大和路に春を呼ぶ行事として名高い東大寺の修二会。正しくは十一面悔過(けか)といい、二月堂本尊の十一面観音に、私たちが日々犯す様々な過ちを懺悔する法会である。俗にお水取りと言われるが、若狭井からお香水(おこうずい)を汲み上げて二月堂のご本尊・十一面観音にお供えするのは3月13日の午前1時半。行は2月22日の前行(別火)に始まり、本行は現在は3月1日から二週間にわたって行われる。この行を務める練行衆の足元を照らす道明かりに使われる大松明は、期間中の毎日使われて総数は141本に上る。(一日10本、12日だけ11本)
松明に使われる真竹は古来、大和の月ケ瀬、高山などの他、山城からも多くの人の手によって運ばれてきたが、その風習を復活されて今年で39回目を数えるのが京田辺市の「山城松明講社」である。
行事は京田辺市の大御堂観音寺近くの竹林で根付きの真竹を掘り起こす作業に始まり、観音寺の十一面観音の前で道中安全を祈願したあと、大八車などで奈良坂瓦道まで運ばれてくる。ここから3本が人の肩で二月堂に運ばれるのだが、私たち夫婦は途中の転害門から参加させて頂いた。
快晴の真っ青な空の下を歩き、10時、転害門前に着くと、お迎え式の太鼓やお接待のゼンザイなどの準備で、たくさんの人が忙しく立ち働いておられた。「きたまち観光案内所」を見学したりするうち、11時前、太鼓の演奏が始まり、大勢の人に担がれた竹が到着した。
門前に竹が並べられ、ここで休憩して再び出発。
私たも、ここから担がせて頂いた。しかし身長が低いので肩が竹に届かず、実際は手で捧げる格好で歩く。旧京街道(般若坂越)を南へ向かい、県庁を迂回して県庁東交差点で地下道を潜って東大寺へ。快晴で気温が高く汗をかくほどだった。
何カ所かの階段を登って二月堂の前へ運び上げて奉納したあと、湯屋の西側へ立てかけた。
これまで修二会には何度か参会したが、この竹がその歴史的な行事に使われると思うと、本当に貴重な体験ができて感無量である。来月は例年とは違った気持ちでお詣りさせて頂けるだろう。