいコメントにして下さい。待ってマース。   アカショウビン





昔の道

2006-03-06 18:27:10 | かごんま便り
 苔むした急坂の石畳に赤い椿の花がこぼれ落ちていた。雨後のせいか、敷き詰められた石畳の所々の隙間から水が流れている。すべらないように足場の良い場所を選びながら歩いた。幾多の人も同じ気持ちで歩みを進めたのだろう。踏みしめた足場の良い石畳は摩耗して周囲よりもへこんでいるようだった。
 加治木町木田にある竜門司坂。司馬遼太郎さんの小説「翔ぶが如く」でも鮮烈な場面として印象に残っていた。1877(明治10)年、吹雪の中を熊本へ向かう薩軍がたどった坂である。
 まず、別府晋介の率いる大隊が北上し、続いて西郷隆盛も通ったという。実際に坂を上ってみると、雪は降っていなくても歩みは困難であることがわかる。それに薩軍は、もっと先の険しい道を進んで行ったのかと思うと、感慨深いものがわいてきた。
 この坂は1635(寛永12)年に完成し、1741(元文6)年に石畳敷きになった。1500㍍あったそうだが、現在は約500㍍が当時のままの姿で残っているという。
 福岡県筑穂町の山中にも、江戸時代の空間がそのまま残っている場所がある。長崎から江戸までの道程だった長崎街道で、難所の冷水峠近く。草むらの中の石畳を約20分進むと木立の視界が広がって首無し地蔵の祠や、石橋が架かった小川がある。旅人が一息入れた場所だった。
 その土地に赴任していた時には、たびたびこの場所を訪れた。石橋の側面中央には「文政六……」と刻まれている。石畳をメジャーで測ったら最大幅2・7㍍、長さは約3・7㍍あった。
 なぜ、この空間が江戸時代のままだと分かるのか。幕末の初代英国公使オールコックが著した日本滞在記録「大君の都」(山口光朔訳、岩波文庫)の中巻に掲載されているスケッチ「道ばたの祠」とそっくりだからだ。「文政六」は1823年。オールコックはその後に来日しているから、スケッチに描かれている石橋である。徳川吉宗に献上されたゾウも通ったという。
 道路が舗装され、便利になった車社会。昔の道は、今ではほとんど人影はない。苦労しながら、どんな思いで通ったのだろう。たまには、ほんのわずかでも昔の道を歩いて時間をさかのぼる行楽もいい。ただし、自販機はないから水筒は忘れずに。
   鹿児島支局長 竹本啓自 (毎日新聞鹿児島版 3月6日掲載)

ひとり舞台

2006-03-06 17:59:08 | はがき随筆
 自分で褒めるのもなんだけど、きれいだったなあ。純白のロングドレスを身につけて、舞台狭しし舞いながら歌っている私。
 2月に入ったばかりの早朝5時、目覚めてびっくりした。マレーシア帰り、飛行機に乗ったとたん風邪をひいて、約2カ月歌うことを忘れていた。
 声を出して歌ってみた。 ゆきがふる あなたはこない ゆきがふる……。あ、いけるいける。前よりうまく歌える気がする。何回も何回も歌った。だんだん声が大きくなり、気分上々。
 すると、母が「由井ちゃん、何ごと?」と言って部屋をのぞいた。
   阿久根市赤瀬川 別枝由井(64) 3月6日掲載